アニメ映画『放課後ミッドナイターズ』がついに公開! 監督の竹清仁さんとキャストの山寺宏一さんにインタビュー
2012年8月25日(土)、7年という長大な制作期間を経て、ついに映画『放課後ミッドナイターズ』が公開される。
『放課後ミッドナイターズ』は、竹清仁監督が手掛けるアニメ映画だ。基となった短編『放課後ミッドナイト』は、『24』や『デスパレードな妻たち』を放送するフランスの大手TV局「Canal +」に購入されるなど、公開前から世界中で注目を浴びている。また、公開は日本、香港、シンガポール、台湾、韓国とアジア5カ国で同時に行われる予定。
今回は、そんな『放課後ミッドナイターズ』の監督を務めた竹清仁さんと、主役である人体模型「キュンストレーキ」の声を担当する山寺宏一さんにインタビュー。制作の経緯から最初に見たときの印象、山寺さんがオファーを受けた決め手などについて詳しく伺ってきた。
――まず始めに、『放課後ミッドナイターズ』を制作したきっかけについて教えていただいてもよろしいですか?
竹清仁さん(以下、竹清):人の動きをライブで撮影する「モーションキャプチャ」という技術があるんですけど、「これを使ったら実写っぽいコメディが撮れるな」と思ったのが最初なんです。で、どのキャラクターでいこうかなと考えていて1番ピッタリだったのが、この裸ん坊(キュンストレーキ)。裸と骨なら、人間臭くて生々しい動きができるキャラクターでもあるし。そもそも、こいつらが動いたら面白そうだなと思いついたのが始まりです。
――パイロットフィルムには、どのような映像が入っていたのでしょうか?
竹清:クモにいたずらをされたので、やっつけようと内蔵を投げていたら、途中で警備員がやってきたから動かない振りをしたりと、キュンストレーキがひとりでボケ倒してるだけの映像ですね。
――制作に7年もかかってしまったのは何故でしょうか?
竹清:逆に言うと、原作もない作品でよくぞ映画までこぎつけたなという。最初は、『Mr. ビーン』みたいなコメディ映画をショートフィルムシリーズにしたかったんです。
――映画よりも前に?
竹清:そうです。その途中でプロデューサーの方が「竹清さん、ショートフィルムは志が低くないですか? ダメもとで映画会社に行きましょうよ」って言い出したんです。で、いろいろな会社を周っていたら割と最初の方でティ・ジョイさんが「やる」と言ってくださって。本当に何もかもダメもとでここまできたという感じですね。それは、キュンストレーキ役を山寺さんにお願いしたことも含めて。
――では、引き続きキャストを山寺さんに決めたきっかけについてお話いただきたいのですが。
竹清:キュンストレーキは、ただでさえ個性が強いので本当に声が大事だと思っていたんです。先ほども言いましたが、僕はこの作品を日本のアニメではなく海外のコメディ映画みたいにしたかったんです。なので、『ゴーストバスターズ』とか、そういう映画をDVDでたくさん借りてきて、「こういう声の人がいいよね」とピックアップしていったんです。
――当時、声優さんには詳しくなかったのでしょうか?
竹清:もちろん、山寺さんのことは存じ上げていましたけど、それほど声優さんについて詳しくはありませんでした。で、後でピックアップした役の人を調べてみたら、全部山寺さんだったんです(笑)。
――ちなみに、ピックアップした中にはどんなものがあったのでしょうか?
竹清:ウィル・フェレルやジム・キャリーなど、気になる人はh全部、山寺さんでした。「何人か挙げてくれ」と言われていたのに、こうなっちゃったんです(笑)。そもそも、それほど大きな規模で始めてたわけでもなく、むしろインディーズのようなノリで始めていたので、山寺さんクラスの人に頼むのは少し抵抗がありました。でも、「1回言ってくれたら僕の気が済むからお願いしてください」と言って、オファーをお願いしたんです。
――山寺さんは、当時オファーを受けられたときどのように思われましたか?
山寺宏一さん(以下、山寺):最初は、「こんな作品があるんですけど」と概要を紙でいただいて、そこにこの骨がいたという(笑)。皮を剥いだ肉のキャラクターだったので、「これはヒドイよね。気持ち悪いでしょ?」とマネージャーに言ったら、「一応、動画もあるんで見てみますか?」と言われて。その映像が家でしか見られなかったので、帰った後に見たら「うわぁ! 面白え! やるやる!」となって。マネージャーに「やりたい! 絶対、ほかの人にやらせないで! 早く取って」と言ったんです。仕事をもらってきたときの態度と、映像を見た後の態度が全然違うから、マネージャーからしたら不思議だったかもしれませんね(笑)。最終的には、こちらから「やらせてほしい」とお願いするような形になって。
――このキャラクターを演じようと思った決め手は何だったのでしょうか?
山寺:これは、声優なら誰が見てもやりたくなりますよ。やらずにはいられない。少し調べたら、『放課後ミッドナイターズ』もととなった短編『放課後ミッドナイト』も既に海外で話題になっていたんですね。知ってたらすぐにオファーを受けたんですけど、始めはそれを存じ上げなくて……。「これ、日本の監督が作ったの!?」とびっくりしましたよ。
――最初は海外の作品だと思いましたか?
山寺:思いますよね。でも、その前に「日本の作品だからやってほしい」という話を聞いていたので、「えぇっ!? どういうこと?」とわけがわからなくなってしまいました。
――ちなみに、役作りはされたのでしょうか?
山寺:僕の場合、大抵映像を見た段階で「こういう声を出したいな」というイメージが出来上がるんですよね。『放課後ミッドナイターズ』に関しては絵や台本を見れば、こういう演技をしてほしいんだろうなという監督の想いがガンガン伝わって来たので、あとはそれをぶつけるだけでした。
――監督から見て、山寺さんの演技はどうでしたか?
竹清:もうバッチリどころか、キャラクターが一人歩きをしている感じさえするんですよ。最終的にはゴス役の田口さんと合わせて僕の予想を超えていきました。僕は、キュンストレーキとゴスが、なんだかんだ言い合うんだけど、普段から仲良くて認め合っている感じが出るかどうかだけがキモだと思っていたんですけど、ふたりとも普段から本当に仲良くやっていて。だから、もし逆にそこが上手くいっていなかったら、ちょこちょこ何か言っていたかもしれないですね。でも、最初から望む形になっていたので、アフレコ現場でもずっと笑いっぱなしでした(笑)。
山寺:既に作品がそれだけちゃんと出来上がっていましたから、やっていて凄く楽しかったです。僕は、今回初めて田口さんとお会いさせていただいたんですけど、一緒にやれたのが凄く良かったですね。
竹清:とても初めてとは思えなかったですよ。
山寺:それまで、田口さんは声がメインの仕事はほとんどやったことがないという話だったので、普段からやっている我々とはペースが違うかなとも思ったんですけど、全く関係なくて。演じている最中は面白くてしょうがなかったです。
――見ていても面白かったです(笑)。田口さんは優しい感じの博多弁なんですけど、でも方言がそこまで強く出ていなくて、そこに山寺さんのキャラが被ってくるという感じが非常に良かったです。
竹清:博多弁は、僕のジャッジが厳しいですから。
――監督も博多ご出身なんですよね?
竹清:はい、だからネイティブじゃないと許せないんです。
――田口さんも博多出身なんですか?
竹清:そうそう、意外と近所で。しかも、聞いてみると同い年。最初、打ち合わせをさせていただいたときに「監督、これ南の方の博多弁でいきますか? 北の方の博多弁でいきますか?」って。それはもうみんな分からないから、そこまでって(笑)。
山寺:素晴らしいなあ。
――主人公を人体模型にした決め手はどこだったのでしょうか?
竹清:先ほども少しお話しましたが、単純にいろいろ考えた中で1番面白そうっていう。「お、こいつ面白そう」というインスピレーションに惹かれて決めました。。
山寺:気持ち悪がられるとは思わなかったんですか?
竹清:思いました。内臓出てるし、筋肉組織ってありえないですもんね。主役にはしないですよね。
山寺:もっと単純な線で考えたっていいじゃないですか。普通は、子供たちが主役で学校に迷い込んで、ちょっと成長して帰ってくるみたいなお話にするのもありじゃないですか。
――最初にホームページを見たときは、そういう印象がありました。
山寺:やっぱり思いますよね。
竹清:人体模型を主人公にした方が絶対に面白くなる、というか新しいものを作りたいという欲求があって。多分、世界中で人体模型を主役に映画を作ってみようと思いついた人はたくさんいたはずなんです。でも、リスキーだから止めたんだと思うんですよ。でも、今はモーションキャプチャという技術があるし、日本には著名な声優さんがいっぱいいらっしゃるので、1回好きになってもらえば大丈夫だろうという確信めいたものがなんとなくあって。だから、やってみたんです。
――その狙いは「ドンぴしゃ」で、予告動画の段階からみんな好きになりますよね。
山寺:もうあのラクガキ最高ですね(詳しくは、公式HPの動画を!)。不思議な話なんですけど、最初に見たとき「これダメじゃん。気持ち悪いし」と言ったのは覚えているんです。でも、当時なんでこれを見て気持ち悪いと思ったのかが今は分からないんですよね(笑)。
――海外でも日本語で字幕で同時公開されますが、それについての心境をお聞かせいただけますか?
竹清:これは、配給会社が同時公開をやろうと言ってくださって。
山寺:「海外同時公開って素晴らしいですね!」と言いながら、内心「でも、どうせ吹き替えられてしまうんだろう」って思っていたら字幕だそうで。
――微妙な博多弁は海外でどういう風に表現されるのかを知りたいところですが。
竹清:一応、お願いする形としては、現地の博多っぽいところの方言で字幕を付けてもらうつもりです。
――山寺さんとしては、海外で広く自分の声が聞かれることについてどう思われますか?
山寺:幅広い人に聞いてもらえるのは嬉しいことですよね。普通のアニメ映画なら、よっぽど日本のアニメ好きでない限り吹き替えで見る方が多いと思いますので。でも、『放課後ミッドナイターズ』は最初から字幕で公開すると。どうしても吹き替えが必要になった場合は、僕の声に似せて演技してくれる人じゃないと難しいと言っていただけるとありがたいですね(笑)。
――「おめでとうございます」と言うには早いかもしれないですけど、アカデミー賞の方にエントリーをされたと?
竹清:ここのスタッフは本当にやってくれますよ。確かに、エントリーはしました。
山寺:それは初耳です。
竹清:冗談半分というか、ダメもとで申し込んだんです。
――冗談だったんですか?
竹清:いや、ちゃんとしてるんですけど(笑)。
山寺:監督、強気でいきましょうよ。
竹清:ですね。「強気」でいきましょう!
山寺:そうですよ。いろいろな賞がありますから。いきなり作品賞なんてきたらどうします?
竹清:いやいや、でも、そうなったら大笑いですよね(笑)。このプロジェクトは、制作以外の人も含めて、みんながいろいろと新しい試みを「ダメもとでやってみようぜ!」というマインドに満ち溢れているんですよ。アカデミー賞のエントリーもその現れというか。非常に嬉しいことですね。
山寺:世界にはいろいろな映画祭があるので、さまざまなところで人気が出るんじゃないですか?
竹清:そうなれば嬉しいですね。日本より海外の方があるかもしれませんね。
山寺:最初はアメリカの作品だと思いますよね。
竹清:そう見えると嬉しいですね。
山寺:いや、絶対見えると思います。
――建物は西洋的だけど、書かれているラクガキが日本語という(笑)。
竹清:ラクガキの「おならぷー」はどうなんでしょうね?
山寺:あれを、監督のネクタイとかに書くとかどうです?
竹清:そこは『放課後ミッドナイターズ』が大ヒット御礼になったらということで。
山寺:いや、逆に先に作ってしまえば「あれ、何だろう?」みたいな感じになりそうですけどね。海外で人気が出た後は、みんなネクタイに「おならぷー」って書いてあるという。
竹清:それ、最高です。「侍」のTシャツとか、みんな意味も分からずに着てるので、あんな風になると嬉しいですね(笑)。
――ここからは、おふたりで互いに質問を投げかけてほしいのですが、それぞれ聞きたいことなどはありますでしょうか? まずは、監督から山寺さんにお願いします。
竹清:もし、『2』があったらキュンストレーキをどこでヒドイ目にあわせたいですか?
山寺:え!? どういうこと?
竹清:この映画で、キュンストレーキはタイムマシーンを手に入れるので。
山寺:どこでも行けるんだ! 学校じゃなくていいわけですね。
竹清:いいんです。なので、『2』があったらどこに行きたいですか?
山寺:いやいや、タイムマシーンだったら場所だけじゃなくて時代も越えられるわけですよね。
竹清:どこでも行けます。ちなみに、多分ふたりはセットで飛ばされるかと。
山寺:どこだったら面白いかなあ。「近未来」、「中世ヨーロッパ」、「江戸時代」。全然タイプの違う3つですけど、この辺りがいいと思います。近未来だと、国はあまり関係なくなっちゃいますよね。中世ヨーロッパは、ホラーの原点みたいなところがあるじゃないですか。んー、2箇所ぐらい行きませんか?
竹清:あはは(笑)。
山寺:タイムマシーンがあると範囲がぐっと広くなりますね。
竹清:では、現代の国に限定したら、どこでヒドイ目にあいたいですか? アメリカの砂漠地帯に飛ばされて帰ってくるとか。
山寺:確かに、ネイティブアメリカンと出会ったり、西部劇チックになったりするのが相当面白いかもしれないですね。砂漠もあるし、決闘をしたり馬に引きずられたり(笑)。あと……アフリカはないかな?
竹清:だいぶ日焼けしそうですね(笑)。洗ったらちょうどラクガキのところだけが日焼けするみたいな。
山寺:「おならぷー」が綺麗に残っちゃうんだ(笑)。
――では、次に山寺さんから監督に聞きたいことをお願いします。
山寺:『放課後ミッドナイターズ』では、どうしてもキュンストレーキとゴスが物語の軸になっていますけど、このふたり以外に「本当にいいキャラ作っちゃったなあ」と思えるお気に入りのキャラはいますか?
竹清:みんな好きなんですけど、特にこのウサギ3匹が気に入っています。これが意外と、みんな「その声でくるか!?」という反応で。僕は、この3匹でスピンアウトを作りたいぐらい好きですね。
山寺:あの3匹が何なのか、もうちょっと見たいですもんね。
竹清:振り返ってみると、本筋には全然関係ないんですよ。なので、別のお話で活躍させてみたいなと思います。
――最後に、『放課後ミッドナイターズ』の魅力をまとめていただけますか?
竹清:僕は、80年代の『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『グレムリン』が好きなんですけど、そういう雰囲気を出したくて『放課後ミッドナイターズ』を作ったんです。なので、できれば複数人で、ポップコーンを片手に、理屈なしでゲラゲラと笑いながら見てほしいなと思います。
山寺:本当に面白くて、ドキドキワクワク、最後にはキュンとしてしまうような……「キュンストレーキ」だから言うわけじゃないですよ(笑)。不思議なことに、僕も最後には感動しちゃったんですよ。僕は、こういう役をやりたくてずっと声優をやっているんです。キュンストレーキには、そのぐらい「出会っちゃった」という感じがして。こういう役をやるのが僕の生きがいなので。とにかく、キュンストレーキもゴスも絶対好きになってもらえると思います。そういう作品なので、必ず見てください!
<作品イントロダクション>
この夏、世にも楽しいスクール・アトラクションへRIDE ON!
<和製「ナイトミュージアム」!><ティム・バートンが「学校の怪談をリメイクしたよう!」>
<映画館の"ホーンテッドマンション"><福岡の奇才が生んだ「不思議の国のアリス」>
絶賛の声続出!アジア各国で続々と公開決定中!次は日本人が鑑賞する番だ!!
夜な夜な動き出す理科室の人体模型キュンストレーキ(声・山寺宏一)と、その相棒の骨格標本ゴス(声・田口浩正)を主人公に、真夜中の学校で巻き起こる一夜の大騒動を描く映画『放課後ミッドナイターズ』は、福岡を拠点に活動する奇才映像作家、竹清仁監督が手掛けるアトラクションoムービー!
完成前のパイロット版を見た海外映画関係者の間で、その国籍不明の独創性が話題を呼び、オリジナル企画としては異例の5カ国同時公開も決定。
この夏、かつてないエンターテインメントが日本を、そして世界を襲う!
※5か国⇒香港/シンガポール/台湾/韓国/日本
<ストーリー>
人類 VS 科学の最終決戦が始まる!!
名門o聖クレア小学校の学校見学会。立ち入り禁止区域に迷い込んだ大人顔負けのスーパー幼稚園児マコ、ミーコ、ムツコ(通称マoミoム)は、取り壊し寸前の理科室でガラスケースに陳列された人体模型(キュンストレーキ)を発見し、「気持ち悪いはだかんぼさんをかわいくしてあげよう」と、あらん限りのテクニックで飾り立てる。
日中は身動きが取れないキュンストレーキの怒りは真夜中に爆発。相棒の骨格標本ゴスと共に、夜な夜な動き出すその 名も"放課後ミッドナイトパーティ"何も知らずに閉館後の校舎に舞い戻るマoミoム。ついに始まるミッドナイターズとマoミoムの大激突。はたしてこの結末はいかにー。
<公開情報>
8月25日(土)新宿バルト9ほかアジア一斉公開
<スタッフ&キャスト>
■企画・監督:竹清仁
■脚本:小森陽一
■音楽:北里玲ニ
■音響効果:笠松広司
■CGプロデューサー:田中賢一郎
■エグゼクティブプロデューサー:紀伊宗之
■プロデューサー:伊藤耕一郎/平田武志
■製作:「放課後ミッドナイターズ」製作委員会
■配給:株式会社ティ・ジョイ
■主題歌:ねごと 「Re:myend!」(Ki/oon Music)
■声の出演/山寺宏一、田口浩正、戸松遥、雨蘭咲木子、寿美菜子、小杉十郎太、谷育子、家中宏、茶風林、松本大、郷田ほづみ、屋良有作、大塚芳忠、黒田勇樹(アルバイト)、伊瀬茉莉也、下崎紘史、飯塚昭三
>>映画『放課後ミッドナイターズ』公式サイト