「まる子は私!」 声優のTARAKOさんが、まる子との出会いから、23年ぶりの劇場版『映画ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年』までを語る
2015年にテレビシリーズの放送25周年を迎えた、アニメ『ちびまる子ちゃん』。23年ぶりとなる劇場版『映画ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年』が、12月23日(祝)より公開されます。今回、原作者のさくらももこさん自ら脚本を担当して描くのは、まる子とイタリアからやって来た男の子アンドレアの、ちょっぴり切ない出会いと別れ。ファンはもちろん、大人も子どもも楽しめる映画として注目を集めています。
映画の公開を前に、まる子役を演じるTARAKOさんにインタビューを実施! 映画の見どころはもちろん、まる子と歩んだこの25年間の思い出や、TARAKOさんが幼少期を過ごした「昭和」という時代。そして、改めて思う『ちびまる子ちゃん』の魅力などについて伺いました!
■ TARAKOさんもスタッフも、『ちびまる子ちゃん』が25年間続くと思わなかった!?
──TARAKOさんがまる子を演じて、今年で25年になります。まる子役に決まった時のことをおぼえていますか?
TARAKOさん(以下、TARAKO):とても鮮明におぼえています。実は、最初に行われた第一次オーディションに私は呼ばれていなくて、まる子役は違う方に決まっていたんです。
その方でパイロット版も作られたんですが、ももこ先生(原作者のさくらももこさん)がご覧になった時に、少しイメージに合わないと思われたようで、その後に第二次オーディションが行われたんです。私はそこに、本当に最後の最後で呼ばれた感じでした。
当日、新宿のスタジオに行くと、実力のある声優さんばかり来ていたので「これは落ちるな……」と思いましたね。でも、そういう意味で逆にリラックスできたのかもしれません。私の番になり、モニターにまる子たちが映ると、純粋に「キャラがかわいいな~!」と思えました。自然に声が出てきたのをおぼえています。
──その演技が、さくら先生の目に留まったのでしょうか?
TARAKO:最終的な5人くらいの候補に残った後で、さくら先生が、「一番、ご自分に声が似ている」ということで私を選んでくださったそうです。確かに似てるんですよ!
昔、ももこ先生と、(フォークシンガーの)イルカさんと、私の3人でラジオに出させていただいたことがあるんですが、リスナーの方は、誰が誰だかわからなかったそうです(笑)。
──ご自分に決まった時はどう思われましたか?
TARAKO:うれしかったんですけど、私でいいのかな……と不安でしたね。実際に放送が始まっても肩に力が入ったままで、声もすっごい作ってました。
その演技に、「これでいいのかな……」とモヤモヤしたり……。今では楽にまる子の声を出せるようになって、お酒飲んで酔っ払うとまる子の声になっちゃうくらいなんですけど(笑)。私を選んでくれたスタッフさんたちを信じて、そのままやり続けることができてよかったなって思います。
──放送スタートから視聴率は伸び続けて、1年のうちにアニメ歴代1位の39.9%を記録するなど、『ちびまる子ちゃん』は社会現象になりました。
TARAKO:最初はみんな、「1、2クール続けばいいな」という気楽な感じだったんですけど、そこからみるみる視聴率が上がっていって……。一番ビックリしたのは身内(スタッフ、キャスト)かもしれません。
『ちびまる子ちゃん』って、放送当時にしても今にしても、流行っているアニメとは全然違う平面な絵で、お話も日常のことですからねぇ。本当に信じられなかったですよ!
──人気アニメになって、ご自身やまわりに変化はありましたか?
TARAKO:アフレコの現場やスタッフさんたちが、みんな活き活きとしましたね。人気が出たから、そこから好きなように『まる子』の魅力を掘り下げていけたというか、いろいろ作っていくことができたのかなと感じています。
私のことでいうと、親とか親戚が盛り上がっちゃいましたね(笑)。声優ってある意味、影の仕事なので顔出しってあまりなかったんですけど、当時は顔を出す仕事のほうが増えちゃいました。25年前は私もまだ若かったので、恥ずかしげもなくバンバン出させていただいて……そういう意味では生活が180度変わりましたね。
──そこから人気は現在まで続いています。この25年を振り返って、特に思い出深いことなどはありますか?
TARAKO:『ちびまる子ちゃん』での25年は私にとって、他のキャストやスタッフさんとのお付き合いの25年でもあります。毎週アフレコで顔を合わせるとホッとするんです。
お互いに構えることもないですし、本当に仲が良くて、ここが私の「ホーム」なんだなって思います。みんなで行った旅行とか、温泉、お花見なんかもすごく楽しかったですね。
昔になりますが、音響監督の本田(保則)さんの還暦祝いに出かけて、赤いものをプレゼントしたこともありました。本当にみんないい人というか、一緒にいるとあったかいですね。
■ まる子はもちろん、キャラクター全員が『ちびまる子ちゃん』の魅力に
──キャストやスタッフのみなさんにも愛されている『ちびまる子ちゃん』ですが、改めて作品の魅力はどういったところだと思いますか?
TARAKO:まる子は、クラスに一人はいる子ですよね。高嶺の花でもなく、ヒーローでもなくって、ほんとに「そこにいる子」というか。それにつきるんじゃないかなと思います。
──まる子の他にも、「こんな子いる!」と思えるキャラクターがたくさん出てきますよね。
TARAKO:『ちびまる子ちゃん』の中には、例えばまる子のいる3年4組のメンバーだけ見ても、優等生がいて、お金持ちがいて、その一方でいじめっこもいて、暗い子もいます。この作品を観ているひとりひとりの方が、必ずどの子かに感情移入できるんじゃないでしょうか。そこも魅力のひとつなのかもしれません。
──その中でTARAKOさんが一番感情移入できるのはやっぱり……
TARAKO:まる子ですね! 嘘偽りなく、まる子です。感情移入というか、アフレコ中は本当にこの子に入ってるだけ、という感じなんです。まる子以外だと、「そうありたい!」と思えるのはたまちゃん。たまちゃんになれたらいいですね~! あんなに優しくって、性格がよくって、そしてまる子を見捨てないでいてくれる(笑)。ときどきタミーになったり、シュールな一面もあるんですけど、それもまたいいなって思います。
■ まる子と同じように過ごした、TARAKOさんの「昭和」
──TARAKOさんご自身は子どもの頃、『ちびまる子ちゃん』のキャラクターでいうと誰に近かったですか?
TARAKO:性格はまる子そっくりだったと思います。グダグダするの大好きだし、「学校行きたくない~」って言ったりもしょっちゅうでしたね。まる子が夏休みの宿題を残り1日でやったりするのを見ていると、「わかるわかる~!」って思います。
あと、私も床に寝転がって『りぼん』を読んでいました(笑)。唯一まる子と違うのは、学級委員をやってたことくらいですかね。そこはちょっとだけ、みぎわさんだったんです(笑)。
──TARAKOさんの小学生時代から数年後、ちょうど中学生だった1974(昭和49)年頃が、『ちびまる子ちゃん』の舞台とされています。TARAKOさんは当時をどう過ごされていましたか?
TARAKO:実は私、家族構成もまる子と同じなんですよ。祖父と祖母こそいなかったんですけど、3つ上の姉と、飲兵衛の父、そしてしっかりとした母、といった感じで、割とまる子と似たように当時を過ごしていたのかもしれません。ドリフを見て笑って、(山口)百恵ちゃんや(山本)リンダに夢中になって……。『ちびまる子ちゃん』の中で当時の流行りものが出てくると、「あ~これこれ!」って全部しっくりきますね。
──昭和の懐かしい雰囲気も、作品の魅力のひとつかもしれません。
TARAKO:あの時代の良さっていうのは、やっぱりあると思います。まる子の家にあるような黒電話も、今ではめっきり見かけないですねぇ。当時はケータイもないので、手紙をいっぱい書いていたのをおぼえています。でもそれが不便だとは感じなかった。待ち合わせをしても、現地で連絡取り合えないのですれ違っちゃったり……、それってちょっとロマンチックですよね(笑)。
あと、昭和の世界ってギスギスしたものが少なかったように感じます。昔もイジメとかありましたけど、陰湿ではなかったというか、わかりやすいイジメしかなかったですね。だからちゃんと解決もするし。今思うと、本当にいい時代でした。
──今回の映画でも、道行く人がすごく親切にしてくれるシーンがありました。
TARAKO:映画では大阪と京都が出てきますが、関西の人がすごくあったかく描かれてますね。私も前に大阪へ行った時、咳をしていたら全然知らないおばちゃんから飴ちゃんもらったんですよ。横断歩道で、「飴ちゃん食べる? 手ぇ出し~」って(笑)。信号が青になったらその人は行っちゃったんですけど、すごい感動しました! それから大阪が大好きになって、大阪弁・関西弁も好きになって、今もたまにエセでしゃべります(笑)。
■まる子とアンドレアの出会いと別れに、TARAKOさんもときめいた!?
──ここからは映画のことをうかがっていきたいのですが、前作(1992年公開『ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌』)から実に23年ぶりの新作です。今回、映画をやると聞いた時はどう思われましたか?
TARAKO:ホントかな!? ドッキリじゃないかなと思いました(笑)。そのあと本当なんだとわかると、待ってました! という感じでしたね。
──TARAKOさんの中で、やりたい気持ちはずっとあったんですか?
TARAKO:ありましたね。ただ、『まるちゃん』の場合は宇宙に行くとかタイムスリップするとか、そういう派手な感じではないので、映画を作るのは難しい面もあるんだろうなぁとは思っていました。でも今回、本当に素敵なお話になっていたのでうれしかったです!
確かに日常なんだけど、ちゃんとなにか空気が変わってるんです。テレビの前では見られないまるちゃんの世界がギュッと詰まっているので、ぜひ大きなスクリーンで観ていただきたいなと思いました。
──今回の映画は、まる子とイタリア人の男の子アンドレアとの出会いと別れが大きな要素ですが、確かに普段の『ちびまる子ちゃん』にはないタイプのお話なのかもしれません。
TARAKO:そうなんです! いやぁ~ときめきましたよ、年甲斐もなく!(笑) まる子を演じてる時は、私も自然にまる子になっちゃってるので、スクリーンの中でときめいたり、笑ったり、悲しかったり、映画のストーリーだからこそまる子が感じるものを、私もたっぷり感じてましたね。
アンドレア役の中川(大志)くんも、すっごく上手でした。声もいいし、顔もいいし(笑)。声優初挑戦とは思えないほど上手くて、まる子チームみんなで感動しました!
──映画全体で、TARAKOさんが思う見所などはいかがでしょうか?
TARAKO:まる子とアンドレアの交流はもちろんですが、普段から『ちびまる子ちゃん』を観てくださってるファンの方に楽しんでもらえるシーンも多いと思います。特に私が印象深いのは野口さんですね。いつもどおり「クックックッ……」って笑う野口さんなんですけど、こんな一面があるんだ! って思えるシーンがあって……。その時の野口さんの一言、演じている田野(めぐみ)ちゃんの一声がすごい素敵で……ボロッときました。
──最後に、映画を楽しみにしているファンの方にメッセージをお願いします!
TARAKO:今回の映画は、『まる子』らしく老若男女のみなさんが楽しめて、親子でコミュニケーションをとるのにもいいんじゃないかなと思います。私がいつもテーマにしている言葉に、「そばにいるのは当たり前じゃなくて、親がやさしいのも当たり前じゃなくて、子どもがいい子なのも当たり前じゃない」というのがあります。だから私は、身内にはすっごく気を使いますし、大事だから言葉も選ぶし、絶対に傷つけないようにしています。
今回の映画は、そういう当たり前とか普通がどんなに大切なのかを感じられる映画になっていると思いますので、ぜひ足を運んでいただけたら嬉しいです。
──ありがとうございました!
■作品紹介
『映画ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年』
公開:12月23日(水・祝)
【STORY】
世界の5ヵ国からやってきた子どもたち。花輪くんのお願いで、みんなの家に外国の子どもたちがホームステイすることになったからさあ大変! まる子の家にはイタリアからやって来たアンドレアが来ることに。学校での授業に参加したり、週末には清水の町を飛び出して、みんなで大阪や京都へと出かけたりと楽しい日々を過ごすまる子たち。始めは、積極的なアンドレアに戸惑いながらも、日本に来た理由を聞いて、アンドレアの気持ちを知るまる子。一緒に行ったお祭りでは「また会えますように」とそれぞれお願い事をする二人。そんな楽しい日々にもいよいよお別れの時が──。
【STAFF】
原作・脚本:さくらももこ
監督:高木淳
【CAST】
まる子:TARAKO
お父さん:屋良有作
お母さん:一龍斎貞友
おじいちゃん:島田敏
おばあちゃん:佐々木優子
お姉ちゃん:水谷優子
たまちゃん:渡辺菜生子
花輪くん:菊池正美
丸尾くん:飛田展男
野口さん:田野めぐみ
はまじ:カシワクラツトム
山田くん:山本圭子
永沢くん;茶風林
藤木くん:中友子
みぎわさん:ならはしみき
山根くん:陶山章央
大野くん:沼田祐介
杉山くん:真山亜子
戸川先生:掛川裕彦
ナレーション:キートン山田
<スペシャルゲスト>
アンドレア:中川大志
シン:劇団ひとり
ネプ:パパイヤ鈴木
ジュリア:渡辺直美
シンニー:ローラ ほか
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