声優
小野大輔さん&遠藤綾さんインド映画『ロボット』吹替インタビュー

「ワケわからんが面白い!」小野大輔さん&遠藤綾さん、インド映画『ロボット』吹替インタビュー

 2016年4月23日(土)、CS放送ファミリー劇場(株式会社ファミリー劇場)で、小野大輔さんと遠藤綾さんの吹き替えによるインド映画『ロボット』が放送決定! ファミリー劇場完全オリジナル日本語吹替版を制作とのことで、制作現場におじゃましてお話をうかがってきました。

 『ロボット』は、2010年に37億円を投じて作られたインド映画。心を持ったロボットが大暴走する、ハリウッド驚愕の超絶アクション映画として世界中で大ヒットしました。日本でも2012年に公開はされたものの、日本語吹替版が作られるのは今回が初めて。ラジニカーントさん演じるバシー博士とバシー博士にそっくりなロボット"チッティ"を小野大輔さんが、アイシュワリヤー・ラーイさん演じるバシー博士の恋人サナを遠藤綾さんが吹き替えます。

 収録の様子もモニター越しに見せていただきましたが、思わず息を止めてしまう演技と、合間に和気あいあいと会話される様子に釘付けでした。休憩のお時間をいただいてうかがったお二人のインタビューをお楽しみください!

■「作品自体がHAPPYで楽しくて」「楽しく演じています」

――今までの収録の感想をひとことずつお願いします。

バシー博士・チッティ役(二役)・小野大輔さん(以下、小野):最初、「バシー博士とチッティの二役あります」とうかがって、これは本当に大変だな、物量的にもお芝居としてもすごく大変だな、と思っていました。でも、収録に入ってみると作品自体がHAPPYで楽しくて。演じていて時間の流れを忘れるというか。この作品を観ている時に感じたHAPPYさ、楽しさというものが、そのまま収録していてもあるな、と。

――みなさん和やかにしていらっしゃるなと思っていました。

小野:そうですね。あんまり殺伐としたところがなくて……もちろん、ストーリー後半になると出てはくるんですけど、それを差し引いてもずっとツッコミどころが満載なので、演じていて苦しいなとか、しんどいなとかいうことは、今のところまったくないです。

――小野さんは、今日で2日目の収録なんですよね。

小野:チッティの方は別の日に先に全編録ってしまっていて。それもむしろ良い方に作用している気がします。(ロボットなので)誰の意見にも左右されない部分は特に。どうしても他人のセリフを聞いちゃうと寄ってしまうので、セリフに感情が乗ってしまったり色が付いてしまったりすることがあるので、別録りにしていただいてよかったなと思いますね。

――チッティを先に録られたのですね。

小野:感情を抑えて、抑えて。

――そちらの収録も順調に進んだんですか?

小野:そっちはすごい苦しかったです。しんどかったです。

――どういったところがしんどかったのでしょうか。

小野:本当にあんまり感情をセリフに乗せられないので。しかも、相手もいないところでやるので、ずっとひたすら淡々としゃべっているっていう部分が……なんていうんでしょうね、修行のようでした。
 チッティが感じていた葛藤みたいな部分とか、感情が乗ってくるけどその感情が自分の生きる道を阻んでしまうとか、うまく生きられなくなってしまう部分は、演じてみて切なく感じましたね。淡々とやっている時は苦しいんですけど、感情が乗れば乗るほど、それはそれで心が切なくなってくるので……そこを先に一人で演れたので、今日はとにかく楽しいです。みんないてくれて。

――遠藤さんはいかがですか?

サナ役・遠藤綾さん(以下、遠藤):そうですね……お話をいただいたときはパッケージの印象がとても強かったので、ああいう近未来の話なのかな、あのロボットを小野さんは何体くらい、超いっぱいやるのかなと思って。

小野:何百体もいる感じだったよね、キービジュアルだと。

遠藤:そうそう(笑)。だから、大変そう、そしてどんなSFなんだろう、と思っていたんですけど、いざちゃんと観てみたら、チッティの感情が芽生える、芽生えないみたいな葛藤とか、むずがゆい感じが所々に詰め込まれていて、いい映画だなと思いました。収録は、とってもキャラクターが濃いので聞いていて楽しいですね、他の方のお芝居とか。
 サナに関しては、とってもきれいな人ですし、かと思えば間に入る歌のシーンは雰囲気が全部違うので、すごいなと思いながら観ていました。あと、楽しく演じています。きれいだし。

小野:きれいだし。

遠藤:美人だし。

小野:いい女感がすごく出てます。

――けっこうセクシーな雰囲気がありますよね。

遠藤:そうですね。ロボットの気持ちをも変えてしまう、みたいな。翻弄する……悪女?

小野:(笑)。

遠藤:悪女じゃないです! バシーが作ったロボットだから、チッティもサナのことを好きになるっていうのは、なんか神経の何かがたぶん同じなんですよね、きっと。

小野:そうだね。思考回路が似ているのは必然性があるね。

遠藤:だからしょうがないですよね。

小野:これ、なんでこんなに遠藤さんが弁解しているかというと、僕が休憩時間に、「この話、サナのせいでおかしなことになっているんじゃないか」っていう説を唱えたんですね。「サナがいなければいいロボットだったはずなのに、ずっと」っていう。

遠藤:使えるロボットだったのに。

小野:使えるロボットだよ、ずっと。

遠藤:いっぱい量産して。

小野:うん、そうだよ。サナのせいでねぇ。

遠藤:でも、しょうがないってことが今わかったね!

小野:サナがすごくヒロイン然としたヒロインなんです。マドンナというか。バシー博士であったりチッティであったりが主になって(ストーリーが)動いているかと思いきや、実はサナがストーリーを動かしているんだなってわかりましたね、演じてみて。すごいですよ。
 あと、女優さんがやっぱりメチャメチャきれいです。めっちゃきれい。いつもより「いい女感」乗せてるんでしょ?

遠藤:うん、乗せてる。上乗せしてる。伝わりました? よかったよかった。

小野:これもさっき休憩しているときに(サナ役のアイシュワリヤー・ラーイさんは)本当にすごい女優さんだねって。メチャメチャきれいで。でもけっこうキャリア積んでいらっしゃる方だと思うんですけど、周りのキャストと本当に一線を画していて、なんだったらこの人がロボットなんじゃないかと思うくらい。なんかね、浮世離れした美女なんですよね。

遠藤:作ったんじゃない? バシー!

小野:話が根本からおかしくなっちゃうよ(笑)。 で、すごいね、きれいだよね、って話をしていたら、遠藤さんが「いつもより美人度を盛って演じてるよ」って話をしていたので、なるほどと。どうりでいつも以上にと。

遠藤:(笑)。整えてきた。

小野:そう、整えてきたって(笑)。すごくグッとくる印象の、すごく魅力的に、お芝居されているなと思いました。

遠藤:じゃあ、小野さんのいいところを……

小野:いやいやいや、そんな取ってつけなくて良いよ!(笑)

■こんなロボットが欲しい!?

――『ロボット』ではバシー博士が自分そっくりなロボット、チッティを作りましたが、もし、お二人が好きなロボットを作れるとしたら、どんな外見でどんな機能を備えたロボットを作りたいですか?

遠藤:そりゃもう、丸くて、青くて、ポッケからいろんなものが出てくるロボットを作りたいですよね。

小野:初めて聞いたなぁ、そんなロボット。(笑)

遠藤:あ、本当ですか? じゃあ、アニメ化できちゃうかもしれない。まず漫画から!

小野:まず漫画になってアニメになるだろうね。あの……それは君が作ったやつじゃないんじゃない? すでにあるやつじゃない?

遠藤:類似品があるか!

小野:向こうがパクッたみたいに言うな!(笑)

遠藤:(笑)。でもやっぱり、家事ロボットですか? 劇中にも出てた。あれが欲しいですね。

小野:ああ、出てきますね。

遠藤:やっぱりいたら、いいなぁ。

――家事は苦手なんですか?

遠藤:えー……、得意じゃないです。好きでもないし。

――お部屋とかかわいくきれいにしているイメージなんですけど。

遠藤:あ、本当ですか? じゃあ、それで!

小野:「じゃあ、それで」じゃねぇよ!(笑)

遠藤:自分の手間は極力省きたいから!

――お仕事に専念されるということで?

遠藤:そうですね! はい! 趣味とお仕事を一生懸命するために、家事全般をやってくれる便利なロボットが欲しいです。

――小野さんはいかがですか?

小野:自分が作るとしたら? うーん……難しいなぁ……。この仕事をしていると、どうしても収録のスケジュールがかぶるとそっちに出られないとか、スケジュールNGで出たかった作品でも出られなかったりとかがあるわけですよ、どうしても。だから自分が何人かいればって思うことはあります。ただ、この映画を観ると「ああ、よくないな。絶対ダメだな」って思います(笑)。自分がもう一人いるのって怖いですね。だから、要らないです!

――要らないですか? 小野さんは部屋が散らかってるってうかがったことがあるんですけど。

小野:……そうですか?

――CD・DVD を積んであるって話を聞いたことがあるような……

小野:そうですねぇ。

遠藤:しょうがないね。

小野:しょうがないね。

遠藤:積んじゃうのはしょうがない。

小野:しょうがないよねぇ……おいやっぱ散らかってんじゃん、君ん家!(笑) でもね、お家に(家事ロボットが)いたら、片付けてくれてるわけですよね。そうしたら、たとえばお手洗いに行って、お手洗い終わってガッて開けたら「あ、まだ掃除の途中なんで」とかって自分が居るわけですよね? 怖くないですか?

――いや、自分と同じ姿でなくてもいいですよ?

小野:ああ、そっか(笑)。……わかりました! 「ガ●ダム」が作りたいです!

遠藤:「ドラ●もん」と言ってること同じじゃないですか!(笑)

小野:白くて、18mぐらいの、人が乗って動かせる、かっこいいロボットが作りたいです。名前は「ガ●ダム」です!

――そこ、言っちゃうんですね?

小野:伏せといてください(笑)。

■ “余分なシーン”が魅力的で飽きない

――では、映画の話に戻って。この映画で驚いたことはありますか?

小野:まず、インド映画特有の長さですよね。

――約170分、3時間近いですね。

小野:3時間ですね。驚いたのは、なのに飽きないんですよ。映像をチェックしていても、音楽シーンとかもずっとちゃんと見ちゃうし、それありきで次のシーンにいかないとみたいに思っちゃうんですよね。ただ必然性はないんですよ。踊ることに必然性はないですし、なんだったら本編に関係ない演出が施されているし、衣装とかもそれのためだけの衣装を着ていたりしますし。この映画を観て僕が最初に驚いたことですね。そこにめっちゃお金かけてるんですよ! その……いわゆる……余分なシーン(笑)。

遠藤:何シーンっていうんでしょうね。

小野:音楽舞踏シーンかな。そこにものすごいリハーサルも繰り返しただろうなっていうのは見て取れるんですね。踊りもめっちゃシンクロニシティが高いですし。驚きましたし、ひとつの見どころですよね。

――遠藤さんはいかがですか?

遠藤:途中までは何時間っていうのは気にしていなかったんですけど、オファーをいただいてちょっと経ってから「3時間ぐらいあるんで」って言われて、「そうだ、インド映画って長いんだ」って。でも、歌のシーンがあるからそうでもないのかなと思ったらストーリー部分もしっかりあって。それで覚悟していたんですけど、小野さんも言っていたように全然飽きなくて……。なんていうんですかね、本当に見たことのないストーリーというか、映像というか。普通に早く観たいなと思える作品です。

■作品に入り込めるからノれる!

――『ロボット』はインド映画ですが、声をあてる際に勝手が違うなと感じたことはありますか?

遠藤:インド映画にあてるのは初めてだったので……映画館では観たことがあったんですけど、映画館で観た時にも思ったし、この『ロボット』でも思いましたけど、向こうの役者さんがさらにアテレコされているので、口の動きと音声がぴったりじゃないというか。その違和感というか、慣れない感じはありますけど、それほど苦ではないというか。英語にあてることが多いので、耳なじみがどうかなと思ったりはしたんですけど、でも、お話に入り込めるので、その辺はあまり気にならなかったです。

小野:うん、そうだね。収録入る前に他の現場で会ったときに綾ちゃんと話してて、「インドの言葉ってあてやすいのかなぁ?」ってちょっとだけ話したことがあって。なんでかっていうと、僕らは英語の作品にあてていくことが多いんですけど、たとえばたまにね、中国語とか韓国語とかにあてると、やっぱりその都度違うんですよ、ちょっと語尾に特徴があったりだとか……

遠藤:(口が)開いて終わっちゃうことが多いです。

小野:多いね。

遠藤:日本語は「~です」とか閉じ口で終わるけど、開き口で終わるから、どう合わせたらとか。

小野:あるある。ブレスの取り方とかもね、国によって違う。そこはある意味警戒してたというか。どういう風になるんだろうって。本当に未知だったんですよ、僕もインド映画初めてだったんで。ただ、やってみると、アフレコするときのやり方としては他の言語と同じで、むしろストーリーに乗っていけるか、入り込めるかっていう部分が結局重要で、その点においては、本当にずっとHAPPYで楽しく声をあてることができました。

――インド映画独特のノリみたいなものはありましたか?

小野:僕が感じたのは、これは「アジア圏のエンタテインメント」だと思いました。たとえば、カンフーものとか、ああいうコメディ+アクション的なリズムがやっぱりあって。あと、ヒロインが異常に美しいっていう。

遠藤:ほりが深い。

小野:そうなんだよ。どの格好しても美しいもんね。変な衣装を着たって美しいもん。

遠藤:衣装のパターンが多過ぎて。あの歌のシーンを取り除いたとしても衣装替えをよくされているなと。

小野:あれ? 質問なんでしたっけ。(笑)

――インド映画のノリですね。

小野:ノリに関しては、ヒロインの存在感とラジニカーントさんの……「スーパースターラジニカーント」って最初にテロップで出てくるんですけど、彼の存在感。その二人が変に遠慮することなく、しっかり引っ張っていってる。そこが清々しいというか。周りも乗りやすいんだろうなって思いますね。みんなで同じラインにバーンて立つんじゃなくて、2人がガッって引っ張っていくような感じがして。

――声もお二人が引っ張っていく感じで?

遠藤:いやもう、小野さんが二人分、ね?

小野:僕らの仕事はできあがったものに乗せていくっていう作業だから、やりやすいですよね。こんだけ突き抜けていると。

遠藤:引っ張ってもらって。楽しく「エイッ」て。

小野:そうだね。乗っかっていく感じがあるよね。

■「ワケわからんが面白い」ものに37億円な魅力

――最後に、作品全体の見どころについて教えてください。

小野:全体の見どころ、たくさんありまして(笑)。

遠藤:(笑)。

小野:総制作費が37億円ってうたい文句にあって、そこも見る前に期待させられる、ワクワクするワードだと思うんですけど、あともうひとつ「ワケわからんが面白い」ってキャッチコピーが書いてあって。今観て、演じてて思うことそのまんまだと思いました。ワケわからんが面白いことに37億円もつぎ込んでるっていう(笑)。その、理屈じゃないけれど、とにかく笑える、HAPPYになれるっていうところが、この作品の魅力なのかなと思っています。理屈じゃないって言っちゃったけど、遠藤くんはどう?(笑)

遠藤:そうだねぇ(笑)。今までのインド映画のイメージは、やっぱり本当に楽しくて、結局最後踊ってワーッ(って終わる)みたいな。でも、これは最後に踊るっていうのがないですよね。

小野:そうだね。たしかに。

遠藤:それもちょっと、自分的には意外だったんですけど、他にも驚く事がいっぱいあって。スッキリ「ワーッ」って思える作品なのかなと思って観たら、ジーンとくるというか、切ないというか、そういう要素がけっこうあったので、インド映画のイメージが、今まで自分が持っていたものとだいぶ変わったなという印象でした。

小野:そうだね。新しい作品のはずなんだけど、どこか昔ながらの心に残る部分があるっていう。ものすごい不思議だけど記憶に残る作品だよね。

遠藤:素敵な作品ですよね。


 小野大輔さんと遠藤綾さんの日本語吹替版『ロボット 完全版』は、CSファミリー劇場にて2016年4月23日(土)21:00~24:05放送。世界興行収入100億円超のインド映画をぜひお楽しみください。

■『ロボット 完全版』(日本語吹替版)
2016年4月23日(土)21:00~24:05
CSファミリー劇場
【監督】シャンカール
【出演】ラジニカーント/アイシュワリヤー・ラーイほか
【声の出演】小野大輔(バシー博士/チッティ※二役)/遠藤綾(サナ)ほか
【あらすじ】
天才学者バシー博士が生み出した、二足歩行型の高性能ロボット。あらゆる知識を吸収して応用するスキルを備えたそれは、人類の未来を切り開く偉大な発明となるはずだった……。
制作費37億円を費やし、ハリウッド最高峰のVFXスタッフが手掛けた衝撃のアクション大作。
小野大輔さん&遠藤綾さんが主役の男女を演じる日本語吹替版は今回のファミ劇での放送が日本初放送です。(2010年・インド・177分)

[文・笈川 采女]


>>ファミリー劇場
>>映画『ロボット』日本語公式サイト


(c)2010 SUN PICTURES,ALL RIGHTS RESERVED.

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