次にやりたい演目は「ギャルゲーみたいな」あの古典落語! ドラマCD『せんおち-千早大学落語研究会物語-』会一太郎さんにインタビュー
2013年10月に発表された「声優で落語くじ」。そのA賞には、声優の小野坂昌也さん、中井和哉さん、三浦祥朗さん、島﨑信長さん、会一太郎さんが“落研に所属する大学生”としてドラマ&落語に挑戦しているドラマCDが展開されました。
そのA賞として用意されていた「ドラマCD&落語CD」全5種をひとつにまとめ、なおかつ新録も収録し、このたび単独リリースが決定! 「再録落語CD『せんおち-千早大学落語研究会物語-』」として発売されます。その新録部分を担当する、八方亭美人役:会一太郎さんに、今回の収録の感想などをじっくり伺ってきましたので、本記事にてご紹介します。落語家としてのキャリアも持つ、会さんならではの観点に注目です!
■ 「“落語家にも声優にもできない壺算”なんだろうなと思ってます」
――まずは、知らない人に向けて「声優で落語くじ」の話を改めて。今から約3年前の話にはなりますが……?
会一太郎さん(八方亭美人役/以下、会):当時印象的だったのは、小野坂さんがブースの外で「お前らアホちゃうか!!」って言ってたことですね。僕は、落語家としても語れるような身分じゃないんですけど、親は円楽(三遊亭円楽さん)だし頼れそうなスペックじゃないですか。だから、落語を収録するときにスタッフさんが「(ほかの4人のキャストの落語で)何か手直ししたいところがあれば……」とか言うわけですよ。そのたびに無茶な!!って思ってたんです(笑)。小野坂さんは、そういう事の重大さをわかっていてくれていたんですよね。だからそう叫んだと。「よく言ってくれた!」と思ったのを憶えてます。
――ともあれ、みなさんの落語はとっても軽妙で、聴いていて純粋に楽しかったです。
会:4人とも、僕ら(落語家)の切り口とはまったく違う切り口でやっていましたね。それは僕が説明できるものではないんですけど、“知ってる話でも面白くできている”というのはやっぱりすごい! 嫉妬してはいけないんだろうけど、すごいと同時になんだこれ・・・怖いっ!と思ってました。この人たちが落語っていうコンテンツを読むと、こんなふうになるんだ!と。あの日はすごく緊張していたんですけど、4人分の良い燃料をいただいて収録させてもらいました。
――それを経て、今回の収録となりました。前回は現場でほかのキャストさんとも顔を合わせる事があったようですが、今回はおひとりでしたね。
会:孤独との戦いでしたね。とくに落語はねぇ……こんなに疲れるとは思わなかったです! ありがたいことにドラマCDを録る機会があるので、ドラマパートに関してはさほどイレギュラーではないんですよ。でも落語は……! 早々にバラしちゃいますけど、2回通して録りましたからね。「もう1回良いですか?」なんて言って。結果、最後に録ったキャストトークも、多少混乱してた気がします(笑)。
――新録された落語の演目は、「壺算」とのこと。これは「甕を安く手に入れるために、瀬戸物屋の商人を巧妙に言いくるめて勘定間違いをさせる」という、登場人物の会話が大きな鍵を握る噺ですね。
会:僕は持ってないんで高座でかけたことはないんですけど、結構スピード感あるし、内容的にお客さんも自分も混乱する噺なんですよね。
――勘定のくだりは「商人を騙そうとしてるのはわかるけど、どこで勘定間違いをしたんだろう?」って思いますよね。確かにすごく混乱します。しかも高座でかけるのと違って、役を通して演じるという難しさもありました。
会:そうなんですよ。そもそも、落語って声色を変えたりはしなくて。了見(芝居心)で勝手に変わっていくから、意図的に声を作ることはしないんですよね。これは声優にもいえることですけど。でも、この作品に関しては僕が八方亭美人(以下、美人)という役になり「壺算」の登場人物をやるっていう、二段階のフィルターがあって難易度がすごく高い。果たして8年目の俺ができてるのか!?という不安を抱きながらの収録でした。だから、“僕”がただ落語をやってただけになっていないかなぁ、という気持ちはやっぱりありますね。
――いやいや、収録も拝見しましたけど流石でしたよ!
会:ならよかったです(笑)。個人的に言うと、今回の「壺算」は“落語家にも声優にもできない壺算”なんだろうなと思ってます。じゃないとやってらんない!っていうのもありますけど(笑)、自分の中ではそういう風に落としこんでましたね。
――会さんにしか出せない味ですね! ちなみに、「壺算」をやると知ったときの心境は?
会:「マジか!」ですね。個人的には好きな噺のひとつなんですけど、美人のキャラクター的に「たらちね」とか「宮戸川」みたいな、色っぽい話のほうがやりやすそうだなと思ってたんですよね。だから、さっき話したような不安がつきまとったんです。でも、大ネタをやるとなったらもっと困っていたと思うから、ちょうど良かったのかもしれない。
――じゃあ、次があるとしたら「たらちね」「宮戸川」が候補ですね。
会:とくに「宮戸川」は、僕が二つ目になってはじめての高座でかけた思い出のネタでもあるんです。幼なじみの童貞ボーイとやり手の女の子が主人公なんですけど、展開がギャルゲーみたいなんですよ(笑)。で、「腰をギュッと抱く」ってところでオチなんですけど、そういうのも色っぽいし。美人でやったらどうなるかなぁって思いますね。
――確かに! ファンの方もより楽しんで聴けそうですね。あとは、会さんが「壺算」を高座にかける日も楽しみにしています。
会:うーん、どうだろうなぁ(と、難しい顔)。あ、でも前回の「親子酒」は、あのあと台本を基にして何回か高座にかけてるんですよ。師匠は「仕事でやって金もらったんだろ? いいじゃんやっちまえ!」って言ってました。師匠に教わらず、声優として仕事でやった噺を逆輸入したのははじめてだったなぁ。
――なんと、すでにやっていたんですね! しかもこの作品の台本を基にして。
会:「壺算」は、今回の収録のときに計ったら、オチまで17分くらいだったんですよ。ちょっと刈り込めば15〜16分くらいになるでしょ? 高座にかけるにはちょうどいいんですよね。だから、台本はとっておきます。しかもCDがあるとおぼえやすいし。
――いつかやってくださるのを待ってます……!! では次に、美人さんについても伺いましょう。彼が落語家の道に進むとしたら、“先輩”としてどんなアドバイスをしたいですか?
会:ならないで! ならないでお願い!!
――そもそもならないで!と(笑)。
会:美人には、出版社で雑誌の編集をやってる“ちょっと落語好きなあんちゃん”ぐらいでいてほしいです。落語家になったとしても、性格的に大成できるタイプではないんですよ。
――落語家としての腕はあっても?
会:美人はいろんなことをマジメに考え過ぎちゃうタイプだと思うんですよ。個人的にはそういうヤツは向いてない気がします。 (琴霜家)龍念さんみたいな人のが多い気がします、飄々とできるけど、根は真面目な人。
でも落語界はクリーンなので、そういう面ではおすすめしたいですね。二つ目からはツラいんですけど、前座の4年間は一応食えるんですよ。お金(ギャラ)は取っ払いだし、宿とゴハンつきだし。売れてる師匠についていれば絶対に仕事ありますからね。
――美人さんにはすすめられないけども。
会:これ読んでる方で興味ある人がいたらぜひ。
――(笑)。では最後に、今後この作品でやってみたいことを伺いたいです。例えば、キャストが登壇するイベントとか。
会:現実的に考えると、イベントで大喜利はできそうだなって思います。あのメンツの大喜利は単純に見てみたいですよね! 司会には本物の噺家さんに来てもらって……あー、楽しそうだなぁ。あとは実際に落語をやるのも面白いと思うんですけど、カロリー高いんで。イベントに来てくれた方に寄席のタダ券を配りましょうか! イベントの後にでも、行ってもらえたらうれしいです。
――なんとも斬新ですが(笑)、落語にどっぷり浸れそうですね。実現することを祈ってます!
[取材&文・松本まゆげ]
■商品情報
【再録落語CD「せんおち-千早大学落語研究会物語-」収録トラック】
壱枚目(ドラマ)
一. 落研部室にて…前編
二. 琴霜家 龍念 と 八方亭 美人
三. 笑津亭 朝大 と 八方亭 美人
四. 跡継家 喜楽 と 八方亭 美人
五. 振舞亭 愛想 と 八方亭 美人
六. 八方亭 美人 と 琴霜家 龍念 と 笑津亭 朝大 と 跡継家 喜楽 と 振舞亭 愛想
七. 落研部室にて…後編
弐枚目(落語)
一. 琴霜家 龍念(CV.小野坂昌也)/[演目:酢豆腐]
二. 笑津亭 朝大(CV.中井和哉)/[演目:寿限無]
三. 跡継家 喜楽(CV.三浦祥朗)/[演目:時蕎麦]
四. 振舞亭 愛想(CV.島﨑信長)/[演目:饅頭怖い]
五. 八方亭 美人(CV.会一太郎)/[演目:親子酒]
【CD購入 アニメイトオリジナル特典】
特典CD[八方亭 美人(CV.会一太郎)の録りおろし落語「壺算」&収録後コメントを収録]
【CD&ノベル連動購入 アニメイトオリジナル特典】
四コマ漫画小冊子[同タイトルのCDとノベルを併せてご購入の方にプレゼント!山口先生原案&上原先生描き下ろし]
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