地元の温泉地に人気声優が来るかも? 発足したばかりの温泉擬人化プロジェクト「温泉むすめ」仕掛け人にインタビュー
2016年11月4日に突如発表されたクロスメディアプロジェクト「温泉むすめ」。日本全国の温泉地をモチーフにしたキャラクターたちがアイドル活動をすることで、地方を盛り上げ、さらに日本の温泉の素晴らしさを世界に発信するという壮大な野望を持つプロジェクトとなっています。
この企画がどのように生まれ、進んでいるか。仕掛け人である株式会社エンバウンドの生方さん、橋本さんに伺いました!
――公式サイトには地方の温泉をモチーフにしたキャラクターたちがアイドル活動をするというイントロダクションがありますが、詳しく教えてください。
橋本さん(以下、橋本):そもそもプロジェクトの基本的な世界観があって、スクナヒコという温泉の神様がおり、3,000人以上いる"温泉むすめ"たちに全国の温泉地を盛り上げるようミッションを下した、と。その盛り上げる手段として、温泉と同じように人々に「笑顔」と「癒し」を与えるために、草津を中心とした温泉むすめ9人がアイドル活動を始めたという物語です。
――アイドルや地域との連動など、最近のアニメ界隈のトレンドをうまく混ぜた設定に感じました。参考にされたコンテンツは?
生方さん(以下、生方):やはり「ラブライブ!」はすごく参考にさせてもらいました。キャラクターの性格や歌、設定……全部がよく考えられていて、今のアイドルアニメのひとつの完成形だと思います。たとえば9人という人数は、まずセンターを設けるために、奇数はマストになります。ただ3人や5人では少ないので、3人×3組でユニットを作りやすい9人にしているんだろうとか、本当に多くを学ばせて頂きました。
橋本:全国各地に万遍なくキャラクターを作るという意味でも9人になりました。ただ参考にしていますが、「ラブライブ!」と「アイドルマスター」は唯一無二のIPであり、どうやっても超えられないので、目標は高く3番手ぐらいを狙っていきたいです(笑)。ほかには地域との連動という点では「ガールズ&パンツァー」や「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」を参考にしています。
生方:東京での話になりますが、「ラブライブ!」も神田明神と密接に関わっていますよね。ファンが聖地となった舞台を訪れて絵馬を書いたり、神田明神側も「ラブライブ!」とのコラボに積極的で、自分でも行ってみて良い関係値だなと感じました。
生方:「ガールズ&パンツァー」の他にも「普通の女子校生が【ろこどる】やってみた。」も長いですよね。「ろこどる」の舞台・流川のモデルとなったのは流山市ですが、自分はすぐ隣の柏市に住んでいるので、今でも人気が継続しているのを感じます。アニメが終わって2年も経つのに展開を途切れさせず、ファンに愛されていますよね。
地方出身&地方在住の一流絵師たちによって生み出されるむすめたち
――キャラクターについて伺います。草津温泉をモチーフにした草津 結衣奈(くさつ ゆいな)が発表されました。今後はどれくらいのスパンで新しいキャラクターが発表されるのでしょうか?
生方:2~3週にひとりぐらいの間隔で考えています。
――草津のキャラクター原案として人気イラストレーターの紅緒さんがクレジットされていましたが、今後発表されるキャラクターのイラストレーターは異なるのでしょうか?
橋本:はい。今回は地方との連動をテーマに考えていますので、地方出身の方や地方在住の方を中心に、世界的に通用するクリエイターに声をかけました。たとえば、イラストレーターさんの中に福島県にお住まいの方がおりまして、お話を聞くと震災の影響もあって観光客だけでなく、人そのものがめっきり減っているそうです。「僕がイラストを描くことで、また地方に人が来てくれるようになったらうれしい」と快諾して下さって、とてもありがたく感じたと同時に、勝手にですがどこか同じ志を感じたりしました。
――各イラストレーターには、どういったオーダーを出されたのでしょうか?
生方:キャラクター設定の詳細と、こちらの希望する髪型や髪色などのスタイルを送りました。1回あがってきたものに「衣装の細部はこうしてください」「アクセサリはこうしてください」と複数回リテイクの対応をしてもらって……かなり細かく要望は出しましたね。
――草津の声優さんは、「NEW GAME!」の涼風青葉や「アイカツ!」の黒沢凛などを演じているの高田憂希さんです。ほかの温泉むすめの声優さんも同じようなセレクトですか?
橋本:オーディションには非常の多くの方に集まってもらいましたが、実績よりもポテンシャルを重視しており、将来性を見極めてセレクトさせていただきました。
――アイドルコンテンツということは、歌を歌って、CDを出して、ライブやコンサートをすることも想定されていると思います。
生方:そうですね。やっていきたいなと思っています。
――楽曲はどういったコンセプトでしょうか? たとえば「Tokyo 7th シスターズ」だとボカロPを起用したクラブサウンド寄りですし、「BanG Dream!」だと声優さん自身が演奏するバンドサウンドなど、それぞれコンセプトがあります。
橋本:そこは今後提携する音楽レーベルさん次第で方向性が定まってくると思っています。ただ、「ナナシス」のようなお洒落なクラブサウンドというよりは、「ラブライブ!」と「アイドルマスター」の中間くらいの王道アイドルソングを目指したいと思っています。
生方:でも、ユニットソングやある種冒険することをテーマにした楽曲では色々なジャンルやテイストに挑戦していきたいですね。
橋本:「温泉むすめ」ゆえに、和楽器を取り入れたりするかもしれません。あとは温泉宿にある大きな宴会場で、皆さん浴衣姿で一体感のあるライブをしたりするのも楽しいだろうなと思っています。お酒を飲みながら、胡座をかいてゆったりと観れるようなライブ。出来たら是非やりたいですね。
各温泉地やファンと一緒に盛り上げていく「温泉むすめ」
――先ほどの話でも少しありましたが、アニメ化は目指しますか?
橋本:あくまで最終的には地域との連動が目標ですが、その一環としてアニメ化ももちろん目指します。
生方:ただ、音楽が出たあと、アニメの前にコミカライズやノベライズといった展開が先になるでしょうね。やはりアニメは制作が決まっても、作るのにカロリーと時間が必要ですから。
――ゲームも相性がよさそうです。アイドルものではリズムゲームが定番ですが……。
橋本:まだ何も決まっていないですが、リズムゲームは難しいかと感じています。今の市場がほぼ飽和状態ですし。
――コロプラの作品や「ingress」、最近だと「Pokémon GO」といった位置情報を扱ったゲームとは相性がよさそうです。
橋本:自分がやりたいと思っているのは「桃太郎電鉄」のようなすごろくゲームですね。位置情報と連動して、温泉地や観光地を巡りながら特産や名産を買い占めたりとか、特定の温泉地に行かないと聴けない"限定ボイスや楽曲"などのコンテンツがあったり。
生方:今後の展開の話なら、「温泉むすめ」の男性バージョンもやるつもりです。その名も「温泉男子(仮)」。まだ「むすめ」自体がプロジェクトを発表したばかりですけど(笑)。男性声優だともしかしたら温泉にも入ってもらえるかもしれないので、色々と展開も考えています。
――「温泉むすめ」はグッズも色々と展開できそうですね。
生方:お酒や温泉饅頭など、地域の特産などのコラボは積極的にやっていきたいです。入浴剤やタオル、桶は作ります!(笑)
橋本:その辺のキャラクターの使用や権利関係はある程度フレキシブルにしたいですね。たとえば草津のキャラクターを使うなら、群馬県の企業はロイヤリティーを低めにさせていただくとか。そういったことは考えています。
――温泉を通じて、とても夢が広がりますね。最後に、読者にメッセージをお願いします。
生方:我々エンバウンドとしては日本の良さを海外に伝えたいという理念があって、この「温泉むすめ」というプロジェクトがその第1弾となります。これを盛り上げるためには、各温泉地の方々やファンと一緒に楽しんで作っていきたいと思っています。公式サイトにお問い合わせフォームがありますので、我々がご協力できることがあれば、お気軽に問い合わせください。
橋本:まだ9人の内、1人を発表しただけですが、いずれは全国に温泉むすめを作りたいですし、もっと言うと、ひとつの県に複数の温泉地があるのでそこもカバーしたいです。「温泉むすめ」をきっかけに温泉地が今よりも、もっともっと活気と笑顔にあふれ、温泉むすめたちを演じる声優さんが温泉地に行って、その地域がさらに盛り上がって……という風になればいいですね。
――そんな未来を楽しみにしています! ありがとうございました。
今、日本全国には数千体以上"ゆるキャラ"が存在していますが、せっかく地元のためにとキャラクターを生みだしてもあまり目立つことなく、認知されることなく、消えていくキャラクターがとても多いことをご存じでしょうか。
しかし、今回お話を聞いた「温泉むすめ」は地元や馴染みのある温泉地の名前を冠したキャラクターたちが世界に向けて色々なメディアで活躍し、さらに温泉地に人気の声優が来る可能性があれば……皆さんも、応援したくなるのではないでしょうか?
「温泉むすめ」はそんなキャラクターをまずは9人、そしていずれは全国の温泉地に生み出そうとしています。コミカライズやノベライズだけでなく、「アニメ化も狙っています」と語り、王道のメディア展開を歩もうとしている本プロジェクト。自分が馴染みのある地域にどんな温泉むすめが生まれるのか、続報を期待して待ちましょう!
[取材・文/はるのおと]
>>「温泉むすめ」公式サイト
>>「温泉むすめ」公式ツイッター(@onsen_musume_jp)