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TVアニメ『アプモン』決め台詞の生まれ方を加藤陽一さんが語る

アニメ『デジモンユニバース アプリモンスターズ』シリーズ構成・加藤陽一さんが語る、キャラクターの決め台詞はこうして生まれる

 テレビ東京系6局ネットにて毎週土曜朝7時から放送中のTVアニメ『デジモンユニバース アプリモンスターズ』(略称、アプモン)。1999年から続く『デジモンアドベンチャー』シリーズの系譜を継ぐ最新作として、アプリなどをテーマにした様々なモンスター“アプモン”が登場する物語が描かれています。

 本作にシリーズ構成として参加している加藤陽一さんは、大人気アニメ『妖怪ウォッチ』や『アイカツ!』などでもシリーズ構成を担当されています。今回インタビューでは、『アプモン』についてのお話に加えて、「オケオケオッケー」(アイカツ!/冴草きい)や「ひかえめに言ってサイコー超えてる!」(ドリフェス!/三神遙人))など、加藤さんが生み出してきた個性的な台詞についてもお話を伺いました。

■加藤陽一(かとうよういち) プロフィール
 脚本家
『妖怪ウォッチ』『アイカツ!』『デュエルマスターズシリーズ』『モンスターストライク』など多くのTVアニメ、映画で脚本やシリーズ構成を担当。最新作は『デジモンユニバース アプリモンスターズ』のほか、『タイムボカン24』『ドリフェス!』など。


デジモンの良い所は「ちょっと先の未来を見せる」こと

――まずはじめに、加藤さんが本作に参加することとなった経緯を教えてください。

加藤陽一さん(以下、加藤):バンダイさんがアプリモンスターズの玩具の企画を立ち上げた初期の段階でお声がけいただいて、玩具やそれに連動したアニメをどのように作るかの企画を一緒に考えました。

それで人工知能をテーマにしたお話が良いんじゃないかと考えて、ひとまず企画はできあがって。そのあと東映アニメーションさんからもお声がけ頂いてアニメに参加したという流れですね。

――最初に企画を聞いた時の感想はいかがでしたか。

加藤:面白いと思いました。アプリがそれぞれモンスターだっていう事自体が面白くて、じゃあどんな話にすれば良いかなと考えました。“2045年問題”という2045年に人工知能が人間の知能を上回るという予測があって、その事と絡めてお話を作ったら面白いんじゃないかなと思い、よりアイデアが広がりましたね。

――10年前は考えられませんでしたが、今はスマホをお子さんにも渡す時代というのもあって、それは子供にとっても身近な物だからという発想なのでしょうか。

加藤:そうですね。最近はスマホやタブレットやアプリがお子さんにとって身近になってきていますからね。身近なので、デジタルな世界を描く際の入口としてもちょうど良い。デジモンシリーズ自体の大事なポイントは、子供たちにちょっと先の未来を見せてワクワクしてもらうっことかなと思っていて。

これまでの『デジモン』作品で言うと、ネットの世界であるとか、ファイルやサーバーというのは、あの当時それほど身近では無かったじゃないですか。「その現代版ってなんだろう」って考えた時、今回は人工知能なんですが、アプリという身近なものを入口にして、そこに入っていく感じです。

――作品を視聴させて頂いた感覚としては、アプリがテーマという事もありデジモンシリーズと言うよりも新機軸の作品という印象を受けたのですが、作り手としてはデジモンシリーズから引き継いでいる要素はどんなところにあるのでしょうか?

加藤:やっぱりデジモンの良さであるちょっと先の未来を感じながらワクワクドキドキ、という感覚は引き継ぎながらも、今の面白い事、今の視聴者に楽しんでいただける事を一番大事にしていこうという考えでやっているので、その結果ということですかね。

――時代感なども考慮した結果こうなったということですね。

加藤:そうですね。人工知能は今、毎日ニュースとして出てくるようなアツい話題ですしね。

――加藤さんは複数の昨品を並行して制作されていると思うんですが、共通しているのが基本お子さんがメインターゲットでありつつ、親も一緒に楽しめるアニメーションになぅていることだと思うんです。その際にお話を作る上で気をつけるところなどありますか。

加藤:まずやっぱりお子さんに楽しんでもらうっていうことですよね。それが第一です。作品としてもそれが第一ですし、親御さんもアニメを楽しんでいるお子さんを見るのがまず楽しいんじゃないかなと思いますね。笑ったり、キャラのマネをしたり、歌ったり、踊ったりしているお子さんを見る。そんな風にお子さんの背中越しにテレビを観てくださっている。んだったら、親御さんも楽しいものだと、家族で盛り上がれてより良いなと思っています。

大人にも楽しんでもらう時に必要だと思っていることの1つは、キャラクターの心情の流れがアニメ的になり過ぎないようにということです。アニメなので突飛な出来事は沢山起きるんですけど、心情の流れが自然じゃないのが「子供が見るアニメだね」となる1番のポイントだと思うんですよね。心が離れてしまうというか。

もう1つは、「面白いネタだけど子供に分からなそうだからやめる」という選択をあまりしない事が、大人も楽しめる理由に繋がっているのかなと思います。「今、この作品で描いたら1番面白いネタってなんだろう」とその回ごとに考えているので、さほど子供らしいネタばかりを選ぼうと思っていないところがあるんですよね。たとえば、『アプモン』だったらナビのアプリが悪さをして、利用者が迷子になってしまうというネタがあります。

それをやろうとした時、「ナビのアプリを子供は使わないだろうから、やめたほうが良いんじゃないか」っていう事も、子供向けアニメを作っている上では出てくる判断基準だと思うんです。でも、そうは考えずに、題材として面白くて作品に適していたらやる。ただし、子供にも分かるようにきちんと作ろうと考えています。


思わず言いたい決め台詞の生まれ方

――加藤さんが考えるキャラクターたちの決め台詞は印象的なものが多いと思いますが、考える際にどのような考えの工程を経て生まれているんですか。

加藤:まずはキャラクターのラインナップが出揃ってきた頃に「この子には決め台詞があったほうが良いよね」っていうのを決めるというところから始めます。あとは台詞を絞り出すのですが、自分なりの判断基準はいろいろありますね。

例えばガッチモンはこの作品のメインのキャラクターなので、他の作品との違いを示すためにも“検索”という言葉が入っていた方が良いだろうとか、勢いのある言葉にして啖呵を切れるようにした方がいいだろうとか。

ミュージモンの場合は、虎次郎というバディと仲が良くてノリが良い性格なので、2人で掛け合うように「ノレる? ノレない? 超ノレる!」っていうセリフなんです。それは仲の良さも示す為に掛け合いにしようとか、その都度、自分で条件を決めて考えています。あとはSNSでなるべく使ってもらえるようなセリフにしようとか、そういうことを考えながら作っていますね。

――それこそ、『アイカツ!』の“オケオケオッケー”など口馴染みが良いフレーズも多いですが、そういう言葉のリズムなども考えられていたりするのでしょうか。

加藤:言葉遊びみたいなことも含めて意識しています。あとキャストが集まった時に、自分のキャラクターの決めゼリフを言ったりしているのを見ると、作って良かったなと思いますね。

――メインキャラクターであるガッチモンを検索アプリのアプリモンスターにしようとしたのはなぜですか。

加藤:これは最初からバンダイさんが決めていましたね。やっぱり検索って誰もが必ずやることですから、メインのキャラクターとしてふさわしいという考えだと思います。そのあとで人工知能をあつかうお話にしようと考えたのですが、人工知能と検索って切り離せないものだということを知りました。人工知能の教科書があったら必ず最初に検索の事が載っている、と言ってもいいくらいだそうなんです。

ガッチモンを作った後に人工知能というテーマを決めて、振り返ってみたら人工知能と検索って凄く密接な関係だなという話です(笑)。

――では『アプモン』のシナリオを統括する上で、統一している部分などはどのような部分ですか。

加藤:とにかく分かりやすく入れる様にアニメで起こっている事が直感的に分かるシナリオっていうのは気をつけていますね。何が起きているか分からない時間が発生することを避けています。

今回の場合はアプリとかスマホが子供たちに身近な物になっているとはいえ、説明はした方が良いって言うような事がいっぱいあるんですよ。ネットの仕組みであったり、どんなアプリであるのかという事とかも含めて。

「なんだろうこれ」と思った後に「実はこうでした」っていうシナリオもあると思うんですけど、何が起きているか分からない時間があるとその分、視聴者の方が離れてしまうので、それを無くすことは徹底しています。

――本作を制作する際にどのようなリサーチをされたのでしょうか。

加藤:今回の場合は本だったりネットの記事を読んだりというのが第一ですね。もうひとつは人工知能の専門家・三宅陽一郎さんにお話をうかがっています。レクチャーを受けて、そこで教えて頂いた事をどんどんシナリオに取り入れています。

――それはレクチャーを受けるという感じですか、それとも疑問を投げかけているのでしょうか。

加藤:どっちもですね。結構時間をかけて気になることを伺ったりしていますね。

――子供向けの作品ということで、作中で子供たちに対して伝えたいメッセージなどはあったりするんですか。

加藤:作品を観てくださった方が前向きになるきっかけになったら良いなというのは常にどの作品にも思っていて、それは『アプモン』でも同じですね。アニメを世の中に出している意味として、日常生活に何らかのプラスが少しでもあればいいなとは思っています。たとえば、第1話の「既読スルー」で敵を倒すというネタも、そういう考えからです。いやなことは気にしすぎない方が前向きに人生を送れるんじゃないかという。

また、アプモンならではの最終的なメッセージもあります。それは優しさをもっていろいろなことを考えたいね、ということとか。ポジティブなこともネガティブなことも言われている人工知能をどうとらえるか、といったあたりのことです。

――近年ですと小学校などでもネットマナーについての勉強なども行われているので、僕自身勝手にアプリというテーマを通じてそういうマナー的な問題にも触れていくのかなと想像していて。でも第1話で「既読スルー」が登場してビックリしたのですが、今のお話を聞いて腑に落ちました。

加藤:それこそ第1話が終わった後に「ああいうネット教育的な事をやっていくんですね」という感想も頂いたんですが、そういう発想ありきではありません。「既読スルー」ってネットでの事でありながら、日常生活にも当てはまることかなと。他人から嫌なことを言われた時にそれだけに囚われているんじゃなくて、前向きな気持ちを持ってみたら良いんじゃないかという。ネット教育っぽい事を積極的にやっていこうとは思っていませんが、機会がある時はなにか参考になる様な事を入れられたら良いなと思っています。

――最後に加藤さん自身が思う本作の魅力というのはどういったところになりますか。

加藤:今の時代に観るのにピッタリのアニメだというのが最大の魅力かなと思っています。アプリそのものであったり、人工知能が熱く取り上げられている時代です。例えば人工知能が人間の仕事を奪うんじゃないかとニュースになっていたりする。

そういう時に一年間を通して人工知能と人間の関係ってなんだろうっていう事まで面白く見られるアニメは他にはないかなと思いますし、そういうテーマを選んだからこそ出来ることをやっていきます。すごく熱くて泣ける話になっていくので、最後まで楽しみに見て頂きたいなと思います。

[文・撮影/イソベアラタ]


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デジモンユニバース アプリモンスターズ公式チャンネル

>>「デジモンユニバース アプリモンスターズ」公式サイト
>>「デジモンユニバース アプリモンスターズ」公式YouTubeチャンネル
>>「デジモンユニバース アプリモンスターズ」公式ツイッター(@appmon_official)
>>アプモンデータラボ(バンダイ公式ホームページ)
>>ゲーム「デジモンユニバース アプリモンスターズ」公式サイト

 
作品情報

【放送情報】
テレビ東京系6局ネットにて毎週土曜 あさ7時より放送!
BSジャパンにて毎週水曜 夕方5時より放送!

【STAFF】
シリーズディレクター:古賀豪
シリーズ構成:加藤陽一
副シリーズ構成:樋口達人
キャラクターデザイン・総作画監督:大貫健一 ほか

【CAST】
内山夕実、菊池こころ、高木渉 ほか

(C)本郷あきよし・アプモンプロジェクト・テレビ東京
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