夏アニメ『AIの遺電子』連載インタビュー第1回:OPテーマアーティスト/Aile The Shota|「境界線に愛はない」は、現代を生きる僕たちにとっても大事な言葉
7月7日より、山田胡瓜さん原作のTVアニメ『AIの遺電子』が、MBS、TBS、BS-TBS“アニメイズム”枠ほかにてスタートしました。
本作の舞台となるのは、AIが高度に発達した22世紀後半。「産業AI」とは比べものにならない知性があり、人権を持った「ヒューマノイド」が受け入れられた世界で、ヒューマノイドを治す医者・須堂光がヒトとAIの共存がもたらした「新たな病」に向き合っていきます。
アニメイトタイムズでは、本作の魅力をさらに掘り下げるリレー連載がスタート! 第1回は、オープニングテーマを担当するAile The Shotaさん。原作をもとに書き下ろされた「No Frontier」の制作秘話をうかがいました。
アーティストとして、人間として、AIとどう向き合っていくか
――Aile The Shotaさんにとって、『AIの遺電子』は初のアニメタイアップ作品になるんですよね?
Aile The Shota:そうですね。少年時代からずっとアニメ、漫画が大好きだったので、Aile The Shotaとして音楽活動を始め、1年経たないうちにオファーをいただけたのは驚きでもあり、喜びでもありました。
――アニメや漫画はずっと触れてきたものだったんですね。
Aile The Shota:特に去年はたくさんアニメを見ていたこともあって、アニメのオープニング主題歌には憧れがあったんです(笑)。ただ夢が現実になった瞬間は、ちょっとしたプレッシャーもあって。やっぱり作品との結びつきは大事ですし、原作のファンの方にも納得してもらえるものにしたかったので。
――『AIの遺電子』の原作をご覧になった感想はいかがでしたか?
Aile The Shota:ここまで思考を刺激される漫画は初めてでした。僕の知らない漫画の世界が広がっていて、あっという間に作品に引き込まれました。僕自身、AIというものに興味があるので、その点で考えるきっかけをいただけたのもありがたかったですね。アーティストとして、人間として、AIとどう向き合っていくか。これは僕だけではなく、いろいろな人が考えなければならないことだと思いますし、この作品がこの時代にアニメ化されたことには大きな意味があると思います。
――確かに、読者に問いかけてくるような作品ですよね。
Aile The Shota:どのエピソードも明確な答えのない終わり方が多いんですよね。原作の第1話もいくつもの解釈が成り立つような余白のある結末で、自分自身で答えを導き出す必要がある。ここからどんなふうに話が進んで、どんな結末を迎えるのか。想像力をかき立てられました。
――楽曲制作に取りかかる際、作品の世界観やメッセージをどのように楽曲に落とし込もうと?
Aile The Shota:今までの楽曲制作は、基本的に自分というものを軸にしていて、自分から生まれた自分のことを歌うというやり方が中心でした。今回は『AIの遺電子』のオープニング主題歌なので、どうやって作品と僕をリンクさせるか、作品と音を繋げるかをまず考えて。それで近未来を連想させるような音の質感を使ってみたり、ボーカルにはオートチューンのような“人間らしくない”加工を取り入れてみたりしたんです。
音のイメージは早い段階で浮かびましたが、歌詞のほうは……原作を読み進めていって主人公の須堂光の考え方が腑に落ちたのが大きかったです。
――それはどういう考え方なのでしょうか?
Aile The Shota:「境界線に愛はない」という考え方ですね。これはまさに須堂を見て浮かんだ言葉でした。その価値観を以て困っているヒトやヒューマノイドに寄り添っていく。ぱっと見は言葉数が少なかったり、クールな雰囲気を漂わせていたりしますが、本当に愛のある人なんだろうなと思って。楽曲の中では愛を伝える主人公の側面を強く出すようにしました。
――Aile The Shotaさんと須堂の2つの視点が入るようなイメージですか?
Aile The Shota:そうですね。主人公の須堂光と僕自身の視点を半々にして楽曲に人格を持たせるようにしています。僕の視点だけが楽曲の人格になるのではなく、須堂とも僕とも取れる視点で書いていく。須堂はこういう視点で世界を、ヒトを、ヒューマノイドを見ているんだろうなって。そのアプローチが作品に近づくきっかけになりました。
――「No Frontier」というタイトルはどのタイミングで浮かんだんですか?
Aile The Shota:普段はあまりないんですけど、タイトル先行で歌詞を書いたほうがいい楽曲だと思ったので、どうすれば歌詞を書き進められるかを考え、「境界線に愛はない」というところからこのタイトルが生まれました。
――「境界線に愛はない」という言葉は、それぐらい重要なキーワードだったんですね。
Aile The Shota:大きかったですね。現代を生きる僕たちにとっても大事な言葉だと思うんです。ジャンルでもなんでもそうですけど、どうしても何かに分類し、境界線を引いて考えてしまう。でも「そこに愛はないよ」という考え方は、いろいろ場面で重要になってくるので、聴いてくれる方それぞれの“境界線”を連想してもらえたら嬉しいですね。
――現実でも、人と人の間に境界線ができて、分断されて……ということがありますからね。
Aile The Shota:そうなんです。現実でもそういう状況が存在するので、僕もこのテーマを歌うときはすごく力が入りましたし、作品に背中を押してもらい、作品と一緒に歌わせてもらったことでより強いメッセージになったと思います。