アニメ『ゾンビランドサガ リベンジ』シリーズ構成 村越 繁さん✕脚本 𠮷村清子さんインタビュー|2期はフランシュシュと外部の人間が接し、どう進んでいくのかが物語の軸の1つ【SAGA_R:08】
8話は時代考証も入れつつ、当時なかったこともあえて使用!?
――8話の制作秘話もお聞かせください。
𠮷村:8話に関しては資料が少ないのが大変で。佐賀城の博物館の方に取材したりしたんですけど、この時期は写真もないし、当時の佐賀についてはどこの資料を見てもだいたい3~4行で片付けられていて。逆に何もないから自由に作ってもいいのかなと(笑)。
また初めてちゃんとした時代考証を入れていただきました。ご指摘通りに直したところと、その時代にはないけど、あえて入れたこともあります。例えば牛鍋屋のシーンは、東京や横浜あたりではすでに何百軒もお店が乱立していた時代でしたが、「この頃の佐賀にはまだありません」と。
でも牛鍋の風俗画なんかは教科書にも載っているから、見れば「ああ、明治なんだな。もう侍の時代は終わりつつあるんだな」とイメージしやすいと思ったので入れさせて頂きました。写真館とか人力車とか、みんなが思い浮かぶイメージはそのまま入れようと。考証の方から「こういうことがしたいのであれば、こんな方法もあります」というご提案やアイデアをいただいて、取り込んだところもありました。
村越:アイドルアニメらしからぬお話だったので、𠮷村さんから何度か「これで大丈夫ですか?」と聞かれたことを覚えています(笑)。
𠮷村:「アイドル要素がまったくないし、時代劇になってますよ!」って(笑)。
村越:「むしろ、それでいいんです! それが『ゾンビランドサガ』なんです」と。
𠮷村さんが感じた村越さんのすごさとは?
――村越さんの制作秘話もお聞かせください。
村越:う~ん、僕は1期と同じように精一杯やっているだけなので……。
𠮷村:村越さんが書かれた脚本は本当に素敵で。私には思いもよらないようなゾンビたちの掛け合いとか。3話で、屋根の上でさくらと純子が話すシーンで、ここでゾンビネタが欲しいなと思って、さくらの頭が落ちると書いたんですけど、頭が転がり落ちてしまったら降りて取りに行かなくちゃいけないし、どうしようかなと悩んでいたら村越さんが「じゃあ、とっさに純子がさくらの頭をつかんで、胴体が落ちるのはどうですか?」とさらっとおっしゃって。すごい発想だなと思いました。「これが『ゾンビランドサガ』なんだ」と驚いたことを覚えています。
村越:毎回、どうゾンビネタを入れるかは結構考えますよね。
𠮷村:2話でも、ラストで泣いているサキを想ってもらい泣きするさくらのシーンは素敵だなと思っていたら、ト書きに「徐々に干からびていくさくら」と書いてあって(笑)。
村越:それも1期があったからかもしれませんね。さくらが号泣したら絶対にそうなるよなと思って入れました。
𠮷村:同じ2話で、ロケ中にたえの頭がとれて、転がっていったら……。
村越:ありましたね。尺やテンポの都合上、最後の最後で削ったのですが、奥の院の帰り道にたえが階段を転がっていき、境内を掃除していた巫女さんの持つちりとりに入ってしまうという。巫女さんが気付く前にサキがたえの頭をポーンと飛ばして、瞬間的に商店街にあったたまねぎと入れ替えるというシーンでした。
𠮷村:入りきらなかったゾンビネタもいっぱいあったんですよね。
村越:むしろ毎回、入らないですね(笑)。毎回、どこかしら削らないと入らない感じで。それでも本当にギリギリまで要素を入れ込ませて頂いているので、境監督を始め、絵コンテを描いてくださる皆さんに申し訳なく思います……。
𠮷村:シナリオ会議でも村越さんの脚本は、どこを直そうというよりも「さて、どこを削ろうか」みたいな。どこもおもしろいからもったいないんですよね。
宣伝担当:「尺が足りない」問題は1話からありましたよね。
𠮷村:いつも「今回はED入るのかな」と思います(笑)。
村越:入らないことが多いです(笑)。とは言え、その中でも省略しつつ見事に要素をまとめてくださったり、楽曲の中にシーンを組み込んでくださったりと、演出が本当に凄いんです。
𠮷村:あと村越さん担当のお話で言えば、7話の舞々ちゃんを幸太郎が連れてきたくだりも、らしくて。舞々ちゃんのお友達とか、サブキャラクターも個性的で、1期、そして2期にも登場する万梨阿と、そのお友達の言葉遣いとか。本編もおもしろいけど、そういう細かい部分のワードセンスも素晴らしくて、尊敬しています。
村越:皆さんのアイデアをいただきつつのことなので。チームの力です。
アラフォー以上にしかわからない小ネタの意図
――この作品は40~50代にしかわからない小ネタがたくさん出てきます。例えば、7話での舞々の「別件別件、ベッケンバウアー」なんて、女子高生が使うわけがないし、オールドサッカーファンしかわからない言葉で。視聴者に合わせる気がないんだなと(笑)。
村越:確かにアラフォー以上にしかわからないネタが多いですね。それでも全員わかってしまうところがこのチームのおもしろさなんですけど。
𠮷村:若手のスタッフだけはわかっていなくて、ぽか~んとしているのを見て、大塚さんが笑っているという(笑)。
村越:ネタが古すぎてわからない人が多かったとしても、その様子やリアクションで面白さに持っていくというのが『ゾンビランドサガ』です(笑)。
𠮷村:意味がわかっていなくても、何か笑っちゃうんですよね。語感だけで空気感が伝わるチョイスも絶妙ですね。
村越:しかも、物語内のキャラクターも突っ込むこともなく、全員スルーしたりするので、わからなかった視聴者の方も置いていかれた感が変に持続しないのかなと。
𠮷村:内輪受けで、キャラクターたちがわかっていると、視聴者側は寂しく感じてしまいますし。
村越:そのあたりがいい具合にバランスがとれているかもしれませんね。
種田さんの疑問。脚本家の方はどこまでストーリーや内容に関わられているの?
――前回ご登場いただいたさくら役の本渡 楓さん、サキ役の田野アサミさん、愛役の種田梨沙さんから質問をお預かりしていますので、ここでお答えいただければ。まず種田さんからは「話数によって、脚本家さんの個性が出ている気がします。そこで物語を作るにあたって、境監督やプロデューサーさんのアイデアに基づいて作っているのか、それともシリーズ構成や脚本家の方もアイデアを出しながら作っているのか、どこまでストーリーや内容に関われているのか、知りたいです」とのことです。
村越:ゾンビランドサガに関して言いますと、全体の大まかな流れや構成は、シナリオ会議に参加している全員でアイデアを出し合い、それをこちらでまとめ、また皆で吟味するという形をとっています。各回については構成に準じて何をするのかを共有した上で、担当するライターさんに軸をつくっていただくという感じでしょうか。
𠮷村:3~4話に関しては、最初の山場であり、私が途中からの参加ということもあってか、かなり細かいプロットをいただきました。「ぶち壊す」のネタと愛がソロ活動するという基本のラインがあって、実際のエピソードの組み立てを私が書き、それをシナリオ会議の場で、またみんなで意見を出し合って。
そこで各キャラクターの感情の流れとかセリフ、ネタをブラッシュアップしていく形です。3話の愛は、最初はもっとピリピリしていたんですけど、感情のラインを調整していく中で、セリフもどんどん修正していきました。会議で誰かが出したセリフがおもしろかったから取り入れるとなったら、またそれがはまるように調整して。
村越:境監督やプロデューサー陣のアイデアをそのまま文字に起こしているということでもないですし、こちらが出した話のアイデアに対してもしっかり境監督やプロデューサー陣、シナリオチームの意見もうかがいます。ある意味、分担が明確に分かれているというよりは、混然とした状態で、最初から最後までみんなでやり取りしながら文字通り、チーム全員で作っています。が、やはり形としてまとめるのは各回を担当する脚本家になるので、その過程や会話の詳細、言葉選びなどで個性というのが滲み出てくるのかなと思っています……!
(C)ゾンビランドサガ リベンジ製作委員会