『ヘルズエンジェルス』東京国際映画祭animecs TIFFワールドプレミア上映、舞台挨拶が開催[東京・TOHOシネマズ六本木]
ヒロモト森一×韮沢靖が贈るブラックファンタジーコミックをアニメ化した『ヘルズエンジェルス』がついに完成! これを記念して10月18日、東京国際映画祭を開催中の東京・TOHOシネマズ六本木にてanimecs TIFF 2008ワールドプレミア上映が行なわれた。上映後の舞台挨拶では山川吉樹監督、原作者のヒロモト森一氏、韮沢靖氏をはじめ、主人公・天鐘りんねを演じた福圓美里さん、九頭龍役の岸尾だいすけさん、そして主題歌を担当したJAMOSAさんとSphereさんが登壇。企画背景や演じたキャラクターについてなど、作品の魅力を語り合った。
●「スタートはフィギュア」原作の誕生秘話が!
長編アニメーション『ヘルズエンジェルス』はヒロモト森一氏と韮沢靖氏の同名コミック(「月刊ウルトラジャンプ」集英社刊)が原作で、転校先のへの登校中、不慮の事故に巻き込まれたヒロイン・天鐘りんねが、地獄の学校・三途ノ川学園に迷い込んでしまうというストーリー。監督に『デ・ジ・キャラット』のキャラクターデザインや『蟲師』の絵コンテなどを務めた山川吉樹氏、キャラクターデザイン・作画監督に『キル・ビル』アニメパート監督の中澤一登氏をむかえアニメーション制作をマッドハウスが担当している。
「ヒロモトのマンガは線がダイナミックでワイルド。それを映像でちゃんと拾っていて、原作のイメージが反映されているのはさすがでした」と感想を述べた韮沢氏。さらに『ヘルズエンジェルス』のスタートはフィギュアだったと語る。フィギュア・ショップのオリジナル企画で有名モンスターの女性版フィギュア(「レザレクション・オブ・モンストレス」シリーズ)を韮沢氏が制作し、同時期にヒロモト氏へマンガ執筆の依頼がきたときに、そのフィギュアをキャラクターとして使用することを提案したそうだ。当時について韮沢氏は「『俺のコレ使ってみる? アレンジは好きなだけやっていいから』みたいな感じで。冗談みたいな感じでそのまま終わってしまうことも多いけど、今回は奇跡的に形になった」と説明した。
ヒロモト氏が映画を観た感想は「作画監督の中澤さんも『動かしにくい』と言っておられて。原作は600ページくらいあったのでよく時間内に入ったなと。マンガのままという印象があったので楽しく観ることができました」。また原作についての質問では、韮沢氏が「最初はりんねが食パンをかじって走るのを描きたいだけだと言っていました」と先に答えて会場が笑いに包まれる一幕もあり、ヒロモト氏は「普段考えていることをぶつけることが仕事だったり日常だったりするので、最初は楽しいことをやろうと思っていても段々シリアスな話になったりします」とコメント。劇中で登場する三途ノ川学園の学園長・ヘルヴィスの話題になると「元々フィギュアになかったキャラ。飲み屋の席で話していたときに『地獄に行くんだったら、ヘルな感じでエルヴィス・プレスリーで』みたいな流れになって。キャラクターありきだったので、ストーリーがどうなるかはあまり決めていなかった」と語った。
●山川監督「小細工ができない作品」
本作が初監督作品となる山川氏は「小細工ができない作品。アニメ風にこんな感じにしました、みたいな考えだと台無しにするだろうと思った」と語る。映画でキャラクターデザイン・作画監督を務めた中澤一登氏ありきで企画が立ち上がったという山川監督は、中澤氏から監督をまかされたことについて「中澤さんがこの作品を観たときに、たぶん変な料理をしないなと思ったのが僕だったのでは」とコメント。また、4年の制作期間をかけて完成した『ヘルズエンジェルス』について「勢いでつくっていたらそのまま終われるけど、4年もかかると気分が変わって『あのシーンはこうしたらいいんじゃないか』とか、そういうものが見えてくる。でも直しはじめると終わらないからこのまま行くしかない。自分の中で勝手な解釈が生まれてしまうので、まだ冷静に観ることができないんですよ」と胸の内を明かしていた。
劇中で地獄の学園へと転校させられてしまい、元の世界へ戻るためにヘルヴィスたちと戦うことを決意するヒロイン・天鐘りんねを演じた福圓さんは「あんなに叫んだことがないくらい2時間叫びっぱなしで、ここまで体当たりで演技をした作品は初めてでした」と振り返る。収録現場ではキャスト陣全員にテンションの高い芝居が要求されたと続け、「役者の皆さんがあんなに声を張り続けた作品はないと思います。バレーボールのシーンがあるんですけど、普段は外画で落ち着いた芝居をされている方々が酸欠になるくらい声を張り上げていて凄かったです」とコメント。また演じたキャラクターについて「泣いたりもするし、つらいのを我慢して根性で乗り越えていくキャラクターって最近ではあまりいないと思うんです。りんねの持っている魅力もありますけど、等身大の普通の女の子が根性で地獄から這い上がっていくところがとても好きで、そういうところを皆さんに観てもらいたいと思います」と観客に語りかけた。
三途ノ川学園生徒会長で校内の実力者・九頭龍を演じる岸尾さんは「難しい作品だから1回観ただけで皆さんに伝わるかと思いましたが、いざ観てみたら分かりやすくて面白かったですね。収録ではセリフが多かったので、とにかく失敗しないようにしっかり演技しなくてはという思いでやっていました。素敵な作品になって良かったです」と挨拶。また演じたキャラクターについて「九頭は一見すると優男風。最初の出会いはタラシ的な感じもありつつ、狂気が戻ってからは突っ走るという振り幅が非常にある役でした。すごくセリフが速かったり、ゆっくりとしたところもあったのでスピードという意味での緩急をつけて、僕なりに楽しませてもらいました」とコメント。
●JAMOSAさん「主題歌は“地獄”というキーワードだけを投げられました」
そして本作で主題歌を担当したJAMOSAさんは「私はまだ地獄には落ちていませんが(笑)、生きていて色々大変なこともあるし、大変なことがあってから抜け出したときに“生きること自体が素晴らしい”と感じることができたりします。主題歌のタイトルは『BREATHE AGAIN feat. Sphere』、息ができるだけでも幸せという曲です。主人公は色々と大変な思いをしますが、ラストで私の曲が流れたときに映画とぴったりだと思って感動しました」とコメント。また同曲に参加したSphereさんは「この曲は、ある夜にJAMOSAさんからの連絡でスタジオに行くと曲についての話があり、その場で書き上げてレコーディングするという突発的なものでした。“地獄”というキーワードだけを投げられたんですが、ポイントは押さえられたかなと思っています」と語っていた。
長編アニメーション『ヘルズエンジェルス』の今後の詳しい情報については、随時公式サイトにて発表される予定だ。
長編アニメーション『ヘルズエンジェルス』
<スタッフ>
原作:『ヒロモト森一(マンガ★フォース)HIROMOTO-SIN-ICHI(MANGA★FORCE)』(集英社刊「月刊ウルトラジャンプ」)Monster Design by韮沢靖
企画:丸山正雄
監督:山川吉樹
脚本:山川吉樹・ふでやすかずゆき
キャラクターデザイン・作画監督:中澤一登
美術監督:大野広司
色彩設計:伊藤由紀子
撮影監督:森下成一・五十嵐慎一
編集:木村佳史子
音楽:EDISON
音響監督:たなかかずや
音楽プロデューサー:岡田こずえ(AMO)・尾上政幸
主題歌:「BREATHE AGAIN feat. Sphere」/JAMOSA
挿入歌:“ヘルヴィス ヘルソング”ヘルヴィス(CV:立木文彦)
アニメーション制作:マッドハウス
<キャスト>
天鐘りんね:福圓美里
りんねママ:朴■美(※)
九頭龍:岸尾だいすけ
マリオ:木内秀信
神楽坂レイ:稲村優奈
スティーラ:沢城みゆき
ファントマ:鹿野優以
キキ:小清水亜美
ウルフィ:松岡由貴
クロノラ:浅川悠
キュリア:井ノ上奈々
ギリエラ:佐藤利奈
マミーラ/ルカ:渡辺明乃
担任:腹筋善之介
パンダーズ/腐乱犬:檜山修之
EWキャプテン:本田貴子
門番女:小林ゆう
門番男:安元洋貴
ダメ天使:岡明子
フー/HEBO審判:藤原啓治
神サマ/69:チョー
寮母:野沢雅子
ヘルヴィス:立木文彦
※「朴■美」の「■」は王に路。