DVDリリース開始!『西洋骨董洋菓子店』奥村監督インタビュー..

11月26日より待望のDVDリリース開始!TVアニメーション『西洋骨董洋菓子店 ~アンティーク~』奥村よしあき監督インタビュー

 財閥会長の孫で万能のオーナー・橘圭一郎、魔性のゲイにして天才パティシエ・小野裕介、元ボクシング世界チャンピオンの見習いパティシエ・神田エイジ、不器用すぎる橘のお目付け役・小早川千影。ワケあり男4人が営む洋菓子店「アンティーク」を舞台に、店員と店を訪れるお客たちの人間模様を描いた『西洋骨董洋菓子店 ~アンティーク~』。よしながふみ先生原作の同名コミックの初アニメ化作品となり、2008年7月~9月までフジテレビ「ノイタミナ」枠ほかで放送され好評を博した話題作だ。

 今回は本作の待望のDVDリリースに合わせ、奥村よしあき監督に直撃インタビュー。TVシリーズ全12話を振り返っていただき、映像化へのこだわりや作品の魅力についてお聞きした。


●生みの苦しみとは…… キャラがなかなか似ない(笑)

――TVシリーズ全12話を終えての感想をお願いします

奥村よしあき監督:3の倍数の方程式を崩すことができて嬉しいなと(笑)。ネットに書かれていたんですよ、「3の倍数の話だと出来がいい」みたいな。話が終わりに近づくにつれスタッフのみんなが頑張ってくれて、11話なんかすごく良い出来になって。最後は「もうちょっと続けたかったな」という感じでした。


――今回のアニメ化にあたり、キャラクターデザインの段階から苦労されたという話を伺いましたが……

奥村監督:とにかくまず、原作者のよしなが先生の絵が難しいんですね。何度描いても似ない(笑)。デザイナーがすごい悩んでました。僕も作画出身だったものですから相談されたときも、「そんなことはないだろう」と思い、実際に書いてみると「……ホントだ!」みたいな(笑)。ポイントは鼻の長さだったり、あごのライン、目の大きさなどいくつかあるんですけど、“少女マンガ”というイメージがあるものですから、みんな切れ長の大きい目を描くんです。鼻もスッと描きたがるんだけど、そうすると顔が長くなる。だから「原作をよく見ろ、違うだろ!」と注意したりして。よしなが先生ともかなり話し合いをしました。


――原作の絵は少女マンガらしい飾り気がないというか、シンプルな絵柄ですね

奥村監督:ギャルソンやパティシエの制服もシンプルなんですよ。だから嘘がつけない。下手な人が描くと明らかに体のラインが崩れてしまう。そして作画監督(作監)はそれを修正して、なおかつ原作の絵に似せないといけない。線の段階ではOKだったのに、色をつけると全く似てなくて「どうするよ、オイ」っていうのがあって、スタートの1~2話は苦しみましたね。


――しかもそのキャラを動かす作業もありますし

奥村監督:そう。動くとまた変わってしまうので、アニメーターはもちろん、作監ですらうまく描けない状態というのがありました。そういう意味では普通のTVシリーズとくらべて絵描きの力量が要求されていましたね。でも3話とか6話とかすごく良かった回があるんですけど、それはキャラをよく見てみると似てないんですよ。キャラ表のままではないというか。みんな似せようと悩みながら作っていたんですけど、自分の絵でいこうと決めた作品だと絵のこだわり以外のところに集中することができますよね。そこに携わった作監の絵になっているけど、作品としては素晴らしい。だから映像があがってきて「そうか、そういうことなのか」と納得して。その回は、よしなが先生からお礼のメールをいただいたくらい良いものになりました。


――演出面ではいかがですか?

奥村監督:マンガでは登場人物の横顔がポンポンと切り変わるシーンがあっても、映像だとセリフを聞かせないと分からない。目で見て内容が分かるシーンを作ってキャラクターが演技をする。そのなかで(脚本を担当した)高橋ナツコさんのセリフを言わせるというのはかなり苦労しました。だから原作を見ながら店の間取りを確認して、ここに厨房があってカウンターがあって、客席はここなんじゃないかとか。こっちの壁は原作では描かれてないけど、光源を大切にしたいから窓を入れてみたり、ただの窓だと面白くないからステンドグラスにしてみようとか。原作に忠実に話を進めていきたいなと思っていたので、そういったステージ作りはずいぶん考えましたね。


●エイジは難しいキャラクターでした

――ある意味「アンティーク」というお店自体も主役のひとりですからね

奥村監督:だからOPではミニチュアを作って、カメラをぐるっと回してお店の全体像を見せているんです。厳密にいうとCGで作っている本編とミニチュアとは少し違っているんですけど。あと原作には2階の設定がなかったので、そこを作ってエイジの間借りする部屋にしたり、実は屋根裏部屋もあったり。「ここの壁の素材はこうしよう」とか、原作にはないところも色々考えて全部作りました。その作業は楽しかったですね。


――1話は橘の過去から始まりますが、これはシナリオの段階から決まっていたんですか?

奥村監督:実は最初のシナリオでは、橘が「ケーキ屋をやる」と宣言する食事のシーンから始まっていました。でもコンテの段階でスタートはサスペンス調にしようと僕が変えたんですよ。最後がそういう風に終わるので、最初にも入れたいなと思って。


――そのあとの話でも、冒頭シーンがフラッシュバックで入ってきますね

奥村監督:サスペンス要素を印象づけるために、1話冒頭のケーキが落ちて割れるというシーンを入れています。あのシーンではケーキに乗っているイチゴとフォークだけに色がついている。本当は順を追って色をつけていきたかったんですけど、そうするとサスペンス的なものが削がれると思ったので、結局そのまま使うことにしました。


――監督自身がとくに「ここを演出したい」と思ったシーンはありますか?

奥村監督:色々やりたいところはありましたよ。3話で小野と千影が躍るシーンとか(笑)。でも僕よりも原作のファンだったという演出の方もいたし、そういう人たちの『アンティーク』を見たいという気持ちのほうが強かった。最初のうちは皆さんにコンテを頼んでいたんですけど、良いところはいただいて悪いところは僕のスタイルに変えるという作業がありまして、そういう意味では「この人はどうやって『アンティーク』を捉えているのか」というのを知ることができました。


――橘たちがカッコよく決めるというか、キラキラするシーンでは周囲に羽が舞いますよね。あれは誰のアイデアなんですか?

奥村監督:僕です(笑)。あれは茶目っ気でやったんですけど、実は先生からダメ出しをされまして。アフレコの段階になって小野のシーンで白い羽が舞ったとき、先生が「違う。小野は黒です」とNGを出されたので、そこから急いで黒い羽に変えたりしましたね。そういう演出はちょっと強引にやってしまいました。


――ちなみに原作を最初に読まれたとき、監督はどのような部分に一番惹かれましたか?

奥村監督:やっぱり橘というキャラクターですね。橘の気持ちがすごく理解できたし、最初読んだときに描くのだったら橘中心なんだろうなと思っていました。僕自身、少し橘に似たようなところがあるんですよね。置かれている立場は全く違いますけど、人に気を使う性格というか。職業柄、みんなをまとめないといけないし(笑)。


――気を使いすぎて彼女に「無理しないでよ!」とか言われたり(笑)

奥村監督:一生懸命やりすぎるというか、性格だからついつい面倒見すぎてしまって、最後には「あなたとはやっぱり……」とか言われて振られるところも自分に似ている(笑)。色々な意味で橘って僕に似ているなと。だからほかの演出さんから「橘はどうやって演技させればいいんですか」と聞かれたときには、すごく的確に答えられたような気がします。


――逆に難しかったキャラクターは?

奥村監督:エイジですね。元ヤンキーでプロボクサーになって……、というところまでは実際にありそうだけど、そこからケーキ屋というのがありえない(笑)。それに最初のころ、アニメーターがみんなエイジをキラキラした感じで描いてくるんですよ。演出もそうしようとしていたし。でもそれに対しては違和感があって、2話のメインでもあるし思い切ってよしなが先生に聞いてみたんです。そうしたら先生が「私のなかでエイジは“矢吹丈”なんですよ」って言ってくださって。それでやっとエイジの描き方が分かった。本当にエイジは難しかったです。


●TVとはまた違った感じになったDVDをお楽しみに!

――小野と千影のキャラクターはどう捉えていましたか?

奥村監督:小野の描き方としては、高校時代とかにいたと思うんですよ。控えめでおとなしくて、教室の隅にポツンといるような子。それがカミングアウトすることで今まで我慢していたものが無くなると、大胆なこともできるようになるんだろうなと。だから小野はあまり気にしなかったですね。一番気にしたのはメガネをかけたときのバランスというか、アニメーターがみんなメガネを書きづらそうにしていたこと(笑)。千影は実写ドラマで演じた阿部寛さんの印象がどうしても拭い去れなくて、雰囲気的にはそのまま阿部さんのイメージになっています。でも描き方としては「誰よりも純粋な心」という部分を大切にしようと。それさえあれば、どんなところで千影が驚いたり恥ずかしがったりするのかが分かってくる。それに千影はある意味、一番いい大人というか、優しい大人なんですよね。そういう部分をアニメでは出せたと思います。


――いよいよ11月26日からDVDリリースがスタートしますが、最後にファンの方へメッセージをお願いします

奥村監督:話数のなかでは「このキャラはちょっと違うな」と感じるものがありまして、全部描き直せと(笑)。さすがにそれは酷なので、DVDではそういう部分をなるべく払拭してストーリーに入ってもらえるように色々と頑張っています。DVDを観て「こんな風に変わったんだ」と思っていたければと。自分でも最終回で「もう一度観たい」と感じたように、繰り返し観ていただける作品になったと思います。TVとはまた違った味の『アンティーク』が楽しめると思いますので、ぜひ買ってみてください。


DVD『西洋骨董洋菓子店 ~アンティーク~』【初回限定生産版】
本編68分(各巻)/片面2層/16:9/スクイーズ/日本語リニアPCM ステレオ(一部ドルビー・デジタル)
全12話4巻
価格:各巻5,985円(税込)

※初回限定生産版は、よしながふみ先生描き下ろし外箱付き、各巻にキャストインタビュー、ノンテロップOP&ED、プロモーション映像集などの豪華映像を収録予定。

■初回限定生産版 第1巻
2008年11月26日発売 1~3話収録
【封入特典】新作ドラマCD(「ある日のアンティーク」)、12Pブックレット

初回限定生産版 第2巻 2008年12月24日発売 4~6話収録
初回限定生産版 第3巻 2009年1月28日発売 7~9話収録
初回限定生産版 第4巻 2009年2月25日発売 10~12話収録


<スタッフ>
原作:よしながふみ(「西洋骨董洋菓子店」/新書館刊)
監督:奥村よしあき
脚本:高橋ナツコ
アニメーション制作:日本アニメーション+白組
スイーツプロデュース:鎧塚俊彦(「Toshi Yoroizuka」オーナーシェフ)

<キャスト>
橘 圭一郎:藤原啓治
小野裕介:三木眞一郎
神田エイジ:宮野真守
小早川 千影:花輪英司
榊 楓子:河西智美(AKB48)

『西洋骨董洋菓子店 ~アンティーク~』第1巻 初回限定生産版 ジャケット画像

『西洋骨董洋菓子店 ~アンティーク~』第1巻 初回限定生産版 ジャケット画像

(C)よしながふみ・新書館 / 西洋骨董洋菓子店製作委員会
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