「世界名作劇場」の第26作目として選ばれた作品は、『赤毛のアン』の主人公アン・シャーリーの幼少時代のエピソードを綴った物語『こんにちは アン ~Before Green Gables』。放送に先がけてアフレコ後に会見!
昨年は、『赤毛のアン』の原作出版100周年。今年は、『赤毛のアン』が『世界名作劇場』の作品として放送されてから、ちょうど30周年に当たる年。この記念すべき年に、『赤毛のアン』シリーズに新作として出版された『こんにちはアン』をアニメーション作品として制作。今作は、カナダで活躍する児童文学作家バッジ・ウィルソンがモンゴメリ財団から依頼され、「幼少の頃のアンの姿」を描いた物語。30年前『赤毛のアン』を見て感動を覚えた人も、また原作『赤毛のアン』を愛する人も、その懐かしさを胸に抱きながら、現代の子供たちと一緒に『アンが、マシュウとマリラに出会う前の11年間」が描かれている『こんにちはアン』の世界を楽しめる作品となっている。
そんな、幅広い世代に愛されている作品の魅力の魅力を伝えるため、3月12日に『こんにちはアン~Before Green Gables』のアフレコ取材が行われた。この日は、谷田部勝義監督。アン・シャーリー役の日高里菜さん。ホーレス役の小林由美子さん。ナレーションを担当する池田昌子さんが集まってくれた。みなさんが語ってくれた、『こんにちはアン』の魅力に、触れてみよう。
――まずは、『こんにちはアン』に対する意気込みから教えてください
谷田部勝義監督:『こんにちは アン』は、『赤毛のアン』の小さい頃のお話です。『赤毛のアン』が出版されてから100周年記念ということで、モンゴメリ財団からカナダのバッジ さんという童話作家の方に、小さい頃の話を書いてもらったのが『こんにちは アン』の原作。そして、日本アニメ『赤毛のアン』からちょうど30周年から経っておりますので、今回のアニメ化はちょうど良いタイミングだと思いました。この話を頂いた時に、30年前に高畑さんが作られた『赤毛のアン』を観たんですけど。その内容がとっても素晴らしかったので、すごくプレッシャーかかっちゃいました(笑)。以前に放送していた『赤毛のアン』が好きだった方はもちろん、『赤毛のアン』を知らないような子達にも、ぜひ見てもらいたいと思っています。
池田昌子さん(ナレーション):私が初めてこのシリーズに出演させていただいたのが、『ペリーヌ物語』のお母さん役。一番最近だと『ロミオの青い空』のナレーションとして『世界名作劇場』には関わらせていただきました。今回このお話をいただいた時は、その時のことを思い出し、とても懐かしく感じました。『こんにちは アン』は、本当に健気で一途なかわいい女の子の話なんですね。そのアン役を演じる里菜ちゃんが本当にアンそっくりで可愛くてね。声だけじゃなく、まだ中学生の里菜ちゃんが大人の中に混じって、一生懸命演じている健気な姿がアンと重なりまして、スタジオもすごく良い雰囲気になってます。放送が始まったら、みなさんも楽しんで見てくださるんじゃないかなって思ってます。
日高里菜さん(アン・シャーリー役):『こんにちは アン』を演じることになった時に、私のイメージの中で『赤毛のアン』は、「すごくかわいそうな子だけど、すごく元気な子」っていうイメージだったんですね。だから、これからアニメを見てくれた人が、元気になれたり優しい気持ちになれたり、「もっと頑張ろう」と思えるようなアニメにできたらと思っています。
小林由美子さん(ホーレス役):私は子供のころからずっと「世界名作劇場」を見てきて、本当に「世界名作劇場」に育てられたところがあるくらい大好きな作品なんです。以前『レ・ミゼラブル』で初めてこのシリーズに関わらせていただいて。その時に「また「世界名作劇場」に関わりたい」と思っていたのが、今回念願がかないました。気合い十二分でやっておりますので、ぜひ見てください。
──みなさん、『こんにちは アン』にどんな印象を持っていますか?
谷田部監督:あらすじだけ言うと、すごくかわいそうな話なんですよね。アンは相当辛い境遇なんです。この子は生まれてからずっと孤児。だけど、孤児だということが日常。彼女自身はその身をつらいとは思ってないんです。むしろ、そんな劣悪な環境の中でさえもアンが前向きに生きているものだから、周りの大人たちもなにかしら影響を受けてしまう。それくらい僕ら自身も、この子にはいろいろ教えてもらってます。そして、この子も大人の人達からいろんなものを受け取りながら、成長し続けてゆく。だから見てもらう人たちにも、「こんなチビが頑張ってるんだから、元気になろう」という、生きてる勇気みたいなものを伝えられればなと思っています。
池田さん:私はつられやすくて、ついつい物語に入り込んでしまうたちなんです。だから監督がおっしゃったように、結構シリアスで悲しかったり辛い話だったりするんですが、そういう風にならないよう出来るだけ明るく前向きに、そして優しい雰囲気を、まずナレーションの私が、ちょっとでも醸し出せたらなって。それが、私の課題だなと思ってます。ホントこれから先がすごく楽しみで、毎週収録の日を心待ちにしながら楽しんでいます。
日高さん:『こんにちは アン』は『赤毛のアン』の前の話で、アンはどんな人生を歩んできてるのかな?って考えたんです。もし私がアンだったら、こんな人生を歩んだら、悲しくてしょぼんとしちゃうと思うんですけど、アンは全然違うんですね。彼女は、お花が綺麗だったり、猫を見ただけですごく元気になったり、幸せな気持ちになったりする。だからみんなにも、「ちょっとしたことでも幸せを感じられるアンちゃんはすごいんだよ」ということを、伝えられるよう頑張っています。スタジオでは、アンをいじめているキャストさんもすごく優しくて。休憩時間とか話しかけてくれるので、現場は楽しいです。
小林さん:いじめっ子役の小林由美子です(笑)。『赤毛のアン』は何回も再放送で見させていただいたんですけども、とても素敵な作品です。それを今回こういう形で関わらせていただけるということがすごく嬉しくって。「子供たちにたくさん見てもらいたいな」と思う作品なので、私も喉から血が出るほど叫んで、わめいて、アンをいっぱいいじめて(笑)、みなさんに届けられたらなと思っております。
──では、みなさんが一番最初に日高さんを見た時の印象を教えてください
池田さん:まず最初に「すごいかわいい!」って思ったんです。それから、お声を聞いて1本録り終わった時、「本当にぴったりだな。よくぞ彼女がこのアンに選ばれたな。」と思いました。
小林さん:最初会った時は制服を着ていたので、全身から出るフレッシュさと光輝くようなオーラがあって、私もあやかりたいな と思いました(笑)。でも本当にアンぴったりで、スタジオも日高さんがいるだけでパッと明るくなるんです。それにすごく刺激を受けたり、助けられてる部分とかもすごいあるんで、一緒にアフレコを続けていくこれからが楽しみです。
池田さん:彼女がいるだけでその場が明るくなるというのは、すごく大事なこと。それは画面からは見えませんけど、必ず全体の雰囲気として伝わるんですね。声を入れる時に私たちいつも思うんだけど、私たちが画面に出るわけじゃないし目に見えない。だからこそ、どれだけ雰囲気を出せてるか、どれだけ演じてる側が燃えてるかとかが、大事になってくる。そういうのって、絶対出来上がりに出てくると思っていて。だから、彼女は大事で素敵な存在です。
──監督はオーディションで、日高さんを選んだんですよね
谷田部監督:70人くらいの中から選んだんですけど、私らは相当迷ったんですね。やっぱり中学生ということで、実際に仕事をした場合を考え、無難に中堅以上の人にやってもらうのが良いのかと相当迷いました。でも、「ここはこの子の明るさにかけよう」と思って。実際に録り始めたら、中学生にも関わらず音響監督から「こんな風にして」ってオーダーが入ると、すぐさま変えていける柔軟性を持っているんです。あれには、びっくりしましたね。毎回、想像以上で「これなら大丈夫」って思いました。
──日高さんは選ばれた時は、どんな気持ちでしたか?
日高さん:まず、お母さんからメールで知らされて、最初は「間違いじゃないの?」って思ったんですよ。そして、自分が『赤毛のアン』のアンをやるって考えた時「どう出せばいいのかな」という不安があったんですけど、「でも、やるしかない」と思って。だから最初に告知編でこの現場に来た時に、「良いよ」と言ってもらえたときは、「あぁ、私演じて良いんだ」って思えました。
──では、日高さんから見た共演者の方の印象を教えてください。
日高さん:監督は、控室のようなところにいる時に話しかけてきてくれたり、「良かったよ」とかいろいろ言ってくださって。それが「頑張ろう」っていう気持ちにもなれて。最初に告知の時に一緒に見たときも、いろんな話をしてくれたり聞いてくれたり、すごい優しい方だなと思いました。池田さんは、最初隣に座ったんですよね。その時、「怒らせないようにしなきゃ」ってすごくドキドキしてたんです。とにかく「失礼なことはしちゃいけない」って思ってたんですけど、隣で「頑張って、応援してるよ」って言ってくださって。すごく話しやすい方なので、中学校の話だとかアンの話だとか、いろんな話をさせていただいてます。ナレーションの声は本当に優しさが出ていて、癒されるのでずっと隣にいてほしいと思いました(笑)。
池田さん:ずっと隣にいるわよ。
日高さん:小林さんは、普通に話す声は本当にかわいいと思って。でも、収録の時に、いじわるなセリフを話すのを聞いていると、本当に自分が言われてるような気がして、「すごいな」って思いました。休憩時間とかはすごく笑わせてくれたりするので、もっと仲良くなりたいなって思いました。
小林さん:こちらこそ、よろしくお願いいたします。
──日高さんは、アンを演じてみて自分と似てると思うところ、違うと思うところはありましたか?
日高さん:似ている部分は、思っていることをはっきり言うところ。アンは「ここは言わないだろ」と思うところも言っちゃったりするんですけど。私もどちらかというと、思ったことは言うので、そこは似てるなと思いました。違うところは、めげないというか「ここはずっと悲しむだろうな」って思うところでも、アンは20秒後にすぐ笑っている。そういうところはちょっと違うなと思ったし、見習おうとも思いました!
──この『こんにちは アン』はどんな作品にしていきたいですか?
谷田部監督:「世界名作劇場」の香りというか、アニメのひとつのジャンルとして、オーソドックスにきっちりやるものを作りたいと思いました。ただ、30年前の『赤毛のアン』の頃よりも時代が変わっちゃってて、子供たちの生活のリズムが変化したと思うんですね。だから以前のまんま作っちゃうと、子供たちはついてきてくれないと思ったんで、テンポを上げようと思ってやってます。ただ、名作の香りは失わない中でテンポを上げ、今の子供たちに対応しようとも思って作っています。どうぞ『こんにちは アン』をよろしくお願いします。