この夏もCD連続リリースに劇場版公開など快進撃を続ける『炎神戦隊ゴーオンジャー』。主題歌などゴーオンサウンドを構築するProject.Rのリーダー、大石憲一郎さんに直撃インタビュー!
今年2月から放送が始まり、あっという間に大ヒット作品となった『炎神戦隊ゴーオンジャー』。とりわけ、3月にリリースした主題歌シングルが一般チャートの4位を記録するなど、大きなインパクトを与えた。その後も快進撃は続き、7月にはまず2日にセカンドシングル「炎神セカンドラップTURBO CUSTOM-」と絵本とCDのセットのコロちゃんパックの2枚同時リリース、23日にボーカルアルバム『サウンドグランプリ2ndソングコレクション』、30日には「炎神サードトラップ」を収録した『おあそび炎神CDブック』が発売と怒とうのリリースラッシュ! 更に8月9日から劇場版も公開されるなどとどまるところを知らない。
その『ゴーオンジャー』のサウンドを支えるのはコロムビアで特撮関係の楽曲を担当してきたスペシャリストが勢ぞろいした音楽チーム、Project.R。楽曲ごとにソロであったり、カルテットだったりと形態は変わるが、そのベースをプロデュースするのが大石憲一郎さん。Project.Rのリーダーとして作・編曲に関わりつつ、自身もフロントマンとしてもED曲「炎神ファーストラップ」を歌うなど精力的な活動を続けている。そんな大石さんに『ゴーオンジャー』の魅力とサウンド面でのポイント、そして最新CD「炎神セカンドラップTURBO CUSTOM-」や『サウンドグランプリ2ndソングコレクション』などについて語ってもらった。
●Project.Rは戦隊・特撮アーティストによるユニット
――まずProject.Rというプロジェクトについてご説明ください
大石さん:『炎神戦隊ゴーオンジャー』への音楽提供するためのチームとしてここ最近、スーパー戦隊シリーズや特撮作品に関わったアーティストが集合したのがProject.Rです。メンバーは固定していなくて、どんどん増えてます。僕が一応、リーダーとして音楽的なコアになる部分を担当している感じです。
――Project.Rのリーダーの打診があった時はどう思われましたか?
大石さん:昨年、『ゴーオンジャー』の主題歌コンペがあり、ED曲が採用されて、誰に歌わせたらいいかという話が出て、「ユニットで歌うのはどうだろう」というやり取りがあって。その時、僕は完全に裏方のつもりだったんですけど、表にも出てみないかと。それまでは作・編曲者として裏方として関わってきたため、ビックリしましたが、ユニットの中核としてやらせていただくことは光栄なことですし、おもしろいことができそうだなと思ったので二つ返事でOKしました。
――Project.Rとしての活動が始まる前はどんな作品に関わられていたんですか?
大石さん:主にサイキックラバー関係の楽曲をやっていました。ここ数年の作品はほとんどですね。戦隊モノでは『特捜戦隊デカレンジャー』の「デカレンジャーアクション」や『魔法戦隊マジレンジャー』のED曲「呪文降臨~マジカル・フォース~」、『轟轟戦隊ボウケンジャー』のED曲「冒険者 ON THE ROAD」などです。他にもいろいろなアニメのキャラクターソングや舞台音楽の作編曲、あと渡辺宙明先生のサポートもさせていただいたりしてます。
――特撮、アニメ関係の音楽をやられる前はどんなことをされていたんですか?
大石さん:シンセサイザーマニュピレーターです。スタジオにシンセサイザーを持っていき、「あの音を入れてほしい」、「こんな音を作ってほしい」という要望に現場に応えたりしてました。あとはCM音楽やコンピュータソフトのBGM制作、カラオケのデータを作ったり。アニメ、特撮関係の仕事をするきっかけもやはりサイキックラバーですね。あるアマチュアバンドに参加する機会があったんですが、そのメンバーの友人にMIDIはらふじさんというライターの方がいて、彼がやっていた音楽ユニット(G-BULL)に誘われたんです。それで、MIDIさんが脚本を書いていた『みすてぃっく放送局』のドラマCDにG-BULLも参加することになったんですが、その時の音楽プロデュースがサイキックラバーのYOFFYで。何度かやり取りをしているうちに「一緒にやらないか」と言われて、このジャンルのお仕事をするようになったんです。
――アニメや特撮関係の音楽に関わることになった時、どう思われましたか?
大石さん:アニメや特撮作品は好きで仕事として関わる以前から普通に見てました。だからおもしろそうだし、やってみたいと思っていたのでいい巡り合わせに感謝しています。ただ音楽的にはサイキックラバーのようなハードロックはやっていなかったのではじめは戸惑いましたね。僕は元々、シンセサイザーがフィーチャーされたYMOとかTMネットワークなどが好きで音楽を始めたんです。その後、バンドでドラムを担当したりして、生音の良さもわかってきて。ポップスを中心にソウル、ロック、ジャズ、テクノなど音楽的な振り幅はなるべく広く、偏らない感じでやってきたつもりだったんですが、メタルやハードロックはノーマークだったんで勉強になりました(笑)。『ゴーオンジャー』のED「ファーストラップ」では自分がやってきた本来の形に近いサウンドになっているかなと思います。
――特にスーパー戦隊シリーズの楽曲は子供達に親しみやすさを求められながらも、サウンド的な部分ではいろいろ仕掛けもできておもしろいジャンルですね
大石さん:スーパー戦隊シリーズに流れる伝統的なテイストがあるのが大きいですね。僕も数本関わらせていただいて、スーパー戦隊シリーズの傾向みたいなものをつかんでいたつもりでしたが、『ゴーオンジャー』のOP曲を聴いた時、「むむ、これは何か違うぞ」と。熱い方向だけでなく、エレキギターがテケテケなる70年代のグループサウンズみたいな懐かしさと、多少脱力する部分もあって。作品自体も設定資料を読むと、メカに目がついていてかわいかったり、武器の名前がマンタンガンだったりと、前作がシリアスだったので面食らいました。それなら楽しい方向を前面に出していくのがいいかなと。そしてもっともっと現代的な要素を入れるのもおもしろいかなと思って流行りのものも音楽的に入れてみました。
――『ゴーオンジャー』には初期シリーズの『秘密戦隊ゴレンジャー』の時のようなカッコよさ+コミカルさがあって、原点回帰した作品だなと思いました
大石さん:そうですね。楽しさが作品全体からあふれ出ていて、それがたくさんの方に愛されているのかなと思います。
●『ゴーオンジャー』主題歌が大ヒットした現在の心境
――『ゴーオンジャー』がスタートして大人気番組になり、主題歌シングルがオリコンチャートの一般部門で4位に入るなど大ヒットしました。率直な感想はいかがですか?
大石さん:正直、ホッとしました(笑)。スーパー戦隊シリーズは前作までの4作の編曲を京田誠一さんがされていて、今回から僕が中心になって結果が悪かったらどうしようと心配な気持ちもありました。でもふたを開けてみたら好調でビックリしました。でも「ああ、よかった」と安心する気持ちのほうが強かったですね。
――曲がヒットした要因を分析すると……
大石さん:炎神ソウルかな?(笑)。曲自体の親しみやすさがあって、バツグンにわかりやすくて、誰もが口ずさめるところがいいですね。自分でも完成してから何度も聴いていますが、何度聴いても楽しいんですよね。僕と同じように感じてもらえたんじゃないでしょうか。あと懐かしさと新鮮さがクロスオーバーしているところ。テケテケサウンドなんて子供達にはわからないから新しいし、大人にとっては昔懐かしいですから。
――OP曲を歌っている高橋さんが「大石さんのアレンジもよく聴くとすごく凝っているんですよ」とおっしゃっていましたが、そんな通がうなるような密度が濃く、完成度が高い部分も評価されているのでは?
大石さん:最初にデモはテケテケの方向が強かったんですが、それだけだとただ古臭い曲になっちゃうかもしれないなと。今だからやる音楽、僕しかできないサウンドをさりげなくでもいいんで注入したいと思って。あとロボットやメカが出てくるのでテクノロジーの部分も反映させたくて電子音なども細かく入れてます。
――大石さんご自身が志向する音楽に近いとおっしゃていたED曲ですが、春に「炎神ファーストラップ」、7月2日に「炎神セカンドラップ」が発売されました。曲自体は同じはずなんですけど、かなり印象が違います
大石さん:バックのサウンドに関しては流用はほとんどしていません。ただ映像や炎神キッズのダンスにも関係するので大幅路線変更みたいな感じにはならないようにしています。セカンドラップでメロディが変わったのはファーストラップの音だと「ミドリ」がのりにくいかなという理由。でも逆に歌うほうが難しいことになっちゃいましたけど(笑)。「一緒だけど違う曲」に仕上げるのはアレンジャーとして得意分野なので楽しかったです。
――こういうアプローチができるED曲は特撮作品では珍しいですね
大石さん:その点に関してはラッキーだと思います。事前に炎神が増えるたびに曲を変えていくことは伝えられていましたが、特撮作品でセカンドシングルを出すのも珍しいことらしいのでうれしいです。
――セカンドシングルには谷本貴義さんと五條真由美さんのデュエット曲「テイクオフ!ゴーオンウイングス」が収録されていますが、いきなりストリングスのイントロから始まって、雰囲気も違う感じでビックリしました
大石さん:僕と大橋恵さんが共同でアレンジを担当しています。劇中にかかるBGMの変形で、ゴーオンウイングスの曲なんですけど、ゴーオンジャーより大人なロックを目指してます。サウンド的にもハードでないギターが絡んだイギリス風のロックサウンドになっていて、僕好みです(笑)。力強さをそのままサウンドに出すとゴーオンジャーと一緒になってしまうのでそこは気をつけました。僕はベーシックなバンドサウンドのアレンジで、大橋さんには管弦楽器のアレンジをしていただきました。お互いに得意な分野が融合していい仕上がりになったかなと思います。
――セカンドシングルにはCDエクストラで炎神キッズによる「セカンドラップ」のダンスPVも収録されていて豪華です
大石さん:炎神キッズはすごいですね。普段は普通の子供なのにステージに上がるとビシっと決まっていて。炎神キッズのダンスもかなり注目が集まっていて、『ゴーオンジャー』を通じてダンサーを目指す子供も出てくるかもしれませんね。キッズダンスキャンペーンもやっているので応募してもらえたら、と思いますProject.Rも全員踊れないといけないらしく、僕もダンスレッスンを受たんですよ。
――イベントでもステージで歌って踊っているそうですね
大石さん:自分のバンドでステージに立つことはありますが、踊ったりはしませんから(笑)。炎神キッズと一緒なのでステージ上が大人数になるのでとても楽しいです。子供達からの反応も直接見られて、それも新鮮です。
――7月23日には『サウンドグランプリ2ndソングコレクション』がリリースされました
大石さん:今までの『ゴーオンジャー』の歌がすべて収録されていて、かなりお買い得です。ボーカル陣も多様で。僕的に注目してほしいのはサイキックラバーのIMAJOが歌っている「害悪産業革命宣言」。「まさかJOEが歌うとは」とProject.R内でも話題になりました。でもガイアークの歌なのにクレジットはProject.Rで、いったいどっちにつくんだと(笑)。石原慎一さん、MOJOさんの歌もさすがという感じです。
●いよいよ劇場版も公開!続々と生まれる『ゴーオンジャー』サウンドに期待
――7月30日には絵本とCDのセット『おあそび炎神CDブック』も発売しました
大石さん:『コロちゃんパック』として過去に2枚絵本付きCDが出ていますが、今回は『てれびくん』の別冊扱いになっています。こちらには「炎神サードラップ-AERO Dynamic Custom-」が収録されています。7~9番目の空飛ぶ炎神をフィーチャーしています。爽快感や飛翔感を前面に出したアレンジです。Project.Rも二人増えて、サイキックラバーのYOFFYと、岩崎貴文君もギターとラップで参加してします。劇中の炎神の曲がファンクっぽい感じなのでその流れを汲んだ形で、ギターのカッティングがキモになっていて「ファーストラップ」、「セカンドラップ」とはだいぶテイストが違います。基本的にTVで流れることを想定して曲の長さ・構成は同じように作っているんですが、その中でどんなことができるかに毎回挑戦しています。
――そして8月9日からは劇場版が公開されます
大石さん:いよいよですね。僕らも楽しみです。Project.Rとしては劇場版用に特別バージョンのED曲も作りました。基本は「ファーストラップ」がベースで、「炎神フォーメーションラップ-劇場Bang!カスタム-」というタイトルです。今まではマシン達のテーマでしたが、今回はゴーオンジャーやゴーオンウイングスなどのヒーローのテーマ曲になっています。またProject.Rの総力を結集してみんな歌に参加しています。谷本君が赤、高取さんが青、MAYOさんが黄色、高橋君は緑、岩崎君が黒、YOFFYが金、五條さんが銀と色を割り振って、ワンコーラスの中にこれだけのメンバーが歌う競演です。レコーディングでは人がいっぱいで、歌い分けでも「私、どこ歌うの」みたいになってました(笑)。
――番組が2月にスタートしてから次々に曲が披露されますね
大石さん:ずっと『ゴーオンジャー』の曲ばかり作っている気がします(笑)。でもまだまだ沢山レコーディングする予定ですので、番組中で流れたり、またCDの形でリリースされるのを楽しみに待っていてください。
――放送が始まってから人気がある作品でしたが、主題歌シングルが大ヒットして、スーパー戦隊ファンや特撮ファン以外の方も注目したことでファン層が更に広がった気がします。作品と曲がいい形でリンクし、相乗効果を上げているのではないしょうか?
大石さん:そうだとうれしいですね。
――8月もイベント尽くしとか
大石さん:まずProject.Rとしては『プリ!キバ!ゴー!』と題した『Yes!プリキュア5 GoGo!』と『仮面ライダーキバ』との合同イベントが東京ドームシティプリズムホールで行われます。また『アニメジャパンフェス2008』にも参加します。熱い夏になりそうです。
――今後、Project.Rとしてやってみたいことや野望はありますか?
大石さん:そのうち、Project.Rでライブをやりたいなと思っています。参加されている方々は『ゴーオンジャー』関係以外の持ち歌も多いし、芸達者な方ばかりなのでどんなステージができるか、ワクワクしますね。Project.Rを始めた主旨である、「スーパー戦隊シリーズを盛り上げていく」ために今後も精力的に活動していきたいです。7月に入ってCDの連続リリース、8月になると劇場版の公開、イベントなどもあって『ゴーオンジャー』一色で皆さんの夏を染め上げたいと思います。まだまだ『ゴーオンジャー』の曲もたくさん制作中ですので楽しみにしていてくださいね。作品同様、僕ら、Project.Rもいろいろと展開していきたいと思っていますので今後ともよろしくお願いします。