名作『コブラ』が復活!30周年を記念したOVAのOPは高橋洋子さん「傷だらけの夢」、EDは松崎しげるさん「Wanderer」!今回はOP曲を歌う高橋洋子さんに直撃インタビュー!
寺沢武一氏原作の『コブラ』が30周年を迎えたのを記念してOVAシリーズがスタート。OVA第1弾『ザ・サイコガン』は8月29日に発売されるが、その作品のOP曲「傷だらけの夢」も8月27日にリリースされる。歌うのは高橋洋子さんで、宇宙海賊のコブラの孤高の生き様を力強く歌い上げる。ホーンセクションを交えた味のあるアダルトテイストなナンバーだ。カップリングの「Fantasy」は高橋さんが作詞、同じ事務所の森大輔さんが作曲とアレンジを手がけたオリジナル曲で「私の視点から見た『コブラ』の世界を書いてみました。コブラとレディの関係性を私なりに表現してみました」と語る、せつないミディアムナンバー。「傷だらけの夢」と「Fantasy」は『コブラ』の世界観を別の視点で描いた楽曲でつながっている。また高橋さんいわく「この2曲で今の高橋洋子が見ていただけると思います」と語る興味深い1枚になった。
なおED曲は劇場版アニメでコブラ役を演じた松崎しげるさんが歌う「Wanderer」で、「傷だらけの夢」と同日にCDが発売される。
OVAの気になるキャストはコブラ役を野沢那智さん、レディ役を榊原良子さんというテレビアニメシリーズと同じ豪華タッグが実現。寺沢さんが監督を務め、テレビシリーズと同じく出崎統さんがアニメーション監督を担当するなど早くも期待が高まる。『コブラ』の世界観を描いた素晴らしいOP曲とED曲を聴きながら、コブラの活躍をぜひその目に焼き付けよう。
●インスト風のテイストですごく難しい楽曲でした
──『コブラ』の30周年記念OVAのOP曲のお話をいただいた時の感想は?
高橋さん:今回のお話をいただいた時点では『コブラ』という作品についてはあまり詳しくは知りませんでした。周りの方はみんな、「あの『コブラ』ですね!」という反応で、私も絵を見れば「あっ、このキャラクター見たことがある!」という感じで……。曲も事前にいただいていたんですけど、『新世紀エヴァンゲリオン』以降はいただいた曲を歌うという形ではなく、曲の制作段階から私自身が関わって、監督やスタッフの方と話し合いながら詞を書いたり、曲を作り上げて歌うスタイルでやっていたため、悩みました。でも監督からご指名いただいたことは光栄ですし、やらせていただきました。また作品に関わらせていただく時、絵や映像もポイントになるんですが、『コブラ』のアニメ映像を見させていただいたらすごくきれいで素敵だったことも大きかったです。でも30周年という流れに自分がどう入っていけるだろうかとか、自分が歌う必要性とか考えて不安もありましたね。
──曲をいただいた時、どんな印象を受けましたか?
高橋さん:音を最初に聴いた時、どちらかというと歌ものというよりインストのテイストだなと。『コブラ』の世界観をフレーズで表現したような。正しい音程で歌おうとすると想像以上に音域も広いし、テンポも速いし、楽器が演奏するフレーズを人間が歌うという感じで、今までで一、二を争うくらい難しい曲でした。作家の方も「難しいよ」とおっしゃっていましたから(笑)。私が歌うことは前提でなく、『コブラ』の世界観を前提に作られた曲で難易度は高かったんですが頑張りました。
──確かにオケにはホーンが入ったり、アダルトなテイストで、アップダウンのあまりない音の中で感情の抑揚を表現する……難しそうな曲で。だから高橋さんなのかもしれませんね
高橋さん:私のところには難しい曲が来るんですよね(笑)。「残酷な天使のテーゼ」に始まり、「どこで息を吸ったらいいの?」と悩んでいたら終わってるみたいな曲が。あと『太鼓の達人』というゲームで1回歌った時、すごくポップなのにとんでもなく難しい曲があって、印象に残っているんですが、今回はそれを軽く超えました(笑)。
歌う時は30周年らしさをどうにか出したいと思ったし、ポイントとしてインパクトが残ること、歌い上げる部分で込めるところをどこかに作らないと歌い手として不完全燃焼になってしまうので、それを速いテンポと音程の中のどこに持っていこうかとすごく考えました。フィギュアスケートに例えれば、体重をのせて伸びる瞬間が最もきれいに見えると思うんですが、この曲では体重をのせ切る前に「次、次」という感じ、声をのせて一番いい声で聴かせようと思うと次のフレーズになって、聴かせどころを作るのに苦労しましたね。でも作詞の及川眠子さんは言葉の載せ方がうまくて、言葉がちょっと残るようなフレーズがあるので、そこにちょっと引っ掛けて、ためを効かしたりする歌い方ができました。
──詞も『コブラ』らしい雰囲気のある内容になっていますね
高橋さん:カップリングで詞を書かせていただいて、『コブラ』は全体的に漠然と表現するのが難しいお話だなと思いました。「このストーリーが泣けるんだよな」というポイントに持っていくまでにもうちょっと語らいが欲しいなと書き手として思うんですけど、及川さんはそれを相対的にのみ込んだ上で人の心を打つことができる方でさすがだなと。
──また我々が失ってしまったロマンや夢を思い起こさせてくれる気がします
高橋さん:“傷だらけの夢”を自分で消化していくか、やはりロマンがないと美しいものには変えられませんから。でもコブラはサイコガンだったり、宇宙海賊だったり、手が届かないようなところにいるのがいいのかもしれないですね。私的には『トータルリコール』みたいな感じかなととらえていて。世界観はまったく違うけど、宇宙を舞台にしているけど、人間臭くて、果てしない世界は想像のような夢のような、そんなところがいいのかな。
──そんな男臭い孤高のヒーロー、『コブラ』の世界を女性が歌うところが包み込むような大きさを感じました
高橋さん:むしろそういう部分を担当させていただけたらなと。イメージ的には松崎さんのほうが絶対に合うじゃないですか。劇場版でコブラ役を実際にやられているし、大先輩にかなうわけもないですから……。私が歌う意味はそこにあると思っています。
●『コブラ』を立体的に表現したいと考えた「Fantasy」
──カップリング「Fantasy」はどんな曲ですか?
高橋さん:私が詞を書いて、曲とアレンジは同じ事務所の森大輔君に作ってもらいました。
カップリング曲を制作する時、まったく違う世界観の曲ではなく、『コブラ』の世界の延長線上につながる曲で、曲を通して作品を立体的に表現できたらいいなと思いました。OP曲の「傷だらけの夢」とは真逆な対照的な曲にしたいけど、単純なバラード曲にはしたくなかったんです。『コブラ』には広さや乾いた感じの中に人間臭さがあって、すごく熱いけど悲しくて、すごく近いんだけど遠い、そんなイメージがあって、それを音楽で表現してみました。
またこの曲ではレディに焦点を当てています。レディはコブラをリスペクトしながら常にそばにいる存在で、鍵を握るキャラクターだと思っていて、もし私が『コブラ』という作品に参加できるとすれば、レディの側から描いたような曲を作って、歌うことかなという想いがあって……。女性から見たコブラとレディの関係性を書いた感じです。
最初に曲を森君に作ってもらったんですが、彼も『コブラ』を知っていて、自分の音楽制作やライブなどで忙しい中、私が期待していた以上のものを作ってくれました。サウンドから宇宙の中に女性がいる雰囲気や、宇宙の音、空気の匂いまでするんです。コーラスとかも普段は自分でやるんですが、今回はすべて森君にお願いしました。曲をいただいた後、詞を書き終わるのは割りと早かったです。事前に原作も読んでいたし、イメージがしやすい作品でしたから。レコーディングでは奇をてらったり、大げさに歌い上げたりすることなく、淡々と歌いました。
──皆さんにメッセージをお願いします
高橋さん:8月29日に発売される『コブラ』のOVAですが、とても絵がきれいで素敵な作品になっています。OPの絵と曲がシンクロした映像は見どころですのでぜひ見ていただきたいです。そして「傷だらけの夢」と「Fantasy」の2曲を聴いて『コブラ』の世界に浸ってください。そして曲を聴き込んだら、皆さんには「傷だらけの夢」がカラオケに入ったら歌っていただきたいです(笑)。この2曲を合わせて聴いていただくことで今の高橋洋子を見ていただけると思うし、『コブラ』を音楽的な側面からも立体的に感じていただけて、より深みが出るのではないかと思っています。
この秋から来年にかけていろいろなプロジェクトが進行中です。きっと皆さんにも喜んでいただけるお知らせができると思いますので公式ホームページなどでチェックしてください。