押井守×プロダクション I.G 映画最新作! 劇場アニメ『宮本武蔵-双剣に馳せる夢-』初日舞台挨拶詳細レポ!
『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』の押井守監督が原案・脚本を担当した劇場アニメ『宮本武蔵-双剣に馳せる夢-』が6月13日に初日を迎え、東京・テアトル新宿にて押井守さん、西久保瑞穂監督、主題歌を担当した泉谷しげるさんによる舞台挨拶が行なわれた。
『宮本武蔵-双剣に馳せる夢-』は、『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』『イノセンス』『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』など、世界をリードするアニメ映画を制作し続ける押井守×プロダクションI.Gの最新作。剣豪・宮本武蔵が晩年に書いたとされる「五輪書」を軸に、武蔵の生涯と剣法「二天一流」の謎に迫る“歴史アニメドキュメンタリー”だ。
舞台に登壇した押井さんは本作について「創作だが限りなく史実に近いはず」と語り、最近話題となっている「歴女ブーム」にも言及して「若い女性にも武蔵に興味を持ってもらいたい」とアピールした。
先日の速報ニュースでも紹介したこの模様を、より詳しく紹介しよう。
●新たな宮本武蔵像を描く“歴史アニメドキュメンタリー”
関が原に参加し、一乗寺、巌流島まで数々の合戦を勝ち抜いてきた宮本武蔵。武蔵の二刀流、そして彼の剣法“二天一流”の本質とは何だったのか。武蔵が生涯をかけて目指したモノとは……。今まで幾度も描かれてきた“宮本武蔵”に新たな1ページを刻み込む『宮本武蔵-双剣に馳せる夢-』。
10年前に「五輪書」を読んで宮本武蔵に興味を持ち、「こんな日本人もいたのかと新鮮な驚きがあった」と語る押井守さん。最初の段階では武蔵にインタビューするという内容を考えていたが、作画を活かせる企画ということでドキュメンタリー形式を採用したという。さらに「史実の武蔵があまりにも面白いので、フィクションにする意味がない。劇映画として作るという発想は最初からなかった」と明かし、「変といえば変な作りだけど、演出が入るという意味ではちゃんと映画なんですよ。ヒストリーチャンネルや、TVのドキュメンタリー番組が大好きな人間ならこの作品も楽しめるはず」と期待を込める。
●謎のキャラ“犬飼喜一”の正体は押井守!?
また本作について、武蔵研究家として劇中で解説を行なう3DCGキャラクター・犬飼喜一が気になったという押井さん。「奥さんと一緒に見ていたら、“能書きを話しているところだけじゃなく、やっていることも全部同じだわ”って。あれって俺なの?」と西久保瑞穂監督に質問するという一幕も。「宮本武蔵の原型で、それを元にして作ったキャラクター。押井守をイメージしたわけではなくて、たまたま似てしまった」と答える西久保監督だが、現場スタッフも口々に「これ押井さんですよね」と言っていたそうだ。
ドラマ部分では「浪曲をバックに剣戟をするという発想が僕にはない。ウンチクに飽きはじめると浪曲とチャンバラが始まる、あの展開は音楽好きな監督ならでは」と語る押井さん。続けて「自分の脚本を他人に渡すのは『人狼』でもやったけど、他人事で語れるのは嬉しいね(笑)。脚本は1週間くらいで書き上げたので、あとは1年間まっているだけという。あとはこれが売れてくれればもっと嬉しいです」とコメントした。
●“歴女”にも「武蔵に興味を持ってほしい」
「最初の脚本で90%以上ウンチクを書いてきた押井なんですけど、確かに押井守のマニアックなものを薄めてしまったのは申し訳ない」と挨拶した西久保監督。押井さんの最初の脚本では「武蔵は日本のダ・ヴィンチ」として言及していた部分があったといい、「近代的で合理的というので推していましたが、私のなかでは若干結びつきが弱いなと思ったので映画は少々“情緒”寄りになった。私は浪曲とかで遊べて楽しかったんですが、最初の脚本から想定すると、そのあたりはおかんむりかな」と語る。
押井さんは最初の脚本について「最後に武蔵が振り返るとダ・ヴィンチの顔になってると(笑)。ダ・ヴィンチと武蔵はそっくりだと思っていて、“左利き天才説”というのを延々と書いたんですよ」と説明。そして「これがロマンチックな作品に変わったのは監督の力だと思うし、お客さんにとっては一番幸せなことかなと思いますね」という押井さんに、西久保監督は「読み物として面白いので、どこかで押井守のシナリオをつけてもらいたい」とリクエストしていた。
さらに「剣豪でも剣聖でもない宮本武蔵。フィクションの武蔵はいかにウソかというのも書いているので、ぜひ見比べてほしい。創作には違いないけど、僕の描いた武蔵のほうが限りなく史実に近いはずだと確信がある」と自信を覗かせた押井さん。「最近、若い女性の間で歴史ブームになっているらしいと聞いたので、女性にも興味を持ってもらいたい」と“歴女”にもアピールした。
●泉谷さん「アニメ界にケンカを売っているのかと」
泉谷さんの挨拶では、冒頭から「とんでもねえもん作りやがって!」と“泉谷節”が炸裂。さらに「これはアニメ界にケンカを売っているのかなと。ドキュメンタリーとして捉えると面白いので、その良さが上手く伝わればいいんだけど」とコメント。また主題歌「生れ落ちた者へ」について質問が及ぶと、泉谷さんは「押井守だから下手なものは作れないなと。自分の中で盛り上がって、まあ5分くらいで作りましたけど」と答えて会場の笑いを誘う。
「押井さんのやることは読めないので推測してもしょうがない。こっちが思ったものとは違うものが必ず出てきますからね。まさかここまで違うとは思わなかったですけど。押井さんは一つのカテゴリーに収まらない人だから、こっちも簡単に収まらない努力をしたつもり」と続けた泉谷さん。「理解あるお客さんばかりじゃないんだから。いろいろ悶着をおこしてくださいね(笑)。お互い映画を盛り上げていきたいのでよろしくお願いします」と述べて今回の舞台挨拶を締めくくった。
劇場アニメ『宮本武蔵-双剣に馳せる夢-』は2009年6月13日(土)より、テアトル新宿、テアトル梅田、名古屋ゴールド劇場にて上映中。
劇場アニメ『宮本武蔵-双剣に馳せる夢-』
2009年6月13日(土)より、テアトル新宿、テアトル梅田、名古屋ゴールド劇場にて公開
<スタッフ>
原案・脚本:押井守
監督:西久保瑞穂
キャラクターデザイン:中澤一登
作画監督:黄瀬和哉
美術監督:平田秀一
色彩設計:遊佐久美子
撮影:江面久
CGIアニメーション:遠藤誠
編集:植松淳一
制作:プロダクション I.G
配給:ポニーキャニオン
主題歌:泉谷しげる「生まれ落ちた者へ」