一般誌でも話題の“大人の時間”が堪能できるアニメ『リストランテ・パラディーゾ』がいよいよDVDリリース開始。松竹・瀬戸プロデューサーに誕生秘話からDVD特典までインタビュー!
フジテレビ・NOISE枠でこの春から放送されたTVアニメ『リストランテ・パラディーゾ』がDVD化。7/29の第1巻を皮切りに全5巻のリリースが始まる。
同作はオノナツメ氏原作のコミックが原作。2005年から連載が開始された『リストランテ・パラディーゾ』は、その後も番外編的な作品である『GENTE~リストランテの人々~』が連載されるなど、根強い人気だ。
イタリア、ローマを舞台に、再婚のために自分を置き去りにした母親を恨んで、母親の再婚相手の経営するリストランテ「カゼッタ・デッロルソ」を訪れたヒロイン・ニコレッタが、従業員が全員、老眼鏡着用の紳士という「カゼッタ・デッロルソ」の、紳士を気になり始めてしまうという物語は、その優雅で独特のテイストが魅力。作中同様、女性の心をしっかりと捉えた。今回のアニメ版でもゆったりとした大人の雰囲気を存分に映像化。深夜の放送ながらアニメファン以外にもアピールし、人気となった。
今回はその立役者でもあり、アニメ化のキーパーソンともいえる、松竹・瀬戸麻理子プロデューサーにインタビュー。アニメ化にいたる経緯から、放送後の反響、そして注目のDVD豪華特典のことなどを伺った。
●元々好きだった作品を提案してアニメ化へ
――多くのアニメ同様、製作委員会方式で作られた『リスパラ』ですが、最初にアニメ化したいという提案はどこから出てきたんでしょうか?
瀬戸氏:フジテレビさんとNOISE枠の作品に何本か参加させていただく中で、企画会議で「好きなものを出しあおう」ということになり、私から『リスパラ』を出させてもらって、フジのプロデューサーさんも「あっ、それは僕も……!」という感じになりました。そこから発展した形です。
元々、私も好きだった作品なので、企画を出させていただいたのですが、フジテレビさんでも候補にリストアップされていて、偶然一致したんです。
――瀬戸さんが『リスパラ』を知ったのはいつごろだったんですか……?
瀬戸氏:単行本が出版されたのが2006年ごろだったと思うんですが、その1年後くらい…… 3年ぐらい前ですね。
――元々マンガは読まれるほうなんですか?
瀬戸氏:ええ、部署がそういう部署なので、みんながマンガを買ってきたりして、本棚に入っているのをみんなで読みあって……。
――今、部署でということですが、個人的に『リスパラ』のようなマンガが元々お好きだったんですか?それとは別に読んで映像化したらいけそうだ、という直感のようなものもあったのでしょうか……?
瀬戸氏:オノさんのマンガって、映像が思い浮かぶというか、マンガ自体が映像的なので、絵として動かすのは難しいとは思いつつも、それが上手く行ったらすごいんじゃないかなとは思いました。
●イメージボードの勝利と、難航したキャラデザイン
――実際にアニメ化するにあたって、どう映像化しようとお考えになりましたか?
瀬戸氏:オノさんのマンガは絵柄やその雰囲気が好きな方、コアなマンガ好きだけでなくライトな層も買っていると思うんです。そもそも、そういった全ての「“オノさんファン”の期待を裏切らないようにしたい」というのがありました。
私自身としてはオノさん独特のセンスある部分を膨らませつつ、誰もが観て面白いと思えるようなものを作りたいと思いました。
――特に絵柄の部分では、オノさんとの話し合いもされたと思いますが……。
瀬戸氏:ええ、すごくたくさん話しました。どの作家さんもそうですが、作品を大切にされていて、オノさんは「自分が納得できなければ無理に映像化しなくてもいい」というスタンスでした。オノさんと話に行く前に制作陣は決まっていて、デイヴィット・プロダクションのみなさんには、最初に作品のイメージを伝えていたのですが、それが通じたというか、スタッフのみなさんも同じ方向を向いていて、作品の方向性としておしゃれな感じを出すために、アートディレクターをたてようということになったんです。
それでアートディレクターのソエジマヤスフミさんに、マンガのイラストに背景画をつけてもらったイメージボードを作ってもらって、それを企画書とともにオノさんのもとに持って行ったんです。それが気に入っていただけたようで、そこから話が進みましたね。オノさんに自分たちのやりたい方向が伝わりました。
――でも、あのキャラクターを動かすのは、実際大変だったと思います。試写会のときにも監督が「大変だった」お話していましたよね。
瀬戸氏:最初の段階が一番大変で、そのあとはオノさんも「やるなら徹底的にやりたい」と話してくださって、細かいやりとりもできたのですが、キャラクターはデイビヴィット・プロダクションさんがすごい苦労されていました。
なかなか決まらなくて紆余曲折あった中、デザイナーを竹田(逸子)さんにお願いしました。そうしたら竹田さんのラフがすごく良くて、オノさんサイドにもすごく好評でした。
●“間”を大事にした映像に、男性からも支持が
――スタッフに恵まれた作品ですよね。物語の進むペースも大人向けというか、非常にゆったりしていますが、アニメであんなにゆっくりとストーリーが進行することに、不安はありませんでしたか?
瀬戸氏:「(脚本の枚数が)少ないんじゃない?」「このぐらいのボリュームでいいの?」という話は1話、2話を作っている段階で議論していたんです。ただ、「この作品では“間”を大事にしていきたい」ということを監督などとも話しました。オノさんのマンガって、目で訴えるようなシーンが結構あって、そういうところって“間”がないと伝えきれないと思いました。チャレンジではありましたが、それがないと『リスパラ』じゃなくなってしまう、『リスパラ』をやるからにはこうじゃなくちゃ、というのはありましたね。
――何も考えずに観た人のほうが素直に受け入れそうですよね。放送後の反響はどうでしたか?
瀬戸氏:“間”については、感想を頂いている分にはそんなに指摘されたことはありませんでしたね。フジテレビでは、1話と2話を初回にまとめて放送したのですが、インパクトがあったようです。ちょうど2話に押し倒すシーンがあったので、2話まで一気に放送できたのは良かったですね。
――『リスパラ』はアニメ誌以外に女性誌などでも、大きく扱われました。この辺の展開に関してはどのような戦略で望まれたんでしょうか?
瀬戸氏:やっぱりアニメファンだけでなく、広く多くの方に観てもらいたかったというのがあります。それに、オノさんは業界内にファンが多いんですよね。雑誌の編集さんなどにもファンの方が多くて、それで取り上げてもらいやすかったというのはあります。
――アニメファンのなかでも、ゆったりした本当の意味で大人向けのアニメを見たがっていた方もいらっしゃったと思います。
瀬戸氏:そうなんですよ。公式サイトで感想を募集していたんですけど、意外とオノさんファンだけでなく、初めて観たという人からの感想が多かったです。しかも男性で、全く知らずに初めて観て良かったと、ベタ褒めしてくれる方が結構メールをくれました。オノさんのマンガのファンって女性が多いはずですが、感想メールは男性が半分ぐらいだったんです。「良かったな、ちゃんと届いたんだな」と感じました。
●究極の特典、それは新作コミックです
――そしてDVDが発売されるわけですが、DVD版では、手を加えた箇所などはあるのですか?
瀬戸氏:イタリア語が難しい言語だったこともあって、その辺でのクオリティアップをはかっています。公式サイトにイタリア人の方からメールが来て、「僕『リスパラ』好きなんだけど、色々教えたいことがあるから、もっとメールしていい?」みたいに言ってくれる人もいて、そういうのは良かったなと(笑)。
――DVDといえば特典ですが、こちらはどうなっているのでしょうか?
瀬戸氏:今回、オノさんがアニメをすごく気に入ってくれていることもあって、アウタージャケットを描き下ろしてくれています。1巻ずつ紳士たちが描いてあって、さらにブックレットには、オノさん描き下ろしのコミックが入っているんですよ。
――それはすごいですね。
瀬戸氏:フリオがシェフとしてお店にやってきたときに、クラウディオから老眼鏡を渡されたというエピソードがあって、そのときのお話が5巻に亘って収録されています。
――全巻揃えると全部読めるというのは、ある意味究極の特典ですね。
瀬戸氏:また、5巻全部買うと全巻購入特典にも、オノさんが何かを描いてくれます。詳細は今後のお楽しみです。
――最後に、アニメイトTV読者と『リスパラ』ファンにメッセージをお願いします。
瀬戸氏:『リスパラ』は普遍的なステキなお話だと思います。ニコレッタとクラウディオの恋愛!?にも注目してほしいですが、それだけでなく、紳士達の今までの人生経験だったり、家族との絆などがじっくりと描かれていて、心が温かくなります。ぜひまだ観ていない方は、DVD発売を機に観ていただければと思います。よろしくお願いします。