福圓美里さんと松崎亜希子さんの演劇ユニット、乙女企画クロジ☆の第8回公演『きんとと』をレポート
福圓美里さんと松崎亜希子さんの演劇ユニット、乙女企画クロジ☆の第8回公演『きんとと』が10月1~4日まで、東京・シアターサンモールで行われた。
乙女企画クロジ☆は福圓さんと松崎さんの二人の劇団で、公演ごとに自分達がやりたい題材に合ったスタッフ、出演者をコーディネイトして、人間の生々しくも滑稽な生態を独自の視点で描いた個性的な舞台を提供している。
本公演は昭和初期の日本の娼館を舞台に、取り巻く様々な人間模様と愛憎劇で、出演者はそれぞれの登場人物の心理や背景を繊細かつ激しく演じた。クライマックスシーンは映画を思わせる壮大さで観客を圧倒した。劇団史上最大のキャパシティの劇場、最高の登場人物、上演時間などクロジとして記録尽くめの公演は大成功だった。
次回公演は2010年5月13日~16日、新宿・スペース107にて開催。
●『きんとと』は昭和初期の娼館を舞台にした愛憎劇
乙女企画クロジ☆のステージは人間、特に女性の感情の生々しさや滑稽さをシニカルな視点で描く作品が多いが、本公演では「劇団史上初めて、『恋愛とは?』を突き詰めてみました」と語っていた福圓さん。
第8回公演の『きんとと』では日本の娼館が舞台になっているが、テーマに選んだ理由は「娼館にずっと関心があって、『遊女にとって恋愛感情や表現方法ってどんな感じになるんだろう?』と。また今回は派手な舞台にしたいと思っていたので、華やかに見える娼館はピッタリかなと」とのこと。
娼館と遊女。一見、難しく見えるテーマを女性独自の視点でどのように舞台化したのだろうか?
●娼館に渦巻く様々な感情のリアルさ。壮大なクライマックスは圧巻
物語は昭和初期の日本。常葉(松崎)が取り仕切る娼館には売れっ子娼婦で身請け直前の玉菱(大浦)、その妹分のはま乃(木村)、男性に身を売る男娼・萩泉(藤波)、常に脱走を企てる雪路(小田)、顔に大きな傷跡を残す睦(福圓)、番頭の泰介(武藤)が身を寄せていた。そこには常連の軍人、戸塚(波多野)、新婚の部下・日下(吉田)、玉菱を引き受ける木澤(上田)、娼館の経営者・若槻(平野)などが訪れる。
娼婦と男娼を巡り、様々な人物達が絡み合い、感情を交錯させる愛憎模様は生々しくもあり、滑稽にも映る。物語が終盤に向かうとそれぞれの人物の感情が爆発し、想いをぶつけ合う。激しいセリフや動きが舞台上で展開され、そして壮絶なクライマックス。まるで映画『吉原炎上』のようなスケール感に圧倒された。それだけに穏やかに流れるエンディングシーンは印象的だった。
●劇団史上最高の挑戦は大成功! 次回公演は2010年5月
劇団史上最大のキャパシティの劇場、最高の登場人物、上演時間などクロジとして記録尽くめの公演であり、舞台にかける意気込みも大きかった。
これまで公演を8回重ねてきたことで、これまでクロジの舞台に参加してくれたキャスト、サポートしたスタッフとの手応えが今回の挑戦につながったと話していた。ふたを開けると会場は毎公演で満員、舞台も無事に千秋楽を迎え、大成功のうちに終了した。
会場手配からチケット発送、チラシ制作など、ほとんどすべてを福圓さんと松崎さんで賄いながら二人三脚でやってきた劇団としては快挙ともいえる。しかしまだまだ舞台でやりたいことが尽きない二人だけに、次回公演が行われる2010年5月にどんなステージを見せてくれるのか。期待したい。
出演
萩泉:藤波瞬平
玉菱:大浦冬華
はま乃:木村はるか
雪路:小田久史
睦:福圓美里
常葉:松崎亜希子
若槻仁太郎:平野貴裕
泰介:武藤啓太
日下憲夫:吉田智則
日下とう子:仙台エリ
芝田:市来光弘
戸塚佳正:波多野和俊
木澤周二:上田裕之
>>乙女企画クロジ☆公式サイト