『TO』の曽利文彦監督と『龍が如く』の名越稔洋総合監督がデジハリで講演&対談!──2人が考える“クリエイティビティ”、そして日本のコンテンツシーンの未来とは!?
3Dライブアニメ『APPLESEED アップルシード』や『ベクシル-2077 日本鎖国-』をヒットさせた曽利文彦監督と、累計出荷本数が320万本を超える大ヒットとなった、ゲーム『龍が如く』シリーズ総合監督の名越稔洋氏。両者の共通項といえば3DCGを駆使した人気作品を世に送りだしているということ。この2人が講演&対談を行うと聞いたら、業界関係者やファンならずとも興味津々になることだろう。今回、そんな夢の企画が、曽利監督の最新作、『TO(トゥー) 楕円軌道』『TO 共生惑星』のBlu-Ray&DVDの発売記念イベントとして、IT関連及びデジタルコンテンツの人材育成スクールであるデジタルハリウッド大学の特別授業という形で実現した。2人が語ったクリエイタースピリッツ、それが目指す未来とは?特別講義と対談の模様をレポートする。
●曽利監督「同じ条件で世界に挑むのは難しい。だからトゥーンシェイド」
今回の特別講義、最初の講師となったのは曽利文彦監督。ハイクオリティーかつ、日本独自のイマジネーションにあふれた映像美で魅せる“3Dライブアニメ”を続々と生み出す曽利監督だけに、受講する生徒たちの期待も高まる。
講義は曽利監督自身の作品の歴史を振り返りながら、現在に至るまでの3Dアニメーションがいかなる発展を遂げたかを解説するという内容。ここでは12年前のデジタル・ドメイン社での経験から、映画監督マイケル・アリアスらのトゥーンシェイドとその類似技術の勃興など、興味深い話題が数多く語られた。
曽利監督の3DCG作品の原点となった『アイアンメイデン』や、出世作である『APPLESEED アップルシード』、『ベクシル-2077 日本鎖国-』、そして最新作である『TO 楕円軌道』『TO 共生惑星』の映像の上映は、講義で語られたCG技術発展の様子を雄弁に示している。
そんな曽利監督が自身の作品でトゥーンシェイドにこだわるのは、「アメリカのフルCGのアニメーションと同じ条件で戦えるかといえば、まだまだ難しい。だからこそ、自分たちだけにしか出来ない表現方法を選びたい」という、世界規模のマーケティングを見据えた持論があるからだという。世界中にファンを増やし続けている曽利監督のこの手法が、いかなる発展を遂げていくのか注目である。
●名越監督「独自のビジョンを持って、クリエイターはエゴイストたれ!」
続く講義は、「誰もが知る世界ながら、誰も手をつけなかった」“歓楽街”を舞台とし大ヒットを飛ばした、『龍が如く』シリーズの生みの親、名越稔洋総合監督による人生訓といった趣だ。
映画界を目指しながらもSEGAに入社したという経緯、マイケル・アリアスとの出会いなど、プロフィール的にも非常に興味深い名越総合監督であるが、注目したいのはCGやゲーム制作に対する姿勢である。ゲームは当然のように商品であり、マーケティングまで考えなければ制作は出来ない。大きな売り上げを期待するのであれば、購買層を大きく取るのが当たり前である。そこに用いられるCGもまた、皆から好かれるものであるのが普通だ。
だが、名越総合監督は「CG制作には独自のヴィジョンが必要」と、そこに疑問を投げかける。広い層に訴える作品は、それだけ訴えるべき視点がぼやけてしまうというのだ。一部をそぎ落としても、人に訴えるものを作る。『龍が如く』は、そうした名越総合監督の思想から生まれたものだという。
また、表現に関しての言葉も含蓄がある。特に「ものを描くためには、好奇心を持つこと。それの裏まで知りたいと思わなければ、表面的なものしか描けない」、「今だから出来る好きなことをしなさい。いずれは自分の出来る範囲で行動することになるのだから」という言葉は、CG制作に限らず考えさせられる言葉だろう。
●仕事から逃避するために、別のクリエイションを思索してしまう
講義の後に行われた曽利監督と、名越総合監督の対談は、この2人がどうしてクリエイターを目指したかというルーツが垣間見える貴重なものである。
司会者からの質問に答える形式で行われたこの対談。「3DCGを作る上で気をつけていること」、「それぞれの最新作で苦労した点」など、さまざまな質問の中でも注目だったのは、「オリジナリティーのある発想をするには」という質問だろう。
名越総監督は、「クリエイターは24時間ものを作ることを考えている。たとえ逃避で考えていても、別の何かを作ろうと考えているものだ」と熱弁。一方、曽利監督からは、『TO』の原作である星野之宣氏の名作コミック、『2001夜物語』を読んで、「いつかこれを映像化したい」とずっと願っていたというエピソードが語られている。
「クリエイターとして影響を受けた作品」という質問では、名越総監督は「少しでもいいものがあればなんでも影響を受ける。でも、そういう自分が好きだというものを人に伝えるのが大事」、曽利監督は「『ゴッドファーザー』や『アマデウス』のように、エンターテイメントに収まらないものに惹かれる」と、それぞれが回答してくれた。
対談では最後に2人から、若きクリエイターたちへのメッセージが送られ、特別講義は終了した。
「自分も10代の頃は逃げることが多かったけれども、逃げないようになってから変われた。若い頃はとにかく行動を」(曽利氏)
「まず自信を持って、思ったら人に言う。そしてリアクションをもらえる仲間を作って欲しい」(名越氏)
>>『TO』公式サイト
>>『龍が如く4 伝説を継ぐもの』公式サイト
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初回封入特典:3Dカード
特典映像:CM、トレーラー集
『龍が如く4 伝説を継ぐもの』
2010年3月18日発売
機種:PlayStation(R)3
ジャンル:アクションアドベンチャー
プレイ人数:1人
7,980円(税込)
メーカー:セガ
(C)SEGA