アートワークにまでこだわりぬいた最新ミニアルバム『夜想サァカス』をリリースする池澤春菜にインタビュー――「私が歌うのは“役者の歌”~それは“言葉を伝える力”を持った歌」
5月26日に、ミニ・アルバム『夜想サァカス』を発売する池澤春菜さん。6月13日には、吉祥寺Star Pine Cafeにて、1日2公演のライブも実施。今後もアルバム発売へ向け、池澤春菜さんの情報を随時お届けしていきます。その第一弾として、現在絶賛レコーディング中の彼女をつかまえ、新作の魅力を伺いました。
●最新ミニ・アルバムのテーマとして掲げたのが、「童話・お伽の国・水彩画」。
――最新ミニ・アルバムのテーマとして掲げたのが、「童話・お伽の国・水彩画」。まずは、そのテーマを据えた理由や想いから聴かせてください
池澤:自分の中では、アルバムとミニ・アルバムでは、制作してゆくうえでの立ち位置が異なるんです。アルバムの場合10曲程度楽曲が入るので、いろんなバリエーションを詰め込みたいなと思っているんですね。対してミニ・アルバムというのは、5曲前後の収録曲になるぶん、あえて「世界観を統一」していきたいなと、わたしは思っています。
今回の作品を作るうえでも、あらかじめ「こういう世界観で作品を作りたい」と自分の中で決め、それを制作チームに伝えていく形でスタート。面白いのが、「童話・お伽の国・水彩画」のようなテーマ性となるキーワードを伝えてゆくことで、自分が思っていた以上に楽曲の広がりが生まれ、素晴らしい世界が形作られていくことなんです。
――みんなで意識を共有していくスタイルって、素敵ですね
池澤:そう。一つのキーワードに対しても、一人一人考えたり受け止めるイメージって違うじゃないですか。そのズレが、逆に面白さを産むんですよね。自分だけで作り込んでしまうと、どうしても固まった世界観になってしまう。でも、こうやって他の人と作って行くことでイメージが自然と広がっていく。それが面白いなと思ってるし。そこが、チームとして作るアルバム制作の醍醐味だなとも感じています。
――現在携わっている制作チーム陣も、すでに何度も一緒に作品を積み重ねてきた人たちばかり
池澤:これまで『Confetti』『光の花束』『Quatrequarts』と3枚の作品を重ねてきたので、わたしの好きな音楽性や世界観をわかってくださっている。そこはもう、安心してお任せできる信頼感があります。
●なんか「“大人のファンタジー”を描きたいな」と思って
――ミニ・アルバムのタイトルが『夜想サァカス』。収録する楽曲を少しだけ聴かせていただきましたが、とても幻想的かつファンタジックな世界観が広がる作品という印象を受けました
池澤:なんか「“大人のファンタジー”を描きたいな」と思って。その想いをとくに象徴しているのが、わたしが作詞も手がけた『水彩の国』に描いた世界観なんです。
誰だって心の中に小さな庭や国を持っている。つらいことなど、いろんな心の負担があったときには、そこへ逃げ帰ることが出来ると思うんです。だけど、何時かはその庭や国から出ていかなきゃいけない。つまり、外の世界と向き合ってゆく現実も経験しなきゃいけないんです。それでも、自分の中に“誰も入り込むことの出来ない秘密の場所”があると思えるだけで、人は少しだけ心が強くなれるじゃないですか。そういう誰もが子供の頃から持ち続けているような想いや世界観を、この作品には投影していきました。それこそが“大人だからこそ夢観ることができるファンタジー”なのかなと、わたしは思っています。
――中には、痛いファンタジー的な世界観もあったりするのでしょうか??
池澤:「Wintermute」という楽曲は、痛い感じが出ていると思います。それこそ、心をヤスリでザラッとなぞったような焦燥感が前に出ていたり。“ファンタジー”という言葉一つを取っても、そこからいろんなバリエーションが広がってゆくようで、そこが面白いところですよね。
――ジャケットのアートワークが、まさに『夜想サァカス』というタイトルに相応しいファンタジックな風景描いていますよね。観てて、ズーッと惹きつけられっぱなしでした。
池澤:夜、もぅ寝なきゃいけないのに、ものすごく脳味噌が活発化してしまうことってありません??今こんなこと考えてる場合じゃないのに、いろんな想いが止めどなくあふれ出てくるような。そういう、“夜になって、頭の中からいろいろファンタジックな想いがあふれ出てゆく”ときの姿を。 それこそ“頭の中から湧き出たファンタジーが、ふたたび頭の中へ戻っていく”様を、以前から憧れていたイラストレーターのヨシツギさんにビジュアル化していただきました。
――このジャケットを観ているだけで、『夜想サァカス』を通し描き出そうとしている世界観が、頭の中へ具現化していきそうな気分です
池澤:アルバムって、みんなでパズルを作っているような感覚なんですね。各々の制作陣が持っている小さなパズルのピースたち。それをはめていきながら、「わたしたちが描き出そうしていた絵は、こんな素敵な絵だったのね!!」というのがわかると言うか。そのパズルのピースを埋め込んでゆく過程の中、このジャケットが完成したことから、おっきいピースがドカッと入り。私たち自身も、全体の絵がより一層明確に見えてきた気分なんです。
――『夜想サァカス』というロゴも、素敵だなぁと思いました
池澤:夜想の夜の上の部分に旗が立っていたり。想の目の部分が月になっていたり。なんか、オムライスに旗を立ててもらったような嬉しい気分です(笑)。
●その人にとって「忘れられない歌」になれたら、幸せだなぁとも思っています
――アルバムへ収録した歌たちは、どれも“歌声のニュアンス”をとても大切にしながら表現している作品になっていませんか??
池澤:そこは“役者の歌”として、大切に表現しているところですから。
――役者の歌……ですか
池澤:わたしは役者が本業です。プロのシンガーの人たちと比べたら、劣る部分はたくさんあります。一時期、「歌がものすごく上手いわけでもないのに、わたしがアルバムを出す意味や理由って何処にあるんだろう?!」と悩んだこともありました。そのときに気づいたのが、「わたしが持っているのは、プロのシンガーのよう音程を正しく歌ったり、リズムへ正しく歌をはめていくことではない。“言葉を伝える力”を持っていることなんだ」ということ。そこに気づいてからは、気持ちがだいぶ楽になりましたね。それ以降からはとくに、“言葉の一つ一つを大切に伝えていくこと”を強く心がけるようになりましたし。そこを大事にして表現いくようになって以降は、気持ちがぶれることなく制作へ携わっていけるようにもなりました。
――現在、まだ制作途中の段階です。現時点で感じている想いで良いので、「どんな作品になりそうか?!」、そこを教えてください
池澤:今、一番人生で幸せを感じられる作品になっています。もちろん、過去に発表したアルバムたちも素晴らしくて、強い思い入れはあるんですけど。1枚ごとに積み重ねた経験を活かしきれてる実感を覚えながら制作出来てると言いますか。毎回そうなんですけど、これまでの活動を集大成した作品になりそうです。そして、わたし自身も楽曲に心助けられることが多かったように、この『夜想サァカス』へ収録した楽曲の中、どれか1曲でいい、その人にとって「忘れられない歌」になったら、幸せだなぁとも思っています。
――6月13日には、吉祥寺Star Pine Cafeを舞台に、『夜想サァカス~白昼マチネ~』『夜想サァカス~宵闇ソワレ~』と、1日2公演のライブも決定しています
池澤:半年に1回の、今年も恒例の季節がやってまいります(笑)。
池澤:『夜想サァカス』というタイトルのように、今回の作品はぜひ夜に聴いてください。美味しいお茶を片手に、ヘッドホンをしながら、ゆったりとした気分のもと夜に聴いていただけると、とても心地好く作品の世界観を味わえると思います。(敬称略)
<TEXT:長澤智典>
『夜想サァカス』/池澤春菜
2010年5月26日発売
1890円(税込)
発売元:WAVEMASTER
>>池澤春菜公式サイト HA*LUNApark
>>池澤春菜ブログ「ななろぐ」