ドラマ『もやしもん』リレーインタビュー企画:スタッフ編――森田淳也監督インタビュー「CGよりなにより撮影現場がトリッキーでした!役者さんごめんなさい(笑)」
ノイタミナ初の実写作品として、アニメ界だけでなくドラマシーンからも注目となっているドラマ『もやしもん』。すでに予告編などで、そのクオリティの高い映像に衝撃を受けた人も多いはず。特撮でもここまでは、というほどに多用されたCGによって、マンガのイメージをリスペクトしつつ、独自の世界観を作り上げた映像は、まさに必見の一言!
アニメイトTVでは現在、ドラマ『もやしもん』の魅力を多方面から掘り起こすべくリレー企画を実施中。第2回となる今回は各話監督を務めた森田淳也氏にインタビュー。岩本監督とともにドラマの根幹を支えた森田氏に、いろんなこと、聞いちゃいました!
――早速ですが、森田監督は各話監督という肩書きですが、このドラマではどういった役割だったのかを教えていただけますか?
森田監督(以下森田):僕は11話あるなかで3話分の監督とVFXスーパーバイザーを兼任してやりました。この『もやしもん』は原作があるものなので、原作の中でもドラマにするものとしないものを岩本監督が分類し、シリーズのコンセプトを決める。それが決まった上で、僕が任された話数の内容をどれだけ面白く広げられるかということを考えました。岩本監督を中心に頂いた話数を撮っていくという感じです。
――ちなみに、森田監督が担当された話数は?
森田:5・6・10話です。
――担当された5話と6話はどんなお話なんでしょうか?
森田:原作にわりと近いのが1~4話までだとして、原作にもあるストーリーなんですが、解釈が変わってきた感じがするのが5話だと思います。アレンジがかなり加わっていて直球が変化球になる感じ(笑)。台本の部分からその気配があったし、自由度が増したので、自分の采配で色々と撮らせていただきました。原作とはある意味変わったんですが、そんなに変わってないという(笑)。
――5話から自由度が増したとおっしゃっていましたが、全体のなかで自分が担当した話数に、個性や遊びを織り込んでいくのは、バランスが大変そうに感じるのですが……
森田:5、6話はテンションが高いシーンが多かったのですが、各部署のスタッフが遊びを入れたり、俳優さんたちも演出意図を理解してくれて、いろいろ面白くしてくれました(笑)。
――5~6話の見どころはどこでしょうか?
森田:4話まではチラチラと、居るか居ないか分からないような感じで出ていたゴスロリの蛍が、5話からガッツリと物語に絡んでくるので、そこは盛り上がる見どころだと思います。
――蛍を演じているのが女性の岡本あずささん。“ゴスロリ”の“男の子”を“女の子”が演じるというのは難しそうですが、監督から岡本さんに何か指示されたことはありますか?
森田:“時折、男っぽさを出しつつ、でも基本は女子には見えるような感じで”と難しいお願いをしたと思います。最初に蛍が登場したときは、ゴスロリの格好をした女の子としても登場だったので、どこか女性の雰囲気が醸し出されていても問題がなかったんですが、5~6話に関しては、蛍のターニングポイントで話が動き出すところでもあるので、“スイッチ”するところは難しかったと思います。
それが何を意味するかは実際に見て確認してください。実際に観てほしいです。
――他のキャストの方に関してもおうかがいできますか?
森田:みなさん、本当に芸達者です。現場でアレンジしたり試してもらったりしてくれたことがあって、木村さんと西田さんが絡むシーンでは、“僕らが笑わされてる”というのが多々ありました。
――木村さんと西田さんはやっぱりアドリブも多かったんですか?
森田:そうですね。結構、色々と入れてくれました。面白いのでそのまま採用したシーンがたくさんありますよ。
――では、次は撮影現場での思い出を聞かせてください。
森田:僕は各話監督をやっていますが、それ以外にもCGが絡む撮影の時は全部の撮影に立ち会いました。撮影の仕方がトリッキーで、各話、入り乱れて撮影を行なっていました。
――それは5話を撮り終わったら6話に……ということではなく、5話のこのシーンが終わったら次は6話みたいな……。
森田:2話を撮っていたりしましたよ(笑)。僕以外の監督の撮影の時はCG関係で現場に立っていたので、CGカットの撮影をしつつ……「じゃあ、ご飯食べた後は監督です!」と言われたりして、切り替えが自分でも解らなくなるときがありましたね(笑)。
――それって特撮の世界では当たり前なことなんですか?
森田:いや、ごく稀にありますが、基本は話数に忠実ですね。特撮では、場所的な問題で入り乱れることがあります。ここまで入り乱れるのは初めての体験ですね(笑)。キャストがいちばん大変だったでしょうね。
――CGの部分でこだわった部分を聞かせてください。
森田:こだわりは“菌”に尽きます。今まで特撮でやってきた光線を飛ばすような効果は、派手にして逃げることができる方法でもあるんですが、小さな“菌”となると逃げる部分がない。そこにリアルに居るという“見える”ことが重要なので、リアル感というのは特撮よりシビアでした。
――CGで菌を表現することに関して気を使っていた部分はありますか?
森田:岩本監督とも一緒に試行錯誤しましたが、菌の“質感”ですね。“そこにいる”こと自体に違和感を感じられてしまうと、このドラマは成り立たないので、できるだけそこになじませるような撮り方をしました。例えば、CG用に光の入り方や影の入り方が分かるように銀の球やグレーの球を置いて撮ったり。
時間はかかってしまうけど、リアルに近づけるためには、いろいろと気をつけることが多くありました。先ほど、リアルに近づけたいと言いましたが、リアルにすればいいというものではないというところでの違和感のなさが難しかったです。
――CGで絵を載せる前提でドラマを創られていて、その構図や、菌がいる設定でキャストに演技してもらう構成はすごく大変なものですよね?
森田:今回、菌のおもちゃに棒をつけて「ここに菌がいます」という印を設けました。助監督さんに棒を持ってもらって、動かして。そうすることによって、キャストのみなさんのガイドにもなるし、CGのガイドにもなるので、そういうことを本番前に何度も撮って。同じシーンを何回も撮るという細かい作業がありましたね。
あと、動いているキャストの人の肩に菌が乗るシーンではCGで追いかけるために服に印を付けてもらいました。僕らはそこにCGを合成するから、なんの違和感もないですが、やっぱりキャストのみなさんは戸惑いがあったと思いますよ。「そこに菌がいっぱいいます」と言われても……ねぇ(笑)。第1話の樽が倒れるシーンもCGなんです。中村くんたちは倉庫の中で何もない中で演技していたんですよ。
――今回CGがかなり多用されていて、特撮や映画以上ではないかと想いました。深夜枠のドラマでここまで出来る秘訣はあるのでしょうか?
森田:岩本監督に「深夜だから……」と軽く見られたくない気持ちがあったんだと思います。CGのカット数はこの時間帯のドラマとしては尋常じゃないので作業は予想以上に大変でしたが、今までにないドラマを目指して、作業するスタッフたちがモチベーションをあげて頑張ってくれました。
――最後になりますが、ドラマ『もやしもん』の見どころやアピールポイントをお願いします
森田:先ほども言いましたが、深夜枠にも関わらずCGを使った見せ場が多いドラマになっています。キャストのみなさんもテンション高く、面白い演技をしてくださっています。原作を知っている人も知らない人も楽しめる青春ドラマになっています。
<聞き手:だーくまたお>
<取材・文:岡有希>
ドラマ『もやしもん』
7月8日より毎週木曜24:45~フジテレビ“ノイタミナ”ほかにて放送
※初回放送は 25:00~
関西テレビ 7月13日(火)より毎週火曜 25:29~
東海テレビ 7月15日(木)より毎週木曜 26:15~
BSフジ 8月14日(土)より毎週土曜 25:00~放送 ※毎月最終週のみ休止予定
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