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『四畳半神話大系』湯浅監督「リア充にならないラストにしました」

『四畳半神話大系』リレー企画最終回は湯浅監督が再び登場!――「主人公が“リア充”と悟られすぎない終わり方にしました」怒涛のスペシャルインタビュー

 この春から一時間枠になり、さらにパワーアップしたフジテレビの“ノイタミナ”。その第一弾となった『四畳半神話大系』はモノローグがメインで画面作りも独特。いままでのアニメとは一味違う雰囲気で、アニメ好きだけじゃなく、広く話題をふりまいてきた。

 ついに最終回を迎えた『四畳半神話大系』だけど、アニメイトTVでは連続インタビュー企画でフィーチャー。その最終回を締めくくるゲストとして登場していただくのは湯浅政明監督。放送前にもインタビューしたアニメイトTVだけど、放送を終えた今、再度インタビューを敢行。衝撃の最終回に至るまでの経緯や、ストーリー中に散りばめられた演出意図など“『四畳半』世界”を存分に聞いてみました!

●演出の“解”をどう計算したのか?──「OP映像は最終回を考えた上で作ってます」

──TVシリーズ完結おめでとうございます

湯浅監督(以下、湯浅):ありがとうございます。


──以前のインタビューで絵へのこだわりをうかがった際に、「色数を抑えたい」という旨の発言をされていましたが、ラストシーンで主人公が小津の見舞いに行くシーンでは、逆に普段より色数を多く使うなど、非常に全体的にコントロールされた演出をされていると感じました

湯浅:いつもそうしたい思っているんですが、今回は特に解りやすかったのかなと思います。実際、各話を細かくコントロールすることはなく、大枠を作っておいてその許容範囲内でやりたい事をやってもらえればと思っています。だけどそれを伝えるのはなかなか難しいですね。


──では各セクションの主要なスタッフが監督の意図を充分に理解されていたわけですね

湯浅:努力してくれていると思います。あとは、「こういう絵が上がってくるんだろうな」ということが想定出来るように、脚本の段階で押さえるようにしています。アニメーションとして面白い絵になるよう想定しておく感じですね。想定以上にやってくれる事の方が多いですが。


──最終回のOPとEDが逆になっている演出が非常に印象的だったのですが、あの演出は最初から意図されていたのでしょうか?

湯浅:最初から意図していたわけではないですが、作ってるうちに「あぁ、最終回はその方が良いだろうな」と思いついたんです。もともと、曲の感じから言えば逆のほうが良いとは思ってたんですよ。OP曲は作品内容を考えてもらっていて、作品のテーマを歌っているような部分があるし、映像も最終回までを意識した作りになっているので、最終回はテーマを全部出し切ったところで最後にOPの曲が流れるようにしました。逆にEDの映像は10話までを強く意識する雰囲気になっていたので、OPに合うと思って。最終回は冒頭の暗い流れを意識して色なども調整してくれてます。

──第10話で、主人公がそれまでのストーリーを平行世界としてとらえ、そこに介入していくなかで、たとえば第4話の大金の入ったリュックや、第5話で突如、あの四畳半に現れる髭面の男など、ストーリー的には些細なことでも、視聴者的には小さな違和感として残っていた全ての事柄が、第10話につながっていく展開というのも、計算されたのでしょうか?

湯浅:その辺は特に脚本の上田さんがやりたがっていた所ですね。逆に僕は特にそんなに押したいと思っていなかった部分です。逆算して作っているようですが、5話の時点でまだ10話の脚本は出来ていないので、10話でそうなるという前提で5話を作り、実際は10話のほうが5話に合わせるように作っていったという感じですね。


──そういう事情を感じさせないほど、綿密なコントロールをされているという印象を受けました

湯浅:反対の事を言って変ですが、僕も全体的につながるよう努力しながら、そんなにきれいにつながっていなくても良いんじゃないの?と思う所もあって、整合性よりも、その場の流れや勢いを重視している部分があります。
「自分以外は何も変わらない世界があって、自分だけが色々なところに行くようなストーリーにしましょう」という事で合意しながら、帳尻を合わせようとしてくれる上田さんの言う事を聞かないで、その場の流れ重視にしてしまってる部分もありますね。


●これは誰の物語か?――明石さんではなく小津の物語になった理由は「主人公が『リア充」になるとみんなガッカリしちゃうんじゃないかと思って」

──10話で「私」が“四畳半”の世界のなかに閉じ込められてしまうなか、最後に“真実”に気づくきっかけになったのが、明石さんではなく小津だったのは意外な展開でした

湯浅:僕も最初に原作を読んだときには明石さんで終わると思っていたんですけど、「これは小津の話ですよね」という意見が、会議の際に特に女性の方からあがってきまして、それを聞いてるうちに僕も「明石さんに行くと見せかけて小津に行く」というのが面白いなぁと思うようになりました。


──たとえば最後のキーパーソンを明石さんにすると恋愛の要素が絡んできてしまうということでしょうか?

湯浅:それはそれで大変良いエピソードなんですけど、「好きだった相手との恋愛がやっと成就する」という話より、自分を駄目にする悪友でしかないと思っていたやつが、実はかけがえのない親友であったという話のほうが面白い、いいオチだと思ったんです。


──たしかにそこで明石さんではなく小津にしたことで、この物語がずっと抱えてきたディスコミュニケーションの問題が浮き彫りになった印象ですね

湯浅:それと、脚本の上田さんが言ってたことなんですが…… “リア充”というか、最後に主人公がガッツリ明石さんの方にいっちゃうと(視聴者が)みんなガッカリしちゃうんじゃないかと(一同笑)。

11話より

11話より

11話より

11話より

11話より

11話より

11話より

11話より

11話より

11話より

──なるほど……一気に現実味が出てきましたね(笑)

湯浅:「リア充」というのは、今回はじめて知った言葉なんですが、主人公はそういうものを憎んでいる人ですよね。
 しかしそれと同時に、それに対し作り上げた理論武装的なものを、しっかり信念として守り通す、誠実な人であるとも思いました。
 明石さんをちゃんと意識してないから羽貫さんに流されそうになるような精神的な弱さもありながら、ぎりぎりの所で、構築した理想を守り通してる。実際は「理想論に振り回されている人」とも言えますが、めんどくさい、愛すべき人だと思います。


──以前のインタビューの際に“一種の成長もの”というお話をうかがったのですが、最後に主人公があの四畳半を出て六畳の部屋に引越しました。主人公の感じる世界も、1.5畳分広がったというラストが印象的でした

湯浅:受け身だったのが自分から発信するようになったりという、本当にささいな成長ですね。本人にしてみれば世界が一変する大きな出来事ですが、端から見れば殆ど変わらない、言われる通り1.5畳分の成長なんです。エピローグは、音楽も盛り上げすぎないのどかな感じにして、まだこれから、という余白を残しているという感じですね。


──これから発売されるDVDには特典映像が収録されるそうですが、どのような内容になるのでしょうか?

湯浅:もうすでに一部がスポットCMとして流れていると思うんですが、僕以外の三人の演出家が演出しています。“地面潜航艇”(土の中に潜れる潜水艦的な乗物)を共通のテーマにして、別々の短編を作っています。一本は南極に、もう二本は京都のどこかに行く、けっこうナンセンスな感じの話ですね。


──そちらも期待してます!


スタッフ・キャスト、最新情報などは公式サイトでチェック!
>>TVアニメ『四畳半神話大系』公式HP

DVD&Blu-ray第1巻8月20日リリース決定!
【DVD】3,990円(税込)、【Blu-ray】5,040円(税込)
発売元:アスミック/フジテレビ  販売元:東宝

(C)四畳半主義者の会
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