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『海月姫』リレー企画最終回・大森貴弘監督インタビュー

TVアニメ『海月姫』放送開始記念リレーインタビュー最終回は大森貴弘監督が登場――

 東村アキコ氏原作の人気コミック『海月姫』(講談社刊『Kiss』連載中)のTVアニメもあっという間にゴールイン。ここまでお送りしてきたリレー対談企画もラストになります。最後は大森貴弘監督にご登場いただき、キャスティングや制作秘話、作品の魅力などについて語っていただきました。

●個性的なキャラ付けのベースはしっかりした人間ドラマ

――まず原作を読まれた時の感想や印象をお聞かせください。

大森貴弘監督(以下大森):実は東村さんの作品を初めて目にしたのは『モーニング』(講談社刊)に連載されていた『ひまわりっ~健一レジェンド~』でした。青年誌でも女性コミック誌であっても共通するのは、シリアスな面もあれば、コントやギャグがあったり、その落差、ギャップの出し方がうまい作家さんだなと。『海月姫』をアニメ化する時もシリアスなドラマの部分とコミカルな部分の切り替えをうまくやりたいと思いました。

――ポップな絵柄と個性的なキャラなど、変わったタイプの作品だなと。

大森:僕は変わった作品だとは思ってなくて。キャラ付けがうまいので突出している感じはありますが、ベースにあるものはドラマなので、スタンダードな作りになっている気がします。だから読みやすいんですよね。


●「昭和のホームドラマ」がキーワード

――アニメ化に際してのテーマやポイントは?

大森:まずは原作の雰囲気を忠実に再現したいと思いました。あと僕がキーワードにしていたのは"昭和ホームドラマ"です。東村さんが、読んでいたいろいろな少女マンガに敬意を表わしながら、それらの表現方法をより大胆にオーバーに取り入れているのが表現の幅広さにつながっているように、この作品にはなぜかノスタルジックを感じる部分があるので、そういう匂いをより濃く出して、若い人にとって新しいものに映ればいいなと考えました。

――東村先生とは直接、お話はされたんですか?

大森:最初のご挨拶の時に色々お話を伺い(この話は単行本第6巻や、DVDのブックレットに東村さん自身から語られています)、後はポイントポイントでお話しをしました。例えば「尼?ずのみんなは、おもしろがらせようと思ってこうしているんじゃないです」と言う話とか。、尼~ずの人達は懸命に生きてるところがおもしろおかしく見えるだけだから、親近感や愛着を持ってもらえるように描きたいと思いました。


●イメージ通りのキャスティング。ポイントは月海と蔵之介

――確かに彼女達は真剣なんですよね。でも内向きだった尼~ずが蔵之介と出会って、変わっていく姿には爽快感を覚えました。

大森:実は変わっていくのは月海くらいで、他の尼~ずは、おしゃれな服装やお化粧をしたけど、中身は変わってなくて(笑)。ベースはそのままで、眠ってる部分がちょっと掘り起こされただけなんです。ただ最終回に向けては、尼~ずに少しでも活躍の場を、と思って、あれこれ頑張りました(笑)。また蔵之介は、まっすぐで自分の信念を貫きたいというタイプ。彼と接することで化学反応が起きていくようになれば、と思って作ってました。

――この作品で重要だったキャスティングについてお話しいただけますか?

大森:東村さんから推挙があった役者さんを含めてオーディションで決まりました。軸はやっぱり月海で、果たしてこのアンバランスな感じが出せる方がいるかと心配だったのですが、花澤(香菜)さんがオーディションでバツグンにキモかわいくて、これはすぐ決まりました。躊躇したのは蔵之介で、斎賀(みつき)さんが一番良かったけど、僕はどこか男性の役者さんでやってみたいという小さなこだわりもあって……。でも東村さんと相談して、やはり斎賀さんがベストだろうと。


●クララの声にはスタッフ一同で萌え!?


――この企画にご登場いただいた皆さんからも原作を読んだイメージ通りのキャストでハマっていると口をそろえていました。

大森:ばんばさん役のくまい(もとこ)さんはオーディションの時にキャラと同じようにボーダーのシャツを着てこられて。「今日はばんばさんでキメてきました!」と。風情から良かったです(笑)。まややはテンションが高くて、すべて持ってっちゃうけど、変に「おもしろい人」になっちゃうのも違うという難しい役でした。岡村(明美)さんとは何度かご一緒していますが、幅もあるし、こちらの難しい要求にも応えてくださるだろうと。ジジ様役の能登(麻美子)さんはセリフが少ないのでぜいたくかなとは思ったけど、それゆえに艶がある人にやっていただこうとお願いしました。斉藤さんは何度もお仕事をしていてよく知っていたので、最初から千絵子でいけると確信してました。

――千葉繁さんの根岸総理は反則だという声も(笑)。

大森:千葉さんは音響制作から推薦があって、千葉さんでできるなら願ったり叶ったりだと思ってお願いしました。ちなみに諸星すみれさんのクララも音響制作から推薦があって、送られてきたオーディションテープ3本を聴いたらツボにはまりました。3本共、すごくおもしろくて、打ち合わせのたびにスタッフに聴かせるとみんな身悶えしてました(笑)。


●みんなが楽しく幸せにできるように

――監督は収録の最初に「幸せな作品にしましょう!」と話されたそうですね。

大森:はい。いろいろトラブルもあるし、毒やトゲもあったりするけど、傷つく人もなく、楽しくて幸せにできる作品だと思ったので、そこはいつも意識してました。

――キャストの皆さんは、くらげの描写の素晴らしさに感動していました。「ここまでこだわるのか」と。

大森:僕自身もそうですが、ちゃんと研究して描ける人でないとダメなので、描き手を厳選して、その上で色彩設計や撮影処理など、あれこれ腐心しました。

――斎賀さんがくらげ 好きだったり、くまいさんがボーダー好きだったり、斉藤さんは東村先生とお友達だったりとこの作品に導かれたような方もいます。監督もくらげと縁があったとか。

大森:以前、友人と「Jellyfish」と言う名のくらげをみながら一杯飲むタイプのバーをやってました。飼育はしていましたが、だからと言って、月海のようにくらげ博士ではないので(笑)、描いてもらったくらげを仕上げまで釘を刺していくと言ったら変ですけど、みんなに協力してもらう作業をしてました。

11話より(以下全て)

11話より(以下全て)

●OP映像が名画のパロディになった理由とは?

――気になっていたんですけど毎回、サブタイトルが映画作品のパロディになっていたのは?

大森:原作がそうなっていたからです。原作では作品名がそのままの場合もありましたが、アニメでは毎回もじりを入れようと付け直しました。

――そしてOPの映像でも名作映画のオマージュのオンパレードで驚きました。

大森監督:僕ら世代の作品ばかり出てきちゃいましたけど(笑)。誰でも知ってて、キャラがハマる作品を考えたら、あのへんが出てきました。OPにインパクトを付けたかったけど、なかなかアイデアが出なくて。でも「映画のパロディにしちゃおう」と思ったら吹っ切れました。


●作画チームの頑張りや遊び心はなるべく拾った

――TVシリーズでお気に入りの話やエピソードはありますか?

大森:どのエピソードも色は違えど、みんな、かわいいです。ぱっと思い浮かぶのは尼~ず的にも転機になった第6話「ナイト・オブ・ザ・リビング・アマーズ」。おしゃれした尼~ずを作画チームが頑張って描いてくれたので、気に入ってます。

――キャストの方々がたくさんのキャラが登場するシーンで、メインの掛け合い以外のところでも何かやっているのを見つけるとオンエア後にすぐ見直してしまうと言ってました。

大森:それは嬉しいですね。結構、役者さん達もいろいろ楽しんでやってくださっていることもあるし、作画チームも遊んでくれているので、なるべく全部拾い上げたいと思ったら、ああなりました(笑)。


●連載が盛り上がっているので描けないのが悔しい!

――TVアニメ終了後の1月28日にDVDとブルーレイも発売されます。見どころを教えてください。

大森:本編をまとめて楽しんでいただけることが一番ですが、特典映像ももりだくさんです。放送前に『ノイタミナ』枠内でオンエアされた『それゆけ!尼~ず探検隊』に、『Kiss』の別冊で連載されている『海月姫 英雄列伝☆(ヒーローズ)』をアニメ化したものも収録されてます。尼~ずの各キャラをフィーチャーしていて、原作ありきですがちょっとミックスしていろいろなエピソードを集めて作ってます。TVでは放映されていないので、原作ファン、尼~ずファンの方は必見です。ほかにも花澤さんと能登さんがクラゲ鑑賞ツアーに行った映像もあるのでお楽しみに!

――アニメの最終回は、TVならではのラストで続編に期待をもたせています。

大森:連載が盛り上がっているので、そこをやれないのが悔しくて。コミック6巻のエピソードが毎回おもしろくて、読んでるだけでも楽しいのに、出したいキャラや、やりたいお話もあるし、まややも更におもしろくなってるし。スタッフもキャストも終わってしまうのが寂しいと思っているので、機会があれば、続編はぜひやりたいです。


●みんなが懸命に生きているからドラマが生まれる

――ここで改めて『海月姫』の魅力を挙げてください。

大森:キャラクターですね。一見、突飛で変わった人達ばかりに見えるけど、どこかしら共感できるところがあって。笑っちゃうけど、どこか必ず「あるある」的要素を持っていると思うんです。みんな個性的だけど、感情移入できる、素敵なキャラばかりで、そんなキャラ達が懸命に生きているからドラマも生まれる。そこが魅力かなと思います。

――最後に皆さんへメッセージをお願いします。

大森:最後までアニメを見ていただいた皆さん、本当にありがとうございました。この作品に限りませんが、何度でも見られるように作っているつもりなので、今後もDVDなどでいつまでも長く楽しんでください。そして見たことがない方はまずは1回見てください。どこかしら共感できる部分がきっとあるはずです。そして、気に入ってもらえると思います。
 この作品は深夜に放送されるので、見終わった後にほんわかした、温かい気持ちで眠ってもらえるようにと思って作ってました。この作品を通じて、幸せな気分を感じてもらえたら嬉しいです。

<取材・文:永井和幸>

TVアニメ『海月姫』

フジテレビ“ノイタミナ”ほかにて毎週木曜24:45~放送中
※最終回は24:40~放送
関西テレビ:毎週火曜25:時5分~放送中、東海テレビ:毎週木曜26時05分~放送中、BSフジ:毎週土曜日25時~放送 ※毎月最終週のみ休止、さくらんぼテレビ:毎週土曜日25時05分~放送中

<STAFF>
原作:東村アキコ(講談社刊『Kiss』連載中)
監督:大森貴弘
シリーズ構成:花田十輝
キャラクターデザイン:羽山賢ニ
アニメーション制作:ブレインズ・ベース
OPテーマ:チャットモンチー「ここだけの話」
EDテーマ:サンボマスター「きみのキレイに気づいておくれ」

<CAST>
倉下月海:花澤香菜
鯉渕蔵之介:斎賀みつき
鯉渕修:諏訪部順一
千絵子:斉藤貴美子
まやや:岡村明美
ばんばさん:くまいもとこ
ジジ様:能登麻美子
花森:子安武人
根岸総理:千葉繁
クララ:諸星すみれ
ほか

DVD&Blu-ray『海月姫』第1巻
2011年1月28日発売
<数量限定生産版>
Blu-ray 6,090円(税込)/DVD 5,040円(税込)
<初回限定生産版>
Blu-ray 5,040円(税込)/DVD 3,990円(税込)
(以下、第2巻は2月18日、第3巻は3月18日、第4巻は4月22日発売。全4巻)

東村アキコさん&大森貴弘監督トークイベント決定!
原作者の東村アキコさんと大森監督のトークイベントが3月5日、都内で開催されます。11月26日発売の『海月姫』コミック第6巻の帯に付属の「イベント応募券A」と、2011年1月28日発売のアニメ『海月姫』のDVDかブルーレイに付属の「イベント応募券B」を集めて応募すると抽選で100名様をトークイベントにご招待。詳細は『海月姫』公式サイトでチェック!

>>『海月姫』公式サイト

<b>『海月姫 第1巻』</b><br>2011年1月28日(金)発売<br>【数量限定生産版】DVD:5040円(税込)/Blu-ray:6090円(税込)<br>【初回限定生産版】DVD:3990円(税込)/Blu-ray:5040円(税込)<br>発売元:アスミック/フジテレビ<br>販売元:東宝

『海月姫 第1巻』
2011年1月28日(金)発売
【数量限定生産版】DVD:5040円(税込)/Blu-ray:6090円(税込)
【初回限定生産版】DVD:3990円(税込)/Blu-ray:5040円(税込)
発売元:アスミック/フジテレビ
販売元:東宝

(C)東村アキコ・講談社/海月姫製作委員会
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