『JAM Project シンフォニックコンサート2011』レポート―“壮麗さ”と“情熱性”が交錯し、会場は幸せと興奮に包まれていた。
2月3日~4日・東京芸術劇場を舞台に、JAM Projectがフル・オーケストラと共演したコンサート『JAM Project シンフォニックコンサート2011』を開催した。服部隆之が指揮するシアターオーケストラ トーキョーと、JAM Projectの5人のセッションが生み出した、胸揺さぶる最高のケミストリー。今回は、4日のコンサートの模様をレポート。さっそく、この日の模様をお伝えしよう。
●歴史が語る、ハードロックとオーケストラとの共演!!
過去にも海外では、DEEP PURPLEがロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラと共演。METALLICAも交響楽団と共演を果たしたりと、ハードロック/ヘヴィメタル畑の人たちが、オーケストラとの共演を通し、自身の音楽性を別の角度から表現していく傾向は、昔からあったことだった。
日本でも、ALI PROJECTや水樹奈々がシンフォニック・コンサートを開催した歴史はあったが、ハードロックの熱い血を受け継いだJAM Projectによるオーケストラとの共演となると、その意味は、また違ったものになってくる。むしろメンバーたちは、一度は演ってみたかったスタイルだったに違いない。
海外のハードロック系バンドがオーケストラと共演したときに生まれる、あのドラマチックかつハードな物語と同じ匂いを、きっと彼らは作り上げてくれる。そんな期待を胸に、コンサートへと足を運んだ。
●シンフォニックでロックな音の波紋が、心を揺さぶっていく。
総勢75名の奏者が舞台上を覆い尽くした、その圧倒的な風景。メンバーたちの姿も、ドレスやタキシードなど、まさに厳かな舞台に相応しい出で立ちでの登場となった。
この日のステージは、「VICTORY」から幕を開けた。美しくも勇壮な演奏が流れだすと同時に、メンバー5人が、右手を叩く掲げ、Vサインを提示し始めた。重曹な調べが流れる中、会場を埋めつくした満員の観客たちも同じく右手を高々と掲げながら、VICTORYのサインをメンバーへ捧げ返してゆく。厳かな始まりを告げた「VICTORY」が、躍動的なパートへ切り替わったとたん、観客たちが一斉に拳を振り上げ、熱狂的な叫び声を上げ出した。この熱い盛り上がりは、何時ものJAM Projectのコンサートと同じ熱気だ。唯一違っていたのが、この日は終始着席したまま、高揚した声を舞台上へ返していたことくらいか。
それにしても、シンフォニックな調べとダイナミズムさあふれるロックな音楽との融合が、こんなにもオペラ的な、厳かで勇壮な音の構築美を描き出すとは…まさに、「美しい衝動」を目の前で体感している気分だった。
ピアニッシモからフォルテッシモへ徐々に変化していくように…小さな波紋が次第にいくつもの大きな波紋を描き出すように、ジワジワとした高揚心を与えた、「Elements」を通した穏やかな興奮。
ライブ初披露となった、伸びやかな歌声響き渡った「Vanguard」では、歌や演奏が進むにつれ、徐々に臨場感昂ってゆく風景が描き出されていた。そして、壮麗さと情熱性が交錯。「牙狼~SAVIOR IN THE DARK~」を通し美しい興奮を導き出した、シンフォニックドラマな世界観。
1曲1曲が、何時もとは違う厳かな輝きを放っている。荘厳/壮麗な音の調べと5人の重なり合った歌声との調和は、嬉しいくらいに心を躍動させていく。
●ソロ・コーナーでは、メンバー個々の魅力が発揮!!
中盤では、メンバーのソロ・コーナーが登場。低音楽器を軸に据えたシンプルな演奏を背景に、堂々と「CLOWN」を歌いあげた遠藤正明。勇壮なヴァイオリンの音色に感情掻き立てられるように「Diving love」を歌った、きただにひろし。暖かい音色が緩やかな波のように押し寄せた、「I LOVE YOU」を歌った福山芳樹のステージ。伸びやかな歌声を通し爽やかな景観を描き出した、「Little Wing」を歌った奥井雅美。そして、魂の熱唱と言うべき、声の限りを尽くして「エンブレム~名も無き英雄達へ~」を歌いあげた影山ヒロノブ。面白いのが、トップを飾った遠藤正明のステージでは、本当に少人数を従えての演奏だったのが、きただにひろし、福山芳樹、奥井雅美、影山ヒロノブと進むごとに、演奏メンバーが増えていったことだ。
●情熱的かつシンフォニックなロックオペラ劇が繰り広げられてゆく。
途中、指揮者である服部隆之のオリジナル曲「華麗なる一族」を挟み(この曲の終盤で遠藤正明がステージへ登場。雄々しき声を重ねていた)、コンサートは終盤戦へ。
ハートフルな楽曲ながら、エモーショナルな気持ちも導き出す「Always be with you」の演奏と同時に、会場中に大きな手拍子が沸き起こり出した。重層な歌声と重厚な演奏とがシンクロしながら徐々に興奮の渦を巻き起こしていった、「TRANSFORMERS EVO.」を通した高揚。美しくも雄々しい声のハーモニーを存分に味わえた、「レスキューファイアー」。感情爆発寸前の興奮導いた「鋼の救世主」。「GONG」では、美しくも昂る高揚心炸裂した、情熱的かつシンフォニックなロックオペラ劇を披露。
●そして、♪Motto! Motto!♪と昂る声に合わせ…。
会場中が♪Motto! Motto!♪の絶叫声で埋めつくされた「SKILL」では、まさに“バトル・オーケストラ”と呼びたくなるくらいに、華激な舞台劇が生み出されていた。まさにこれは、シンフォニックコンサートという枠組みを軽く凌駕していた。新しい創造のための限界を超えた、スペクタクルな音絵巻的な風景だ。
最後は、歌声と演奏と心一つに溶け合った「HERO」を通し、幸せな興奮の笑顔を浮かべながら、2時間半の舞台の幕を閉じていった。
嬉しかったのが、演奏が終わり、最後の挨拶を行い始めたとき、満員の観客たちが一斉に立ち上がり、思いきり熱い声援と拍手を舞台上へ送っていたことだ。素直に拍手と興奮した想いを伝えたいくらい、この日のステージは本当に素晴らしかった。通常のシンフォニック・コンサートの場合、アレンジが壮大ながらも、多少落ち着いた演奏に仕上がることから、アップライズドな楽曲でも、みんなゆったり演奏へ耳を傾けがちだが。JAM Projectに関しては、立たないだけで、その熱狂ぶりは、限りなくロック・コンサートのノリだった。この日の模様は、ニコニコ動画で生放送。きっとPC画面越しに観ていた人たちも、その場で体感したいと思っていたに違いない。
<TEXT:長澤智典>
>>JAM Project OFFICIAL SITE