【マチ★アソビ】神山監督が勝てないと思った作品は『けいおん!!』!? 作品の裏話やアニメーションとお金の話などをじっくり語った『攻殻機動隊』トークショーをレポート!
徳島を中心としたアニメの祭典“マチ★アソビvol.6”が、2011年5月3日~5日の期間、開催されている。今回は、新町川公園で行われた『攻殻機動隊』トークショーをレポートする。
トークショーには『攻殻機動隊 S.A.C.』シリーズの神山健治監督、プロダクションI.Gの石井朋彦プロデューサー、サンジゲンの松浦裕暁社長、STEVE N’ STEVENの古田彰一氏が参加。野外の広場という珍しいシチュエーションで、『攻殻機動隊』などのアニメ制作にまつわるトークが行われた。
神山監督がTVシリーズ『攻殻機動隊 S.A.C.』のオファーを受けた頃は、原作の量の少なさ、当時のCGの技術レベルからTVシリーズ化は不可能と言われていたそう。神山監督は『攻殻機動隊』に関して、「TVシリーズで作るのは不可能だと当初は言われていました。でも当時の僕は監督になったはかりだったので、ぜひ作ってみたい気持ちが強くて、どうやれば実現できるかと考えました。それで、一話完結の刑事物を作る感覚で作ればなんとかなるだろうと。最初は、笑い男のような連続性のあるオリジナルエピソードを作るのは周囲の猛反対にあっていたんです。それから、スタッフが少ないので、総監督制で全体の絵柄を統一するのではなく、各作画監督に任せてそれぞれの色を出していく方針でした」とのエピソードが。
監督からは他にも、『東のエデン』を“ミリタリー色は女性がチャンネルを変えるから望ましくない”といったテレビ業界の常識と折り合いをつけながら作った話や、アニメーション制作現場の高年齢化、ロボットを描く人材がいない、リアルなCGよりセルのリアルでない絵だから表現できるリアリティもある…といった、多岐に渡るトークが展開されていた。
石井プロデューサーはアニメーション制作時にスポンサーを資金を集める際の苦労などを語り、「アニメを見るときはキャラクターや監督など、作品のどの部分が、スポンサーが出資しようと思ったポイントかなどを考えると面白いと思います」と語っていた。
博報堂クリエイティブディレクターでもある古田氏は、15秒CMの制作費が30分のアニメの3倍、時間単価では300倍であることを紹介し、アニメーション制作の現場に、いかにお金を回す新しい道をつけられるかといった話題の中で、映画の作中にタイアップ商品が登場する広告戦略などについて語っていた。作中に企業ロゴを入れたりする手法については、サンジゲンの松浦社長からCGで表現する際にテクスチャーを張り込む際の工夫や、実作業にまつわる苦労などの話もあった。
トークショー後には質疑応答の時間があり、「公安九課など、神山監督は『9』という数字に思い入れがある?」といった質問に、4人がライブで答える貴重な場になっていた。今好きな、注目している作品を聞かれた神山監督は、「『けいおん!』ですね。女性スタッフでなければ作れない、かなわないと思った作品です。僕だったら唯の家族(両親)とかについて描写したくなっちゃうと思うんです」という意外な回答で、会場を大いに湧かせていた。
最後は神山監督が『攻殻機動隊』3Dの上映館が広がっていることへの感謝と、変化していくアニメーション業界でこれからも作品を作り、届けていく意気込みを語ってトークショーは幕となったのだった。
<取材・文:中里キリ>
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