コミック・アース・スター連載の『ノブナガン』久正人氏インタビュー

『月刊コミック・アース・スター』連載の『ノブナガン』は「意外性のある“偉人”バトルアクション」――久正人が語ったその世界観の秘密と印象的な作画術とは!?

 現在、『月刊コミック・アース・スター』で好評連載中のスタイリッシュアクション、『ノブナガン』。フィクションをベースとしながらも絶妙なバランスで実在の人物を織り交ぜ展開されるストーリー、そしてコアな漫画ファンも唸らせる独特なタッチで絶大な人気を誇る久正人先生の最新作だ。

 今回アニメイトTVでは、そんな久先生にインタビューを実施。先生自身が影響を受けた作品から『ノブナガン』の制作秘話まで、じっくりとお話を伺った。

――今回、『ノブナガン』のお話が出来るまでの過程やいきさつを伺えますか?

久先生(以下久):前作の『ジャバウォッキー』では偉人がたくさん出てきたので、“歴史的人物を主人公にしたお話を描いて欲しい”とお願いされたんです。前々から僕の中に武将が戦う……、みたいな構想はあったんですけど、次の作品は舞台を現代にしたかった。それであれば、現代世界で歴史上の人物が戦う話にしようと。そこから「偉人の能力を持った、現代の人物が戦う」と言う設定が出来上がりました。最初に思いついたのが、日本の戦国武将が5人出てきて……と言うお話だったんですが、それだとちょっと世界観が狭いと思ったんです。そして何度か(編集の方と)打ち合わせを重ねていくうちに、日本に限定しないで世界中の偉人に広げていこう、と言うことになりました。


――『ノブナガン』の主人公は日本人の女子高生ですが、なぜお話の舞台を台湾に持ってきたのですか?

:怪獣が海から来る、という展開にしたかったので、島国を舞台にしました。台湾で悲劇が起きて、日本人である主人公が“次は日本に何か起こるのかもしれない”とプレッシャーを感じていく…… そんなドラマを考えていたんです。


――先生の作品の中でも、「普通の女子高生」を主人公にした作品は珍しいですよね。

:原作を担当したものでは一度ありますけど、自分で描く作品としては初めてです。理由は、まず女子高生が好きだったということと(笑)、女子高生の制服が黒っぽいんで、コマの中でも映えやすいかな、と思って。あと、僕がデビューしたのが『月刊マガジンZ』(講談社刊)と言う雑誌なんですけど、そこで描いていた『グレイトフルデッド』が、最初おじいさんを主人公にしようとして却下され(笑)、主人公を女の子にした作品で。最初がそんな感じだったので、僕の中には「主人公は女性にする」ということがインプットされていて。だからお話を考えるとき、自然と女性を主人公にするんです。


――過去作品も含め、先生の漫画には歴史上に実在していた人物が多数登場しますが、何か特別な理由などがあるのでしょうか?

:東京創元社から出版されていたSF小説に『ドラキュラ紀元』というのがあって。元となっているのはブラム・ストーカーの書いた『ドラキュラ』なんですが、そこに実在の人物もバンバン出てきて、それが架空ストーリーとリンクしていてすごく面白かった。そこから“フィクションの世界に実際の歴史上の人物が出てくる”というスタイルに惹かれました。


――そこで受けた影響が、作品に反映されているんですね。

:はい。それと、バトルアクションを描くにあたって一番参考になるのは『仮面ライダー』か戦隊モノなんです。例えば『仮面ライダー響鬼』には楽器という決まりごとがあるじゃないですか?なにかしらルールがある上で、そこから武器などを考えて……という発想が良いなと思って。だから自分のなかで“新しいヒーローアクションを考えてみよう”という感じで、『ノブナガン』のお話を作っていったんです。


――なるほど。『ノブナガン』にはガンジーやニュートン、切り裂きジャックなどが登場します。数多くの歴史上の人物の中で、彼らを作品に出した理由などがあれば、お聞かせください。

:偉人が登場する作品って結構あるんです。軍人や武将が出てくると他の作品とキャラが被ってしまうかもしれないし、そもそも彼らは戦闘と直結しているから、戦ってもあまり意外性はない。だから、戦いとは縁遠そうな人物を出して、「こんな人物でも戦うんだ」とか、「どうやって戦闘能力にしていくんだろう」とか、そう言った面白味があるといいな、と思ったんです。


<b>『ノブナガン』/久正人著</b>

『ノブナガン』/久正人著

先生の書いたラフデザイン案を特別に大公開だ!

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――描いていて楽しいキャラクターなどいますか?

:主人公たちが戦う怪獣(侵略体)です!人間描くよりもよっぽど時間かかってます(笑)。最初に登場する怪獣は、(古生代の魚類である)甲冑魚のデザインと他の生物を組み合わせてできました。怪獣は小さい頃からずっと好きだったので、特に何かインスピレーションを受けて、と言うよりは、血肉となっているものが体から溢れ出る感じです。


――先生は以前、そう言ったモンスターたちを集めた『モンスター図鑑』も制作されましたよね。

:モンスターには伝説上の設定や縛りがあって、それを現実的な生物として考えたらどうやって表すことができるかな、と考えるんです。現実にいる生物のこういう特徴を拡大解釈すれば、ドラゴンだって火を吹けるかな、とか。その「こじつけ」の作業が辛くもありますし、一番楽しい部分だったりもします。子供向けのものだったので説明を簡単にしなくちゃいけない、などの決まりはありましたけど、漫画を描く作業とやっていることは一緒です。


――他にも、先生がインスピレーションを受けたものなどあるのでしょうか?

:絵柄的に“直撃”だったのは、アメコミの『シン・シティ』です。ちょうど『グレイトフルデッド』が連載終了して次の連載に移るという時に、編集部から「絵柄を変えよう」という話が出て、「どうしたものかな」と思っていた時に『シン・シティ』の映画が公開されることになって、原作コミックの日本語版が発売されたんですよ。それを見て、「コレ、カッコイイな!」と衝撃を受けたんです。


――話は変わりますが、実際に絵を描かれる時の工程をお聞かせください。

:ネームと下書き、ペン入れまでは手描きでやります。それをスキャンして、枠線と吹き出し、ベタ、トーン、修正と効果線はPhotoshopで作業します。『ジャバウォッキー』の時はComicStudioでやっていたんですが、その後パソコンをIntel Macに買い換えたんです。その時に、Intel Mac用のComicStudioを買い忘れて(笑)、Photoshopでやり始めたらまったく問題なくできたので、そのままPhotoshopを使っています。


――影だけを描くことでキャラクターを際立たせたり、背景をまったく書いていないコマもありますよね。

:背景は必要最低限だけを描いて、キレイに見えるようにハイライトで飛ばして、陰影だけで表現したりしていますが、それは先ほども言った『シン・シティ』の影響が大きいと思います。でも背景に関しては下書きの段階では描いていても、ペン入れの時に全部省略してしまうこともありますし、逆にネームの段階では描く予定は無かったけど、下書きの段階で必要であれば付け足すこともあります。自分の中に背景の方程式があるわけではなくて、描いていく上で必要だと思ったときに描く、という感じです。


――では最後に、これから先生がやっていきたいことや挑戦していきたいことなどがあればお教えください。

:今は連載を2本やらせて頂いて、一つ締切が終わったらまたすぐに締切、と言う状態なので、新しい何かは考えられないんですが……(笑)、今回の作品に関しては、初めて挑戦したことも多かったんです。今は自分に出来ることが増えたら、それを即座にどちらかの作品に反映することが出来る状況ですし、その中でやれることを精一杯やっていきたいですね。

<取材・文:杉山玲菜>

【『ノブナガン』STORY】
織田信長のE遺伝子を持つ女子高生・小椋しおが、世界の偉人たちと共に侵略体へ立ち向かう!
鬼才・久正人が贈るスタイリッシュアクション!!

「月刊コミック アース・スター(毎月12日発売)」にて好評連載中
※公式サイトでコミック第一話を無料配信中!
>>http://comic-earthstar.jp/author/detail15.php


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