人気ゲームタイトル『鉄拳』が3DCGアニメになって劇場公開!衝撃の世界観と感動の映像体験を作り上げた2人が語る「学園モノなのは最初から決まってました!」――毛利陽一監督、脚本の佐藤大氏が対談!!
1994年のリリース以来、現在も世界中のゲームファンを魅了し続けている『鉄拳』シリーズ。常に最先端技術を導入し制作されるCG表現に定評のある本シリーズが、今度は3DCGアニメーションとしてスクリーンに登場する!
9月3日に公開となる映画『鉄拳 ブラッド・ベンジェンス』は、主人公にリン・シャオユウとアリサ・ボスコノビッチを起用。中国拳法の達人・シャオユウは、Gコーポレーションの依頼によって京都のインターナショナルスクールに潜入し、神谷真と言う少年を調査する。学園内で謎の少女・アリサに出会い友情を深めながらも、その裏には"三島財閥"による血生ぐさい陰謀が隠されていたのだった……というストーリーだ。
キャラクターたちの美しい描写や手に汗握る迫力のバトルシーン、さらに思わず感情移入してしまうシャオ&アリサの奮闘ぶりは、原作ファンはもちろん、ゲームを未プレイの人も存分に楽しめる内容になっている。
そして今回アニメイトTVでは、より映画を楽しんでもらうため、本作の監督を務めた毛利陽一氏、そして脚本を務めた佐藤大氏との対談を実施!お2人が本作にかける想いや制作秘話など、盛りだくさんに語っていただいた。
――改めて作品が完成してみての心境をお聞かせいただけますか?
毛利監督(以下毛利):正直、ホッとしてます!フルCGって、カロリー高くて大変なんです。その上今回は3Dなので右と左で画が2ついるじゃないですか?だから時間的な部分や作業量も含めて、今までの倍以上かかっちゃいましたので。「CGだから、機械が全部やるんでしょ?」って思われがちなんですけど、意外と色んなエラーやトラブルもあったりして…・・・。90分間を3Dでっていう試みも初だったので、途中で「これ、出来ないかも?」って思ったこともありました(笑)。これも頑張ってくれたスタッフのおかげです。
佐藤さん(以下佐藤):僕の場合は脚本を書いたのが2年位前だったんです。作業の途中段階のものはあまり見ないようにしていたので、出来上がったものを試写で観たときには、「いやあー、できたなあー……!」と改めて感動しました。
――学園を舞台にしたお話、と言う構想は最初からあったんでしょうか。
佐藤:ないです(笑)!
毛利:最初はもっとアクション系と言うか、三島財閥とGコーポレーションの戦いに巻き込まれる血を持った人々、みたいな感じでした。
――ではそれが"学園モノ"に変化していったのはなぜなんでしょう?
佐藤:色んな理由と自分の趣味と、皆様のご尽力です(笑)。まず技術面で言うと、新規で世界中を舞台にした物語を作ったら、作るのが大変になっちゃいますから まさか世界中に取材に行ける時間もないですし(笑)。だから自分たちの目に見える範囲で出来ること。ただし、その制約を感じさせない広がりを意識しました。
――なるほど。
佐藤: "学園"なら誰でも行ったことがあるわけで、そうした記憶を頼りにどこが実写っぽくて、どこがアニメで、どこが3Dで、という映画としての入り口をわかりやすくしたかったことが理由のひとつです。前半部分の展開はそこを描いて、後半部分からは鉄拳らしいアクションで締める、という構成は最初から決めていました。
――第1稿から"学園モノ"だったんですか?
佐藤:はい。でも"学園"を重要視していたわけではなくて、アリサとシャオを主役にすることが重要でした。"二人のバディモノにしたい"と言うアイディアから始まっています。そこで二人の年齢を考えると必然的に学園モノかな、と。
――毛利さんはそれを見ていかがでしたか?
毛利:僕は最初から「良い!」と思ってました。
佐藤:プロット見た時はビックリしました?
毛利:ちょっと大変そうだなぁーと思いましたけど 、面白くなりそうだったのでテンション上がりました。格闘もので男ぽいのもいいですけど、女の子二人のバディーものであれば絵も華やかになるし、さらにシャオであれば泣いたり、怒ったり出来ますからね。感情を出せるキャラクターが主人公のほうが感情移入しやすいですから。
――脚本の段階で、3D映画であることは意識されてたんですか?
佐藤:意識していました。ただ3Dよりも、「格闘ゲーム」であることを意識しました。映画を観る人は格闘が見たいけど、トーナメント形式でどっちが勝つかの観戦をしたいだけじゃない。それはゲームで出来ることですし。だから、ゲームで出来ない格闘を映画で見せたかった。その要素をかなり意識して考えました。
――実作業に入ってからも、お二人は綿密なやり取りを?
毛利:いえ、ごくまれにです。セリフを変えたい時なんかに、ちょこちょこやりとりしてました。
佐藤:だいたい悲しいお知らせでしたよね(笑)
毛利:そうでしたね(笑)。「ここのシーン、ガッツリなくなっちゃいます……」とか。
――悲しいですね(笑)。
毛利:最初の段階で、118分くらい必要なストーリーだったんです。そこからボリューミーなアクションシーンを削ったり、あるいはブロックで落として補完のシーンを追加したり、セリフを細かく落としたり……。その作業の中で煮詰まったときに、大さんに「いいアイディアない?」と。
――3Dの作業って、コンピュータの中にバーチャルセットを作って、キャラクターがあって、それを2つのカメラで撮って……っていう流れで、イメージ的に作業量は2Dの2倍なのかな?って思ってるんですが……。
毛利:それがなかなかそうもいかなくて(苦笑)。カメラ一個で撮った後も、その後、目に見えないところで色んな処理をしているんです。3Dになると、後から背景を書き足すこともできなくなってしまうので、すべてを3Dで丁寧に作っておいてあげないとそれが反映されないんです。今、CGでも出来ることが広がっているので、キャラクター1人を作るためにも色んな素材を出すんです。例えば髪の毛だけとか、体だけとか。そうやって10種類くらいの素材を重ねてキャラクターを作るんですけど、その素材数が増えることでLとRが微妙に違っちゃったりすることもあって。
――2倍どころじゃないですね…。
毛利:そうですね。体感では3倍のボリュームはあると思います(笑)。
――それを約90分の映画にするのはとてつもない作業ですよね。
毛利:はい。危機度も高かったですから(笑)。
――さっきちょっとキャラクターのお話が出ましたけど、映画の中でキャラクターをこのラインナップにしたのはなぜでしょう?
佐藤:三島財閥とGコーポレーション、この対立軸を物語のメインにしようと考えました。そこで入り口としてのわかりやすさや日本らしさ、CGでやること、成長させることを踏まえて、アリサというロボットの女の子を主役に選びました。ロボなら極限まで壊しても直るし、後から記憶を消すこともできるので(笑) 映画の物語に緩急や変化をつける役目を果たしてくれるんです。
――ゲームの世界観を踏襲しつつも、新しいと言うか。
佐藤:もちろん、ゲームの世界観は強く意識しました。制作しているスタッフの多数が原作の『鉄拳』ゲームの制作陣ですから。ただ、だからと言ってゲームのオープニングムービーの延長線上で終わってしまってもいけないな、とも考えました。『鉄拳』の世界観の中に生きている人間がいて、その人たちが泣いたり笑ったりしている。それをわかりやすく伝えるためにも、あえて『鉄拳』の中には無かった"学園モノ"x"バディモノ"という映画としての鉄板フォーマットを中心に置きました。
毛利:『鉄拳』って色濃くて、世界観も独特じゃないですか?そこでいきなり"三島一族"をガツーンと見せられても、お話に入っていけないんですよね。でも主人公のシャオのように、自分達に近い感じの女の子が学校に行って、見慣れている風景で生活していることによって『鉄拳』ワールドに入っていってもらえるといいなと。
佐藤:シャオは、原作の設定の中で唯一、動物であるパンダと意思疎通が出来るという設定があるんですよ。そこで「こんなにピュアな女の子なら、ロボットにも友情を感じるような子でいてくれるんじゃないか?」と思ったんです。実はあのパンダもメスなので、女たちの友情のお話にもなっているんです。
――あ、女の子だったんですか?!
佐藤:そうなんです。僕の中に「女たちの鉄拳」というべき裏テーマがありました。アンナとニーナの戦いにしてもそうですし、仁や一八にそれぞれ心酔する女性たちを置くことで、彼らがより引き立つと思ったんです。
――では、最後にお二人の好きなシーンや見どころをお聞かせください。
毛利:やっぱりアクションシーンです。新金閣寺バトルや三島バトルなど、見てて面白いですよね。バトル以外だと、前半のシャオの性格が出てるようなシーンもアニメっぽくていいかな、と思ってます。
佐藤:2人が生きて、生活しているように見えるシーンが好きです。お団子を食べたり、シャワー浴びた後にテレビを見ていたりとか。それと、シャオがパンダに乗って走り回ったりロボット(アリサ)に抱かれて空を飛んだりするのは、僕の小さな頃からの夢なので、そこが見どころに直結してます。
毛利:あと、言えないんですけど「このシーンを見せるために映画を作った!」って言う見どころがあります(笑)。
佐藤:観ていただければすぐにわかると思いますので、ぜひ劇場でご覧になってみてください(笑)。(テキスト:杉山 玲菜)
>>『鉄拳 ブラッド・ベンジェンス』公式サイト