『月刊コミック・アース・スター』連載中の『東京自転車少女。』のわだぺん。先生は「自転車を描くのが苦手です」!?――とことん身近にこだわった物語、生まれたきっかけから聞きました!
身近にある東京の魅力を、少女達が自転車で発見していく――。"都会"なだけじゃない東京の良さを様々な視点から描き話題を呼んでいるのが、現在『月刊コミック アース・スター』で連載中の『東京自転車少女。』だ。2011年10月12日には、待望のコミックス第1巻の発売も決定している。
そして今回アニメイトTVでは、そんな『東京自転車少女。』作者のわだぺん。先生にインタビューを実施!作品にかける思いから先生ご自身の自転車エピソードまで、盛りだくさんに語っていただいた。
――そもそも、東京x自転車x少女を軸にしてお話を描こうと思ったきっかけは何でしょう?
わだぺん。先生:以前、同じものを題材にした二次創作の同人誌を制作していたんです。それらは男性向けのイベントに出していたので、女の子のほうが受けが良いかな、と。東京を舞台にしたのは、自分の経験からです。
――経験、と言うと?
わだぺん。先生:僕、13年前に岐阜から上京したんです。その時、周りの人に「東京に出る」と伝えたら、みんな東京に対して色んな先入観を持っていたんですよ。田舎にいると、テレビとかで見た"東京"の図しかないですから。でも実際上京してみたら、聞いていた話と随分違って。それで、自分なりに感じていた気持ちや田舎特有の先入観と、実際東京で生活してみた時の違いを題材に、本にしてみようと思ったんです。
――ちなみにどんな先入観があったんでしょうか?
わだぺん。先生:東京って全部が都会だ、みたいな。でも意外と住んでみたら田舎っぽいところもあるし、郊外に行けば畑もあったりするじゃないですか?だから思っていたよりも、都会じゃなかったんです。
――『東京自転車少女。』には練馬区内の様々なスポットが出てきますが、下調べはどのように?
わだぺん。先生:実際に自転車で行ってます。遠くまではるばる行ってと言うよりは、自転車でいける範囲をぐるぐる回って、面白そうなところを見つけるという感じです。お話に出来そうなところを見つけたら、何回か通ってみて、ネタをメモって行きます。そこから煮詰めていって、使える部分だけを拾っていくんです。
――キャラクターも個性的で可愛らしい子たちばかりですが、メインキャラを4人にしたのはなぜでしょう?
わだぺん。先生:まず最初に、主人公は小柄で離島出身の女の子と、逆に東京にずっと住んでいて、住んでいるからこその先入観を持った女の子の2人にしようと思ったんです。そこで、一方は純真無垢で何でも楽しくて、もう一方はそれよりややスレちゃってるような子にしました。その2つの目線が同じ物事を見れば、違いを出していくことができるので。あとは部活がテーマだったので、さすがに上級生の部員が2人くらいは必要かなって(笑)。キャラクターをあまり多くしたくはなかったので、この4人がベストだな、と思いました。
――確かに、主人公の2人(いるかと加藤さん)は正反対の性格ですね。
わだぺん。先生:この2人は、どちらも僕の中にある考えを2つに割った感じなんです。僕も東京にずっと住んでて、「嫌だな」と思う部分もあれば、「良いな」って思う部分もあって。自分の考えていることを、主人公の2人に投影させているんですよね。
――この作品を描くに当たって、先生が一番面白味を感じる部分はどこでしょうか?
わだぺん。先生:僕は昔から、ファンタジーとかSFがあまり好きじゃなかったんです。ゲームとかをやっていても、身近であればあるほど面白いと感じますし。だから、自分の周りで起こったことや自分の近所を舞台にしたお話を描けたらいいな、と言う構想がずっとあったんですよ。そう言った意味でも、自分のよく知っている場所が雑誌に載っている、と言うのはすごく面白いですね。
――そこが、この作品の魅力にも繋がりますよね。
わだぺん。先生:「アマゾンに行った」みたいな大冒険の方が、ドラマもいっぱいあるし、お話にもしやすいかな、とは思ったんです。でも、そういうのってなかなか真似しようと思っても難しいじゃないですか?
――そうですね。
わだぺん。先生:この作品の中には、僕の身近な場所しか出てきません。それがたまたま練馬区だったんですけど、例えば千葉に住んでいる人もいるし、もっと他のエリアに住んでる人もいますよね。その人たちにも「自転車で身近な所を周る」って言うのは、真似しやすいと思うんです。自転車を題材にした漫画だと専門的なことに傾いてしまいがちなんですけど、もっと身近に感じて欲しかったので、いるかちゃんはママチャリに乗っていますし、他のキャラクターもそれぞれ思い思いの形の自転車に乗っています。気軽な気持ちで感情移入して、主人公達の事を真似してもらえたら楽しいかな、って。
――では逆に、描いていて大変な部分などありますか?
わだぺん。先生:一番大変なのは、自転車を描くことです(笑)。
――要の部分ですね(笑)。
わだぺん。先生:自転車が好きで描き始めたのは良いものの……下書きが終わってペン入れをする段階で自転車がたくさん出てくるのを見ると、ため息がでます(笑)。
――ちなみに、先生の自転車に関するエピソードなどお聞かせいただけますか?
わだぺん。先生:父が自転車が大好きで、僕が小さな頃から、ロードバイクやマウンテンバイクが家にあったんです。小さい頃からずっと、慣れ親しんできたものですね。実はいるかちゃんが乗っている「将軍SIワカマツ号」って言うのは、僕の愛車の名前なんですよ(笑)
――そうなんですか?!
わだぺん。先生:はい。僕の乗ってる改造したママチャリの名前なんですけど、由来はプロレスラーの将軍KYワカマツさんです。実家にいたころから家の自転車にプロレスラーの方の名前をつけるのが好きで、親の自転車に勝手に「天龍号」とか書いちゃってました(笑)。
――なるほど(笑)。『東京自転車少女。』と言えばドラマCDも魅力のうちの1つですが、先生は聴かれてみていかがでしたか?
わだぺん。先生:読者の中でも、一番聴いていると思います!仕事場でずっとリピートしながら聴いているので、1つのお話を100回以上聴いていますね。声優さんのニュアンスを拾って漫画の中に投影している部分も、結構あるんですよ。
――具体的に、どういった部分でしょう?
わだぺん。先生:声優さんのアドリブや言い回しなどがキャラクターに合ってるなと感じると、それを取り入れたりするんです。例えばいるかの声を演じていただいている竹達さんの言葉が、歌っているように感じることがあって。それが面白いと思ったので、漫画の中でもいるかの言い回しをリズミカルにしたりとか。
――新たな発見も多いんですね。ではこれが最後の質問になりますが、先生がこれから描いてみたいことや挑戦してみたいことなどありますか?
わだぺん。先生:「今後こうしたい」と言うよりは、今描いている作品に集中して、色んな人に見てもらえたら嬉しいです。元々僕はあまり先のことをじっくり考えるタイプではないので、目の前にあることに集中して、自分の所に来た球をすべてホームランで返せればいいなって思います!
『東京自転車少女。』コミック第1巻は、2011年10月12日に発売予定。初回限定版には通常版と同価格で、竹達彩奈さん・寿美菜子さんら出演の新録のドラマCDも同梱されるとのことなので、早めのゲットがオススメです!(取材・文 杉山 玲菜)
【『東京自転車少女』STORY】
とある離島から東京へやってきた、自転車大好き超天然少女・島野いるか。
目標は、オシャチャリを乗りこなす「東京ガール」!?
自転車を通して出会った仲間たちと一緒に、誰も見たことのない「東京」探しの旅が始まる!
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