『Suara Pure LIVE -Legend Of Pure Sound-』"前代未聞"の2日間はSACDを極上生サウンドで体感するスペシャルライヴ!音の代わりにテキスト&写真でその模様をご紹介~☆
夏の終わりと秋の訪れを予感させる9月の終わりに、音楽ファンの心をときめかす"前代未聞"のイベントが2日間に渡りMt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASUREにて開催された。
何が"前代未聞"かと言えば、Suaraと一流ミュージシャンによるアクアプラス作品の名曲集『Pure2 -Ultimate Cool Japan Jazz-』を実際に"生"で体感してもらおう!という企画なのである。ライヴだから"生"は当たり前とは言え、アルバムを聴いてもらった人なら分かるとおり、アナログやハイレゾ録音を採用したハイブリッドSACDをライヴで表現するには一筋縄ではいかないはず……だが、そんな心配は無用。作品を徹底的に表現する為、同タイトルに関わったメンバー=Shuntaroさん(from WaJaRo/arranger,Piano)、 Shiraneさん(from WaJaRo/Drums)、竹下欣伸さん (元クライズラー&カンパニー/Bass)、後藤秀人さん (元キンモクセイ/Guitar)、倉富義隆さん(Sax&フルート)、五反田靖(オルケスタ・デ・ラ・ルス/Tp)、ゲストの永田真希さん(バイオリン)、エンジニアの橋本まさしさんが一堂に集結。さらに世界トップクラスのサウンドを誇る株式会社テクニカル オーディオ デバイセズ ラボラトリーズ(TADL)が全面バックアップし、高音質オーディオのシステムをステージに搭載。ライヴとライヴの合間には、総額2000万以上するサウンド・システムでのリスニング・コーナーを設けるなど、その名の通り"Legend Of Pure Sound"を体感できる貴重な一晩となったのだった。アニメイトTVでは2日目となる9/28のライヴの様子をお届けする。
●「2日目のほうがドキドキする(笑)」
スーツ姿のサラリーマンから子供連れの女性まで、幅広い層のオーディエンスから熱い視線を浴びながら、『Pure2 -Ultimate Cool Japan Jazz-』のバンド・メンバーが静かに楽器を鳴らしだし、黒を貴重としたナチュラルなワンピース姿のSuaraが登場する──。少し緊張した佇まいで登場したSuaraだったが「キミガタメ」「星想夜曲」をダイナミックなアルペジオと共に届けると、いつもの柔らかな表情の彼女へと戻っていた。しかしながら緊張は解けていなかったようで、「皆さん、こんばんは!」と勢いよく始まったこの日初のブレイクで言葉を噛む場面も(笑)。前日のライヴを振り返りながら「2日目のほうがドキドキします。でも思い残すことのないようなステージにしたい」と素直な心境を語ったのだった。
ここでSuaraはステージから離れ、バンド・メンバーによるインストへと突入。フルートの倉富さんをフィーチャーした「Brand New Heart」、ギターの後藤さんがリードしていく「君をのせて」と、アレンジとリズムで巧みに変化を加えながら、バンド全体でジャジーな音像を広げていく。その様子を堪能していたであろうSuaraが「みんな、格好良いなぁ……」とつぶやきながらステージへ再び登場。そしてバイオリンの永田さんをステージに招きいれ、時空を越えて大空へと羽ばたくような「星座」、ピアノの調べが心地良く響く「POWDER SNOW」のSuaraの透明感のあるヴォーカルが活きたナンバーを2曲披露し、大きな拍手が送られるなか前半のブロックが幕を閉じた。
●前代未聞のレコーディングを振り返ったトークコーナー
ここでSuaraと同郷 同じく関西出身のワッシーこと鷲崎健さんが司会を務めるトークパートへ突入し、岩井喬さん(オーディオ評論家)、小林俊太郎 Shuntaroさん(バンド・メンバー)、Suara、橋本まさしさん(PA、『Pure2-Ultimate Cool Japan Jazz-』 Producer)、下川直哉さん(『Pure2-Ultimate Cool Japan Jazz-』Executive Producer)が順に祭壇。まず、なぜこのイベントを開催することになったか、下川さんが語った。「単純に自分があのレコーディングの現場をもう一度見たいなと思ったんですよ。それをみんなに見てもらいたいなと思ったのが大きかったかな」。レコーディングはライヴ同様「せーの」で全員で録音した楽曲が多かったという。セパレートで録音していたら、今回のライヴのアイディアは生まれなかったのかもしれない。ただ小林 Shuntaroさん曰く「せーの!で録ると、直しがきかないから大変ですけどね。ヘッドフォンなしで一部屋で録ろうって言うし、前代未聞のレコーディングでしたよ(笑)」とのことだった。そんな"前代未聞"のレコーディングの空気をパッケージしたエンジニアの橋本さんが笑いながら続ける。「でもさ、昨日のライヴを見てても思ったけど──面白いよね。みんなジャズ出身の人だから、本当に面白い。昨日はエレキベース使ってなかったのに、今日は竹下くんがいきなりエレベ使ってるし(笑)、やっぱり昨日のライヴとは音質もちょっと違うし」。
Suaraは「最初は(そんなメンバーに)ついていけるのかという不安もありましたが、楽しまなきゃなって。レコーディングでもジャズのオケにたいしてどんな歌を乗っけるか、悩んだところもありましたけど、とにかく楽しもうって思ってました」と語る。特に「キミガタメ」の5拍子アレンジは自他共に認める難しいチャレンジだったそうだが、「やるなら やるからにはやりたいなと思ったので」と言い切ったその姿勢が実に彼女らしい。
ワッシーさんの絶妙なツッコミもあり、大きな盛り上がりを見せたトークコーナーの最後に、岩井さんが今回のピュアオーディオのシステムについて、「イマジネーションを掻き立ててくれるようなオーディオ」と評しながらいかに素晴らしいかを語った(TADのスタッフも途中祭壇)。また、合間にはそのシステムでSuaraの最新アルバムの「凛として咲く花のように」などをリスニング。Suara自身やメンバーも客席に足を運びそのサウンドを味わうなど、この日ならではのシーンが多く見られたブロックとなった。
●「最近、涙もろいので(感動で)泣きそうです……」
まるでプラネタリウムにいるかのような、目の前に映像が広がるようなステージを展開した前半戦と相反して、ワイルドなセッションからスタートした後半戦。「届かない恋」「君のままで」と波の音のように壮大な力強いサウンドで聴かせたあとは、Suaraがマイクを握りカーペンターズの名曲「I Need To Be In Love」、鬼束ちひろさんの「月光」とカヴァー曲を届ける。こういったカヴァー曲が楽しめるのもこの日ならではの試みだろう。そして「夢であるように」をはさんで、Suara自身が初めて作詞・作曲した名曲「トモシビ」を披露。ジャズ・アレンジとして生まれ変わった「トモシビ」だが、〈未来を明るく/照らせるのはきっと 自分でしかない〉というメッセージ性の強さは変わらない。言葉の力と音楽の可能性を感じさせるそのナンバーを本編のクライマックスとして飾り、ステージを去ったSuaraとメンバーであった。
アンコールで再び登場したSuaraは、ライヴに対する確かな手ごたえとオーディエンスの暖かな愛情を感じたのか、「最近、涙もろいので泣きそうです……」と涙ぐみながらも「(ラストの曲は)適度な感じで盛り上がってもらえれば。適当に楽しんでください(笑)」とワッシーさんが聞いたら「なんでやねん!」とツッコミそうなコメントをオーディエンスに伝え(笑)──最後にメンバー全員で「Tears To Tiara-凱歌-」を熱演。
絶妙に表情を変化させながら曲にドラマを注入していくそのサウンドとSuaraのどこまでもピュアな歌声に合わせて、客席からは自然とハンズクラップが。そして、演奏終了と同時に盛大なスタンディング・オベーションが巻き起こり、2日間に渡る"前代未聞"のチャレンジが大成功に終わったことをオーディエンスが雄弁に表現したのだった。そんな客席を見つめてSuaraは「スタージを去るのがつらいけど……また、ジャズを歌う機会があったらいいな!」と新たな展望をのぞかせたのだった。
彼女の5枚目のオリジナルアルバム『花凛』は10/26に発売される。<テキスト:逆井マリ>
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