
美少女ゲーム音楽業界の未来を切り開く歌姫たちの祭典――『P.C.M.Live!』開催迫る!今回はオリヒメヨゾラさん、佐藤ひろ美さん、佐倉紗織さん、μさんの対談をお届け!
PCゲーム、中でも美少女ゲーム楽曲を中心としたライブイベント『P.C.M.Live!』が、2011年11月13日、銀座パセラリゾーツBENOAで開催される。なぜ今新たなライブイベントを立ち上げ、そしてどんなイベントにしていくのか。発起人であるオリヒメヨゾラさんと、企画段階から協力する佐藤ひろ美さん、アーティストとして参加する佐倉紗織さん、μさんにじっくりとお話を伺ったので紹介しよう。
──なぜ『P.C.M.Live!』というイベントを立ち上げたのか教えて下さい。
オリヒメヨゾラさん(以下、オリヒメ):今PCゲーム、美少女ゲーム全体の売上が下がってるんですね。その中でひろ美姉さんと、メーカーさんもアーティストの起用についても保守的になってるよね、と話していたんです。新規のメーカーさんに営業させて頂いても、会ったことないから、仕事をしたことがないからということで止まってしまうことが多いんです。
私はPCゲームの歌い手になりたくて入ってきたんですが、本当にPCゲーム業界のアーティストさんたちに憧れがあって、当時はこんなステージに立ちたいな、こんなゲームの歌が歌いたいなって思うことがたくさんあったんです。
でも、私が業界に入って5年6年たって、実は今でも「新人」と言われることがあるんです。ベストアルバムが出せるぐらいには歌ってるんですが(笑)。それは何故かというと、たぶん、私より下の人が、あまり育っていないんです。PCゲーム音楽の界隈が華やかな時代にギリギリ滑り込んだ(2004年頃)世代というか。デビューしても後が続かずやめてしまう人が多くて…。それで何が足りないのか考えた時に、今はアーティストさんを見て、素敵だなって憧れてくれる場が少ないように思えたんです。それなら、その場を作ってしまおうと。本来歌い手がすることではないんですが、待っていても一向にできないのなら、自分で作ってしまおうと。ひろ美姉さんの後押しも頂いて、立ち上げさせて頂きました。
──その話を聞いて、一緒にやろうと思った理由、共感した点などを教えてください。
佐藤ひろ美さん(以下、佐藤):本当にオリヒメさんの想いに、共感する点が多かったんです。私も事務所(株式会社S)を立ち上げてアーティストのマネージメントをしているんですが、μちゃんが歌ったサンプルやプロフィールを持って行っても、実績がないから使えませんということを本当によく言われるんです。誰かが使ったらうちも、みたいな。これは厳しいなと。では歌える場があるのかというと、ある程度大きなステージは、やっぱり色々と歌った実績のある人のための場なんですね。
そのあたりがどうにかならないかな…と思っている中、オリヒメさんとそういう話になったんです。PCゲームの売上が右肩下がりの中、メーカーが少しでも数字が計算できる実績のあるアーティストばかり使うようになると、ますます新人が育たなくなってしまって業界も縮小しちゃうねって。それなら新しいボーカリストもステージに立って、美少女ゲームファンの人と一緒に楽しんで、メーカーの人にも新しい才能を見てもらえるそんな場を作れればいいんじゃないかと。
私は美少女ゲームのボーカリストというジャンルを作った人間だと自分のことを思っていて、その責任として、私の歌を聞いて憧れてくれた人たちが夢を持って続けていける場を作ること、そのお手伝いとしてオリヒメさんのバックアップをすることが私の仕事だと思ったんです。
──そうした趣旨に賛同して参加したアーティストとして佐倉さんはいかがですか?
ave;new feat.佐倉紗織さん(以下、佐倉):「P.C.M.LIVE!」についていろんな場でオリヒメさんがお話されているのを聞いて、美少女ゲーム業界で歌うボーカリストの活躍の場を作って業界を活性化したいという大きな想いに感動しました。私もデビューが2004頃なので、ちょうどオリヒメさんは同じ世代なんですが、私はこれまであまり積極的に外に出て歌ってこなかったり、そういう業界全体のことを考えたことがほとんどなかったので、とても感銘を受けたんです。このイベントに関わって、自分が初めて大きなステージを見て、自分もこのステージに立ちたい!って感じたことを思い出したり、デビュー当時にタイアップを頂いたときの思い出が蘇ったり、たくさんのことを考えるきっかけになったので、今回のステージは私にとってもきっと大切な時間になると思っています。精一杯盛り上げられるように頑張ります!(一同拍手)
── 一番新人に近い立場のμさんはどのように感じますか?
μさん(以下、μ):まさに私が一番その新人の立場なんです。最初の2年くらいは本当に1、2曲くらいしか歌える機会がなくて、自分にできることはなんなんだろう、とかずっと考えていたんです。どうすればもっと歌わせてもらえるんだろうって社長と相談していたんですが、なかなか前進できなくて。やっと今年お仕事が頂け始めたんですが、やっぱり不安の中にいるんです。だからこのライブをきっかけに私の気持ちや先輩の気持ちを、一緒にお客さんやメーカーさんに伝えていければと思うんです。頑張っていることがちょっとでも周りの方に伝わっていけばいいと思います。
──新人の育成、そして場を作るということだと、今後もイベントとして継続していくんでしょうか。
オリヒメ:もちろんやります!
佐藤:あたり前田のクラッカーですよ! 最初から、ずっと続けていくイベントとして考えていました。
オリヒメ:今回のイベントの反応を見ていると、新人を育てるって言っているのに、出演者の中に新人いないじゃないか、という声があるんですね。それは、私たちも思っていることで。新人を育てたいし発掘したい想いはあるんです。実際私たちと接点がないだけで、一曲歌いました、という人は大勢いると思うんです。でも、その人がどれぐらい情熱を持っているのかはこちらからはわからないので。本当にPCゲーム、美少女ゲームの歌が歌いたい! と思って業界に入った人なら、きっとこういうイベントを見たらドアを叩いてくれるんじゃないかな、と期待してるんです。
佐藤:今回は中堅どころにシーラカンスの私、新人のμちゃんと見た人にわかりやすく第一回をやろうという感じですね。
オリヒメ:憧れられる存在にならなきゃってのはプレッシャーではあるんですが、そういう場所を提供して、この業界を一緒に盛り上げたいと思ってるんです。ユーザーさんも、ゲーム自体も含めて盛り上げていけるのが音楽の力だと思ってるんです。
──佐藤さんも参加された「B.G.M Festival」とのコンセプトの違いを教えて下さい。
佐藤:「B.G.M Festival」は、メーカーさん主導のイベントなんですね。メーカーさんのお祭りなので、各メーカーさんのコーナーごとにボーカリストが出ることもあれば、ボーカリストは出ずに、トークコーナーのみだったりもする。『P.C.M.Live!』はアーティスト中心の音楽イベントなのが違いですね。それからやっぱりメーカーさん主導のイベントは各メーカーを代表する実績のあるアーティストさん中心になるので、『P.C.M.Live!』の新人にもチャンスを、という考え方は大きな違いになると思います。
──楽曲のチョイスやステージングはセルフプロデュース?
オリヒメ:各アーティストさんにお願いしてます。「B.G.M」さんとかはやっぱり代表曲的なチョイスになると思うんですが、こちらは全部が全部PCゲームの曲、という縛りを入れるつもりもありません。それは新人さんに門戸を開く意味でもそうですし、PCゲームアーティストさんが今後はこういう曲をこの業界で流行らせたい、と思う曲を歌ってもらっても全然構わないんです。
佐藤:あとはコラボレーションですね。参加アーティスト同士が一緒に、P.C.Mでしか見られないユニットで歌うことがある、かも? と考えてます。
オリヒメ:それから私、PCゲームミュージックオタクでもあるんですが、PCゲームの音楽って発売前後一年くらいしか聴かれないのがとても寂しいです。でも音楽って残るものなので、5年前6年前の曲も歌っていきたいと思っていて、古い曲を蘇らせたいんです! この業界の歌い手の人なら自分にとってこの曲だ、というのはあると思うので、そういう曲をこのライブでカバーしてもいいと思っています。
佐藤:ただ歌うんじゃなく、意味があって意義があるライブにしたいんです。ファンの皆さんも関係者の皆さんも楽しめる、ドリームボックスにしたい。みんなの思い出にも触れることができる自由な場にしたいです。
佐倉:コラボやカバーはとても素敵なアイデアですね。美少女ゲームミュージックには私も好きな曲がかたくさんあって、私のPCには元気を出したいときのためにお気に入りの「オープニングムービー」のフォルダが作ってあるんです。これからもやりたいことがいっぱいあります!
μ:他の事務所のアーティストさんと関われる機会ってあまりないので、一緒に歌ったり、トークだけでも関われたらすごく嬉しいです。
佐藤:最近私とμはお仕事でユニットとしてデュエットさせていただきました。嬉しかったよね。
μ:はい、私も嬉しかったです。私やっぱり佐藤さんに憧れて業界に入ったので…。実は私、デビューの前からずっとアーティストとして好きだった佐藤さんが同じ事務所にいるので、しばらくはすごく緊張してました…最近やっと、佐藤さんをアーティストじゃなく社長として見られるようになりました(笑)。佐藤さんの曲もたくさん知ってるので、一緒に歌わせてもらったり、他のアーティストさんとも歌わせて頂いたりしたいです!
──これからアーティストを目指す人や、新人へのメッセージはありますか?
オリヒメ:最近、入ることはできても続かない業界になってるんですね。だから、「やった!歌えた!」で止まっていると、そこで終わってしまう。美少女ゲームが本当に好きで歌いたいと思ってくれれば、その気持ちが続けていくエネルギーなので、それを発信し続けてほしいです。その行き先がこのライブでもいいので、がんばってほしいですね。
佐藤:PCゲーム、美少女ゲームに愛を持っている人じゃないと駄目だと思います。愛がない人とは、やっぱり一緒にやりたくないですよね。愛がないと続かないんですよ。PCゲームやアニメのファンの人って、本当に100%の愛情でアーティストを愛してくれるので、その気持ちを正面から受け止めて、返せる人に来てほしいです。そしてそういう情熱を持ってくる人を受け止められる業界にできるように、メーカーの人とも一緒に考えていきたいですね。
──最後にライブへの意気込みをお願いします。
佐倉:暖かいコンセプトのライブに尊敬するアーティストさん達と一緒に出演させて頂いて、すごく嬉しいと同時に、責任重大だなって思ってます。皆さんのお話を聞く中で、この曲を歌いたいな…というものも見つかったので、今までライブで歌ったことがない曲も織り交ぜて、厳選したセットリストを用意していきます!ステージで、美少女ゲームを愛する皆さんと私の想いが重なる瞬間があれば最高に嬉しいなって思います。お会いできるのを楽しみにしています!
μ:先輩に囲まれてプレッシャーも大きいんですが、まずは皆さんの足を引っ張らないように。それから私を知らない人が多いと思うので、まずμがどういう人で、どういう歌を歌うのかを知ってもらうことを目標に頑張りたいと思います。
佐藤:昔から美少女ゲームを愛してくれる人も、最近知った人もすべての人が楽しめるライブを作りたいなと思っています。美少女ゲームを愛する人は11月13日、銀座パセラに来てください!
オリヒメ:今回のキーワードは、アーティストによるユーザーと美少女ゲーム業界の未来のためのイベント、なんです。楽曲や作品に込めたアーティストの想いや背景をユーザーさんに届けて、それが未来につながっていけばいいと思っているので、皆さんに受け止めにきてほしいと思います。大きいことを言えばここから美少女ゲーム業界の音楽の歴史を変えたいと思います! その足がかりになるイベントにしたいので、美少女ゲーム音楽の未来を見に来てください。
>>P.C.M Live!