3月9日はミクサンキューの日! ミクの日大感謝祭ライブをレポート
2012年3月9日(金)、東京ドームシティホールにて「ミクの日大感謝祭」ライブコンサートが開催された。8日、9日の2日間にわたり開催されたコンサートは、8日が「初音ミクライブパーティー2012(ミクパ♪)」、9日が「初音ミクコンサート 最後のミクの日大感謝祭」と内容が異なっている。
2日間で約1万人の観客を魅了したコンサートを、9日公演「初音ミクコンサート 最後のミクの日大感謝祭」をもとに徹底レポート。記事の最後には初音ミクの産みの親、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社代表取締役である伊藤氏のインタビューも掲載しているので、最後まで逃さずチェックしてほしい。
コンサート開演前には、初音ミクの声を担当した藤田咲さん、鏡音リン・レンの下田麻美さんによるトークと、動画投稿サイトで活躍するダンスユニット「DANCEROID」によるダンスパフォーマンスが披露された。前日の公演をみていた藤田さんが「レン君がカッコよすぎる!」と、下田さんに熱い想いを明かしたエピソードなどを語って会場を沸かせていた。
フロントアクトを終え、いよいよステージの開幕。垂れ幕に「THE FINAL」という文字が映し出されると観客によるミクコールが起き、開演まえから会場のボルテージは急上昇。「Tell Your World」のイントロが流れ、白い幕の向こうから光を浴びうつむくミクの姿が。ステージに現れたミクに観客からは割れんばかりの声援が送られ、会場がライトグリーンのサイリウムで満たされる。軽快なステップを魅せつけ、ジャンプをするたびにそよぐ髪、揺れるスカートは電子の世界から現実の世界へ実体を持って飛び出したかのような感動を覚える。
確かにステージに存在しているミクを前に、会場の熱は上がるばかり。つづいて「ゆめゆめ」「ワールドイズマイン」「えれくとりっくえんじぇぅ」「恋スルVOC@LOID」とアップテンポな曲を魅せつけると、ミクはふっとステージから姿を消してしまう。
しかし、ここからがミクの本領発揮。「クローバー♣クラブ」のメロディが流れたかと思うと、赤ずきんコスチュームへモジュール(衣装)チェンジして登場。観客からは悲鳴にも似た歓声が巻き起こっていた。つづいて「ぽっぴっぽー」では赤、白、青のコスチュームを身にまとい「ぴーっ!」っとステージを駆けまわる。
「ロミオとシンデレラ」では深紅のドレスにバラモチーフのマイクを片手に、ステージに座り込み空に向かって手を伸ばすミクの切なげな演出が印象的だった。ニットの可愛らしいコスチュームで歌い上げたのは「ファインダー(DSLR remix - re:edit)」。モジュールチェンジをしながらもノンストップでつづくミクの歌声に、サイリウムを持つ手に力が入っていた。
ノンストップのモジュールチェンジから一変、機械的な電子音とともにステージに現れたのはノーマルコスチュームのミク。ハイテンポな「裏表ラバーズ」を会場に響かせ、ミクのMCタイムに。順に演奏を担当するステージの演者を紹介していき、「みんなありがとう! そしてボーカルは? せーの!」のという問いかけに観客全員で「初音ミク」と声をそろえてボーカルであるミクの名前を叫んだ。そして「StargazeR」へとつづき、バックステージに満月のエフェクトが映され「moon」が流れる。満月の光を浴びながら歌声を奏でる姿は非常に幻想的だった。
ステージの色彩がガラリと変わり、紫色の光に包まれるとハイスピードなイントロが響き「初音ミクの消失」へ。観客の持つサイリウムが激しく振られ会場のボルテージも最高潮。曲の最後には「消失」のテーマに合わせた演出として、ミクの体にノイズが走り言葉のとおりステージから消失してしまう。この演出には観客からも悲鳴が聞こえ、ミクの名前を叫ぶ人も多かった。
観客の不安をぬぐうかのように会場に響いたのはMEIKOの「変わるわよ! ついてこれる?」というボイス。サプライズでステージに現れたのは赤いドレスに身にまとったMEIKO。先ほどまでライトグリーン一色だった会場が一気に赤のサイリウムに包まれ「Change me」を歌い上げた。
歌い上げると同時にMEIKOは深紅のバラに姿を変える。どよめく会場の雰囲気を一蹴するように「お待たせ!」というボイスとともに現れたのは鏡音レン。ステージ上の深紅のバラを散らせ「右肩の蝶」で激しいパフォーマンスを見せてくれた。つぎに登場したのは黒いコスチュームをまとった巡音ルカ。「Just Be Friends」を披露しながら、ステージを歩き回り観客へ手を振る場面もあった。
しっとりとしたサックスのメロディが響いたかと思うと、ステージに和を感じさせる妖しげな衣装のミクとルカが登場。ふたりのデュエット曲である「magnet」で絡み合うような妖艶なダンスを魅せつけた。モジュールを白と黒のシンプルなコスチュームにチェンジし「ワールズエンド・ダンスホール」を披露。するとふたりは緑とピンクの光になったかと思うと、「炉心融解」のメロディが流れ光のなかから鏡音リンが現れる。ギターを演奏するパフォーマンスが印象的だった「孤独の果て」でのびやかな歌声を奏でる。つづく「Promise」ではモジュールチェンジしたミクとリンで鏡あわせのシンメトリーな可愛らしいダンスを見せてくれた。
いよいよ終盤にさしかかり、ミクから「今日は本当にありがとう。もうちょっとだけお付き合いください」と少し長めのメッセージを観客に届けた。観客からの歓声に手を振り、想いに応えるかのように「タイムリミット」「パズル」「1/6 -out of the gravity-」を歌いあげる。「ミクの日感謝祭これで最後の曲です。ここにいる人もこられなかった人も全ての想いを、ひとつに……」とミクからのメッセージが込められた「SPiCa」が会場に響く。曲が終わると「サンキュー!」とステージから姿を消すミク。しかし、静かに想いをこめて歌を届ける歌姫への観客からの熱は冷めることを知らず、ミクの名を会場全体でコールしアンコールへと突入。
ミクへの想いでひとつとなったファンの熱い声援に応え、アンコールとして「愛言葉」「メルト」を披露してくれた。観客席でも「ラーラララーラーラーラー」とメロディーを大合唱するなど、歌の力で会場がひとつになっていることを実感できた。アンコールの最後には、上がりきった会場の熱を優しく包み込む声で「聞いてください」と、歌われたのは「ハジメテノオト」。ミクとの初めての出会いを思い出させ、ミクからのありがとう、ファンからのありがとう、作曲者たちへのありがとうなど、全ての「ありがとう」という感謝の気持ちを代弁しているようで胸にグッとくるメロディを奏でた。オーラスには、ダンサーたちによる激しいダンスとミクによる「ワールドイズマイン」を観客とともに大合唱。全ての曲を歌い上げミクは「バイバーイ」と手を振って電子の世界へと帰って行き、大熱狂のなかコンサートの幕は閉じた。
音声合成ソフトととしてスタートをきり、いまや電子の歌姫として世界へ羽ばたくボーカロイドたち。ファンの熱い想いを胸に、さらなる躍進を遂げていって欲しいと感じさせてくれる「ありがとう」の詰まったコンサートだった。
●セットリスト●
1 Tell Your World
2 ゆめゆめ
3 ワールドイズマイン
4 えれくとりっくえんじぇぅ
5 恋スルVOC@LOID
6 クローバー♣クラブ
7 ぽっぴっぽー
8 ロミオとシンデレラ
9 ファインダー(DSLR remix - re:edit)
10 裏表ラバーズ
11 StargazeR
12 moon
13 初音ミクの消失
14 Change me
15 右肩の蝶
16 Just Be Friends
17 magnet
18 ワールズエンド・ダンスホール
19 炉心融解
20 孤独の果て
21 Promise
22 タイムリミット
23 パズル
24 1/6 -out of the gravity-
25 SPiCa
---アンコール---
26 愛言葉
27 メルト
28 ハジメテノオト
---オーラス---
29 ワールドイズマイン
コンサート終了後、初音ミクの産みの親であるクリプトン・フューチャー・メディア株式会社代表取締役・伊藤博之氏へインタビューを敢行。初音ミクというコンテンツへの想いなどを語っていただいた模様をお伝えしよう。
――2日にわたって開催されたライブを実際にご覧になっていかがでしたか?
伊藤博之氏(以下、伊藤):ちょうど5年前の今頃は、初音ミクのビジュアルも名前も無い状態で音声の切り貼りをしながらソフトの制作をしていた時期でした。それから5年の月日が経って、コンサートがひらけるほどの支持を得るキャラクターに躍進したことは予想外のできごとです。ライブを終えて感激するとともに、これからも進化をし続けていきたいという新たな気持ちが芽生えました。
――初音ミクの現在の盛り上がりを伊藤社長はどのように捉えていらっしゃるのでしょうか?
伊藤:あくまで初音ミクは歌を歌うソフトウェアでして、確かな正体や設定が決まっているわけではありません。ですのでクリエイターの方たちに創作する余地が非常にあります。そのため創作のチャンスやきっかけを担い、ソーシャルメディアなどを通じてたくさんの人々にシェアされ、大きなムーブメントへと進化していきます。初音ミクが生んだこのような流れは、新たなコンテンツのモデルになるのではないかと期待しています。
――これだけのムーブメントを想定していらっしゃいましたか?
伊藤:想定はしていないです。僕らもなるべくたくさんの方に使っていただきたいし、曲を聴いていただきたかったので漠然と想像はしていましたが現在の状況は想定を上回るものになりました。
――具体的に一番想定外だったこととは?
伊藤:全部想定外ですけども、一番は規模ですね。10人20人の人が作るところは想定していましたが、今となっては何万もの人が作品を作り上げているという規模間は想定外でしたね。現在の状況を維持しながら、今後とも初音ミクのコンテンツを広げられるよう活動していきたいです。
――今後、初音ミクに関するソフト制作のご予定は?
伊藤:初音ミクはインターネットで育てられ、支持されて成長してきたと僕は考えています。日本のクリエイターやファンが中心ですが、これからはグローバルに、ネットでつながる世界中のクリエイターやファンをつなぎ合わせていきたいと考えています。実際に、初音ミクは海外でのファンも獲得しつつあり、その流れを受けて現在初音ミクの歌を英語で歌える製品を開発中です。日本以外で活躍するクリエイター、ファンを大きく魅了する存在となれればと考えております。
――音声ソフトとしての初音ミクをタブレット端末に展開するご予定は?
伊藤:初音ミクはYAMAHAさんが開発した「VOCALOID」という音声合成ソフトをもとに作られたもので、現在iPadで動く初音ミクの音声ソフトはリリースしております。ですので、PC以外で動くものも今後でてくるかもしれません。
――ここまでムーブメントとして広まったのは著作権など、クリエイターへの規制を緩めたことが大きな要素だと思われますが、これはどのような考えからのアイデアでしょうか?
伊藤:僕がもともとエンジニア出身で、開発にフリーのソフトウェアを使用するなどグループでつくったソースをシェアすることに違和感を感じないポリシーなんです。個人の創作のために使える部分の枠を広げ、個人の方が初音ミクの作品を創作することで世界中に広まりましたし、コンテンツを自由にすることで生まれるビジネスモデルもあるのではないかと思っております。
今後は、このようなトップダウンだけでつくるコンテンツだけでなく、ボトムアップとしてアマチュアが作り出し、それが価値を生み出していくモデルが育っていくことを願っています。
――10代ファンの方も多いと思いますが、これからの世を担っていく10代のみなさんへメッセージをお願いします。
伊藤:10代といえば、学校でいろんな勉強をしているころだと思います。押しつけられる教育も大切ですが、ダンスをしたり、絵を描いたりなど自分で自発的にやりたいと思ったことを大切にしてもらいたいです。初音ミクも皆さんが自発的に創作する総体として存在しています。ですのでどんどん自分の意思で創作し、自己表現をしてみてください。
>>ミクの日大感謝祭 | 初音ミク -Project DIVA- 公式サイト
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