7月放送開始、フジテレビ「ノイタミナ」枠で放送のテレビアニメ『夏雪ランデブー』から、葉月亮介役の中村悠一さんにインタビュー!
2012年7月からフジテレビ「ノイタミナ」ほかで放送されるテレビアニメ『夏雪ランデブー』(祥伝社・フィールコミックス)は、2011年度「このマンガがすごい!」オンナ編第4位を獲得し、今最も期待が高まる気鋭の女性漫画作家・河内遙の原作の、低温一途青年とさっぱり未亡人、そして草食系執着霊が織り成す、奇妙で切ない、純情三角ラブストーリー。
監督は『ローゼンメイデン』(04)で監督デビューした松尾衡氏。自らシリーズ構成・脚本・音響監督まで務め、緻密な演出と色彩美で原作の世界観を丁寧に創り上げている。
そして松尾監督が得意の「プレスコ」方式(先に音声の収録を行い、それに合わせて画を制作していく技法)で収録されたこの『夏雪ランデブー』に出演するのは、中村悠一さん、大原さやかさん、福山潤さんという、人気と実力を兼ね備えた豪華キャストだ。
プレスコが採用されていることでキャストの芝居の「間」や「呼吸」が活かされている本作について、葉月亮介役の中村悠一さんに作品について伺ってきた。
●(葉月の)一番年下の人間としての可愛さも見えるようになってきました
──『夏雪ランデブー』は「ノイタミナ」枠での放送となるわけですが、「ノイタミナ」についてどんな印象をお持ちですか?
中村悠一さん(以下、中村):「ノイタミナ」という枠の作品に、特別多く関わってきたわけではないんですが、立ち上げられた時から業界に関わられていた方々からすると、この作品は、ノイタミナ枠にどんぴしゃだと思って頂ける作品なんじゃないかなと思いました。僕が「ノイタミナ」でこの作品の前に出ていた『ギルティクラウン』とは真逆というか、毛色が違うので、ひとつの枠の中でこれだけ差のあるものが見られる。一緒に放送されるのが『もやしもん リターンズ』ということで、そこにも差があると思いますし、1時間の枠の中で、それだけバラエティに富んだものが見られる、というのはいいですよね。
──『夏雪ランデブー』はオーディション方法が独特だったとのことなのですが、どんな形式のものだったのでしょうか?
中村:普通のオーディションだと、スタッフの方がミキサールームにいて、僕らはひとりずつスタジオに入って行うのが普通なんですが、今回の場合は、事前のテープオーディションで相当人数が絞られてからのスタジオオーディションだった様です。松尾監督がスタジオに入ってきて、「隣で聴いているからここで芝居して」という指示を出されて、キャラクターが座っているなら座ってやってもいいし、マイク前にこだわらなくていいから、このシーンを演じるところを間近で観たい」というものでした。そういったオーディションというのは、経験がなかったので新鮮でしたね。
──監督が横にいらっしゃることでのプレッシャーはありましたか?
中村:プレッシャーは感じませんでしたが、マイクを通して聞かせるということではないので、昔お芝居をやっていた頃の、舞台の稽古みたいだなと感じましたね。
──作品に参加する前から原作は読まれていましたか?
中村:最初のテープオーディションの時点では僕はまだ読んでいなくて、スタジオオーディションの直前くらいに2巻くらいまで読みました。
──演じている内に、キャラクターに対する印象は変わりましたか?
中村:漫画の絵の表現の中では、葉月は表情の変化、特に目の動きが少ないので、仏頂面なキャラクターとして固めて、あまり変化が大きくない方がいいのかなと思っていたんです。でもオーディションをやっている時に監督から「泣くシーンや喜ぶシーンは、人間なんだから綺麗にならなくてもいいから、人間らしく聞かせて下さい」と指示があったんです。それを表現しないといけないという観点で漫画を読んでいくと、「絵ではこうだけど、感情の振り幅はあるのかな」とか、最初はいけ好かないキャラクターという印象があったんですが、彼の一番年下の人間としての可愛さも見えるようになってきましたね。
●「間」の取り方や会話のテンポを役者の裁量でやれるというのは面白いと思いました
──『夏雪ランデブー』は「プレスコ収録※」で行われているということなのですが、これまでご経験はありますか?
※「プレスコ収録」:従来のアニメのアフレコは作画に合わせて声をあてるのに対し、先に声を収録してからそれに合わせて作画を行う手法。
中村:僕はなかったですね。映画とかではたまに聞きますが、業界内ではあまりとられている手法ではないので。
──作品が「プレスコ収録」で行われると最初に聞いた時の印象はいかがでしたか?
中村:1話の収録の前に、顔合わせをやりたいということで集まって、その時に1話の台本を、ドラマCDのように絵がない状態で、音だけのやり取りをするということをやったんです。その時に監督が「というのに映像がつくだけなので、基本的にプレスコは絵を気にしないでやって下さい。絵はあくまで尺計りや、キャラクター同士の距離感や立ち位置などの、空間の指定がとっさに分かるだけのガイドだと思って下さい」と仰っていたので、やりやすかったです。あの本読みをやらずに急にやっていたら、どこまで絵に合わせていかなきゃいけないのかというのが分からなかったと思いますね。
──実際にプレスコで収録してみて、いかがでしたか?
中村:プレスコ収録は作品によって相当変わるんじゃないかなと思いました。『夏雪ランデブー』は人数が少なくて、基本会話だけで進行するので、プレスコ収録にとても向いている気がしました。逆にロボットものなどアクション性の高いものだとすごく難しいんじゃないかなって思いましたが、『夏雪ランデブー』はキャラクターの動きに合わせてのアドリブもほとんどないですし、そんなに大変っていう印象はなかったですね。
──では、アフレコ収録との違いや、苦労した点はどこになりますか。
中村:普通のアフレコと準備していく作業が全然違うので、大きな違いはそこですね。絵から得られる情報がゼロに近いですし、例えばアニメだと台本にない情報も絵から読み取れたり、口パクの早さによって、「今は早く喋っているから怒っているから勢いを持たせないと」とか、「走りながら喋っている絵」という情報が得られるんですが、プレスコだと基本絵が停まっているので、30分のアニメの中の、キャラクターの行動や状況を自分で把握しないといけないんですよね。ただ、アニメを自分で作れるというわけではないので、原作と絵コンテをいただいて、そのシーンについて組み込んでいかないといけないので、そこは大変でしたね。
──プレスコでの収録で、特に面白さを感じたのはどの部分ですか?
中村:「間」の取り方や会話のテンポを役者主導でやれるというのは、プレスコじゃないと出来ないことなので、役者の裁量でやれるというのは面白いと思いましたね。普通のアフレコだと、絵のテイストに釣られたりもするし、会話のテンポが演出家さんの「間」なんですよね。「僕はこうしたい、ここで相手の言葉の前に言い返したい」とかっていうディスカッションをしてみても、やっぱりなかなか難しいので。あと、まくし立てたいなと思うシーンでも尺が長めだとゆっくり喋るしかないので、語気は荒いけどゆっくり喋る中に気持ちを乗せて、っていう演じ方をすることが多いんですね。でもその制約がないというのは、非常にやりやすいですね。
ドラマCDにはそういう良さがあるんですが逆に言うと絵がないので、ドラマCDとアニメの良さを併せ持ってるんじゃないかと思いますね。こちらの感性に任せてもらえるところが多かったりするので。逆に言うと、ちゃんとしたものを提供出来ないと、プレスコでやる意味がない。その大変さと楽しさを併せ持っていると思いますね。ただ、作業としては非常に大変だと思いますけどね(笑)。
──では最後に、放送を楽しみにしている皆さんにメッセージをお願いいたします。
中村:お花が作品のキーとして出てくるので色彩豊かでカラフルな画面になると思いますが、お話は実にシンプルに進んでいきます。楽しめるところっていうのは人それぞれあると思うんですが、まずは3人の恋愛模様と、そこにどういうふうに決着がつくのかを楽しんでいただきたいなと思います。
【作品情報】
『夏雪ランデブー』
<ストーリー>
目つきは悪いが純情一途な花屋のバイト青年・葉月(はづき)亮介。彼がひそかに想いをよせるのは、店長の島尾六花(ろっか)。一目惚れした六花の花屋に通い詰め、バイト募集を機にそこで働くことに。念願叶ったものの、8つ年上の彼女は恋愛を諦めている様子。目の前にいるのに何もできない自分に歯がゆさが募るばかり。
ある日、とある用事で花屋の2階の彼女の自宅に呼ばれて行くと、そこにはなんと上半身裸の男。予期せぬ事態に半ば憤り、半ば呆れる葉月だったが、意外な事実が明らかに。その男は六花の同棲相手ではなく、すでに亡くなった彼女の旦那の幽霊(島尾篤)だという。六花には見えないらしい島尾(幽霊)は何かと葉月の恋路の邪魔をし、葉月もそれに屈せず押しの一点張りで頑張るがなかなか埒が明かない。そんな中、島尾(幽霊)が切り出した予想外の提案とは……。
<STAFF>
原作:河内遙『夏雪ランデブー』(祥伝社・フィールコミックス)
監督:松尾衡
キャラクターデザイン・総作画監督:谷口淳一郎
音楽:村松健
アニメーション制作:動画工房
<CAST>
葉月亮介:中村悠一
島尾六花:大原さやか
島尾篤:福山潤
2012年7月5日より毎週木曜25:15~フジテレビ「ノイタミナ」ほか各局でも放送予定
>>「夏雪ランデブー」サイト公式サイト