<5月のダリア文庫新刊情報>水月真兎先生の『闇の翼に囚われて』が登場! 試し読みページもお届け!
乙女がときめくボーイズラブレーベル・ダリアより、5月に発売する文庫の新刊情報が到着♪ 今月は、水月真兎先生の『闇の翼に囚われて』が登場です! 書籍の試し読みもたっぷりありますので、発売情報とあわせてしっかりチェックしてください☆
■神様を解放しちゃった、おっちょこちょいな陰陽師
タイトル:闇の翼に囚われて
著者名:水月真兎
イラスト:緒田涼歌
発売日:2014年5月13日(火)発売
価格:565円+税
【STORY】
陰陽師の子孫の倉橋芳明は、朽ち果てた神社で封じられた神・黒羽を解放してしまった。芳明は先祖の陰陽師・吉明と間違えられ、彼に無垢な身体を強引に犯されてしまう。力を貸すことを条件に芳明は黒羽に凌辱され続けるが、彼と行動を共にするうちに吉明の記憶を夢に見るようになって…。黒羽の想い人だった吉明の記憶と、今の自分に引き裂かれるような気持ちになり──。
☆購入特典:書き下ろし小説ペーパー(3種)
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「闇の翼に囚われて」(著:水月真兎) (本文p89~91より抜粋)
芳明は、血の気のない唇をギュッと噛んだ。
黒羽が愛しているのは、自分ではないとわかっていても、この体も心も彼を拒めない。
社で芳明が黒羽の封印を解いてしまったように、自分の中の吉明の魂も長い封印から解き放たれ、目覚めてしまったのかもしれない。
陰陽師だった彼は、無意識に自分の魂に呪いをかけていたのではないだろうか。
──黒羽が愛しい。
それは、吉明が残した最後の想い。祈りにも似た無垢な感情だった。魂の奥深くに刻まれた呪いは、今も心を支配している。
(バカ、みたいだ…)
最初から、抗うだけ無駄だった。自分は吉明ではないと、どれほど叫んでみたところで、自分の魂の核はあの陰陽師と繋がっている。
芳明自身ですらこんなに揺らいでいるのだから、黒羽が、芳明とかつて彼を裏切った恋人との見分けがつかないのも、当然なのかもしれない。
それに、黒羽は封印されたことを裏切りだと怒っているけれど、吉明のほうに裏切る気持ちがあったのかどうかも怪しいものだった。
(俺は、前世の自分に
何百年か後に生まれ変わった自分と黒羽が再会することを、いかに吉明が優れた陰陽師だったとしても、予知できたとは思えない。
それでも、吉明は願ったのではないだろうか。
いつか、黒羽が目覚めるはるか未来にも、彼が孤独ではないようにと。自分の魂が、彼に寄り添っていられるようにと。
けれど、それは紛れもなく呪い、だ。神である黒羽を、永遠に自分の魂に繋ぎ止めようとする強力な呪い。たとえ、黒羽自身が最もそれを望んでいるとしても。
(なんか…、吉明って、嫌な奴だな)
あの夢だけでは、吉明がどんな陰陽師だったのかまではわからない。
強引な黒羽に体を貪られている印象ばかりが強かったけれど、冷静になって考えてみれば、
黒羽があれだけ慕っているんだから、二人が愛し合っていたことは間違いないだろうが。
(安倍晴明にも匹敵するほどの力を持った陰陽師、か…)
黒羽が自分に吉明の面影を押しつけてくるから、反発しか感じていなかったけれど、自分の前世だという男に少し興味が湧いた。
(黒羽…)
呼びかけても、返事はない。
芳明が目覚めた時には、その姿はベッドの上から消えていた。左目に微かな冷気を感じるから、依代の中で眠っているのだろう。
芳明を抱いて、満たされて、安心したのかもしれない。
(まったく…。人を貪るだけ貪っといて…)
それでも、自分は黒羽を憎めない。何をされても拒めない。吉明のかけた呪いが、心を縛っている限り。
(疲れた…)
冷えた自分の肩を抱え、芳明は毛布の間に潜り込んで目を閉じた。