映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』で宇宙一ツイてないトレジャー・ハンターの主人公、ピーター・クイルを演じた山寺宏一さんにインタビュー!
『アベンジャーズ』を手掛けたマーベル・スタジオの新作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』。無限の力を持つパワーストーン<オーブ>を巡り、宇宙のはみだし者たちが、銀河存亡をかけた戦いに挑むアクション・アドベンチャー超大作だ。アメリカでは今夏に公開され、8月公開作品のオープニング新記録を樹立。日本での公開が待たれる一作だ。
そんな本作の日本語吹き替え版では、主人公ピーター・クイルを、山寺宏一さんが担当。独占インタビューを行った。
■ ピーターは自分が演じたいと思っていたキャラクター!
――本作で山寺さんが演じられたピーター・クイルは、どのような役ですか?
山寺さん:この作品はアウトローと呼ばれる「はみだし者」たちが銀河を守る物語ですが、その中で僕が演じたピーター・クイルはメンバーのリーダー的存在です。彼は「宇宙一ツイてないトレジャー・ハンター」というキャッチフレーズを持つ男で、決して褒められるような存在ではなく、しかもプレイボーイです。普段はおちゃらけていて女性を口説いてばかりいるけど、やる時はやるという男ですね。かつてお母さんを亡くし、その後に何者かに連れさられるという数奇な運命をたどっていますが、詳しいことは本編では描かれなくて謎に包まれています。
――母親を亡くすという部分でも複雑な感情を持つキャラクターですが、演じられてみていかがでしたか?
山寺さん:プレイボーイでふざけた部分もあるけど守りたいものもある。はじめは自分のことしか考えてなかったけど、物語の中で自分の使命に気づいていきます。「これがヒーローか?」と思う部分もあるヒーローらしからぬキャラクターなんですが、根っこには何かすごいものを持っているのではないか、と思わせますね。他の『アベンジャーズ』のヒーローたちと比べると、何か特別なすごい能力を持っているわけでもなく生身の人間なんですけど、知恵を駆使してさまざまな危機を乗り越えてゆきます。そして、度胸は満点なんですよね。自分のことしか考えてないように見えて、不意に「こいつ何なんだろう?」って思わせるところが、すごく魅力的ですね。
――演じる上ではどのような点を意識されましたか?
山寺さん:決して完全な二枚目ではなくちょっと三の線も意識しつつ、あまり作り込まずに素直に演じようと思いました。他のキャラクターたちとのユニークな掛け合いが面白いんですよ。メンバーの中ではツッコミ役なので、全体的にテンションの高い映画ですしメリハリを効かせてやろうと思ったんですが、音を録っているディレクターから「三の線を見せようとし過ぎないように、もっと自然な楽な感じで」とアドバイスをもらいました。映画自体のテンションが高いものですから、どうしてもガッといきたくなるんですよね。声優にはありがちなんですけど、やり過ぎてしまわないように注意しましたね(笑)。
――今回の役が決まった時は、どのようなお気持ちでしたか?
山寺さん:うれしかったですね。僕はマーベル作品が大好きですし年々盛り上がっている感じがしますよね。でも、マーベルとかディズニーとかいう前に、この『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー』という作品に、僕自身が夢中になってしまいました。マーベル作品では、アニメ『X-MEN』のサイクロップスや、映画『アイアンマン』(テレビ放送版)のローディなどを演じていますが、『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー』では「こういう映画の登場人物を声優として演じたかったんだ」って、思わせてくれた作品なんです。
■ ピーター率いる史上最“凶”のユニークなメンバーたちにも注目!
――ピーター・クイルとともに銀河を守るメンバーにも、個性的なキャラクターが揃っていますが、吹き替えにもお笑いタレントの加藤浩次さん(ロケット役)や、俳優の遠藤憲一(グルート役)さんらが務めており、さらにユニークな印象です。山寺さんから見て、それぞれのキャラクターの印象をお聞かせ下さい。
山寺さん:まず、ロケットに関してはアライグマみたいなキャラクターじゃなくて、動物のアライグマそのものなんですよね。メカに関してエキスパートで頼りになりますが、とにかくあの毒舌っぷりは、メンバーの中でも「凶暴度No.1」です。まさに、吹き替えを担当された加藤浩次さんそのものという感じでした。加藤さんは、今ではさまざまな番組で司会を務められて良識派として知られていますが、僕の周りのお笑いの友達に聞くと「あいつはとんでもない奴だ」って昔から言われていますからね(笑)。まさに、ロケットと同じ「凶暴度No.1」という根っこを持っている人なので、「この役は加藤さん以外にはいないな」と思いましたね(笑)。
グルートは、この作品を観た人はほとんどがグルートのファンになってしまうのではないかというくらい魅力的なキャラクターですね。樹木型ヒューマノイドですが、ほとんど植物の木そのものなんですよね。セリフは「私はグルート」しか言わないですけど、それでいろいろな感情を表していて、作品全体でも重要なキーマンです。見た目はちょっと気持ち悪いんですけど大ボケかましてくれますからね。一番笑えるキャラはグルートだと思います。グルートを演じられている遠藤憲一さんは、俳優さんとしてもナレーターとしても尊敬する方です。僕もいろんな声を使い分けて声の仕事をしていますが、遠藤さんのあの声でスッと喋られたら誰も勝てないですよね。声が持っている独特な日本人離れした声の質感が、他の人と全然違うんですよね。本業の声優ではないのに、声の存在感は声優以上ですから。そういう意味でも、今回のグルートはとても素晴らしいキャラになっていると思います。
美人暗殺者であるガモーラに関しては、とても美しいんですけど彼女も数奇な運命を背負っているキャラクターですね。ガモーラの印象的なセリフで「宇宙一の間抜けに囲まれて私は死ぬのね…」っていうのがあるんですけど、それが僕は最高におかしかったです。ピーターとのラブシーンらしきところも見どころですね。
破壊王のドラックスは、とてもストレートなキャラクターですね。冗談が通じないので、ストレート過ぎて周りを困らせる。そこが、バカで愛らしいキャラクターですね。
――吹き替えとアニメの仕事で、演技をする上で分けて考えられている部分はありますか?
山寺さん:特に分けているという事はないんですけど、オリジナルのアニメは映像が手本ですが、実写の吹き替えの場合はオリジナル(役者)の声があるのでその違いはありますね。あとは、アニメと吹き替えの違いというよりも、その作品によってのテイストの違いによって、どのような演技にするかということは常に意識しています。
――では、最後にアニメファンに向けて本作の見どころを教えて下さい。
山寺さん:僕はかつて『カウボーイビバップ』で賞金首を追いかける役をやっていたんですけど、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のピーター・クイルも宇宙を股にかけるトレジャー・ハンターですし、通じるものがあります。お金を稼ぐためだけに戦っていた主人公が何かを守るために命を賭けるという点は、方向性は違いますが共通していると思いますね。
さらに言うと、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』も音楽がいいんですよ! ピーターは母親の形見であるカセットテープをいつも聴いているんですが、それが70年代のアメリカンポップスで、懐かしい名曲がこの映画の世界とぴったりマッチするんですよ! 音楽で楽しめる、宇宙を股にかける、そしてシリアスなストーリーの中にもユーモアのセンスがある。この部分も『カウボーイビバップ』と共通しているのでファンにはぜひ期待してほしいですね。
また、『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー』は続編の制作も決まっていますし、『スター・ウォーズ』のようにシリーズ化されて、今後作品の世界が広がっていくことを僕自身も願っています。皆さんも、今のうちから目をつけておいて下さい!
――ありがとうございました。
<STORY>
史上最も運が悪いトレジャー・ハンター、ピーター・クイル。無限の力を持つパワーストーン<オーブ>をめぐり、凶暴なアライグマをはじめとする宇宙のはみだし者たちと結成した“宇宙最凶チーム”が、銀河滅亡を阻止する戦いに挑む!
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』
(原題:The Guardians of the Galaxy)/全米公開:2014年8月1日
■監督:ジェームス・ガン 製作:ケビン・ファイギ
■出演:クリス・プラット/ブラッドリー・クーパー/ヴィン・ディーゼル/ゾーイ・サルダナ/デイヴ・バチスタ/ベニチオ・デル・トロ