“少女ナナ”の旅立ちを描いた水樹奈々初のアコースティック・ライブ 詳細レポート
水樹奈々さんが2015年1月17日(土)・18日(日)、埼玉県・さいたまスーパーアリーナで自身初となるアコースティック・ライブ“NANA MIZUKI LIVE THEATER 2015 -ACOUSTIC-”を開催。2日間で計54,000人のオーディエンスを熱狂させた。アニメイトTVでは1月18日公演の模様をお伝えする。
●少女ナナが音楽の旅をする
眩いほどのステンドグラス、巨大なパイプオルガンで彩られた教会風のメインステージに、舞台下から静かに登場した水樹さん。お馴染みのバックバンドCherry Boys・トムくん(神父風の衣装!)のオルガンの音色に合わせて、オープニング・ナンバー『Trinity Cross』を歌い上げれば、客席は彼女のイメージカラーである青に染め上げられていく。伸びやかな歌声が神々しいほどの光を放ち、客席から感嘆の溜息が漏れるなか、今度はピアノ伴奏のみで『PHANTOM MINDS』を。厳かな雰囲気のステージに白いドレス姿がよく似合っていて、メインステージの左右に常設されたモニターのリアルタイムの映像が、まるでPVのように観えた。
最初のブレイクでは、音と歌というシンプルな構成を軸に、盛りだくさんで贈りたいと宣言。「いつもとは違う形でスタートしました。さきほどはオルガン奏者として、キーボードのトムくんがいたんですけど、たった二人で“よし行くぞ”と物凄い緊張感に包まれました」とこの日ならではのエピソードを交え、ツアータイトルにちなんで「今日はストーリー仕立て、ひとりミュージカル風でお届けします。わたしが主人公の“少女ナナ”でございます」とライブの趣旨を説明。
「普段はこのオープニングで(勢いよく)“皆行くぞ~!”“うぉー”みたいな感じですけど、今日は違うので……皆様よろしくてっ!?……ってノリにくいですよね」と苦笑しつつ、アコースティックならではのしっとりとした世界観を楽しんでくださいと『You have a dream』へ。 この日はメインの教会ステージのほか、コンセプトの違う3つのサブステージが客席に用意されていたのだが、“道先案内人”のケニー(Gt.)に連れられて、ヴェネチア運河で実際に使用されていたというゴンドラで、まずは客席の真ん中下手よりの“街中”ステージへ移動。
Cherry Boysのメンバーがスタンバイしていた街中ステージは、噴水、街灯、ベンチなどが用意されていて、その名の通り“街中”の風景だ。アイリッシュ風アレンジでのバイオリン演奏を挟み、『Lovely Fruit』『ストロボシネマ』を軽快に歌うなか、「NANA MIZUKI LIVE CIRCUS 2013」にも登場したピエロ(ウッチー)が登場して、ムードを引き立てる。ストリートで歌い終えた少女ナナは、街角で出会った謎の紳士のあとを追いかけ、マンホールに飛び込んだ。
そのマンホールのさきで繰り広げられるファンタジックな世界は、ショートムービーで再現(ナレーションは能登麻美子さんだということが、最後に明かされた)。不思議な森を抜けた少女ナナは、音色に誘われて、さらに奥の世界へと向かっていったのだった。
次にスポットライトが当たったのは、客席上手よりの“庭園”ステージ。森に囲まれた優雅な庭園の真上に、ゆがんだ形の時計がぶら下がっている幻想的な空間である。ショートパンツ姿で登場した水樹さんは、仮面ダンサーのパフォーマンスをきっかけに、情熱的なパーカッションとウッドベース、ギターの演奏で『パノラマ -Panorama-』を届ける。続く『終末のラブソング』でアコーディオン奏者の塩兄と再びゴンドラへと乗り込み、教会ステージに到着すると、THEATER SPECIAL CHORUS隊(12名!)と共に、声だけの構成で『SCARLET KNIGHT』を熱唱。魂にまで響いてくるかのような力強い歌声は、旅で戸惑いながらも「もっと成長したい、強くなりたい」という“少女ナナ”の心の祈りや決意を表現しているように感じた。
●ゴンドラの名前は?
ここで、ホンモノのゴンドラが用意された経緯を語る。「みんなが振ってくれているサイリウムのブルーが、運河のように見えたんです。それで今回はヴェネチアが舞台だなって思って、スタッフさんがホンモノのヴァネチアの船を借りてきてくれたんです」。ゴンドラの名前は、その場で“奈々丸号”に決定。水樹さんが子供のころ、釣り好きのお父様が突然船を買ってきたことがあったそうで、その船につけられていた名前だそうだ。ちなみに「突然船を買ってきた」ことについては、家族会議が開かれるほどの大問題に発展したそうだが(笑)。
また、THEATER SPECIAL CHORUS隊のリーダーが、Cherry Boysイタルビッチの奥様で『エデン』のコーラスでも活躍している菅井えりさんということ、庭園ステージに登場したcherry boysの新メンバー(パーカッションのオバッチさんとアコーディオンの塩兄ぃさん)についても語る。さらに自身が声優としても活躍し、先に披露された『終末のラブソング』がエンディングテーマを彩っているTVアニメ『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞(ロンド)』(アンジュ役) 、 TV アニメ『DOG DAYS”』(ナナミ・タカツキ 役 リコッタ・エルマール役)の対照的な役柄について話し、それぞれのセリフを水樹さんが言い放つと(「(かわいらしい声で)勇者さま~!」「(男らしい声で)この愚民ども!」)、「もう1回!」の声が一斉に上がるなど、盛りだくさんのMCとなった。
ここで、チャイムが鳴って「そろそろ物語のなかに、戻る時間みたいです」と最新シングル『エデン』から『Necessary』を。そして水樹さんの親友でもあるゲスト・シンガーSuaraさんを迎えて『深愛』をデュエット。美しいコーラスを響かせたあとは、ギュッと握手を交わし一緒にバックステージへと返っていった。
「一緒に歌ってくれる友達がいる。いつもの教会がいつもとは違って見えました」というナレーションから、再びショートムービーへ。誰かと共に歌う喜びを知った少女ナナは、オシャレをしてバーへと向かった。
●次は少しオトナの世界に
その刹那、THEATER HORNS(ホーン隊4名)とCherry Boysのジャジーなセッションが始まり、観客の目線は一斉に客席後方にある「BARステージ」へと集中する。バーカウンターやテーブルが常設されたBARステージは、先ほどとは一転して“大人”の雰囲気だ(スケジュールの関係でライブに参加できなかったCherry Boysのゆたぽんが、BARの“客”としてゲスト登場)。
後方のドアから登場した水樹さんは、スタンドマイクが用意されたラウンジ的なステージへと向かい、『哀愁トワイライト』『Ladyspiker』をムーディに歌い上げる。観客から声援が沸き起こるなか、「邪魔するよ」とゲストの速水奨さんが白のスーツ姿でダンディに登場。『MARIA & JOKER』をデュエットし、“オトナ”な空間に引き込んでいったのであった。今回の共演は、水樹さんからの熱烈なオファーで実現したそうで、「年末から(この日のために)この曲を練習してて、年明けもずっと聴いていました」と速水さん。
別れ際に速水さんから渡された、コースターの裏を見てみると『大好きな君へ』という言葉が──。BARステージの締めくくりに、このしっとりとしたラブソングを歌うと、物語は次のページへ。
●初のタップダンスに挑戦!
街中ステージに佇んでいたのは、コートを着込んだNANA TAP DANCERS(6名)。それぞれのダンサーがアコーディオンに合わせてパフォーマンスすれば、自然と客席から手拍子が。小気味良い音でどんどんと一体感が増していくなか、コートを着た水樹さんが登場し、ギター四重奏の情熱的な音色に合わせて『Orchestral Fantasia』を。
そして、パフォーマーと共に初のタップダンスを披露。「自分の新しい扉を開けられるようなことをしたい」という気持ちから猛特訓したというから恐れ入る。再びゴンドラに乗り込むと、今度は教会ステージで、ストリングス伴奏の『Crystal Letter』『BRIGHT STREAM』を。ドラマチックな流れで、最高のクライマックスへと昇りつめていった。
●少女ナナが笑顔で教会に立つ
音楽を仲間と共に楽しむ喜びを知った少女ナナの心の成長が、水樹さん、そして、ファンの勇気や希望へと変わっていく。教会ステージには、ストリングスチームに加えてコーラス隊、ホーン隊、Cherry Boysと、旅先で出会った仲間たちが勢ぞろい。
「ここからは熱く、みんなと一緒に歌える曲をお届けできたらと思うんですが、みんなも一緒に歌ってくれますか? 友達になってくれますか? 友情の証にこの曲を!」と語気を強めると、コートを脱いでエネルギッシュに『SUPER GENERATION』をパフォーム。「みんなもっと声聴かせてー!」と勢いよく始まっていった『Song Communication』では、速水さん、Suaraさんを再び迎えて、オーディエンスと共に大合唱。ハッピーな一体感でいっぱいにすると、最後にしっとりと『BLUE』という希望の光を放ったのだった。
●アンコールはエネルギッシュに
こからは、“いつも”の水樹さんの表情に。『禁断のレジスタンス』から始まったアンコールは、Tシャツ&ミニスカートというラフな格好で祭壇。お馴染みの挨拶「シャッス!」をシャウトし、本編とは違って「ハードな楽器に持ち替えてもらって、ブイブイやってもらいます」と、最新曲『エデン』を雪が舞うなか熱唱した。ここで、『SMAP×SMAP』に出演することを報告しつつ(現在は放送終了)、「終わりたくない! 一週間公演やりたい!」と名残惜しみながら、再びアコースティックで『星屑シンフォニー』を。ダブルアンコールには水樹さんひとりでステージに立ち『New Sensation』を赤ペラで合唱した。
<一度きりの人生 楽しむべきだよね 絶対 自分の欠点 見付けて落ちたり たわいもない事 考えちゃう暇もない そろそろ 切り替えてみようよ 信じて 僕の New Sensation>
「アコースティックという新しい挑戦からスタートした今年、歌手デビュー15周年という特別な節目も迎えます。“新しいことをはじめよう”という気持ちに相応しい歌をみんなと一緒に歌いたい」ということから、この曲を選んだとのこと。
シンガロングが響き渡り、晴れやかなムードでいっぱいに満たされると──夏に全国ツアーが決定したことが発表され、この日一番の歓喜の声が響き渡る。昨年体調不良で行けなかった場所にも行けるかもしれない、とツアーに対して意欲を燃やし「ありがとう! みんな大好き! また絶対会おうね!」と約束。総勢48名。常に新しいことにチャレンジしていきたいというバイタリティ、圧倒的な表現力、 そして“みんなをもっと楽しませたい 新しい世界へ連れて行きたい”という気持ちがあったからこそ実現した最高のTHEATERに幕を閉じたのだった。今年も素晴らしい予感が、する。
[取材&文・逆井マリ]
<セットリスト>
1. Trinity Cross
2. PHANTOM MINDS
3. You have a dream
4. Lovely Fruit
5. ストロボシネマ
6. パノラマ -Panorama-
7. 終末のラブソング
8. SCARLET KNIGHT
9. Necessary
10. 深愛 Guest:Suara
11. 哀愁トワイライト
12. Ladyspiker
13. MARIA & JOKER Guest:速水奨
14. 大好きな君へ
15. Orchestral Fantasia
16. Crystal Letter
17. BRIGHT STREAM
18. SUPER GENERATION
19. Song Communication
20. BLUE
【ENCORE】
EN1. 禁断のレジスタンス
EN2. エデン
EN3. 星屑シンフォニー
【W/ENCORE】
EN4. New Sensation
<INFORMATION>
●夏の全国ツアーが決定
詳細は後日発表。
●32ndシングル発売が決定
「Angel Blossom」
発売日:4月22日
発売元:キングレコード
TVアニメ『魔法少女リリカルなのはViVid』オープニングテーマ
他全3曲収録予定
>>水樹奈々ホームページ