日本独自の文化と技術が光る「三日月宗近」、「へし切り長谷部」などの刀を原寸大で拝める『日本の美 日本刀 The Japanese Sword』をレビュー
2015年9月28日、学研から「完全保存版の日本刀集大成本」として『日本の美 日本刀 The Japanese Sword』が発売されました。「ご自宅に居ながら美術館・博物館よりも近くで鑑賞できる」ということで、『刀剣乱舞-ONLINE-』をきっかけに“刀女子”になりつつある筆者がさっそく読んでみました。同書の内容や『とうらぶ』ファンとしての見どころなどをお届けいたします。
■刀の歴史を深く知ることができる細かい解説付き
序文では刀の歴史について触れており、刀の分類分けや古刀と新刀の違いなどを分かりやすく解説してくれています。ワクワクを煽る文章に本文への期待が高まります! 同書の見どころはなんと言っても大迫力の“原寸大”ビジュアル。博物館で見るよりも間近に、その質感までも感じとれそうな美しい写真で、日本刀の魅力を堪能できます。
日本独自の文化である日本刀とその拵(こしらえ/柄や鞘などの外装)、そして鐔(つば)などの刀装具を、ここまで細かく紹介する日本刀書籍は今までなかったはず! 鋒(きっさき)の多彩な表情から、数ミリの反り具合で全く異なる全体の印象、ふたつとして同じもののない刃文(はもん)、茎(なかご)の銘の切り方に至るまで、原寸だからこそ改めて気づく魅力が満載です。
最初に現れたのは「太刀 銘 来國俊」。 「来國俊」といえば、『とうらぶ』の「愛染國俊」と同じ“来派”の刀です。同書ではほかにも「太刀 銘 来国光 嘉暦二年二月日」が掲載されており、「愛染國俊」の親せきを見たような気分。また、“来派”より少し早く登場した“粟田口派”の「短刀 銘 吉光(名物 平野藤四郎)」も掲載されていました。刀工が短刀の名手であったため、『とうらぶ』に出てくる“藤四郎兄弟”は全て短刀で、小さい姿で戦う様子が可愛らしい印象ですよね。そんななかでも「平野藤四郎」は「最も大振りで鍛え、刃文ともに優れている」と説明文にありました。解説はその刀を熟知する所蔵先の学芸員や専門家が執筆しており、特徴、見どころ、歴史を含めてたっぷり400字前後で紹介してあります。
■刀装具に施された意匠の優美さ
さらに、刀や拵のほかに、鐔や小柄(こづか)、笄(こうがい)といった刀装具の名品も多数紹介されています。350%まで拡大して掲載した目貫(めぬき)をはじめ、縁頭(ふちがしら)やその他の刀装具からは、驚愕の匠の技はもちろんのこと、製作を依頼した粋人たちの美意識も感じられ、日本人にとって日本刀が特別なものであったことが分かります。強さと美しさとをあわせ持つ日本刀は武器であり、宝器であり、武士の魂でもあったといいます。同書を読み進めていくと味わい深い刀の魅力にどんどん引き込まれていきます。
■深まる刀の魅力。大人気のあのキャラも……
『とうらぶ』ファンから絶大な人気を誇る「太刀 銘 三条(名物 三日月宗近)」も登場。刀長80.0cmということで、原寸大で見ると想像していたよりかなり大きい印象です。説明文には「よく鍛えられた鉄色が奥深く感じられ、精美な地肌と小乱を主調にした刃文とに特色が見られ、さらに姿の美しさも残っている」とあって「三日月宗近」のイメージにピタリと合います。
次のページには「黒田筑前守(名物 へし切り長谷部)が並びます。反りが1.0cmでほぼ真っ直ぐな刀身は、主君に対して真っ直ぐな「へし切り長谷部」の姿を思わせます。説明文に「桃山期の絢爛さは見事に写し取られている」とあるのも、金霰地(きんあられじ)の鞘の写真も、美しい彼のイメージ通り。
最後に「太刀 銘 築州住左(号 江雪左文字)」。こちらも刃長78.1cmと原寸大で見ると大きめ。短刀を得意とした刀工であったため、太刀は現存しているものでは「江雪左文字」が唯一なのだとか。短刀といえば、同じ“左文字派”で「小夜左文字」がいますが、どちらも無口でクールな雰囲気。憂いを帯びた表情は打刀の「宗左文字」と似ているし、“左文字兄弟”は違うようでソックリです。
同書は、刀45口、刀装具35点を、約200点の写真で掲載しています。この先キャラクター化する刀がいるかも知れません。『とうらぶ』キャラクターたちをより深く知るため、日本の誇る「日本刀」という芸術品に触れるため、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか?
■『日本の美 日本刀 The Japanese Sword』
監修:稲田和彦(いなだ・かずひこ)京都国立博物館名誉館員。
発売日:2015年9月28日
判型:257×259×22㎜(ケース入)、260頁(4色144頁、1色116頁)
定価:本体5900円+税
発売場所:全国書店、ネット書店、国外有名書店
英訳:ポール・マーティン(Paul Martin)
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