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俳優・満島真之介さんが『僕だけがいない街』で見つけた新しい道

「2次元と3次元の間を埋めて、垣根をなくしたい」――俳優・満島真之介さんが『僕だけがいない街』で見つけた新しい道

 マンガ家としてなかなか芽が出ず、アルバイトで生計を立てている『僕だけがいない街』の主人公・藤沼悟。くすぶっている自分にもどかしさを感じつつ日々をすごす。一見するといたって平凡な青年。ですが、"自分だけ時が巻き戻ってしまう"という不思議な現象「リバイバル(再上映)」に悩まされていました。

 その日も、彼の身に起きた「リバイバル」。しかし、ある大きな事件をきっかけに状況は一変。「リバイバル」に起きた大きな変化とは――

 「マンガ大賞」、「このマンガがすごい!2015 オトコ編」それぞれ2年連続ランクイン。三部けいによる人気マンガ『僕だけがいない街』が、この冬TVアニメ化に飛び出します!  フジテレビ「ノイタミナ」枠にて、1月7日より放送される本作品。主人公・悟を演じるのは、満島真之介さん(青年期)と、土屋太鳳さん(少年期)。ドラマや映画で活躍する俳優が"2人1役"を演じることも、話題のひとつとなっています。



 アニメイトTVではこの度、主演を務める2人にインタビューを実施しました。今回は、満島真之介さんへのインタビューをお届けします。

「アニメ媒体のインタビューなんて、なかなか経験できない!」と、楽しそうに語っていた満島さん。彼が持つ旺盛な好奇心が生み出す新しい可能性とは? 作品の印象や悟の捉え方も持論を交えじっくり語っていただきました。


■ 「"僕自身の声"を、そのままつぎ込みました」

――今回は大抜擢となりましたが、マンガ『僕だけがいない街』を知ったのはいつごろでしたか?

満島真之介さん(以下、満島):オファーをいただいたときに知りました。僕自身、マンガやアニメに頻繁に触れている人間ではないので、知らなかったんですよ。でも、実際に読んでみるとたまらない気持ちになって……一気にストーリーに引き込まれちゃいました。


――引きこまれたポイントは、どのあたりだったんでしょう?

満島:三部先生の持ってる"人間を見る力"ですかね。主人公の悟は、なんの変哲もない青年で、現状にもそんなに満足していないじゃないですか。まず、そういう人を主人公に持ってくる感覚自体が、僕は好きだったんですよ。人間って、現実逃避するためにマンガとかを読むことがありますけど、この作品は「そうはさせないぞ!」みたいな。

あえて"現実"に直面させる三部先生の勇気というか、パワーというか……。そこに僕はすごく引きこまれたんです。だから、悟が起こす「リバイバル」も、僕は特別なものではなく、誰しもが持ってるものだと思っています。


――というと。

満島:例えば、有線でとある曲が流れだした瞬間「あれ? 高校時代のことが浮かぶ……」ってなることあるじゃないですか。それってきっと、その人自身の心のなかで「リバイバル」しているんだと思うんです。悟の場合は、それが体ごと当時に戻っちゃう"だけ"だと。


――「リバイバル」は本作唯一の非現実的要素とも捉えがちですが、そうではないということですね。作品自体、あくまでも"現実的なもの"というのが満島さんの解釈だと。

満島:そうですね。3次元と2次元の合間を走っているような……。そこにも、興味を持ちましたね。

――とすると、悟の捉え方も普通とは違いそうですね。

満島:悟に共感するところは、僕だけじゃなくみんなにもある気がします。誰でも生きていれば絶対に過去があるし、赤ちゃんだったし、子ども時代も過ごしている。どんな家庭であろうと、みんながみんな母親から生まれている絶対に経験というものがある。


――誰もが悟に自分を投影できると。

満島:僕はそうだと思ってます。悟というキャラクターのビジュアル的な特徴はありますけど、内面に関しては、全世界の人が持ってると思うんです。だから、似てるとか共感というよりも、「そうだよね」っていう感覚。悟がどういう人間かはわからないし、わかる必要もない。それよりも、"ひとりの人間である"ということ。僕はそこを見てるんです。


――なんだか、作品の本質を見ているような気がします……。では、実際にどう演じているのでしょう?

満島:何も作らず、"そのままの自分を出す"感じですね。例えば、家のソファに座って「あー、今日雨だなー」って言うくらいの感覚。実写の場合は、衣装を着て身体も心もその役に入っていったりするんですけど、今回はアニメスタッフの方々の素晴らしい絵と世界観が既にあるので、僕は僕自身が生きてきた生(なま)の状態というか、まったく自分に抗ってない状態。"なにも色付けしてない素っ裸の自分"で臨みたいなと思いました。


――なるほど! そのへんも現実的ですね。

満島:声優さんは、声の中でいろんな"色"を作っていきますけど、僕は自分の色が何色かもわからないですからね。そもそも声って、いちばん"人が向き合いきれていない場所"だと思うんです。外見は、鏡で自分の姿を見たりダイエットを決意したりとか、きちんと向き合うことができるんですけど。声って、録音した自分の声を聞いたりしない限りは向き合えない。


――それこそ、声優さんたちでないと向き合おうとしない部分のような気がします。生まれつきのままきているというか。だから自分の"色"がわからない。

満島:そうなんですよ。でも、それはそれでとても貴重で、個々のアイデンティティをかなり出せる場所でもあると思うんです。だから今回は、これまで生きてきてできあがった"僕自身の声"を、そのままつぎ込もうという感覚なんです。それこそが"なにも色付けしてない素っ裸の自分"。たぶん、監督からもそれを求められてるんじゃないかなと。

――それについて、監督や音響監督はどのように?

満島:監督さんたちも、もともとそういう考え方だったみたいです。最初にお会いしたとき「なにも作らず、あなたが生きてきたそのままの状態でやってください」とお話してくれたので。


――見事に一致していたんですね!

満島:なので「もうなにも怖いものはない」って思いました。三部先生も、「"生身の人"がやってくれてよかった」って言ってくれましたし。例えば今、悟がポンと画面から出てきても「おお、悟!」という感じのキャラクターになっていけば良いなと思ってます。


――では、少年期の悟を演じる土屋太鳳さんとは、なにか相談はしました?

満島:してないですね。というのも、会ったとき直感的に「あっ、この子とだったらなにかおもしろいものができそうだな」と思えたんですよ。性別も違えば、年齢も生まれ育った環境も違いますけど、太鳳ちゃんにも人生のストーリーがあり、僕にもあったわけで。それが合わさって2人分に広がるのが、すごくおもしろいなと。

そこで、「こっち側に行こうね」って方向を決めてしまうと、きゅう屈になって変に緊張しちゃう気がするんです。緊張したときの自分の声って、絶対に腹から出てないし。そういう状態にはしたくなかったんですよね。

――役者として実績のあるふたりだからこそ、感覚的につかめた部分なのかもしれないですね。

満島:実際にアフレコしていると、"重なる声"があるんですよ。全然打ち合わせはしてないんですけど、そのときの空気をふたりが感じ合ってやってるんで、自然とバシって合うんですよね。それがまた「縁だなあ」と思ったりしますね。


――じゃあ、アフレコ現場のお話も。映画や舞台の現場と、アニメのアフレコ現場には違いってありましたか?

満島:やっぱりまるっきり違いますね。声は隠せないし逃げられないというところです。実は、映像だと(フレームに入っていない部分などで)ごまかせることもあったりするんですよ。でも、声は絶対ごまかせない。そこにも、おもしろさを感じてます。

――やはり役者自身の見た目でなく、"声"にのみ焦点が当たるというのは、こういう現場ならではですよね。

満島:今回でいうと、見た目なんて僕と真逆ですからね。実写だったら、お話自体来ないですよ、僕の顔自体が暑苦しいから(笑)。僕が役として"作りこんで"、"作り物×作り物"みたいになっちゃうと、せっかくの三部先生の大切な言葉が届かない気がするし。じゃあ、素直に乗っかっていこうかなって。


――では、アフレコブースに入ったときはどうでした?

満島:映画でもアフレコ経験があるのですが、ブース内で「みんなこうやって待ってるんだ!」って思ったり、収録がはじまったら「一連で録っていくんだ! 入れ替わり立ち替わり……おおおおおおお!」っていう驚きもあって、おもしろかったです。映像だと、同じ作品に出てても、同じシーンがない限り会わなかったりすることってたくさんあるんです。でも、アニメはそういうものではないし。みんなで作ってるなっていう感覚がありましたね。ガヤの声も、みんなで録ったりしますもんね。「俺も入っていいですか?」ってやったりして、すごく刺激になります。


■ 「2次元と3次元の間をつなぐ存在を目指したい」

――マンガやアニメに触れる機会はあまりないと言ってましたが、子どもの頃はどうでしたか?

満島:観てましたよ! オーソドックスに『サザエさん』『ちびまる子ちゃん』からはじまり、『クレヨンしんちゃん』とか。『ワンピース』も僕らの世代からスタートしてるものなんで観てましたし。意識して観てたっていうよりも、流れてるから見てたような感覚でしたけど。実写よりとっつきやすかったという部分もあって、小さいころはとくによく観てました。でも、どれくらいが"よく観てる"っていう基準なのかわからないですが。


――たしかに。全く知らないわけでもないけど、かといってすごい詳しいわけでもないと、どう言っていいかわからないかもですね。

満島:そう。ただ今も時間があるときに観たりはするんですよ。それに、最近は『おぼっちゃまくん』をやってるんで(註:ソフトバンクのCMで、満島さんは"元おぼっちゃまくん"を演じている)、事前に観直して「うわぁ、これ今は放送できないんだろうなあ」、「なんでこんなにくだらないのにおもしろいんだろう」とか思ってましたし。

あと、なんだかんだアニメの主題歌って覚えてたりするんですよね。『あずきちゃん』も、ストーリーはおぼえてないんですけど、主題歌とオープニングの映像が心の中に残ってる。誰かが「なんでもなーいー♪」って歌い出すと「わかるよ!」みたいな。『地獄先生ぬ~べ~』とかもそうですよ!


――なんか……今の話を聞いている限り、結構観てますよね?

満島:観てますね俺(笑)。自分の中では観てない感覚なんですけど、やっぱり観てるんだなあ。今、高山さん(高山みなみさん/藤沼佐知子 役)と一緒ですけど、『忍たま乱太郎』と『名探偵コナン』も観てたので、やっぱりテンション上がりますよね。

……と同時に、アニメの持つパワーはすごいなとも思います。とくに今って、実写より説得力があると思うんです。内容・クオリティー含めて、作ってる個々の力もすごい。今の時代に乗っかって普及させつつ、自分たちの作りたいものでちゃんと波紋を広げている。「アニメはやっぱり日本がナンバーワンだ」と思うところです。実写の人たちって、どこか時代に乗っかれないというか、頑なに守ってるものがあったりするので。そこを臨機応変にしないと、実写とアニメはどんどん離れていく気がします。


――実写の世界を知り、アニメにも視野を広げている満島さんだからこそ言えることですね。

満島:だから今回、『僕だけがいない街』に関わることで、2次元と3次元をを繋ぐ存在になれればいいなと思っています。そういった行動を起こすことで、もっともっと日本の色というか、日本人しか作れないものが出てくると強く思っています。

――なるほど。

満島:僕は今、アフレコ現場で声優さんたちからアニメのおもしろさを聞いたりできるし、逆に「実写はこんなにおもしろい業界だぜ」って言えたりして、すごくおもしろいんです。みなさんすごく聞きたがってくれるし、僕もすごく聞きたがるし。それってまさに、別の業界にいた人たちをつなぐこと。


――今後も声の仕事はしていきたいと思いますか?

満島:やっぱり、これで終わりたくはないですね。続けられるのであれば挑戦していきたいなと思います。それに、声の仕事を経たことで、実写でも一つひとつの言葉をもっと大切にできるなとも思います。


――では、次に声を演じるとしたらどんな役を?

満島:コメディやってみたいですね。笑える作品! いろんな幅がありそうなので。例えば、動物の役とか。うちの姉ちゃんがピョン吉やってましたけど(註:満島ひかりさん。実写ドラマ『ど根性ガエル』でピョン吉の声をあてた)、カエルなのに姉の声というのがすごくおもしろかったんですよ。そういう、自分自身が絶対になれないものをやってみたいです。


――実写では出せない声も出せるかもしれないですよね。すごく高い声とか。

満島:それもありだし、あえてそのままやっちゃうのもおもしろいかもしれない。いろいろ挑戦していけたらいいなって思います。


――そうして、ゆくゆくは実写とアニメの距離を縮めていこうと。

満島:この作品のキャスト発表のとき、僕らの名前を見て「ええ、また俳優使うの!?」って思った人もいると思うんです。でも今回の場合は、俳優のまわりに高山みなみさんや悠木碧さんといった、今をときめく声優さんもいる。その化学反応ってきっとすごくおもしろいものになると思うんです。なので、ぜひ楽しみにしていてください。声優・俳優の垣根を越えて、ひとつのチームとしてありったけの愛情を注いでいます!


[取材&文・松本まゆげ]
[ヘア&メイク:遠山 美和子(THYMON Inc.)]
[スタイリスト:檜垣健太郎(little friends)]

■ TVアニメ『僕だけがいない街』
2016年1月7日より、毎週木曜24:55から フジテレビ“ノイタミナ”ほかにて放送開始


フジテレビ:1月7日より毎週木曜 24:55~(初回放送は25:50~)
北海道文化放送:1月10日より毎週日曜 25:30~(初回放送は25:00~)
岩手めんこいテレビ:1月7日より毎週木曜 24:55~
仙台放送:1月7日より毎週木曜 26:05~
秋田テレビ:1月7日より毎週木曜 25:20~
さくらんぼテレビ:1月7日より毎週木曜 24:55~
福島テレビ:1月7日より毎週木曜 25:55~
新潟総合テレビ:1月7日より毎週木曜 25:45~
テレビ静岡:1月7日より毎週木曜 25:35~
東海テレビ:1月7日より毎週木曜 26:15~
関西テレビ:1月7日より毎週木曜 25:55~(初回放送は27:20~)
テレビ新広島:1月7日より毎週木曜 26:00~
テレビ愛媛:1月7日より毎週木曜 25:00~
テレビ西日本:1月7日より毎週木曜 25:55~
サガテレビ:1月8日より毎週金曜 24:40~
テレビ熊本:1月7日より毎週木曜 25:45~
鹿児島テレビ:1月7日より毎週木曜 26:05~

※放送時間は予告なく変更になる場合あり

【スタッフ】
原作:三部けい(ヤングエース連載)
監督:伊藤智彦
シリーズ構成:岸本卓
キャラクターデザイン:佐々木啓悟
色彩設計:佐々木梓
美術監督:佐藤 勝
美術設定:長谷川弘行
撮影監督:青嶋俊明
CG監督:那須信司
編集:西山茂
音楽:梶浦由記
音響監督:岩浪美和
アニメーション制作:A-1 Pictures

オープニングテーマ:ASIAN KUNG-FU GENERATION「Re:Re:」
エンディングテーマ:さユり「それは小さな光のような」

【キャスト】
藤沼悟:土屋太鳳 満島真之介
雛月加代:悠木碧
片桐愛梨:赤﨑千夏
ケンヤ:大地葉
ヒロミ:鬼頭明里
オサム:七瀬彩夏
カズ:菊池幸利
白鳥潤:水島大宙
藤沼佐知子:高山みなみ
八代学:宮本充

【イントロダクション】
自分だけの時が巻き戻る現象“リバイバル(再上映)”に悩まされる青年・藤沼悟が、自らの過去と対峙し、もがく姿を描く三部けいの“時間逆行”サスペンス『僕だけがいない街』。

2012年、「ヤングエース」(KADOKAWA刊)にて連載を開始し、「マンガ大賞」や「このマンガがすごい!」に2014年、2015年と2年連続ランクイン。書店員や各界著名人からも絶賛のコメントが多数寄せられ、注目を集める人気作である。

コミックスは第1巻から第7巻までを含め、累計発行部数239万部を突破。一度読み出したら止められない、息もつかせぬ展開でファンの心を惹きつけている。

そして2016年1月、TVアニメーション『僕だけがいない街』がフジテレビ“ノイタミナ”にて放送を開始する。計算し尽くした緻密な演出、リアリティをもたらす美術、物語を彩る音楽、そのなかで動き出す息を吹き込まれたキャラクターたち。アニメーションで表現される新たな『僕だけがいない街』を、ぜひとも楽しみにしてほしい。


>>TVアニメ『僕だけがいない街』公式サイト
>> TVアニメ『僕だけがいない街』公式Twitter(@ bokumachi_anime)

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(C)2016 三部けい/KADOKAWA/アニメ「僕街」製作委員会
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