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音楽
可能性の息吹を強く、強く感じる。PENGUIN RESEARCHの1stミニアルバム「WILL」楽曲レビュー
2016年3月30日、PENGUIN RESEARCH(ペンギンリサーチ)の1stミニアルバム「WILL」がリリースされます。PENGUIN RESEARCHはアニメ『デュラララ!!×2 結』のEDテーマ「ジョーカーに宜しく」でメジャーデビューした、まだ結成間もないバンドです。
しかし、メンバーの生田鷹司さん、堀江晶太さん、神田ジョンさん、新保恵大さん、柴崎洋輔さんらはそれぞれが独自に音楽活動に携わっており、特にコンポーザーでもある堀江晶太さんはLiSAさんの「Rising Hope」を手がけたアツい作曲家でもあります。デビューしたてのバンドといってもその練度は言うに及ばず、です。
そんなドリームバンド的なプロファイルも持つPENGUIN RESEARCHが、1stシングルの次に送り出してきたのが今回のミニアルバム。全6曲と手頃な構成ながら各曲の随所に技巧や物語性を感じられる、高密度な一枚に仕上がっています。それでは早速一曲ずつ紹介していきましょう。
■M-1:「SUPERCHARGER」
作詞、作曲:堀江 晶太
編曲:堀江晶太/PENGUIN RESEARCH
本アルバムの開幕を告げる曲で、ライブ会場限定配布シングルとしてリリースされていました。さすがシングルカットだけあって非常にキャッチー、出だしから聞かせにくる鍵盤がオイシイです。
180を越える高速BPMなのに細かい16分音符が目立つイントロ、この段階である程度のテクニカル具合が感じられます。Aメロはギターが目立ちがちですがドンドコドンと低音タム周りで動くドラムパターンもシブいです。ハイハットを交えた8ビートくらいに落ち着けたいところですが、あえてのハズし。おかげで高音が際立ちます。
コーラスとボーカルのダイナミクスが気持ち良いBメロ、ここの魅力はなんといっても休符でしょう。ハっとさせられるタイミングでの伴奏無音。和音もちょいと独特で緊張感があります。無音で惹きつけてからはサビへの誘導。高速スライドのベースが煽るよーどんどん煽るよー。
サビは入りからハイBという高音、そこから流れるように下って上がってなんと合計4小節ブレス無し。これは歌うのがツラいッ…でも歌えたら相当気持ち良い系であることは間違いない。「終着」と言い切った感も気持ち良いです。
繰り返し以降、キックの数が増えるとよりお祭り感が強まって前め前めのテンションに。そのままの勢いでサビを抜けイントロへ回帰しますが、ここでメロに行く前のギターのスタッター的エフェクト! これすごいオイシイですよ、すごい好きな部分です。
しかもこのあとの2番Aメロはドラムが大人しくなるので完全にギター・オンステージ状態。後半のチョーキングからのハーモニーとかかなりオイシイと思います。
2サビ後は間奏になりますが、ここもちょっと不思議な感じです。ギターソロまではバンドテイストですがその後ちょっとオシャレなジャズっぽくなります。ジャズといえばベースの8分フレーズ。ご多分にもれずジャズっぽい動きをしていますよ。
最後のカタルシスはラスサビ抜けからのアウトロですね。食い気味に入るギターもブラストを続けるドラムもサビのテンションを維持しているのがアツいです。和音進行がサビのままというのもエモ要素。最後まで脱力を許さず全力で走り切る、そんなスタイルを感じます。
この曲、ガッツリ聞いたら聞いた側も疲れますね…。それくらい曲としての運動力が大きいということなんでしょう。アルバムの幕開け、第一アピールに相応しいサウンドです。
M-2:■「A WILL」
作詞、作曲:堀江 晶太
編曲:堀江晶太/PENGUIN RESEARCH
イントロからもう叙情指数がすごいです。B♭から始まる曲はだいたいエモいと言いますが(自分調べ)、この浮遊感は気持ち良いったらありゃしない。しかも和音AonC♯のところのユニゾン的動き、ベースとシンバルのシンクロ、エモいを超えてしまいそうな勢いです。低めのスネアも良い味してます。
このAメロも透き通っていて美しい。ファンタジーモノか、もしくは少し影のある青春モノのアニメを想起させます。ギターのクランチ具合も絶妙です、ジャカジャカ奏でたくなるような…まさに多幸感とはこの事。
「忘れないから」でピタっと止まるBメロ、この空白感も曲の性格を如実に表す部分だと思います。後半の歌詞「それが希望なんて知らないまま」は下から上るメロディーになっていて、上のファ・ミのロングトーンが歌っても聞いても気持ち良い。あんまり連呼すると希少さがなくなってアレなんですが、ここもまたエモいポイントです。
で、サビ手前でC→Aに移調! ここでDスタートになるんです。あぁエモい、いやエモすぎるよ。やっぱそうですよねーってぐらい完璧なドラムの4ビートがまた良いんです、センチメンタルな感じ出てるんですよ。このキラキラした雰囲気は鍵盤がいるからこそ出せるカラーかもしれません。本当に綺麗でうっとりできるサビです。
サビ抜けからDをキープしつつメロ手前でナチュラルなドを一発鳴らしてからのFへ再度移調。この流れもわかってた感あるけど、これが良いんですよ。2回目のAメロは先ほどのサビの勢いをたたえた賑やかなアンサンブルですね。前半2ビート、後半4ビートという風にグルーヴが変化するのも面白い。タダでは繰り返さないぞ感があります。
1回目はサビ手前で無音を作りましたが、2回目はスネア連打に鍵盤のグリッサンドありと勢い全開ダイナミクスアゲアゲなテンション。ここもね、わかってた流れなんですが「よくぞやってくれた」と言いたいんですよ。期待しているところを刺してくれる快楽ですよ。
ちょっとベタ褒めすらありますが、それくらい気持ち良いところを完璧に押さえてくれている曲です。なんとなく一昔前の劇場系アニメの主題歌っぽいなーと感じましたが、全体にただよう王道的要素が依拠してるかもしれません。
あと、この曲はアコースティックにカバーしても間違いなく良い味が出る曲だと思います。泣かしにくる曲になる。
■M-3:「ジョーカーに宜しく」
作詞、作曲:堀江 晶太
編曲:堀江晶太/PENGUIN RESEARCH
デビューシングルがここで登場。ここまでの流れからするといきなりダークな雰囲気になった感じですね。イントロはどこか掴み所の無いハーモニーとキラキラとしたピアノのアンマッチが印象的。さきほどの「A WILL」からはかなりかけ離れた曲調といえます。
Aメロ、ここもコード的に表現しにくい複雑なパート構成です。一方ボーカルは聞きやすく歌いやすい動きをしています。後半のギターカッティングといいベースの休符感といい、オルタナティブロックなかほりのするゾーンですね。メジャー・マイナーといったわかりやすい音を出さないような、そんな感じ。
Bメロからはベースを軸にハーモニーの輪郭が少しずつ見え始めてきます。F、Amを主題に展開していきますが、前半はまだ盛り上がりの気配は無し。後半のドラムパターン変化を合図にサウンドが引き締まり、いよいよダイナミクスの高まりを予感させます。それにしても「割り振られた程度の手札が尽きるまで」という歌詞と、言い捨てるようなメロディー、そして余白的なノリが絶妙のマッチ具合ですね。シンコペーションの連続ですし、タテを合わすのが難しそうなシーンです。
ブレイクを経てカタルシスのサビへ。ここは歌詞の母音に注目しましょう。歌詞の「ジョーカー」と「来ない」はアクセントがa音(「カ」と「な」)で韻を踏んでいて、「均等」と「不幸など」はo音(「等」と「ど」)が同音。その後の「頼るな」と「縋るな」は、ながアクセントかつ同母音になっています。
この、アクセント位置と母音の韻の踏み方には作詞テクニック感じざるを得ません。実際に歌ってみるとアクセント位置で口の開き方が同じになるので何かと良い感じになるんですよ。ラストの「謀れ Escape」もほぼ全部口を開くタイプの母音なのでダイナミックに発声できます。この符号はきっと偶然じゃないはず。
フレーズ的にもサビで一番オイシイのはやはりボーカルでしょう。訴求力のある歌詞とシンプルなメロディー、そこに生田さんの声質も相まって刺さるように聞き手に届いてきます。
1stシングルだけあって各パートの技巧とバンドとしての同調率の高さがひしと感じられますね。本アルバム1曲目の「SUPERCHARGER」ほど尖ってないので聞きやすいとも言えます。ボーカルが一貫した主役になっていて、各パートが混ざり合いながらそれを引き立てているというバランサーな印象です。
■M-4:「雷鳴」
作詞、作曲:堀江 晶太
編曲:堀江晶太/PENGUIN RESEARCH
これまた非常にアルバム曲っぽい曲。トラックリスト的にも4曲目というのは絶妙な位置だと思います。イントロはプログレ的でリフは民謡音階という、実験的要素を取り入れたような構成です。タイトルからも和製成分をいくらか感じますね。
AメロもBメロも、ハーモニーや旋律性よりリズムに重きを置いています。Aメロ後半の打楽器のように鳴るピアノがカッコいいですね。ジャズっぽいというかクラヴィネットっぽいというか。
Bメロ後半はエモ要素が詰まっています。歌詞「一切の感傷も無く」から一気にボーカルがメロディー度上げてきて、サビへの道筋が見えてくるというパターン。ここらへんの余白を意識した単発音もワビサビって感じですが、一番仕事してるのは「目を醒ませと叫ぶ」からのドラムでしょう。ダン、ダン、ダン、ダン→シャーン! のチャイナシンバルですよ。いやはやこの一発にどれだけのカタルシスが込められているのか。にしてもこのシンバルの音って雷鳴の表現みたいですよね。
さぁチャイナシンバル様に導かれてのサビです。ここの早口気味なボーカルは好きな人は好き系のアレですね。滑舌をしっかり回しつつ音程もちゃんと動かす、カラオケで歌えると気持ち良いヤツです。楽器隊はこれまでの曲に比べるとシンプルですが、カッティングギターが良い切れ味出してます。ギターを弾いてる人ならついコピりたくなるかもしれませんね。
全体的にやや平坦進行な曲ですが、一番最後のアウトロから入ってくるコーラス、これは良いもんですよ。しかもギターのリフとユニゾンするんですよ、これはアツい。大団円なイメージというか、ヌケのイメージというか。
今までの3曲に比べるとどうしても大人しいという印象ですが、それがアルバム曲っぽさの所以やもしれません。と同時にバンドサウンドとしての懐の広さがこの曲でうかがえます。実際に通しで聞くと良い塩梅にハマりますよ。
■M-5:「世界最後の日に」
作詞、作曲:堀江 晶太
編曲:堀江晶太/PENGUIN RESEARCH
ここで来ましたスローテンポなバラードチューン。曲名の時点でストーリーやらなんやらが妄想できてしまいそうです。キラキラしたイントロと素直過ぎるF♯m→G→A→Bのリピートになんとも言えない清涼さと希望を感じますね、いいねぇこういう空気感。
ギターのディレイアルペジオがなんとも心地良いAメロ、ゆったり進行のボーカルとうまく対比しています。おごそかな雰囲気を出しつつも軽快なノリを出しているドラムも良い仕事していますね。浮遊感を加味しつつちゃんと一歩一歩踏みしめるように進んでいるイメージです。
Bメロもギターは浮遊担当、そこにピアノが副旋律的なハーモニーを付加していきます。大きく動いたりせずに四分音符単位ってのが良いじゃないですか、じっくり感あって。で、ここまでは王道的なコード進行だったのに「一つ一つ踏みしめ」の部分でGmを差し込んでくるのがまたいぶし銀なアレですよ。一旦ハズしてからのサビで王道回帰、そういう作戦なんでしょうきっと!
というわけで完全王道スタイルのサビはイントロと同じF♯m→G→A→B、たまにセツナ進行のラ♯。ハーモニーもメロディーも綺麗な、文句の付けようが無い美しいとてもサビです。このサビのオケの一体感はライブで味わうとすごそうだなぁ、心がグっときそう。
サビ後のイントロ回帰も良いヌケ感ですよ。やっぱりピアノのリフが良いんでしょうね、落ち着きます。このあと2番Aメロ、Bメロと進んでいきますが、Bメロ後半のギターの動きが一番よりも楽しいコトやってるのでぜひ聞いてみて下さい。短いけどあぁいうのがシブいんです。
その後はギターソロで盛り上げてからの落ちサビ。きっとライブでは会場にマイク向けたりするんですよ、会場大合唱ですよ。そしてラスサビ、アウトロへ。もうギターソロ以降はエモ要素の乱れ撃ちといっても過言じゃない構成ですね。
「ジョーカーに宜しく」や「SUPERCHARGER」のようなノリがPENGUIN RESEARCHの持ち味だとは思うんですが、一方でこんなエモ度MAXな曲もイケるんだぜとこれまた懐の広さを垣間見たような気がします。
こういった多様な表現はシングルではなくアルバムならではですし、聞いてる方もバンドのいろんな表情が感じられて良いですね。
■M-6:「敗北の少年」
作詞、作曲:kemu
編曲:堀江晶太/PENGUIN RESEARCH
ピンときた人もいるやもしれませんが、同タイトルのボーカロイド楽曲のカバーになります。何故カバーなのか、その関係性はいったんおいといてまずは純粋にアルバムのラストトラックとして向かい合ってみましょう。
まずはイントロのギターギターしたリフ。オクターブになってますがサっと耳コピできそうなシンプルな動きをしています。何気にギターがソロでリフってる曲はこのアルバムだと「雷鳴」とこの曲しかないんですよね。
Aメロ、上の方でピアノが動いてますがこれがかなり重要な仕事をしています。もしここでピアノがなかったらけっこう単調なパートになってると思うんですよ。ピアノのおかげで副旋律的な音が追加されただけでなく、どこか切ない雰囲気も出ています。
一方でBメロはピアノありきなハーモニーですね。サビの手前なのでダイナミクスは押さえ気味に、でも「分かっていたのに」からボーカルが主張しだすと楽器隊も呼応するようにテンションを上げていきます。ボーカルと楽器が歩調を合わせてるような、一緒にサビへ向かっているようなイメージです。
そしてミリオン再生のサビへ。ここはもう、ボーカルが全てでしょう。Bメロから引率してきたテンションをボーカルに託して、ハーモニーの上をメロディーが駆け抜けます。歌詞の「敗北の少年 現実を謳え」の部分だけではありませんが、随所に訴求力を感じる生田さんの歌い方もグッときますね。ロングトーンでは特にその力強さを感じます。
2番を経て3サビ、そして最後4回目のサビ。ここで初めて和音が変化しますが、このただ一度の和音変化がどれほどの叙情的効果を生み出すことか。最後の最後でしかけてきたセツナコード、この一音には本楽曲のカタルシスが詰まっているといっても良いでしょう。最後まで引っ張ったことによる効果もあると思います。この一音はエモい。
前曲「世界最後の日に」はバラードだったのでアルバムのラストトラックに相応しい雰囲気がありました。でもその次にはこの曲があります。アルバム通しで聞くと「あれ、最後もう一回盛り上がって終わるスタイルかな」と感じるんですよ。せっかく穏やかになったのに、と。
歌詞やピアノの叙情性ゆえかもしれませんが、この曲で終わる=理想ではなく現実を意識しているから、ではないかと思うんです。綺麗なバラードでたおやかに終わるのではなく、それでも僕らは今を進まねばならない。そんなメッセージを感じてしまいます、どうにもこうにも。
全6曲、PENGUIN RESEARCHの現状が余すところ無く詰まった今回のミニアルバム。ぜひ聞いてみて、何かを感じてとってみて下さい。
[文=ヤマダユウス型]
>>PENGUINRESEARCH 公式ホームページ
>>PENGUINRESEARCH SONY公式ホームページ
>>PENGUINRESEARCH オフィシャルツイッター
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