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映画『君の名は。』の立花龍役・神木隆之介さんにインタビュー

アニメーションに対する想い、新海誠作品への愛が炸裂! 映画『君の名は。』の立花龍役・神木隆之介さんにインタビュー

 2016年8月26日、いよいよ公開となる『君の名は。』は、『ほしのこえ』『秒速5センチメートル』と、ヒット作を生み出してきた新海誠監督のおよそ3年ぶりの長編アニメーション作品。そんな大注目の作品で主人公、男子高校生の瀧(たき)を演じるのが『るろうに剣心』や『バクマン。』など数々の実写化作品、『サマーウォーズ』などのアニメ作品にも出演している人気俳優・神木隆之介さんです。

 そこで、本稿では神木さんへのインタビューをお届けします! 新海監督作品の大ファンだという神木さんに、役作りやアニメ・新海誠作品に対する想いなど、愛情たっぷりに語っていただきました。

■「僕はこれだけあなたの作品を観ているんだ」と愛をぶつけました

──神木さんは前々から新海監督の大ファンだと伺っています。好きになったきっかけ(作品)があれば、ぜひ教えてください!

立花瀧役・神木隆之介さん(以下、神木):きっかけは『秒速5センチメートル』(2007年)です。高校1年生の頃に出会って、そこから『ほしのこえ』(2002年)や『雲のむこう、約束の場所』(2004年)、『星を追う子ども』(2011年)。『言の葉の庭』(2013年)は映画館で観ました。特に、『秒速5センチメートル』は一番好きな作品で、モノローグの音がすごく素敵で聴きやすくて……。貴樹という主人公の何かを探し求めながらも前に進むという生きている姿が美しくて、僕は、すごく憧れを持っているんです。新海監督の作品は僕を別の世界に連れていってくれます。実際に、自分が演じる役作りの参考にもさせていただいています。

──では、『君の名は。』は待ちに待った新海作品の出演ですね!

神木:新海監督の作品はもちろん大好きですけれど、「新海監督の作品の世界観は、僕の声質だとあわない」とずっと思っていたこともあって、新海監督の作品に出演したいという気持ちはありませんでした。なので、出演が決まった時は本当にびっくりしました。

──そうなんですか? では、憧れの新海監督とのお仕事はどうでした?

神木:監督は物腰が柔らかく、本当に丁寧な方でした。ファンとして作品を観ていて、「こんなに美しい作品をつくる方はどういう方なんだろう」と思っていたんです。実際に現場を経験することで作品の中にある「曖昧さ」や「独特なニュアンス」があえて作られているのが分かって、頭が本当に良い方なんだなと思いました。

──プレッシャーはありませんでしたか?

神木:プレッシャーは大きかったですが、嬉しい気持ちの方が大きかったです。出演が決まった後も、現実味がなかったので、いつまでもドッキリなのではないかと思っていました。アフレコをしたときは、「僕はこれだけあなたの作品を観ているんだ」と自分の中の新海作品愛をぶつけることもできましたし、すごく嬉しかったです。

<b>▲左:立花瀧(CV:神木隆之介) 右:宮水三葉(CV:上白石萌音)</b>

▲左:立花瀧(CV:神木隆之介) 右:宮水三葉(CV:上白石萌音)

──実際に声の仕事をやられて、どうでしたか?

神木:声の仕事は、別の畑に入るという意味ですごく緊張しました。声優の方々のようにはいかないですが、アフレコの現場を体験して、「セリフを聞き取りやすい声を出すにはどうすればよいのか」、「気持ちを表現するにはどのくらいのボリュームで話せばいいのか」など、いろいろと勉強する場になりました。個人的にアニメが大好きなところもあって、声優の方々とご一緒できる現場は幸せな空間でした。

──完成した作品を見ていかがでしたか?

神木:まだ不安です。今回はファンの立場ではないので、自分自身の声が新海監督のファンの方にどう思われるのかが不安で。やはり客観的には観られないです。特に、男女が入れ替わるところが心配です。

──今回、男女の入れ替わりがポイントのひとつでもありますよね。そこが、難しかったところですか?

神木:楽しく演じさせていただいたのですが、違和感が出てしまうのが嫌でした。『君の名は。』には、今までのモノクロイメージだった新海監督作品にはないカラフルさがあって、収録が始まる前に「どのくらいカラフルにしていいのか」と、監督と話し合いました。声の仕事が滅多にないので、その調整は特に難しかったです。

──確かに、男の子から女の子への声の変化は難しそうですね……。

神木:実は最初、ヒロインの三葉の声は少し低めでした。収録は三葉から録ったので瀧との音の高低差をつけやすかったのは良かったのですが、同じ声を別日に再現するのが難しかったです。実際、1日目とは違う声で2日目を録ったりしたので、「録りなおした方がいいかもしれない……」と話し合ったりもしました。声の高さのバランス感は、監督に頼るしかなかったです。あまり変わり過ぎてもふざけているように観えますし(笑) 逆に変わらなさ過ぎても入れ替わったかどうかもわからないので、難しかったです。

──先ほど、今回はカラフルな作品だと表現されていましたが、カラフルとはどんな感じなのでしょうか。

神木:『秒速5センチメートル』も『言の葉の庭』も、モノトーンなイメージがあると思うのですが、『君の名は。』では、「全然違った世界に踏み込まれた」と思いました。男女関係やキャラクター同士の距離感、物語など大きな一歩を踏み込もうとしているんだなとすごく感じましたし、「クスッ」と笑える部分があったり、明るいテンションのシーンも多く、「なんてカラフルなんだろう」と感じました。ただ、すべてがカラフルな訳ではなく、ところどころでちゃんとモノトーンなシーンもあって、新海監督の作品だなと感じる表現や間、テンションもあって、それと同時に中毒性も加わるという、新しい新海監督ワールドが出ています。

──そんな新しい一歩を踏み出す今回の作品に、なぜ出演が決まったと思いますか?

神木:本当にわからないです(笑) どちらかといえば、僕はモノトーンな声は出せないです。未だに出演理由が分からないので、監督に聞いてみたいくらいです。(※2)

※2:新海監督インタビューでは、神木さんのキャスティング理由を聞いています! その記事は後日公開!

■信長さんと石川さんにすごく感謝!

──神木さん演じる瀧の友人役として声優の島﨑信長さん(藤井司役)と石川界人さん(高木真太役)が出演されていますが、おふたりと共演してみていかがでしたか?

神木:僕、おふたりの声を聞いて耳が溶けそうでした(笑)

──えっ! 神木さんの耳が溶けそうに!?

神木:もう信長さんも石川さんもすごいです、本当に。何十回演じても同じトーンで声が出てきますし、監督の指示に的確に応えていらっしゃいました。本当に職人だなと思います。勉強させていただきながら心地良い時間を過ごさせていただきました(笑)。

本業が役者である自分が、声優の方々と一緒に、声の仕事をするのはすごく緊張します。そんな中、信長さんが話しかけてくださったんです。また、石川さんと同じ歳で、同じアニメを観ていたと判明して、距離が近づいたんです。お互い打ち解けてから3人の芝居に入れたので、信長さんと石川さんにすごく感謝しています。 (※1)

※1:インタビューこぼれ話ですが、神木さんは、アニメが好きで、主に学園ものをよく観るとの事。声優さんや監督さんは後から知るタイプで「あのキャラクターの声優さんが声をやっていたんだ!」と後から気づくそうです。

──声優が本業の方と触れ合いつつも、神木さん自身、自分の声はどんな声だと感じていますか?

神木:特徴のある声だと思っています。大勢の中にいても少し目立つ声をしているよねと言われたことがあります。例えば、ドラマの撮影で教室のシーンでガヤを撮るとき、ふざけて入ったら一発でバレたんです(笑)。「お前の声はわかりやすいから入るな!」と言われてしまって……。「ああ、自分の声は少し違う声質なんだな」と思いました。なので、新海監督が描くモノトーンな感じは絶対合わないと思っていたので、とても頑張りました。

<b>▲中央:高木真太(CV:石川界人) 右:藤井司(CV:島﨑信長)</b>

▲中央:高木真太(CV:石川界人) 右:藤井司(CV:島﨑信長)

──声も、モノトーンといった「色」で表現されているんですね。

神木:はい。今回は色で声を分けています。三葉に変わったときは「オレンジ」や「黄色」で、男の子の瀧は「青」というイメージで、モノローグは黒か白かグレーかというイメージです。

──ちなみに、共演された島﨑さん、石川さん、悠木碧さん(名取早耶香役)は何色になるでしょう。

神木:信長さんと石川さんのふたりはモテ声なんです、本当に(笑) 信長さんはエメラルドグリーンで、すごいな、かっこいいなと思っていました。石川さんは意外と茶色のような感じです。悠木さんは僕のイメージだと何色でもできるような、印象です。

──声を色で表現するの面白いですね! では、ご自身の色は?

神木:逆にどんなイメージですか?(笑) カッコよくない緑っぽいイメージでしょうか。信長さんはすごく綺麗な透き通ったエメラルドグリーンだけど、僕は深緑みたいな感じですね(笑)

■ 実写の現場だったらどんな風に話すんだろうって考えました

──役者の神木さんが、実写とは違うアニメ作品にチャレンジでしたが、気にされた部分などありますか?

神木:アニメと実写ではやはり違います。実写は体が映っていて自分の自由に(声を)発することができますし。一方アニメでは間や表情が全部決まっている中で声を合わせなくてはいけない。ただ、今回は新海監督の作品ということもあって、目の動きや表情の作りなど、キャラクターの演技が実写に近い。なので「実写の現場だったらどんな風に話すんだろう」とすごく考えて演じました。結果的には、アニメーションだと思って演じていたところと実写を意識して演じていたところを混ぜた感じです。

──なるほど! 役作りをする際、神木さんは自分から役に近づくタイプですか、それとも、役を自分に引きつけるタイプですか?

神木:僕は基本的に、アニメでも実写でも役に近づいていくタイプです。役作りをしない方がいいというところもあると思いますが、今回は新海監督作品ということと、瀧という男の子のぶっきらぼうな部分が出せたらいいなと思い、自分から瀧に寄っていきました。

──神木さんの中で、そうやって瀧というキャラクターとつながったんですね! 『君の名は。』は、“運命”がテーマになっていると思うんですけど、神木さん自身、運命の出会いを感じたことはありますか?

神木:なかなか運命を感じることはないですが、『るろうに剣心』(2014年)(※3)で瀬田宗次郎の役をいただいたときは感じました。瀬田宗次郎は自分で勝手に役作りをしていたこともあって、自分で呼び寄せたと感じています。今までも、運命を感じる場面があったのかもしれないけれど、そのときはそこまで敏感ではなかったのかもしれない。それは、他の役者の方々も同じだと思います。

※3:実写映画の第2作『るろうに剣心 京都大火編』、第3作『るろうに剣心 伝説の最期編』に瀬田宗次郎として出演。『るろうに剣心』(2012年)が撮影中だった頃から、宗次郎で役作りを自主練するほどの熱の入れようだったとの事。

──大好きな新海監督作品ですし、今回演じた「瀧」も運命のひとつなのではと思いますが、いかがですか?

神木:そういっていただけると嬉しいです。『秒速5センチメートル』を好きになって、画集も買って、モノローグを流して練習したり、音程を合わせて完璧にしたり、セリフを道端で呟いてみたりしていたかいがあったなと思います(笑)

──やっぱり運命ですね!(笑) では最後に、公開を待っている読者の方へメッセージをお願いします!

神木:新海監督の作品が好きな方には、新しい新海監督ワールドが味わえる作品だと思います。そして、映画を観た誰もが、「世界はこんなにも美しかったんだ……」と、映画館から出た瞬間から生きているのがすごく楽しくなるような映画になっています。僕自身も『君の名は。』に携わってから直感や運命って素敵だな、本当にあるんだなと思いました。自分と世界のつながりに運命を感じながら生きていけるきっかけになる作品です。ぜひ、劇場で御覧ください。

──ありがとうございました!

◆作品情報
<STORY>
 千年ぶりとなる彗星の来訪を一か月後に控えた日本。山深い田舎町に暮らす女子高校生・三葉(みつは)は憂鬱な毎日を過ごしていた。町長である父の選挙運動に、家系の神社の古き風習。小さく狭い町で、周囲の目が余計に気になる年頃だけに、都会への憧れを強くするばかり。

「来世は東京のイケメン男子にしてくださ―――い!!!」

 そんなある日、自分が男の子になる夢を見る。見慣れない部屋、見知らぬ友人、目の前に広がるのは東京の街並み。戸惑いながらも、念願だった都会での生活を思いっきり満喫する三葉。
 一方、東京で暮らす男子高校生、瀧(たき)も、奇妙な夢を見た。行ったこともない山奥の町で、自分が女子高校生になっているのだ。
 繰り返される不思議な夢。そして、明らかに抜け落ちている、記憶と時間。やがて、二人は気付く――。

「私/俺たち、入れ替わってる!?」

 入れ替わってしまった身体と生活に戸惑いながらも、その現実を少しずつ受け止める瀧と三葉。出会うことのない二人の出逢い。運命の歯車が、いま動き出す。



<公開情報>
作品名:『君の名は。』
2016年8月26日 全国東宝系公開
原作・脚本・監督:新海誠
作画監督:安藤雅司
キャラクターデザイン:田中将賀
音楽:RADWIMPS
声の出演:神木隆之介 上白石萌音 長澤まさみ 市原悦子 ほか
制作:コミックス・ウェーブ・フィルム
配給:東宝

>>映画『君の名は。』公式サイト

(C) 2016「君の名は。」製作委員会
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