「この作品でぼくは“再デビュー”する!」 映画『みつばちマーヤの大冒険』マーヤ役・春名風花さんインタビュー
わんぱくで好奇心旺盛なみつばちの女の子・マーヤは、巣を飛び出してひとりで外の世界へ! すべてが新鮮で、刺激的な外の世界。友だちもでき楽しく過ごしていたのですが……巣のなかで起こったとある出来事をキッカケに、マーヤは一大騒動に巻き込まれることに! 果たして、マーヤはどう立ち向かう?
1912年にドイツで誕生した児童文学『みつばちマーヤの冒険』。原作はもちろんのこと、1975年に日本で制作されたアニメシリーズも各国で放映され、世界で親しまれ続ける名作中の名作です。そんな同作が、本国・ドイツでフルCGアニメーション化! アニメ映画『みつばちマーヤの大冒険』として新たに発表されました。日本では9月3日(土)より109シネマズ限定で公開されます。
そこで本稿では、主人公・マーヤの吹き替えを担当する春名風花さんにインタビュー。役が決まったときの心境から、吹き替えならではの役作りなど、さまざまなお話をうかがいました。
■ジェットコースターでの役作りも芝居に活きた!
――まずは、役が決まったときのお話から聞いてみたいのですが?
春名風花さん(以下、春名):最初は、事務所の方から「『みつばちマーヤの大冒険』という作品の"結構いい役"が決まりそうだよ!」とだけ聞いていたんですよ。なので「メインどころってことかな?」と思って、ひとまず女の子のキャラクターを探したんです。
――なるほど。女の子キャラというと、限られてきますね。
春名:自分なりに調べてみたら、マーヤかてんとう虫のコくらいしかいなかったんですよね。だから「じゃあ、ぼくはてんとう虫かなあ?」って思っていたんですけど……まさかの「『マーヤ』のマーヤです!」って言われて(笑)。びっくりしちゃいました。
――主人公と知るまでに、そんな展開があったんですね!(笑) では、演じるにあたって、役作りはどのようにしていたんでしょう?
春名:今回のアニメはドイツで制作されたので、ドイツの役者さんのマーヤをお手本にしていました。声がかわいくて演技もすごくお上手で、収録中も聞きながらやっていましたね。参考にできるものがあったという意味では、ラクだったかもしれないです。ただ、マーヤって過去には野村道子さんをはじめ、世界でもいろんな方がやっていらっしゃるじゃないですか。なので、「どの役者さんのマーヤ像も壊さないように」と、事前に各国のマーヤを観たりもしました。
――細かい気配りのなかで作り上げられた芝居だったんですね! ちなみにオリジナル(ドイツ)のマーヤは「声がかわいくて演技もお上手」とのことですが、参考にして演じる上で気をつけた部分はありますか?
春名:聞いたとき、イントネーションが印象的だったんですよ。なんていうんでしょう……単語の頭がすごくはっきりしてるというか。一音目からパーン!て声が出てる感じ。日本語に変えるにあたって、どうしてもイメージ変わっちゃう部分はあるんですけど、そこの雰囲気は重視しましたね。笑い方もそう。徐々にボリュームが上がっていくんじゃなくて、頭からバン!ってくる感じなんですよね。普段しない笑い方なので難しいなと思いつつ、ここも意識していました。
――なるほど……。そういう"吹き替え特有の難しさ"っていろいろありそうですね。
春名:アニメのアフレコって、絵ができていない状態で声を入れることも多いんですけれど、今回の場合、元から絵がしっかりあったので。口パクをぴったり合わせなくちゃいけないんですよね。そこも難しかったです。完成されている口パクを、自分の声に合わせてもらうワケにはいかないから、そこはより集中してがんばらなきゃいけないところでした。
――あとは、マーヤといえば無垢な性格も特徴的です。
春名:巣を出て「世界をはじめてみた!」という純粋な感じ、ですね。そこもなるべく気に留めて演じていました。マーヤのいいところって、何事もフィルターをかけず、そのままを見るところなんですよ。だからこそ、みつばちと敵対するスズメバチの男の子(スティング)とも仲良くなっちゃう。このまっすぐな感じは、表現しなくちゃいけないところでした。とはいえ、ぼくは普段から「偏見や先入観はもたないこと」を心がけているので、役作りせずそのままにできた気がしますね。あとは……役作りで言うと……そうだ、ジェットコースターに乗ったんですよ!
――えっ! 役作りの一環でですか?
春名:そうですそうです。たぶん、主役っていうのもあって、気負っていたんですよね。「ぼくはみつばちみたいに空を飛んだことがないから、飛ばなきゃいけない!」「Gを感じなきゃいけない!」って思って(笑)。
――確かに、ジェットコースターってそういう雰囲気は味わえますよね!
春名:しかも、マーヤはすごく楽しんで飛ぶじゃないですか。だから笑わなきゃ!って思って。「うふふふ! あははは!」って笑いながら乗ってました。ひとりだったんですけど、ちょっと変な人になっちゃいましたね(笑)。でも、活かせた部分は十分にあると思います。風が頬に当たる感じとかも、イメージをつけることができましたから。
■ ベテラン陣とのやりとりで気づいたこととは……?
――野沢雅子さん(ウィリー役)や柿原徹也さん(スティング役)をはじめ、収録現場には大勢の先輩がいたかと思いますが、雰囲気はいかがでしたか?
春名:和気あいあいとした雰囲気で、すごく楽しかったですね! 実は、スタジオの中がすごく暑かったんですよ。だから、「暑いね」っていう話題でも盛りあがったり(笑)。
――絶好の話題ですね(笑)。
春名:そんなこともあったので(笑)、みんな楽しくできたのかなあと。休憩時間はすごくリラックスした感じでした。で、いざ収録に移ると一転して真剣なムードになりました。しかも、めちゃくちゃうまい方ばかりなので、ぼく自身の演技力も底上げされた気がします。うまい方とやると自分もうまくなるんだなって思いましたね。ゆくゆくは、ぼくもそうなりたい!って思いました。
――じゃあ、具体的に"演技で学んだこと"というと?
春名:うーーん……。子役時代からアニメのアフレコのお仕事はちょこちょこやらせていただいていたので、先輩方の背中はたくさん見てきたんです。だからこれまでにもそれぞれの現場で、絶対に学んだものはあるんですけど、意識できるものではないと思うんですよね。
――具体的に何がではなくて、新しい現場に行ったとき「あれ、前よりもできるようになっている気がする」と感じるみたいな。
春名:そうそう、そんな感じです。そこで初めて気づくものだと思いますね。ただ、野沢さんのようなベテランの方たちの声って、ドン!ってくるんですよ。マーヤに向かって、ちゃんと声を飛ばしてくれるというか。その、"声を命中させる"というやり方は、できるようになりたいなって思いました。あとは、収録中、マイク前に立っていないときもずっとそのキャラクターの気持ちでいる方が多いんです。表情までそのままの方もいらっしゃったりして。だから、ぼくも台本をある程度入れておいて、マーヤの表情をしっかり見て演じられるよう意識していましたね。そういう気づきも与えてくれる現場でした。
■「ぼく」のルーツは好きなアニメにあった!
――アニメ媒体なのでぜひ聞いておきたいんですが、春名さんはどんなアニメがお好きですか?
春名:いろいろ好きなんですけど、昔からずっと好きなのは『少女革命ウテナ』です。
――あれ、だいぶ世代とは外れた作品ですよね。お母様がキッカケだったりするんでしょうか?
春名:たぶん母だと思うんですけど……なんだったっけ? キッカケも曖昧なくらい、ちっちゃいころからずっと観てました。あとは『ローゼンメイデン』とか『美少女戦士セーラームーン』シリーズも好きですね。『ローゼンメイデン』は、衣装のかわいらしさに惹かれて大好きになりました! サンタさんにお願いして、真紅のドールも持ってるくらいです。ほかにはプーリップとのコラボドールも持っていてもっと集めたいんですけど、大人になるにつれて「自分で買え」って言われるようになりました(笑)。
――そこまで夢中になったと(笑)。とすると、アニメは時代問わず観ているんですね!
春名:好きかもって思ったらのめり込むタイプなので、結構ピンポイントなんですけどね。とくに好きなのは、幾原邦彦監督の作品。ウテナやセーラームーン以外には、『輪るピングドラム』とか『ユリ熊嵐』も好きですね。幾原監督特有の世界観や映像の美しさにほれぼれしちゃうんですよ。あとはキャラクターも。ウテナ(天上ウテナ)のような芯があって凛とした女の子が大好きで憧れるんです。だから一人称もいつのまにか「ぼく」になっていたんですよ。
――ウテナの一人称も「僕」ですもんね! そんなルーツがあったとは……。
春名:それくらい好きってことですね。あとは『ひぐらしのなく頃に』の古手梨花ちゃまや羽入っていうキャラクターも好きなんですけど、この子たちもボクっ子なんですよね。好きなキャラクターにボクっ子が多かったっていうのも大きいと思います。当初は「なんではるかぜちゃんは女の子なのに『私』じゃないの? 男の子なの?」ってたくさん言われたんですけど、だんだんと「ぼく」が普通になっちゃって。一時期「私」にしたことがあるんですけど、ファンの方から「はるかぜちゃんらしくない!」と言われるくらい定着しました(笑)。
――確かに。今では「ぼく」のイメージしかないですもんね! いやはや、意外なところから秘話が聞けました。では最後に。そんな春名さんにアニメの魅力をうかがいたいです!
春名:やっぱり、一番は「現実にないものがたくさん出てくる」っていうところですかね。地球外生命体みたいな、何かよくわからない架空の生物も出てくる。で、声優さんは、それを演じられるんですよね。ぼくはお芝居が大好きなので、そこにすごく魅力に感じます。
――役の幅がグッと広がるというか。
春名:そうなんですよね! 実写だと、どうしても実年齢や外見に見合った役じゃないと演じられなかったりするので。
――それこそ、今回のマーヤもそうですね。
春名:ですね。リアルだと、みつばちはこんなに表情豊かじゃないし(笑)。コミカルな動きだってしないので。
――そういう、アニメーションならではの魅力も感じつつ、観てもらいたいですね。
春名:はい。ちっちゃいお子さんやお父さんお母さんはもちろんですけど、日々のなかで「ちょっと偏見を持っちゃってるな」「差別しちゃってるな」「先入観を持っちゃってるな」って思っている方にもぜひ観てもらいたいです。マーヤって、そういう"不純物"みたいなものが一切ない真っ直ぐな子なんですよ。誰にでも手を差し伸べる優しさや温かさがある。それを、この映画を見て受け止めていただけたらなと思います。
――確かに、マーヤの言動を見ていると「私、心が汚れてるな」って思うんですよね。で、観終えたときにはちょっとキレイになった気がする。
春名:きっと、みなさんにもそう感じてもらえると思うんですよ! ぼく、「産まれたときは皆善人である」っていう説を信じているんです。「空ってなんで青いの?」「雨はなんで降るの?」って、なんでも疑問を持つような、純粋な心を持つ人。それを、マーヤを見て今一度思い出してもらえたらなと思いますね。……そして、ずっと子役としてやってきたぼくにとっては、"再デビュー作"になると思うので。ファンの方には、ぼくの再デビューをしっかり見届けてもらえたらなあと思います!
終始笑顔で、はつらつと語ってくださった春名さん。その様子は、まさしくはるかぜのように爽やかで、マーヤのようにピュアなものでした♪ 映画公開までもう間もなく。みなさんも、この大冒険から刺激を受けてみませんか?
[取材&文・松本まゆげ / 撮影・Re-Zi]
■『みつばちマーヤの大冒険』概要
9月3日(土)より、109シネマズにて全国ロードショー
監督:アレックス・ステイダーマン
原作:ワルデマル・ボンゼルス
製作:パトリック・エルメンドルフ、トルステン・ヴェゲナー、ジム・バランタイン、バーバラ・スティーヴン
脚本:マーカス・ザウアーマン
編集:イレーヌ・ヴェラースホフ、ゲッツ・ブラント
原題:MAYA THE BEE MOVIE
2014年/ドイツ-オーストラリア/カラー/ビスタサイズ/89分/DCP/配給:AMGエンタテインメント
>>映画『みつばちマーヤの大冒険』公式サイト
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