「ねんどろいど」はこうやって生まれた!? 生みの親であるグッスマ代表・安藝貴範氏が語る「モノを作るとはなにか?」
2016年8月20日(金)~9月4日(日)の期間、秋葉原(末広町駅)のギャラリー「3331 Arts Chiyoda」で『グッドスマイルカンパニー15周年記念展示会』が開催中。場内には1600体を超える大量のフィギュア・模型が展示され、さながら博物館のような雰囲気。場内の様子はコチラのレポート記事を読んでいただくとして、今回はグッドスマイルカンパニー代表取締役・安藝貴範さんにお話を伺いました。
15周年イベントのことはもちろん、「ねんどろいど」を始めとするヒット商品についてや、フィギュア開発の裏側、自由な社風などについて、たくさん語っていただきました。
あまりにも長い記事なので、日ごろアニメイトタイムズを愛読くださっている読者のなかには、「これは求人広告誌の記事か?」と疑われる方もいるかもしれません。違います! これはフィギュアが大好きな記者が、フィギュア業界の裏側が知りたくて勝手に取材した記事です。
日常的にフィギュアを愛でている記者のような読者はもちろん、将来フィギュア・原型師業界で働きたいと思っているみなさんは参考にしていただきたいです。安藝社長の言葉には、「モノを作ること」を考えさせられるアドバイスがたくさん詰まっています!
■ グッドスマイルカンパニー代表・安藝さんインタビュー
――創業15周年、おめでとうございます。『グッドスマイルカンパニー15周年記念展示会』は以前から企画されていたのでしょうか?
安藝貴範さん(以下、安藝):いや、特にそういうことはなくて、「15年だし、なにかやらなきゃ」と思って開きました。
――これだけの数のフィギュアが並ぶ光景は圧巻でした。
安藝:実は鳥取の工場を作ってから、鳥取でも「ねんどろいど」の500体を記念した見学会を、町の施設を借りてやったんです。そうしたら2万人以上のお客様に来ていただけました。
――それはすごい人数ですね。どのような客層でしたか? フィギュア好きなオタク属性?
安藝:それが意外と、ごく普通の家族連れのお客さんが多かったです。おじいちゃんとかおばあちゃんが、「最近できた工場の展示会だ」って、物珍しそうにやってくるんです。さすがに多くの来場者は無いだろうと予想していたので、いっぱい来てくださって僕らがビックリしました。だって町の人口が4.8万人くらいなんですよ。
――では地方からも大勢やってきたのですね。
安藝:他の地方からはあまり来てないと思います。倉吉市は大阪からも3時間かかりますし、行きづらいんです。近所の人たちがふらっと遊びに来てくれてた感覚でした。なので今回の『グッドスマイルカンパニー15周年記念展示会』も、秋葉原に来たついでにふらっと寄ってほしいです。
■ 600体以上の「ねんどろいど」を集める苦労
――ワンダーフェスティバルでも「ねんどろいど」を大量に展示したことがありましたが、その時の反響はいかがでしたか?
安藝:きちんとお客さまの意見をとっていないのでわかりませんが、どうなんでしょうね? あれには自己満足の意味も大きかったんです。「いままでに僕らはこんなにたくさん作ったんですよ!」というのを展示したかったというか。誇りたかった。
――自己満足ですか(笑)。
安藝:そして実際にいままでの「ねんどろいど」を集めて展示しようとしたら、レアな商品は社内に残っていないものもありました。なのであのときは、スタッフが家から持ってきた私物を展示したり。色々ありましたが、今ではけっこう揃ってきました。序盤のレアな「ねんどろいど」も去年集め終わったと思います。
たぶん我々の倉庫を探せばどこかに眠っていると思うんですが。倉庫が広くて探すのも一苦労です。1000坪は使ってると思います。
――えええっ!? 1000坪のなかから1体の「ねんどろいど」を探すのは難しそうですね(笑)。今回は「ねんどろいど」だけでなく、「figma」も数体展示されていました。
安藝:「figma」はマックスファクトリーの商品ですが、今回は「発売元:グッドスマイルカンパニー」になっている商品や、エポックメイキングな作品だけをチョイスして展示しました。
――なるほど。そういう意味だったのですね。
安藝:そのマックスファクトリーも、来年30周年を迎えるんです。なので、なにかやらなきゃいけないですねぇ。
――「やらなきゃいけない」のですね(笑)。
安藝:25周年のときもみんな忘れていて、ワンフェス2013冬のときに「なにかやろうよ!」って言ってやったんです。あのときはブースデザインをを僕がやって、皆でブースを作ったんです。大事な30周年は集大成の展示会ができると思います。無理にでも!
――むりやりですか?
安藝:そう。だってエンタメの世界って5年後はどうなってるかわかりませんからね。5年おきにやっておかないと、へたしたらグッスマもマックスファクトリーも会社がなくなっちゃうかもしれませんから(笑)。
――いやいや、そんなことはないと思います。ワンフェスは年に2回の貴重なフィギュアの祭典です。
安藝:ワンフェスはお客様に我々の商品を見ていただくというだけでなく、もうひとつの意味もあるんです。
■ フィギュアの祭典「ワンフェス」が年に2回開かれる意味とは?
――どういった意味でしょうか?
安藝:ワンフェスがあると、原型師の締め切りになることも重要なポイントですね。年に2回しかない発表の場なので、ワンフェスは原型師にとって、年2回の大きな締め切りとして機能しています。
――なるほど。よく未着色の原型が展示されていますね。
安藝:そうです。ワンフェスがあると、原型展示するので明確な締め切りが出来ます。あると無いとでは大違い。原型師たちは「ワンフェスにまにあわせるぞー!」と、ワンフェス直前はお祭り騒ぎです。原型の仕事って、締め切りはあってないようなものなんです。こだわろうと思えばどこまでもこだわれる。突き詰めようとしたら、どこまでも突き詰められます。
さらに商品の場合は、版権元さんの監修が入ります。これも時間がかかることも多いですね。ワンフェスというイベントは、原型師にとっても版権元さんとやりとりする企画担当にとっても大事な締め切りなんです。
――フィギュア業界の裏側は、そうやって動いているのですか。
安藝:版元さんに対して、「ワンフェスに展示したいので、なんとか今週中に見てください!」とお願いすることもあります。どうしても都合が合わない場合は、「ワンフェスに来ますよね? 朝9時に会場で見てください!」なんてこともありますね(笑)。でも、そこでもオーケーが出なかった場合は、残念ながら展示物の横に「撮影禁止」のパネルを置いたり、展示出来なかったりすることになってしまいます。
――ごくまれに「撮影禁止」のフィギュア、見かけます!
安藝:会場まで来てくださったファンのみなさんにご迷惑をおかけしています……。原型師もがんばって、版元さんも調整してくださっても、力及ばず。ごめんなさい。
――ですが、今回のイベント『グッドスマイルカンパニー15周年記念展示会』は一部を除いてすべて発売済みのフィギュアです。
安藝:そう。だからこのイベントはすべて撮影オーケーです。もし近所に来る機会があったら、フィギュア好きの方はちょっと立ち寄って、撮影していってほしいです。1600体以上のフィギュアが展示されているので、見応えありますよ!
■ 安藝さんのマイブームは「古く朽ち果てた車」
――今回のイベントでは物販も行われています。
安藝:いろいろ商品を持ってきています。本当はスタッフの個人所有物も売れたらよかったんですけどね。果たしてそんなモノが売れるかわかりませんけど(笑)。僕の机の下にも、くだらないモノがたくさんあります。
――いやいや。貴重なモノが多そうですし、やったら売れたと思います。安藝さんの机の下には、どんなモノがあるのですか?
安藝:いろいろありますよ。安定しないコレクション魂で集めたグッズが(笑)。
――では、最近の安藝さんのマイブームは?
安藝:古い車です。マニアックな朽ちかけた車とか。
――クラシックカーでしょうか?
安藝:いや。クラシックカーというよりも、もっと古い、やばい感じの車です(笑)。「ミニ マーコス」とか。
――グッドスマイルカンパニーさんは、そういう安藝さんの趣味から商品化につながることもありますか?
安藝:ありますね。基本的に僕が好きなモノが商品になることも多いです。フィギュアもそうなんです。初めは「おもしろいな」と思って手を付けた感じだったんです。
――大ヒット商品「ねんどろいど」もそうですか?
安藝:「ねんどろいど」はかなり苦し紛れに作ったシリーズです。僕らには大きくて美麗なフィギュアをバリバリ作れる内部原型師がいなかったので、「これなら内部でできるかも?」と始めた商品です。
――そこからどうやって?
安藝:初めに「ねんどろいど」を作ったのは、原型師でもなかったスタッフたちです。削りカスが床に落ちないように、両足に挟んで抱えたゴミ箱の上で原型削ってました。とっても手弁当な制作体制だったんですよ(笑)。
――3DCGと3Dプリンターなんて、とんでもないハナシです。
安藝:でも、我々が3Dプリンターを導入したのはかなり早いタイミングだったと思います。ものすごく巨大なマシンで、何千万円もする機械でした。その3Dプリンターはワックスで出力するんだけど、「使いづらいなぁ……」なんて言いながら使っていました(笑)。
――役に立たなかったのですか?
安藝:役に立ってくれましたよ。『ねんどろいど セイバー』の甲冑はそれで作りました。最初の『へたれセイバー』ではなく、その次のちゃんとした『セイバー』の甲冑です。
――そんな大掛かりな機械、すぐに使いこなせるものでしょうか?
安藝:試行錯誤が続きました。CAD系の3Dツール『Rhinoceros』というのがあって、メーカーが講習を開いていました。そこでスタッフを3Dのコースに通わせて、3D造形・出力の技術を習得してもらったり。受講料もけっこう高かった覚えがあります。
――マシンだけでなく、それを使いこなせる人材育成にもお金がかかるわけですか。
安藝:当時、おもちゃ業界で『FreeForm』というのが使われていたんです。その機械はペンのようなデバイスを使って画面の中の立体物をタッチすると、3Dモデルを作れるような入力装置付きの3Dモデリングソフトです。実際に導入して使ってみたら「面」のパキッとしたCAD的なモデルには向いていませんでした。肉感的なものや丸みのあるものを作るのに向いてました。
――最先端の装置でも、使ってみなければ結果はわからないと?
安藝:そうですね。試行錯誤の連続です。実は先ほどセイバーの甲冑を作ったと言った『Rhinoceros』のようなCAD系のソフトウェアも、当初の予定では「作ったデータを直接金型に落とせる」と思って導入したんです。でも直接は当時ムリでした(笑)。
一同:(笑)
安藝:結局いろいろ試行錯誤をした結果、我々の出した答えは「最先端の技術をいろいろ使ってなんとか作る」という締まりのない結論でした。フィギュア制作を10年以上やっていますが、これは今でも同じです。いろんな方法を使って、その時に最適な方法で原型を作っています。
■ 最近の造形は3DCGが使われている!?
――現在はさまざまな業種で3DCGが使われていますが、グッドスマイルカンパニーさんでも造形は3Dツールですか?
安藝:いや、多くは手作業です。3Dモデリングが作業のなかに入っている割り合いは2~3割りくらいだと思います。3DCGを多用すると、3Dプリンターの出力用のデータ整理とか、出力後の磨きとかに多くのリソースがかかってしまう側面もあります。
――それは意外です。
安藝:3Dで作る人たちは、出力にかかるコストとか、その後の手作業の磨き工程とかをあまり意識しないことが多いように思います。「造形と磨きは別でしょ」って言う言葉を聞くこともあるのですが、出力と磨きもフィギュアを完成させる課程では大事な仕事。データを納品して「できました!」と言うわけにはいかないのです。その後も「出力」「磨き」「複製」「塗装」と、原型完成までの作業は続きます。
――でも昨今は『ZBrush』を始めとする3DCGツールが人気です。
安藝:3Dモデラーが増えることは素晴らしいですし、とてもいいツールだと思います。ただし使うのであれば、「納品とはなにか?」を考えていきたい。うちのスタッフたちも3Dモデリングツールを使いますが、ちゃんと手作業もできます。きっちりフィニッシュまで持っていくのがお仕事だと分かっています。「お仕事は役割り分担が大事」というのも理解しています。
フィギュアの原型完成までには、多くの工程があって、色んな人の手が入っていきます。作業工程を理解して、原型制作をしているかどうかは、原型師としての能力の差となります。どこまでいっても、僕らが作っているフィギュアは「工業製品」です。アートではありませんから、原型を完成させて、さらに多くの人の手を経て量産、販売して、ファンのお客さんの手元に届くまでが仕事です。
■ グッドスマイルカンパニーのフィギュア造形セクションはこんな感じ!
――いまグッドスマイルカンパニーさんでフィギュアに携わっているスタッフさんは何名くらいでしょうか?
安藝:制造・企画・制作などを合わせた全開発スタッフは60人くらいです。もちろんそれだけじゃ回らないので、外注さんも合わせると150人以上の人が動いていると思います。
工場までいれると数千人になります。
――世間には大勢のモデラー志望の方がいると思います。もしもグッスマさんで仕事をしたい場合、どうすればよいでしょうか?
安藝:トライアウトを年に2〜3回やっているので、そこに応募していただければ選考させていただきます。選考を通った方は、それからちょっとしたインターンかアルバイト期間があって、それを経て正式採用になります。インターン期間を設けている理由は、お互いの適正を計るためです。フリーランスが向いてたらフリーになっていただいて、内部スタッフが向いている人だったら社内で修行して技術を磨いてもらいます。
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――最近はどのような人が入ってきましたか?
安藝:もちろんすごい人にも応募してもらっていますが、フィギュアを作りたい!という駆け出しの人が多いですよ。初めからすごい人たちはフリーランスで活動する傾向がありますからね。
――どんな人がフィギュア制作に向いていると思いますか?
安藝:はじめから凄い技術を持っている人はめったにいないので、それよりも継続性があったり、情熱を人一倍持っているとかが重要です。もちろん「自分が好きなもの」をしっかり持っていて、なおかつ「造形することが好き」ということが大前提です。あとは人の話をちゃんと聞けたり、会社を無断で休まないとか(笑)、ごく普通の社会人としての常識を持っている方が採用されやすいです。
■ 一人前の造形師になるには1万時間の修行! そして彼らのその先は!?
――実際にそのようにしてグッドスマイルカンパニーさんに入ったら、どうなりますか?
安藝:フィギュアを作り続けて3年くらい経つと、一気に作業が早く正確になることが多いです。一般的に何かを習得するには「1万時間の修練が必要」と言われています。毎日コツコツと作り続けて1万時間くらい経過すると、突然見違えるように上手くなるんです。ビックリしますよ。
――それは安藝さんたちから見てでしょうか? それとも個人が自覚するのでしょうか?
安藝:両方です。必要な時間を経て手が動くようになった人は、「作るのが更に楽しくなった!」と言いますね。これは当然だと思います。もともと造形が好きだった人が、頭に思い描いた通りに立体物を作れる技術を手に入れた。こんなに楽しいことはありません。では、そうなった次に、彼らはどうなるか?
――どうなるのでしょうか?
安藝:「欲」が出てきます。造形がどんどん楽しくなってきますので、「あれが作りたい!」、「もっと沢山作りたい!」と言い始めます(笑)。こうなってくれると、頼もしいスタッフですね。
――グッドスマイルカンパニーさんでは、「僕はこの作品が好きだ」と言ったら作らせてもらえるのでしょうか?
安藝:うちの会社は、けっこう挙手制ですね。「どうしても『ラブライブ!』が作りたい」というスタッフがいたら、「じゃあ次はキミね」みたいに決めることもありました。ですが、高い技術を持っているスタッフが多いので、望み通りのキャラを作るのは簡単なことではありません。それまでにどのようなキャラクターを、どのくらい魅力的に造形できたのかが判断されて決まります。
――厳しくはあるけれど、しっかりいい仕事をしていれば希望のキャラを造形できるなんて、とてもいい会社ですね!
安藝:造形をしているどこの会社でもそうだと思いますよ(笑)。やはり、そのキャラクターなり作品が「好き」じゃないと、ファンの心に響く造形はできません。好きな気持ちが一番大事なのと共に、一方で作品を好きになることが一番難しいと思います。
■ 造形師にとって「インプット」も大事な仕事
――グッドスマイルカンパニーさんの取り組みで、ユニークだと感じることはありますか?
安藝:変わっているかどうかはわかりませんが、弊社は定期的に「ディレクション会」を開いています。この会議には外部の絵描きさんやアートディレクターを招いて開かれます。会議の内容は、参加者みんなで絵を見ながら、絵の解釈をしたり、造形について考察し合います。
――具体的にどのような話し合いが行われますか?
安藝:たとえばあるイラストに描かれている1本の線について、それが「絵描きの癖」で描いた線か、立体造形に必要な線かを議論します。イラストレーターさんは絵を魅力的に見せる「騙す」テクニックを持っています。その絵を見た人にとって魅力的に見える線だったとしても、造形上は「危ない地雷原」な場合もあります。
――イラストレーターが描く絵は二次元で、造形師が作るフィギュアは三次元だからですね。
安藝:イラストをじっくり見ても、どの線が大事かは造形師から見えにくい場合もあります。そんなときは、直接イラストレーターやアートディレクターからアドバイスを受けて造形に反映させます。この会議はかなり長時間かかります。
特に『カードキャプターさくら』でのアートディレクターとのやりとりは多くの時間が掛かっています。あの造形はイラストの解釈だけでなく、すばらしいイラストに対しての「再現しきるぞ!」という彫刻家の意地も入っています。絵と、彫刻がぶつかり合った末に、、あのような迫力の立体造形ができました。アートディレクターと一緒に絵描きさんの意図を紐解きながら作ったのが、とてもよくわかる作品になったと思います。遠目でみてキャッチーで、近寄っても、拡大しても解像度が下がらない、素晴らしい造形です。
今回の展示会でも披露していますので、ぜひみなさんに見ていただきたいです。絵の雰囲気がしっかり再現されていると思います。
――私もそうですが、消費者が「このフィギュアはデキがいい」とか「原作に忠実だ」とか意見しますが、裏側では相当な努力があるのですね。
安藝:そうかもしれませんね。弊社の製品はすべて僕もチェックしています。僕自信もインプットを続けないと造形に対してのアウトプットができないので、さまざまなアーティストさんと付き合いながら、「どう思って作品をつくっているのか?」を日常的に考えています。絵だけでなく、世界中の彫刻家の作品も見ます。そうし続けておかないと、自分のなかがスッカラカンになってしまうようで怖いのです。出来たら造形師さんたちにも世界中を回ってもらって、ローマ時代やフランスの当時の彫刻とかを見て欲しい。実物を見ると迫力が違いますから、得られるものはとても大きいです。
■ 造形師の「視線のコントロール技術」とは?
――安藝さんが立体造形物を見るとき、どこを注意して見ますか?
安藝:その質問の答えの前に、まず「フィギュアはアートじゃない」ということも大切な要素かもしれません。フィギュアは「大衆芸術」に近いもので、お客さんに喜んでもらう類の彫刻です。アートの様に自分の内面に向かって作るのではなく、お客さんの心の中に答えがある場合が多いのです。
なのでキャラクターを模して作るのであれば、キャラクターに似ていなければならない。もっと言うと、そのキャラクターが、ファンの人々に「どのように受け入れられているのか?」を考えて造形物として再現しなければならないと思います。そうじゃない、アート寄りのものも時々生まれて、すばらしい評価に繋がることもありますから、一概に言い切れないのが面白いところなんですが。
――ファンから見たキャラクター像が重要?
安藝:例えば絵描きさんがあるキャラクターをデザインしたとき、「冷たいキャラクター」として設定したとします。でも、実際に作品を見たらストーリーのなかでは「根が優しいキャラクター」として活躍したため、ファンには「温かいキャラクター」として映っているかもしれません。そういうキャラクターを造形する場合、造形師のセンスが問われます。一見すると冷たく見えるけど、眼の表情が温かいとか。いろいろな手法があります。それが実現できたら、ファンの方々がフィギュアを見たときに強い共感を持ってもらえます。
――アニメを見る前と後で、印象の変わるキャラクターは珍しくないですね。
安藝:また、フィギュアはパッと見た瞬間にがっかりされてしまうと、せっかくこだわって作った細部までしっかり見ていただけません。人々がフィギュアを見るときの行動は、何段階かあると思います。まず、初見したとき「(見る人が興味を持つどこか)ある部分」に視線が集まります。その一箇所に集まった視線を、次にどこに誘導するのかを三次元的に考えて作るんです。
――それはとてもおもしろいですね。今度、意識的に考えながら見てみます!
安藝:このような視線のコントロールも考えながら、ファンが共感できるような造形を作ります。フィギュアの設計ができたとしても、そこに担当原型師の技術が至っていない場合は、スタッフで手分けした作業が入ることもあります。うちには原型師がたくさんいますから、各自が得意分野をフォローしあいます。
――そしてできあがったフィギュアを、全商品安藝さんがチェックするのですね。これだけたくさん商品があると、毎日お忙しいですね!
安藝:ぜんぜん忙しくないですよ(笑)。打ち合わせの合間とかに原型師さんが僕のとこにきてくれるので、その都度チェックします。原型を見るのはとても楽しいです。僕は昔は家具職人だったので手先は器用な方だとは思いますが、フィギュアは作れません。原型を見て文句を言う専門です(笑)。
[文・写真:佐藤ポン]
■開催概要
イベント名:グッドスマイルカンパニー 15周年記念展示会
日付:2016年8月20日(土)~9月4日(日)
時間:
平日 12:00~20:00(最終入場19:30まで)
土・日 11:00~19:00(最終入場18:30まで)
会場:3331 Arts Chiyoda(アーツ千代田 3331)
住所:東京都千代田区 外神田6丁目11-14
アクセス:
東京メトロ銀座線末広町駅4番出口より徒歩1分
東京メトロ千代田線湯島駅6番出口より徒歩3分
都営大江戸線上野御徒町駅A1番出口より徒歩6分
JR御徒町駅南口より徒歩7分
JR秋葉原駅電気街口より徒歩8分
JR御茶ノ水駅聖橋口より徒歩15分
※本施設には駐車場・駐輪場がございません。ご来場の際には、公共交通機関をご利用ください。
※詳しい会場までのアクセスは、下記イベント内容に記載のMAPをご確認ください。
▼会場までのアクセスはこちら
http://www.3331.jp/access/
チケット:入場無料
>>グッドスマイルカンパニー 公式サイト
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