収録曲すべての作詞を自身が手掛けた意欲作! 佐藤聡美さん 3rdシングル「雨の菫青石」を語る
佐藤聡美さんの3rdシングルは、トリプルタイアップ! 自身も鷹白千夜と一夜役として出演するアプリゲーム『NOeSIS羽化』フルリメイク版のエンディング主題歌の2曲は、作品に寄り添って、作品ファンにも喜んでもらいたいという思いを込めて作ったという。
また、OVA『「英雄」解体』の主題歌「crystal song」は、ライブで盛り上がりたい1曲。全曲自ら作詞を担当しているということで、楽曲に込めた思いなどを伺いしました。
――久しぶりのシングルリリースで、ファンの皆さんには嬉しい報告ができましたね。
佐藤聡美(以下、佐藤):シングルは久々ですし、今回は私がメインヒロインを演じさせていただいている作品のエンディング曲でもあるので、ファンの皆さんは、より喜んでくれたんじゃないかなと思います。
――作詞って、これまで、そんなにしていなかったですよね?
佐藤:はい。前回のアルバム『Fanfare』(15年6月)で1曲「I am a cloudy girl」の作詞をしたのが初めてだったので、ほとんど作詞経験がなかったです。
――その中で、シングルに収録される3曲すべての作詞をするって、すごいチャレンジですよね?
佐藤:そうなんですよ(笑)。でも、積極的に挑戦していきたいと思っていたので、書かせてくださいとお願いしました。
――なぜ作詞をしたかったんですか? 言葉に対する特別な思いがあったり?
佐藤:前回のアルバムで詞を書いたときに楽しかったというのが一番で。自分が見ているもの、感じているものを言葉にするっていう行為自体がすごく楽しくて。普段私たちは、完成された言葉をセリフとしてだったり、ナレーションとして読み上げるんですけど、それを作る側の目線ってどんな感じなんだろうなとか。作詞するときは、いつも曲が先に上がってくるんですけど、こういう詞を書いたら、こういう風に歌いたいなとか、歌うときにビジョンも見えてきたりするので、すごく楽しかったです。
――最初の2曲は『NOeSIS羽化』のエンディング主題歌です。
佐藤:実はアプリになる前にドラマCDが出ていて、そのドラマCDをやっているときに、原作の先生から「いつか主題歌を歌ってもらいたいんです」と言っていただいていて、私も「歌いたいです!」なんて話を雑談的にしていたんです。なので今回は、お互いの念願叶ってのタイアップでもあるので、すごく嬉しいです。
――役を演じているということは、詞を書く上でプラスになったりするのですか?
佐藤:千夜と一夜を演じさせていただいき、作品の世界観もしっかりわかった上で書かせていただいたので、やはり出てくる思いは違うと思います。
――かなり難しいことは承知で聞きますが、アプリゲーム『NOeSIS羽化』って、どんな作品ですか?
佐藤:そうなんですよ、難しいんですよ(笑)! 本当に簡単というと、サスペンスあり、ミステリーありの学園を舞台にしたノベルゲームなんですけど、ヒロインが数名いるんです。そしてそのヒロイン全員がヤンデレっていう(笑)。しかもヤンデレとは言いつつも、それぞれが関わっている事情だったり、闇がまったく違うんです。
アプリゲームの第一弾である『NOeSIS嘘を吐いた記憶の物語』でも触れてはいるんですけど、今回の『NOeSIS羽化』は、よりキャラクターのバックボーン、抱えているものにググッと踏み込んだ話があったりするので、『羽化』について語るとネタバレになっちゃうんですよね(笑)。
でも、そうやっていろんなキャラクターに視点が当たることで、「これって実はこういうことだったの?」「この人はあの人をそんな風に思うようになっちゃったの?」とか、今まで見えてこなかった部分がどんどん暴かれていって、いい意味でどんどん裏切られていくんです。それに描写がリアルで、グロテスクだったりするので、台本読みながら想像しちゃって、怖いよ~って思ったりしていました。今回、主人公(プレイヤー)以外はフルボイスですし、よりリアルにいろいろなことを感じていただいたあとのエンディング主題歌になるので、いい感じに流れを汲んで終われるようにと作詞しました。
――エンディングだと、ネタバレを気にせず書けるのがいいですね。
佐藤:そうですね! なので作品の中に出てくる単語だったりフレーズを散りばめているので、走馬灯のような感じになるかもしれません。これを聴くことで、いろんなシーンを思い浮かべてくれたらいいなという意図もあるので。あとは〈理想郷〉と書いてユートピアと読んだりするのは、シナリオの中でも、難しい漢字をカタカナで読むようなところがあるので、『NOeSIS』ファンなら、こういうのお好きだろうなって(笑)。
――そういった意味では、タイトルの「雨の菫青石(アイオライト)」というのは?
佐藤:もともと夜空をイメージして言葉を書きたいと思っていたときに、何か空っぽいパワーストーンってないかなと調べていて、たまたま辿り着いたものなんですけど。アイオライトって、二面性の中に隠された真実を見抜く力をくれる石という意味があって、ちょうど千夜と一夜は二重人格なので、2人がそれぞれの真実に辿り着いていく中で、千夜から見る一夜、雨は、主人公の時雨くんを意味しているんです。なので、アイオライトっていう言葉が私の中ですごくしっくりくるなって。それで、カタカナで書くより漢字で書いたほうが、日本語の美しさが出るのかなって思って、このタイトルにしました。
――すごく引っかかりますよね。でも何て読むのかなとも思いましたが。
佐藤:そうですよね、読めないですよね(笑)。最初、別のタイトルだったんですけど、レコーディングの前日にやっぱり変えていいですか?って(笑)。アイオライトを気に入りすぎてしまって。
―― ー曲先で歌詞を書いたそうですが、いただいたときは、『NOeSIS』っぽいと思いませんでしたか? 特にイントロとか。
佐藤:壮大な感じで、静かで、弦の音が入ってっていう、私のぼんやりとした注文を具現化していただいたんです。まさに千夜のストーリーを終えたあとにスッと聴いていただけるイントロになっているなって個人的には思ってます。最初は不気味さみたいなのがあるんですけど、間奏では弦の美しさがある。それって時雨がはじめて千夜に会ったときのイメージだったりするのかなって。
――先ほど、詞を書くときに、歌い方もイメージしているとおっしゃっていましたが、レコーディングのプランはどのような感じでした?
佐藤:静かな怒りみたいな。千夜ってクールで、淡々としていて、ジトッと怒るイメージがあるんですけど、曲的にはだんだん盛り上がっていくんです。千夜に関しても、物語が進むにつれて、時雨や一夜に対する思いがごちゃごちゃになっていって、彼女の本質的なものが出てくるというシナリオの流れがあるので、歌でも静かな怒りから、裏切られて寂しい気持ちや悲しさがあって、最後は時雨くんが救ってくれることによる希望が見える流れになったらいいなって思いました。わりと今まで元気な曲やカッコいい曲を歌わせてもらうことが多かったので、あえて感情の振り幅のベクトルを暗いほうに持っていって、その中で何ができるかというのを模索しながら歌っていました。
――確かに最後の2行は、聴いていても、すごく優しい歌声だなって思いました。
佐藤:悲しいままで終わるのはつらいなと思って。私『NOeSIS』の世界にいたら、絶対人間不信になると思います(笑)。
「恋 劇薬、口に甘し。」は仕掛けもあるのでいろいろな楽しみ方をしてくれたら嬉しい
――ただ、一夜のエンディング主題歌「恋 劇薬、口に甘し。」は、全然タイプが違いますよね。
佐藤:全然違いますよね(笑)! 曲調も不思議で、どうやって歌詞をつけていいかわからないってくらい難解で、レベルの高い曲でした。ただ、一夜って何でもありなキャラクターなんですよ。それにすごく女の子なんですね。だからあえて、千夜とは別の視点で時雨くんに対する気持ちを書いてみました。一夜のシナリオがとんでもないことになっていたので、ちょっとポップな感じにすることで、何か救われるような感じになればいいなって(笑)。大きな枠で見れば、恋する女の子の片想いソングみたいにも取れるので、心の広い片想い中の女子にはささるかなと(笑)。
――作品を離れても受け入れられる曲かもしれないですね。でも意外な感じはしました?
佐藤:そうですね。作曲前に話していた感じからすると、斜め上くらいから来たので、これはどうしよう!って思ったんですけど、完成した曲を聴いたとき、スルメ曲だなって思ったんです。聴けば聴くほど頭から離れないメロディーだなと。あと、イヤホンで聴くと右と左かに分かれて歌が聴こえてきたり、間奏でセリフの逆再生が入っていたり、そういう仕掛けもしているので、『NOeSIS』ファンの方は、解析してみたり、いろいろな楽しみ方をしてくれたら嬉しいです。
――作詞は大変でした?
佐藤:私は家かカフェで作詞しているんですけど、アナログな人間なのか、ケータイに言葉をメモするのがダメで(笑)。なので大きいスケッチブックに、台本から引っ張り出してきた言葉を並べて、自分が感じた言葉も書いて、曲を何度も聴いて考えるんです。「雨の菫青石(アイオライト)」のときは、起承転結を考えたり、「恋 劇薬、口に甘し。」は思いついた単語を並べていく作業でした。何か、実際に文字で書いたほうが覚えるし、イメージがしやすいんですよね。でも今回は『NOeSIS』という作品をずっとやってきたので、あまり苦労はしなかったなっていうのが、率直な感想です。
環境が変わっても、自分という本質は変わらないんだっていう、応援ソングみたいな感じになればいいなって
――で、3曲目の「crystal song」は、OVA『「英雄」解体』の主題歌です。またぜんぜん違う作品ですね。
佐藤:私は、叶レカ(かなえれか)というおっとりした女の子の役で出演させていただいてます。異世界に英雄と言われていた人たちがいて、英雄は用が済んだら殺されるだけだからと、地球に連れて来て一般社会で暮らせるように訓練させる機関があるんです。そこに所属する男性が主人公で、このOVAでは、白亜ちゃんと紅玉ちゃんをメインに話が進んでいきます。
――完成前の映像を見させていただいたんですけど、すごく面白かったです。
佐藤:本当ですか! 良かったぁ。
――内容はわかりますし、80年代90年代のOVAが流行った時期の雰囲気があって、ちょっと懐かしい感じがしました。
佐藤:それは良かったです。私たちがアフレコをやったのはちょっと前だったんですけど、この人はどんな英雄だったんだろうとか、何をやってる機関なんだろうっていうのが、ていねいに描写されているわけではないので、見る側がどこまで読み取ってくれるか、感じ取ってくれるかにかかっている部分もあるかなって思ってたんです。
――設定がどうなっているのかというより、テーマはそこじゃないかなと。
佐藤:私も最初、資料があまり手元に無い状態から、さてどう詞を書こうかなってところから始まったんですけど、作品を通して感じたのは、自分の芯を大事にすることが大切なんだということで。英雄っていうのは肩書で、その肩書が通用しなくなって、本来の力も発揮できない新天地でどうしたらいいんだってなったときに、やっぱり自分は自分でしかないから、置かれた場所で、またクリスタルみたいな存在になればいい!っていうことなのかなって。
人間の本質が、新天地に行くことで問われるというか、そこでの葛藤みたいなものを歌詞にすることで、作品ともリンクするかなと思いました。作品はちょっとファンタジーな感じだったので、使っているフレーズもファンタジーな感じではあるんですけど、実際に、高校、大学、社会人、転職と、環境が変わることってあるので、その中でも自分という本質は変わらないんだよっていう、応援ソングみたいな感じにも捉えてもらえたら嬉しいです。
――それにしても、3曲すべて違うアプローチでの作詞になりましたね。でも、「crystal song」は、ライブでも盛り上がりそうです。
佐藤:そうですね! どんな感じになるんだろうなって思います。ライブをすると、歌うたびに曲が育っていくなって感じるんです。CDやレコーディングで歌ったときとはまた違っていて、空間が作り出す雰囲気に乗っかってライブをしているので、静かだった曲が、みんなの力で壮大になったりとか、みんなで歌ったり、歌うたびに、気持ちがヒートアップしていく曲があったりする。ライブを重ねることで見えてくることがあるので、もしライブをやったら今回のCDとも、いい意味で変わるんじゃないかなって思います。
――最後に、ジャケットがすごくいいですね。
佐藤:ありがとうございます! 今回はじめてのチームでやらせていただいたんですけど、曲や作品のイメージを伝えたときに、いろいろなアイディアを出してくれました。作品の世界観を作るのがとても上手で、私もこの世界観がとっても大好きです。「雨の菫青石」の書体ひとつとっても、これが絶対いい!って思ったので、いいジャケットになったと思います。スタイリングなど、たくさんのプロフェッシャルの方に助けていただいて、『NOeSIS』の世界観を表現できたので、すごく満足のいくビジュアルになりました。
[インタビュー・文・撮影/塚越淳一]
佐藤聡美3rdシングル 『雨の菫青石(あめのアイオライト)』
発売日:10月12日(水)
価格: 1,400円+税
【収録内容】
<CD>
M1.雨の菫青石(あめのアイオライト)/千夜ルート曲
(ゲームアプリ「NOeSIS 羽化」フルリメイク版エンディング主題歌)
作詞:佐藤聡美
作曲:airbag(Kugai Toshiki + Nakaza Tomoya)
編曲:SiN
M2.恋は劇薬、口に甘し。/一夜ルート曲
(ゲームアプリ「NOeSIS 羽化」フルリメイク版エンディング主題歌)
作詞:佐藤聡美
作曲:James Panda Jr.
編曲:SiN
M3.タイトル未定
M4.雨の菫青石(あめのアイオライト) off vocal ver.
M5.恋は劇薬、口に甘し。 off vocal ver.
M6.M3 off vocal ver.
★初回製造分のみcutlass/たぬきまくら描き下ろしイラスト巻帯仕様
■アプリインフォメーション
ゲームアプリ『NOeSIS 羽化』
原作 / ClassicChocolat
シナリオ /cutlass
キャラクターデザイン /cutlass、たぬきまくら
ゲーム内原画 /SHUZILOW、吉田 潤
BGM /佐々木久夫
100万DLを記録したサスペンスAVG『NOeSIS~嘘を吐いた記憶の物語~』の続編『NOeSIS羽化』9月発売予定! 『NOeSIS』は2011~12年にかけて同人サークル「クラシックショコラ」のシナリオライター・cutlass氏によってリリースされたフリーAVG。累計100万ダウンロードを超えるヒットを記録し、インディーズでありながら強烈な作品力で小説化・コミカライズ化・ドラマCD化など多様な展開を呼び起こした人気ゲーム。フルリメイク版の第一弾は今年6月に発売され、各ストアで高い評価を得ている。
>>フルリメイク版『NOeSIS』オフィシャルサイト
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