『サクラ大戦』は不滅です! 聖地・浅草で開催された『横山智佐のサクラ大戦 20歳の誕生日会』で花組勢揃い!
1996年9月27日に『サクラ大戦』が世に出てから、ちょうど20年。その記念すべき年に、往年の歌謡ショウや武道館ライブのような大規模イベントの開催は叶いませんでしたが、「20周年をみんなで祝おう」と旗を振る横山智佐さんの心意気に応じ、聖地・浅草花やしきに「帝国歌劇団・花組」が集結しました。
9月23日から25日まで、全6公演行われた『20歳の誕生日会』に出演したのは、帝国歌劇団から横山智佐さん、富沢美智恵さん、高乃麗さん、西原久美子さん、渕崎ゆり子さん、伊倉一恵さん、折笠愛さん、陶山章央さん。そして歌謡ショウでおなじみのダンディ団から、園岡新太郎さん、西村陽一さん、ベロ武田さんという顔ぶれ。
しかも最終日には「歌謡ショウの千秋楽は何が起こるかわからない」を恒例としてきた『サクラ大戦』らしく、ファン大歓喜のサプライズ。なんと観客として来ていたメンバーをステージに引っ張り上げ、ほぼ勢揃いした花組に薔薇組まで加わっての「ゲキテイ」を披露! まさしく往年の歌謡ショウのような高揚感をもって20周年という節目を祝うことができたのも、『サクラ大戦』を愛し続けるキャストとファンの熱量あってのこと。
本稿では、大熱狂で終わったイベントレポートをお届けします!
浅草寺の西側にある、日本最古の遊園地・浅草花やしき。そこは『サクラ大戦』作中にも、帝国華撃団の武装飛行船「翔鯨丸」を地下に格納する花やしき支部があるという設定で登場します。その花やしき内にある園内多目的ホール「花やしき座」での公演となれば、作中でも有り得たかもしれない「if公演」をしているようなもので、サクラのイベント史上でも初の試み!!
ただ、名物のローラーコースターがホール直上を走っている関係で、駆動音や喧噪が響いてくるという場所柄的にやむを得ない事情も。そこで横山さんが考えたのが、観客参加型の誕生日会というパーティー形式のイベントでした。
そのため衣装もキャラクターコスプレではなく、横山さんはさくら色のワンピース、西原さんは黄色い靴を履くなど、キャラクターのイメージカラーを取り入れた装い。また「キャスト自身として自由に語れる」点も、キャラクターになりきることを徹底してきた歌謡ショウやライブではできなかったことだけに、貴重な機会となりました。
公演初日の9月23日(金)は、当初は夜の部のみでしたが、チケットが争奪戦となったために追加公演として昼の部を決定。平日の公演ながら、昼夜ともに客席は満員で、これがサクラファンにとっていかに見逃せないイベントであるかを伺わせます。
イベントは横山さんが司会進行、花組メンバーが来賓という形で、まずは来賓からの挨拶として初日ゲストの西原久美子さん、伊倉一恵さんがコメントを、折笠愛さんが乾杯の音頭を取りました。
西原さんは「ビックリですね、20年。お互い歳を取るわけですね」とサクラワールドの住人たちと親睦を深めた後、「アイリスね、すっごくうれしい! みんな今日は来てくれてありがとー!」と健在のアイリスボイスを披露。
伊倉さんは「私、この役についた時にもうそこそこ大人でしたから、そこからさらに順調に大人になっていますので、髪もこんな真っ白になってしまいました」と、レニ風の銀髪ウィッグで笑いを取りました。
今回は乾杯用に、イベントロゴが入ったペットボトルの水が観客全員に配られたが、これをコレクターズアイテムとして蓋を開けずに取っておくか、潔く開けて飲むかでキャスト陣も二分。折笠さんは「飲む方はどうぞ、これをお酒だと思ってお飲みください。わたくしはちょっと物足りないので今は開けませんが、乾杯させていただきたいと思います」と、酒豪らしいコメント付きで音頭を取りました。
最初のコーナーは、出演者が選んだ歌謡ショウの映像をみんなで鑑賞する「サクラ大戦想い出シーン」。後年の歌謡ショウ名物となる、ワイヤーを着けて空を飛ぶ「宙乗り」に、花組の先陣を切ってアイリス役で挑戦した西原さんは、カンナの掌の上に着地する高難易度のシーンや、回転を防ぐために足でバランスを取っていた苦労話などを映像に合わせて解説。
また当時、「幸せを運ぶ金粉」として金色の紙吹雪を飛びながら散布しましたが、その紙吹雪を今も持っている人がいるかを客席に問うと、しっかりと手が挙がり、サクラファンの中でも歴戦の強者がこの場に集まっていることがわかります。
伊倉さんはスーパー歌謡ショウ「新宝島」から、隊形移動で魅せる群舞も見事だった「トランプの裏表」を一番の想い出に挙げました。さらにスーパー歌謡ショウ「新西遊記」から、レニでは有り得ない壊れキャラぶりを見せた、金角銀角によるハードロック「亡者の歌」をリクエスト。映像が流れると、折笠さんもこのシーンの伊倉さんと渕崎ゆり子さんがすごくノリノリで楽しそうだったと当時の様子を語りました。
折笠さんは、初めて劇中劇でヒロイン役を務めたスーパー歌謡ショウ「新編 八犬伝」を想い出の公演としてピックアップ。伏姫の冠を「蟹」と呼んでいたことや、伏姫が死んで奈落から退場するシーンでは、相手役の陶山章央さんが奈落の位置にしっかり入ったかを、横で死んでいる犬の八房がチェックしていた等、感動シーンの裏側のドタバタぶりを語りました。
そして、かえでといえばやはりこれ。歌謡ショウ「アラビアのバラ」より、笑撃的だったバナナの着ぐるみ姿についても言及。「舞台に出ちゃえば思いっきりやれるんですけど、袖でスタンバっている時がすごく恥ずかしいの!」と当時の心境を語り、「これをやってから、差し入れにバナナが多くなりました」と裏話も明かしました。
続いての余興は「20周年クイズ」。横山さんが過去の映像や資料、設定本などを読み込んで考えた3択問題に、観客と他の出演者が挙手で答え、正解したら自己満足するというものですが、予想以上に問題が難しい。というのも、横山さんが用意した正解以外の2択が絶妙で、中には正解よりも正解らしいものまであります。当時のキャストコメントにまつわる問題などでは、話した本人が忘れていることも多々あり、途中からはクイズもさることながら、「サクラトリビア」的な楽しみも生まれていました。
後半はお待ちかねの歌のコーナーで、想い出深いキャラソンやデュエットソングを披露。客席を廻ってハイタッチしながら歌ったり、Choo Choo TRAINダンスを取り入れたりと、歌謡ショウなどではなかなかできなかった演出で楽しませました。
2日目の昼の部は「すみれ様無双!」
公演2日目の昼の部には、渕崎ゆり子さん、富沢美智恵さん、陶山章央さんが登場。冒頭の挨拶では、陶山さんが「こんなドレスアップしてくる会だったとは」と、周囲の華やかさに対して普段着のような格好で来てしまったことを後悔すれば、続く富沢さんが神崎すみれ口調で「わたくし本日、普段着で参りましたわ」とネタを被せてきて笑いを取ります。こうしたキャラを活かしてのやりとりが自然に出るのも、舞台を重ねてキャラとキャストを一体化させる『サクラ大戦』の特色です。
歌謡ショウや武道館ライブの映像を観ながら想い出話に花を咲かせるコーナーでは、サクラ史上最大のアクシデントとして有名な「武道館ライブで陶山さんが奈落に落ちた話」を、サクライベント初参加のお客様もいるということで、改めて陶山さんに当時の状況説明を求めます。またこの一件のおかげで隠れがちですが、横山さんが珍しく歌詞を忘れて「ラララ~♪」と歌ってしまい、横にいた富沢さんも助けてあげようにも咄嗟に歌詞が出てこないため、一緒に目が点になっていたと秘話を明かしました。
新春歌謡ショウでの、みんなで「カモナ浅草!」を歌った映像が流れた際には、富沢さんが「私(すみれ)はいつも問題を起こすタイプだったので、みなさんと一緒に歌う場面にいないんです。だからこういうシーンがすごく羨ましくて、『仲間に入りた~い!』と思いながら、いつも舞台の袖で観ていたんです」と、キャラクターならではの悩みがあったことを初めて語るシーンも。
さらに今だから言える話として、第2回歌謡ショウでの「絶対運命のタンゴ」の間奏のダンスは、富沢さん自身がダンサー隊と一緒に振付をしていたことを告白。当時流行っていたヴォーグを取り入れたダンスについて感想を求められた陶山さんは、「キレッキレですね。この当時は何がいいのかよくわかっていなかったけど、今ならキレの良さがよくわかります」とコメント。陶山さん自身も鍛えられてしっかり成長していたことを示しました。
秘話はまだまだ続きます。第1回新春歌謡ショウの「キネマ行進曲」では、富沢さんと田中真弓さんが立ち位置を途中で入れ替えましたが、ふたりの身長がかなり違うのにマイクスタンドの高さを変えられないため、マイクの角度を振りの中でさりげなく変えながら歌っていたことを富沢さんが初告白。映像で初めてふたりの早業を確認したメンバーらも驚愕していました。
「20周年クイズ」では様々な問題が出されましたが、キャスト陣の正解率が一番高かったのが誕生日問題。というのも舞台の稽古をやっていると、キャストやキャラクターの誕生日ごとにスタッフがバースデーケーキを用意したり、ファンからの差し入れがあったため、自然と憶えてしまったとのこと。
満を持してマリア登場! クールもバラエティーも全開!!
公演2日目の夜の部は、富沢美智恵さんと交代して高乃麗さんが出演。花組男役トップの本公演初登場と、土曜の夜の公演ということで、ステージにもアダルトな雰囲気が漂います。
最終日の3日目は、ダンディ団の園岡新太郎さん、西村陽一さん、ベロ武田さんが加わることもあって、全体的に無礼講気味に。陶山さんが会場中を練り歩きながら歌う「甲板フラフラ」は本公演の名物となっていましたが、途中でベロ武田さんがモップをかけながらステージに乱入。陶山さんがようやく追い返すと、今度は園岡さんがモップをかけ出すというように、出演者たちの自由奔放さが目立ちました。
また「20周年クイズ」ではキャラクターにまつわる問題の際に、関係者席で観ていた「身長2メートルの大女」のキャストをステージに呼ぶサプライズで会場は大喜び! さらにラストの「檄!帝国華撃団」では、関係者席にいたほかのキャストも全員ステージに上げ、花組がほぼ揃った上に薔薇組まで加わった状態に! ここでも「身長2メートル」さんはあまりにも自由で、ステージに上がるなりスマホで出演者の写真を撮り始めた挙げ句、スタッフにスマホを渡して全員での記念撮影までする始末。
なお、人数が多過ぎてステージ上に全員は上がれないため、飛び入り組はステージの前で「檄!帝国華撃団」を歌うことになりましたが、位置的には最前列になるため、誰かの振りを見ながら踊ることができない「身長2メートル」さんは大パニック。手を挙げる方向がことごとく逆だったり、ひとりだけまったく違う振りをしてしまいます。それを真後ろから見るはめになった横山さんは大爆笑。みんなで笑いながら歌う「ゲキテイ」というのもサクラ史上初めてで、これ以上なく楽しい20周年記念イベントの締めくくりとなりました。