時を経てオトナになったコドモたちにMachicoを知ってほしい、心の拠り所にしてほしい――Machicoさんロングインタビュー
オトナでもコドモでもない、12歳のピュアな悩みや初恋を描いた「ちゃお」にて連載中の少女漫画『12歳。』。2016年4月~6月には、TVアニメ『12歳。~ちっちゃなムネのトキメキ~』が放送され、多くの反響を呼びましたが、同年10月より第2期『12歳。~ちっちゃなムネのトキメキ~ セカンドシーズン(以下、12歳。)』が放送スタート! 新キャラクターも登場し、12歳ならではのキュンキュンなエピソードが展開します。
そんな本作の新EDテーマ「勇気のつばさ」を担当するのは、TVアニメ『この素晴らしい世界に祝福を!』のOPテーマ「fantastic dreamer」で一躍脚光を浴びたMachicoさん! 本稿では、そんな『12歳。』の世界観が描かれた新EDテーマについてMachicoさんにインタビューを実施。楽曲やMVについてはもちろん、デビュー5周年へ向けての意気込みや12月に行われるライブツアーなど、たっぷりとお話を伺いました!
――最初に「勇気のつばさ」を聴いたときの印象を教えてください。
Machicoさん(以下、Machico):懐かしい、という気持ちが第一印象にありました。最初はバラードと伺っていたんですけど、実際に聴いてみたら音楽的な意味で懐かしさだったり、綺麗なメロディラインで。その中に心が温まるような印象も受けて、今まで歌ってきた中で新しくチャレンジするような楽曲でした。父の影響で歌謡曲をよく聴いていたので、そんな雰囲気の安心感や懐かしさを感じました。
――では歌詞を読んでみていかがでしたか?
Machico:真っ直ぐで包み隠さない気持ちと言いますか、全てのワードが素直だったので、言葉のままの意味という印象を感じました。なのでレコーディングでも、その真っ直ぐさを自分なりに出していけたらなと思いました。
――その真っ直ぐな純粋さという点においては『12歳。』とリンクする部分がありますよね。
Machico:今回は『12歳。』のEDテーマということで、恋のキュンキュンする気持ちも歌詞に詰まっているんですけど、友情のストーリーも一緒に入っているので、作品に合った真っ直ぐさ、素直さを感じられる曲だと思いました。
――レコーディングでこだわった点や工夫された点、収録時のエピソードなどお聞かせください。
Machico:この曲を歌う心持ちとして“12歳の子から見てちょっとお姉さん”がテーマだったんですよね。だから大人っぽくなりすぎても違いますし、レコーディングでも「背伸びしたら手の届くお姉さんをイメージして歌ってみてください」と言われたので、その大人っぽさの加減が難しかったです。しかもレコーディングには、作詞の柚木美祐先生、作曲の池毅先生、編曲の岩崎元是先生が揃った状態で収録したんです!
――とても豪華なレコーディングだったんですね。
Machico:そうなんです! 作詞・作曲・編曲の方が揃って立ち合ってくださることが珍しいとお聞きしていたので、ある意味緊張していました。そんな緊張のもと何回か歌って「もう少し真っ直ぐ」という感じにディレクションしていただき数回通して歌ったんですけど、最終的にゼロテイク(本番前のテストテイク)がベースに採用されたんです。だから、その後に何度かテイクを録らせていただきましたが基本的に使わず、池先生が「(ゼロテイクが)大人っぽさも伝わるし、説得力が一番あるのがゼロテイクだ!」と仰ってくださり、私の中でも初めての経験でした。テイクを追うごとに良くなるんだと個人的に思ってしまうので「そうじゃないんだ!」と、このレコーディングを通して初めて知ることができました。また色々な作品を手掛けているからこそ、本当だったらゼロテイクは候補にも上がらないテイクなのに、それを良いと仰る経験の差をすごく感じて。私の歌手活動の上でも、他のアーティストさんがあまり体験することのない貴重な経験になったレコーディングでした。
――たしかに、最初にレコーディングしたテイクから作り上げていくイメージはあります。
Machico:最初に自分が作り上げて臨んだレコーディングの気持ちの形が正解だったのだと自信になりましたし、楽しく緊張せず素直に曲と向き合ってレコーディングすることができました。
――となるとレコーディングはスムーズに終えられたのでしょうか?
Machico:レコーディング自体は3時間くらいです。この曲はワンコーラスなどブロックで分けずに、一曲丸々通して収録したんです。曲の持つストーリー性や感情を途切れさせたくなかったので、一曲通した録りを行ったため時間はそこまでかからなかったと思います。やっぱりこの曲は気持ちやストーリー性の繋がりを大切にしたかったので、一曲通した録りでお願いしますと頼み込んでやらせていただきました。
――Machicoさんからの提案だったんですね。
Machico:はい。普段はブロックに分けて収録する形が多いのですが、最初に「どう録れば歌いやすい?」と聞いていただいたので、私の方から「できれば一曲丸々お願いします」とお願いしました。普段もあまり小刻みに分けたくはないので、AメロからBメロにかけて一気に収録するときもありますし、ワンコーラスまるっと歌うこともありますが、この曲は一曲通した録りです!
――ではMachicoさんイチオシの聴きどころを教えてください。
Machico:歌詞もメロディも含めて“画がすごく想像できる”というのが一番のポイントです。綺麗な風景が歌と一緒に想像できるところがいいなと思います。歌詞のフレーズとしては「上手く言えない だけどいつもいつもあふれてる 沢山のありがとう」という部分が好きです。
――感謝の気持ちは直接伝えにくいですよね。
Machico:たしかに日常では中々言えないなと思います。私もアーティスト活動をさせていただいて、周りの方々に対する感謝の気持ちが芽生えたので。日常の中で伝えるタイミングは中々ありませんけど、いつも胸に秘めているものなので自分にも当てはまって好きなフレーズです。
――「勇気のつばさ」には多くの温かい単語が散りばめられていますが、特にこの楽曲を聴いてほしい人を教えてください。
Machico:年齢問わず聴いていただける曲になっていると思うので、老若男女の方に聞いていただきたいんですけど、この前ファンの方にいただいた言葉があるんです。主に『12歳。』のアニメを見てくださる小学生は、まだ“学生”というカテゴリーに入らないような方々だと思います。
そんな頃に見ていたアニメの曲って“その作品の曲”というイメージが強かったんです。「この曲を歌っているのは誰なんだろう」という興味も示さずにずっと耳に残る曲やアニメってあると思うんです。なので『12歳。』のアニメを見ている子達が、大人になって「そういえば昔『12歳。』のアニメを見ていたなぁ、エンディング好きだったけど誰なんだろう」と時を経てMachicoを知ってくれる、思い出に残る曲になったら素敵ですよね、とファンの方に言っていただいて本当にその通りだなと思いました。だから、今大人になりたくて背伸びをしている一人の人間として、もっともっと成長していく子供たちにいっぱい聴いていただき、心の拠り所や安心感を感じてほしいです。
――たしかに小さい頃に親しんだアニソンって曲名や歌手名はぼんやりしてますけど、いつでも口ずさめますもんね。
Machico:大人になって歌手の方を調べると「この方だったんだ!」と思うことが本当にあるんですよ(笑)。私も『12歳。』を見てくれている子たちに「これってMachicoちゃんだったんだ!」と思ってもらえたら、すごく嬉しいなと思います。
――「勇気のつばさ」というタイトルにちなんで、アーティストとしてデビューする前に勇気を貰った方はどなたでしょう?
Machico:私がこの人生で誇れるのは、周りの人達に恵まれたことなんです(笑)。今までたくさん失敗や間違った選択をしてきたんですけど、「その答えはダメなんだよ」と言ってくれる人がずっと近くに居てくださったんです。地元の友達や両親、先生など、常に愛のあるアドバイスをしてくださる方がいたことが幸せだと思います。
また私が改めてこの業界を目指したいと思ったのは専門学校に入ってからで、その専門学校も私が活動してる歌や声優とは関係のない医療事務を学ぶ場所だったんです。そこで自分の将来を考えたときに、夢を諦めてもいいのかなと思ったことがあるんですけど、そのときに両親が背中を押してくれました。どちらかと言えばお母さんは現実派で「夢を追いかけるのはいいけれど、就職活動も両立してね」というアドバイスをくれたんですけど、お父さんは浮世離れしたタイプで「Machicoがやりたいことなら、どうなっても責任はとるけん、後悔せんようにいっぱい挑戦しな」と言ってくれて。常に2つの自分が安心できるアドバイスを両親からもらっていたので、そういう面では両親からエールをもらっていたと思います。
――感謝を伝えたい相手は……と質問しようと思っていましたが、流れから察するにご両親になるわけですね。
Machico:そうですね! 私は本当に家族が好きで(笑)。自分が高校生のときはまだ思っていなかったんですけど、高3で車の免許を取れるようになったりと、少しずつ大人としてできることが増えてきて、おじいちゃんおばあちゃんに対する対応も変わりました。やっぱり高校のときは友達と遊ぶ機会が多かったんですけど、卒業してからは家族との時間を大切にすることが多くなりました。
特に広島に居た頃は「今できることをやってあげたい」と思っていましたけど、専門学校の頃に父方の祖父母は既に亡くなっていたんですね。そのときに「自分は孫としておじいちゃんおばあちゃん孝行できていたのかなぁ」と自分の中でのやり残し感があったんです。その別れは、できることが増えた時期に経験したので、今も元気でいてくれる母方のおじいちゃんおばあちゃんには「恩返しできるときには少しでも孝行しよう」と考えるようになりました。なので高校を卒業してからは、帰省した年末年始はおじいちゃんおばあちゃんの家に家族で泊まって、孝行しようと思うようになりました。だから家族、特におじいちゃんおばあちゃんには常に感謝しています。
――デビュー後のMachicoさんにとって、勇気をもらったり感謝を伝えたい相手はいらっしゃいますか?
Machico:同期の子たちです。私が所属するホリプロで声優アーティストとして活動しているのは私を含めて5人いるんですけど、みんな同じオーディションのファイナルから一緒なんです。全員が良いライバルでもありますし、私の心の支えでもあります。会ったら仕事に対する悩みも包み隠さず相談できますし、年齢の差も関係なく皆しっかりしていて。私が最年長で一番年下の子たちと6つ違うんですけど、皆が自身のこれからのビジョンをしっかり持っているんです。その同期は今でも活躍していますし、可能性のある仲間として刺激や勇気をもらっているので、私の中では同期が心の支えになっています。
――お互いに切磋琢磨し合う関係性なんですね。
Machico:しかも皆のことをスタート以前から知っているんです! オーディションの合宿時代からの皆を知っているので、そこで一緒だった同期の名前をアニメで見かけると嬉しいですし、自分も頑張ろうと思うんです。プラスに働くことばかりなので、私としても大切な存在です。
――続いてカップリングの「キミコンパス」についてお聞きしたいのですが、これはどういった楽曲になっているのでしょうか。
Machico:テーマとしては恋なんですけど、些細なことで悩んじゃう女の子の心情が描かれている曲だと思います。フレーズも話しかけているような感じなんです。しかも、相手がいる上で話しかけているのではなく、自分の心に「なんでこんなことができなかったんだろう」と問いかけている楽曲で第一印象は可愛いなと思いました。メロディもシンガーソングライターの方が歌っていそうな曲になっています。ディレクションの際に「自分が伝えたいワードになったら演奏に力が入りそうになる感じで歌ってください」と指示をいただいたので、そういった部分も意識しながら歌いました。
――初恋の色々な感情が歌の中に詰まっていて、こちらも『12歳。』らしい楽曲だと感じました。
Machico:もし学校生活だったら毎日好きな子に会えるわけじゃないですか。その中でいっぱいチャンスがあるのに恥ずかしがったり、「もし相手に変に思われたらどうしよう」という自分との戦いの果てに、ベッドの上で「なんで自分はこんなことになるんだ!」と反省してたり、恋の不安な雰囲気を楽しんでいる感じが伝わるので、歌詞を読んでいても恋が実ればいいなと思うばかりです。
――フレーズごとの歌声に色々な感情が見え隠れしていましたが、レコーディングにあたって工夫した点を教えてください。
Machico:この曲は台詞っぽく聴こえたらいいなと思いました。「ええと、どうしよう」とか、本当に迷っている気持ちで歌ったりとか、歌詞なんですけど台詞として自分の中で解釈して、感情がメロディを上回るように工夫しました。またリズムも大切な楽曲だったので感情とリズムを自分の中でまとめて、キャッチーに聴こえるように意識しました。
――歌詞の中でも「反省会しなくちゃね…」や「ねぇ、何かわかるかなぁ?」など問いかけながら悩んでいる印象でした。
レコーディングでは目線を変えながら歌ったんです。例えば2番の「見上げて気付いた」も少し上を向きながら歌ったら見上げているように聴こえるかなとか、目線をもって別のアプローチでマイクに対して強弱をつけられるようになればいいなと考えていました。
――こちらもMachicoさんイチオシの聴きどころを教えてください。
Machico:この楽曲はサビの最後が大好きなんです! 「わかるかなぁ?」や「だよね?」とか言葉で終わらずにラスト三文字の感情で終わっている部分に、女の子の可愛らしさが詰まっていると思います。ここのフレーズは相手に呼びかけているワードだから自分の中で話し合いをしているはずのに、好意を持っている相手へ「そうなんだよね?」と聞いている気がして。恋している女の子の「そうであってほしいけど……そうなのかなぁ?」という可愛らしさが詰まっているのでサビのラストが好きです。
これはイメージビデオ!? 「勇気のつばさ」MVの収録秘話が明らかに
――ここからは「勇気のつばさ」のMVについてお聞きしたいのですが、ロケをされたのは北海道の小樽市ですよね?
Machico:小樽です! どうして小樽かと言いますと、リリース日の11月9日は肌寒い時期になるので、どこへ行けば撮影をする9月に秋っぽい風景が撮れるのか考えたところ「北に行った方がいいんじゃないか」という話になったんです。そこで小樽運河は景色もいいですし、お姉さんっぽい要素も詰まっていた場所だったので「小樽に行こう!」となり、ロケ地は小樽に決まりました。
――自然体なMachicoさんとお出かけを楽しめるような内容になっていましたが、どういったテーマで収録されたのでしょう?
Machico:今回のテーマとしてはイメージビデオっぽく、より一層「勇気のつばさ」のナチュラルな表情を出せるようにしよう、という流れで収録を進めました。なのでリップシーン(歌に合わせてMV内で唇を動かすシーン)もなかったですし、常に何かしているところをカメラで撮っていただきました。それを繋ぎ合わせる作りだったので、テーマ的には“ナチュラル”という感じです。ありのまま私が映るような感じにしていただきました。
――映像自体も少し色褪せた雰囲気でノスタルジックな仕上がりになっていました。
Machico:今、改めて見返したら「こんな表情していたんだ!」と驚きました(笑)。カメラマンの方も元々知っている方で、リラックスしながら撮影に臨めました。収録中も緊張することなく、カメラマンさんとお喋りしながらだったり、ポーズを決めずに動いたりとやりたいことをできました。海辺のシーンでは砂浜に文字を書きたくなったら衝動のまま書いたり、石を投げたりとか自分が提案したものを受け入れてもらったので、私がただ小樽を楽しんでいる姿がMVになっていたのでビックリしました(笑)。
逆に普段はカメラを前にすると自分を作っちゃう面があるので、そういった話ではファンの方々にいつもの私を見ていただけるMVになったと思います。そして今回は運河のほとりや街中、オルゴール堂というお店に行ってオルゴールを選んだりと色々なシーンを撮っていただいたんです。オルゴール堂では、MVで熊のぬいぐるみを選ぶシーンがあるんですけど「本当にあげるから本気で選んで」と言われたんです。なので、数あるオルゴール堂の全種類のぬいぐるみの中から私が本気で欲しい物を選んだので、あの笑顔は本当に私の満面の笑みです(笑)。
――(笑)。MVでの自然な表情はそういった部分から出ているわけですね。
Machico:そうなんです、本当にそれが欲しいと思っていたので! ちなみに、いただいたぬいぐるみには「ティニー」という名前をつけました(笑)。他にもガラス工芸を初めて体験しました。なのでMVにはナチュラルな私のワクワクしている姿がいっぱい映っているんですけど、その無邪気さも『12歳。』とリンクしていると思います。そういった意味でも、作品に合ったMVを作っていただけたと思います。……楽しかった(笑)。
――ちなみに撮影の前後は小樽以外にも行かれたのでしょうか?
Machico:ずっと小樽にいました! 常小樽でしたよ(笑)。北海道自体には今回のロケで2回目だったんですけど、ガラス細工やオルゴール、レトロな街並み等に心を奪われたので、プライベートでも行きたいなと思いました。美味しいラーメンも食べれましたし!
――北海道ならではですよね。
Machico:味噌ラーメンを食べたんですけど、とてつもなく美味しかったです! もういろいろなラーメンを食べ歩きたいんですよね(笑)。嬉しいことに、このお仕事を始めてから色々な場所に行かせていただけるようになったので、その土地で有名なラーメンを、時間が許す限り食べに行きたいです。誰が何と言おうと、皆が海鮮を食べたいと言おうが私はラーメンが食べたいと主張するので、よくラーメンタイムを設けていただいています(笑)。
――「勇気のつばさ」は『12歳。』のEDテーマということで、Machicoさんはどんな12歳でしたか?
Machico:作品だと小学6年生となっていますが私の誕生日が3月25日の早生まれなので、小学生で12歳を経験していないんです。そして作品の中ではプロフィール帳がキーワードになっているんですけど、私が12歳の頃(中学1年生時)もプロフィール帳を配っていた記憶があります(笑)。中学校は別の小学校の子たちも入ってくるので、皆が思い思いのプロフィール帳を持ち寄ってクラスの子や別のクラスの子、男女問わず先輩に渡していました。
また、小学校で先輩後輩感はあまりないけど中学生になった途端に上下関係が生まれるので、先輩とコミュニケーションを取りたくてプロフィール帳をいっぱい渡していました。なので作品を見ていて懐かしさを感じますし、今とても欲しいなって思っています(笑)。声優の子たちに「プロフィール帳書いて!」って言いたいです。今、配ったら皆が懐かしめると思いますし、見方も違うんだろうなと思います! あと作中の“好きな人は?”という項目を素直に書いちゃう場面で懐かしい気持ちが一気によみがえってきました。
デビュー5周年直前! これまでのMachicoさんと、これからのMachicoさん
――半年後の2017年にはデビュー5周年を迎えるわけですが、これまでを振り返っていかがでしょう?
Machico:もう5周年ですか!? 第1段階の節目を迎えるんですね! 私はPCゲーム『すぴぱら』の主題歌「Magical Happy Show !」でデビューさせていただいたんですけど、最初の一年間は広島から東京に通っていたんです。当時はデビューし初めで稼動が多くなかったので、月に一、二週間東京で活動していましたが、二年目になって声優として『アイドルマスター ミリオンライブ!』の伊吹翼ちゃんを担当させていただくようになってから、色々と変わった気がします。デビューのきっかけとなったオーディション自体が、声優アーティストのオーディションだったんですけど、最初に漠然と私がなりたいと思ったきっかけは歌手なんです。そして声優に改めて興味を持ったのが高校生のときでした。
もちろん、自分が興味を持っていたことを仕事にできた喜びはデビュー当時からありました。でも改めて自分が初めて担当するキャラクターと出会ったことをきっかけに「もっと私が頑張ってキャラクターを生き生きした子にさせなきゃ」という責任感が芽生えてきたんです。まだまだ葛藤はありますが、最初の3年間は何をどう表現すれば皆さんに伝わるのかを延々と考えた時期ではあります。最初は活動も多くはなかったので上京前から事務所のレッスンスタジオを貸していただいて、とにかく歌を独学でスキルアップすることに費やした時期でしたし、そこで考える癖もつきました。すぐに分からないことを聞きたいけど、当時はすぐに聞くより「今は自分ができることをやって自分の力にしなきゃ」「ステージの上でどうやったら自然にできるか」など、人に聞く前に自分で答えを出すことをずっとやってきたんです。その3年の期間があったからこそ、キャラクターとしてステージに立たせていただいたときに「パフォーマンスをどうしたい?」と聞かれても自分の意見を言えるようになりました。少しずつですけど段階を踏んで来れた5年間だったと思います。
また歌を歌う面において、抑揚がないことを指摘されていて課題になっていました。ですが声優として、キャラクターとして曲を歌うことはソロ名義と全然違うアプローチや姿勢になるので、そこでキャラクターを通して歌を学べた部分があります。キャラクターソングを歌っていなかったら、今回の「キミコンパス」で台詞っぽく歌うことができなかったと思うんです。デビュー当時は音を聴いて正確に合わせることが正解だと思っていたんですけど、そうじゃないことに気がつけた5年間でもあると思います。ゆっくり歩かせていただいたから、その分自分自身や周りを見ることができたので、今の自分を作らせてもらえた4年半でもあります。
――ちなみに2012年のデビュー時、アニメイトタイムズ(旧アニメイトTV)でインタビューさせていただいた記事があるんです。
▼過去インタビュー
>>記事5月23日に1stシングルをリリースする新人アーティストMachicoさんに突撃インタビュー!
Machico:懐かしい! ビジュアルも結構変わったと思います! (憧れのアーティストに挙げていた)事務所の先輩のMay'nさんのライブにはお邪魔することがあるんですけど、アーティストとしての背中を近くで見させていただき、当時より尊敬の気持ちが大きくなっています! 機会があってMay'nさんと鷲崎健さんの番組へゲスト出演した際に、May'nさんからはどんな気持ちで迎え入れれば、ゲストさんが気楽に喋れるかを見せていただきましたし、トーク面では鷲崎さんにその大きな背中を見させていただきました。また岩田光央さんとは「メゾン・ド・イーコエ~もしも声優がいっぱい住んでいるマンションがあったら~」というラジオをやらせていただいているんですけど、岩田さんは声優としても大先輩ですし、人間としての厚みも非常に尊敬しています。そんな一流の背中を持った方々と5年間、色々な現場でご一緒させていただけて、こんなに幸せなことはないなと思います。また巡り合わせていただける環境への感謝も、この5年で強く実感しています。
――デビュー当初からご自身で成長できたと実感できる部分はありますか?
Machico:初歩の初歩なんですけど、歌っている時に動くことが恥ずかしくなくなったことです!
――最初は動くことに抵抗があったと?
Machico:高校のときに軽音楽部に所属していて文化祭で年に一回だけ人前で歌っていたんですけど、プライベートで友達とバンド組んでライブをやっていたわけではないので人前で歌う機会は少なかったんです。そのため最初は、動くことは恥ずかしいことだと思っていましたが、この業界に入ってから色々なプロの方のステージを見させていただき、“恥ずかしがっていることが、どれだけ恥ずかしいか”と自分の中で痛感しました。なので、それからは表情でもキリッとできるようにしたいとか、「眩しいくらいに笑顔を見せるぜ!」とか自然に歌詞やメロディで動いてしまう自分の反応を少しでも大切に歌おうと思いました。だから身体全体で歌えるようになってきたのは、自分の中での成長かなと思います。
――なるほど。それこそMachicoさんが尊敬するMay'nさんのパフォーマンスにはグルーヴ感がありますよね。
Machico:説得力があります! だから私も歌っていて説得力のあるパフォーマンスができるようになりたいなと思っています。
また声優としても、最初は首の上から演技していたんですけど「それじゃいけない!」と思ったんです。オーディションやアフレコの前にはボイスレコーダーで自分の声を録音して抑揚を聞いたりするんですけど、音に乗らない程度に身体を動かした方がキャラクターの表情が出ることに気が付きましたし、最初は大声を出すことに抵抗があったので、それを克服できた点は成長できたと思いました。
――少し早いのですが、5周年に向けての意気込みや抱負などをお聞かせください。
Machico:今までは常に新しい自分に出会いたかったり、去年よりステップアップしたい気持ちが強かったんですけど、節目を迎えたことでデビュー当時から経験してきた歌や演技が自分の中で固まってきたので、それを爆発させられる年になればいいなと思います。どんどんアニメの曲も歌っていきたいですし、キャラクターとして皆さんに出会いたい気持ちもあります。最初から何かを決めずに、もっと自由に自分を楽しんでいきたいなと思います。今まで5年間溜めたので、ここで爆発させて皆さんに色々な驚きを届けられるようにします!
――12月3日(土)より、3rdアルバム「Ambitious*」を引っさげた「Machico Live Tour 2016 AMBITIOUS」が開催されますが、こちらはどういったライブツアーになるのでしょう?
Machico:3rdアルバム「Ambitious*」は初めてのフルオリジナルアルバムだったので、今までのライブと大きく違うのは私のオリジナル楽曲がベースになるということです。これまでは皆さんが知っている曲をMachicoバージョンとしてアレンジで歌わせていただいたんですけど、今回は「Machicoはこうだよ!」と提示できるライブになると思うので、オリジナルの曲を楽しんでいただければ嬉しいです。また「Ambitious*」自体がキャッチー&ポップがテーマになっていたので、クールというよりは皆さんと一緒に盛り上がれる楽しいライブになればいいなと思います。
――3rdアルバム以来、初のシングルになりますが制作にあたって意識が変わった点はありますか?
Machico:カバー曲を歌わせていただいたときは、元々の原曲があった上で自分のテイストを乗せていたんですけど、オリジナル楽曲はそれが原曲になるので想像力が必要だと思いました。カバー曲はお手本があるので立てるべき歌いどころが既にありますが、オリジナル楽曲だと魅せたいところを自分で作れるので、気持ち良く一曲を完成させていく楽しさはありました。また曲に深みを出していくのは自分次第なので、そういう面でオリジナル楽曲は自分次第で大きく広がるんだという意識が芽生えました。
――1stシングルでの公式インタビューに、デビュー後のやりたいこととして“単独コンサート”と“世界進出”と綴られていました。現在はどちらも達成されているのですが、3rdアルバムやライブツアータイトルの“AMBITIOUS”にちなんで今後の野望をお聞かせください。
Machico:“世界進出”ですが、この前初めてソロ名義でタイのイベントに参加させていただいたんです。今まで作品で海外に行かせていただいたことはあるんですけど、個人名義で行ったのは初めてで。しかも、そこで「AMBITIOUS」のお渡し会やサイン会をやらせていただきましたが、海外でも私のことを知って応援してくださる方がいるのは嬉しかったのです。これからはもっと色々な国に行きたいですし、色々な作品を通じて世界中に日本のアニメの文化を伝えられる人間になりたいなと思います。
海外でのライブはタイでしかやったことがないんですけど、国が違うだけでライブのノリや気持ちの伝え方が日本と違って驚いたので、もっと気持ちのぶつかり合いを見てみたいという意味を込めて“世界進出”ですね。また、もっとアニメに携わっていきたい気持ちがあるので、自分らしく色々なアニメに出てみたいです。私が歌を好きになったきっかけはディズニー作品ですし、声優を知ったのも山寺宏一さんがきっかけだったので、いつかディズニー作品に出たいです! そして一緒に歌も歌って両方担当するのがこれからの野望です!
――最後に発売を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。
Machico:「勇気のつばさ」はミディアムバラードで落ち着くんですけど、どこか懐かしい雰囲気も感じ取れて、いつの時代でも聴きやすい変わらない音楽の普遍的な物が詰まった一曲です。歌詞も作品にリンクしていて恋するキュンキュンさもあり、友情の背中を押し合う姿など沢山詰まった曲になっています。キュンキュンしたアニメの後に心が落ち着くようなEDになっているので、「恋っていいな」と思いつつ作品と一緒に聴いていただけたらなと思います。また12月からのライブでも、ゆったりした気持ちで聴いていただければ嬉しいので、ぜひ「勇気のつばさ」をよろしくお願いします!
――ありがとうございました。
[取材・文/鳥谷部宏平]
リリース情報
2016年11月9日(火)リリース
テレビアニメ「12歳。 ~ちっちゃなムネのトキメキ~」セカンドシーズン エンディング・テーマ
勇気のつばさ / Machico
COCC-17139 ¥1,200+税
<収録内容>
1.勇気のつばさ テレビアニメ「12歳。 ~ちっちゃなムネのトキメキ~」セカンドシーズン エンディング・テーマ
2.キミコンパス
3.勇気のつばさ(off vocal ver.)
4.キミコンパス(off vocal ver.)