のんさんが演じたからこそ作品がよいものになった――『この世界の片隅に』舞台挨拶をレポート
2016年12月16日に映画『この世界の片隅に』の監督片渕須直さんと、主役のすずを演じた女優のんさんによる舞台挨拶が“新所沢レッツシネパーク”で行われました。このイベントは同映画館のリニューアルオープンを記念したもので、多くの人達が詰め掛けていました。
『この世界の片隅に』とは、漫画家こうの史代さん原作のコミックで、時代背景としては第二次大戦前から敗戦までの日本を描いた作品となっています。映画化にあたっては、クラウドファンディングによって全国から3374人、3912万1920円もの支援を集めて作られたという日本では珍しい作品です。
片渕監督がのんさんへの思いを語る
まずはのんさんがご登壇。片渕監督は交通渋滞に巻き込まれ、到着が遅くなってしまうとのこと。それならば鬼の居ぬ間になんとやら、片渕監督についてのんさんに伺う事になりました。
のんさんにとって片渕監督とは、広島にあるフライケーキの美味しい食べ方についてレクチャーをしてくれたり、監督は凄い映画を作るのに、生活をするセンスがないという印象を持っているとのことでした。片渕監督はよくTwitterで朝ごはんをアップするのですが、その朝ごはんの内容がパンの上に納豆だけとか、キュウリ1本という、名のある監督の食事とは思えないほど貧相なものだったというのです。
しかし、最近はきちんと料理をするようになり『この世界の片隅に』の影響を受けて食事に対する考え方が変わったのではないかと話されていました。かくいうのんさんも、『この世界の片隅に』に係わったことによってお腹の減り具合や、美味しいものを食べたい! と思う欲求が強まったということでした。
そうこうしているうちに、片渕監督が到着。この日の夕刊で『この世界の片隅に』が毎日映画コンクールのノミネート作品に選ばれた事が伝えられると会場からは拍手が。
「のん」という名前になってから初めての仕事が『この世界の片隅に』だったのですが、声の仕事だから今までと勝手が違うので本領を発揮させて上げられないのでは、と思っていたという片渕監督。しかし実際はそんな事は無く、むしろのんさんが演じる事によって作品がより良いものとなった一要因になったと語ります。
実は片渕監督はここ“新所沢レッツシネパーク”に自分の子供たちとよく映画を見に来ており、リニューアルオープン&全席プレミアムシートを本当に喜んでいました。
最後に片渕監督とのんさんの記念撮影。そして会場のお客さんの笑顔と共にこのイベントは幕を閉じました。
『この世界の片隅に』は「徹底した広島、呉の町の現地取材」と「これまでの映画に類を見ないほど細かい人物の動きの表現」そして「女優のんさんの演技力」が話題となり、口コミで広まった作品でもあります。この3つが合わさる事によって、今は無きかつての広島や呉の町、主人公のすずがまるで本当に実在するかのように感じてしまう、そんな魅力を持っているのです。ぜひ劇場に足を運んでこの感動を味わってみはいかがでしょうか。
<作品情報>
テアトル新宿、ユーロスペース他大ヒット公開中!
<ストーリー>
どこにでもある 毎日の くらし。昭和20年、広島・呉。わたしは ここで 生きている。
すずは、広島市江波で生まれた絵が得意な少女。昭和19(1944)年、20キロ離れた町・呉に嫁ぎ18歳で一家の主婦となったすずは、あらゆるものが欠乏していく中で、日々の食卓を作り出すために工夫を凝らす。だが、戦争は進み、日本海軍の根拠地だった呉は、何度もの空襲に襲われる。庭先から毎日眺めていた軍艦たちが炎を上げ、市街が灰燼に帰してゆく。すずが大事に思っていた身近なものが奪われてゆく。それでもなお、毎日を築くすずの営みは終わらない。そして、昭和20(1945)年の夏がやってきた――。
声の出演:のん 細谷佳正 稲葉菜月 尾身美詞 小野大輔 潘めぐみ 岩井七世 / 澁谷天外
監督・脚本:片渕須直
原作:こうの史代「この世界の片隅に」(双葉社刊)
企画:丸山正雄
監督補・画面構成:浦谷千恵
キャラクターデザイン・作画監督:松原秀典
音楽:コトリンゴ
プロデューサー:真木太郎
製作統括:GENCO
アニメーション制作:MAPPA
配給:東京テアトル