
キスショットは何百歳だろうと女であり“乙女”である――映画『傷物語〈Ⅲ冷血篇〉』神谷浩史さん&坂本真綾さんが始まりの三部作、その幕引きを語る
ついに2017年1月6日(金)に公開となった、劇場映画『傷物語』3部作の最終章『傷物語〈Ⅲ冷血篇〉』。〈物語〉シリーズの時系列上では最初の物語となる本作の完結に際し、主人公・阿良々木暦を演じる神谷浩史さんと、鉄血にして熱血にして冷血の吸血鬼・キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードを演じる坂本真綾さんにインタビューを実施!
『傷物語〈Ⅱ熱血篇〉』の予告で殺し合いになることが匂わされていた、暦とキスショット。そのバトルシーンでは一体どのような苦労があったのかに注目です!
目次
- 首が飛ぶ!? 下顎だけになる?! バトルシーンのアフレコは!!
- 100カット近くに及ぶ暦の叫び
- 『傷物語』の暦に施されたある仕掛けとは……!?
- 多くの人を惹き付ける、原作者・西尾維新先生の物語
- 作品概要
首が飛ぶ!? 下顎だけになる?! バトルシーンのアフレコは!!
――冷血篇のアフレコに臨むにあたって、今回はどんなことを考えましたか?
阿良々木暦役:神谷浩史さん(以下、神谷):取り立てて今までと何か変わる訳ではないんですけど、やっぱり『傷物語』の最後ですし、『傷物語〈Ⅰ鉄血篇〉』が上映された時に「ああ、声優やっててよかったな」と思えたので、完成した暁にもう一回そういう風な気持ちになれるように頑張らなきゃ、という思いがありました。
キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード役:坂本真綾さん(以下、坂本):〈物語〉シリーズには今までも出演してきましたが、それぞれ色んなヒロインが登場していました。なので、自分のキャラクターが活躍するかどうかはその都度違うのですが、『傷物語』に関してはこの作品のセリフでオーディションを受けているので、私にとっては出会いのお話でもあります。遂にそれが完結するんだという思いがあって、すごく感慨深かったです。
――今回はおふたりが演じるキャラクターのバトルがガッツリあると思いますが、どんなところに苦労しましたか?
坂本:ほかの作品ではあまり見たことのないような戦い方なので、声をあてる観点から見ても、どうやって解決すればいいんだろう、という(笑)。「下顎だけになる暦」と書いてあって、下顎だけになった時どんな声が出るのかなと(笑)。ほかの作品では考えたことがないような角度で、そのシーンはどんな声が出るんだろうと想像したのは面白かったです。
神谷:吸血鬼同士の戦いなので、我々の常識で考えると、ちょっとよく分からないことになると思います。けど彼らにとってはそれが当たり前で、そういう戦い方しかできないんだと思うんです。それが映像で表現されるとこうなっちゃうんだっていうのは、かなり驚く部分ではあります。
暦はわりと怒りだけで戦いに挑んでしまっているので、その辺はすごく楽ではありました。またキスショットは、そうではないところで戦いに赴かなければならないことを考えると、すごく悲しい戦いに見えますけどね。
――神谷さんがオススメするキスショットの見どころと、坂本さんがオススメする暦の見どころをお願いします。
神谷:『傷物語〈Ⅰ鉄血篇〉』の時に「本気の命乞い」をする場面があって、そこから始まっているんですけど、それが今回の物語を締めるにあたり、一転して全く違うことを言い始めます。その辺りは見どころのひとつなんじゃないかなぁ……。
坂本:そこだけ!?
一同:(笑)。
神谷:いや、いっぱいあるんだけど、ひとつ決めろって言われたらそこじゃないかなって。この物語を繋げて見た時に、あそこからスタートしたのにここまで気持ちが変わって行くんだなっていう。そこを変えた暦という存在の大きさが、キスショットにどういう風に受け止められたのか気になります。
坂本:アフレコの時、実は暦とキスショットのシーンは一緒に録っているんですが、暦と羽川(翼)とのシーンに私は立ち会っていないんです。だから、その辺がどんな風に声が付いて完成していくのかまだ見ていないので、私個人としてはそこが楽しみです。
あとは、色々なTVシリーズを経てきましたけど、一番初めの物語に戻っていることです。この『傷物語』の一番ラストに暦がモノローグで締めるくだりは、台本を読んでいても熱くなるものがあったと言いますか。キスショットとしては、ここから全てが始まったんだなっていう暦のモノローグが、見ている人に一番余韻を残して終わるんだろうなと。
神谷:ラストシーンは〈物語〉シリーズっぽいよね。
坂本:繋がる感じがありますね、ほかのシリーズと。
100カット近くに及ぶ暦の叫び
――今回、心情表現で一番苦労した点や、大変だったところを教えてください。
神谷:暦がキスショットという存在がどういうモノなのか気づかされて、安易に助けたことを後悔するシーンがあるんですが、そこはもう映像的にメチャクチャなんです。要は17歳っていう高校生のメンタルで自分が背負ったものを受け入れきれずに、当たり散らすんですよね。そこはずっと「あああああああああああ」とか「うわぁあああああ」という叫び声しか書いていないので、演じるにあたって……本番で一発OKが出てよかったなって。
一同:(笑)。
神谷:二回はやりたくないなって思いましたね。それぐらいずっと叫んでます。
坂本:キスショットはこの三部作のなかでとてもじっくり描いていただいているので、あんまり疑問に思うことはないというか、私のなかでは何故キスショットがこういうことを言っているのか分かるお話だったので、悩む必要はありませんでした。
私のなかでキスショットはすごく「女だな」という感想でした。「何百年生きたところで女って女なんだな」って。そういったことがこの歳になって分かりかけてきた私にとっては、ですが(笑)。これから100倍生きても女はやっぱり女なんだなみたいな、業というか性というか、その感じで突き抜ければいいんじゃないかなと思っていました。
――坂本さんは序盤の暦と語り合うシーン。神谷さんは体育倉庫での羽川さんとのシーンを演じた感想をお聞かせください。
坂本:やっぱりここは素敵に描かれているというか、ふんわりとした……トキメキじゃないですけど、キスショット目線で見ても、暦目線で見ても心地よい会話がなされています。ちょっとキュンとすると言いますか、ここが淡く素敵に描かれるほど後々のシーンが生きてくるんです。とにかくキスショットの女の子な部分というか、どこまでも素直になりかけて語っている。「君って変なやつだね」って、私はイコール好きっていうことじゃないかなって思うんですね。
――先ほどキスショットは女だと話されていましたが、序盤はむしろ女の子というか乙女といった感じでしょうか?
坂本:色んな意味でそうですね。好意のようなモノを醸し出したいけど、すべてを自分で言ってしまいたくない。そういう部分だったり、あるいは自分の過去の話を語ることは大事な相手にしかしないと思うので。
そこで心の距離が近づいたり、あるいは描写的にも美しい彼女の笑顔だったり、踊るように歩く動き、それらが見た目からセリフ、すべてにおいて20代そこそこの女性がそうしているようにしか見えない。本当は何百歳なんですけど過去の経験は置いておいて、その瞬間だけは、私たち女性がいくつになっても持ち続けている“永遠の少女性”のようなものを、同じく持っているキスショットが前面に出てて良いんじゃないかなって思いました。