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『モアナと伝説の海』宮﨑駿作品に通じるヒロインと壮絶バトルに注目

宮﨑駿監督作品の影響を受けたヒロインが、世界を救うべく旅立つ!? ディズニー映画最新作『モアナと伝説の海』監督インタビュー

『リトル・マーメイド』『アラジン』などを手がけたジョン・マスカー監督&ロン・クレメンツ監督がおくるディズニー映画最新作『モアナと伝説の海』。本国アメリカでロングランヒットを記録し、アカデミー賞の「長編アニメーション賞」「主題歌賞」の2部門にもノミネート。3月10日(金)から日本公開を迎えます。

本作の舞台は、オセアニアの美しい海にインスピレーションを受けた南の楽園・モトゥヌイ。海に選ばれた少女・モアナが、世界を危機から救うため、伝説の英雄・マウイと共に大冒険を繰り広げます。今回は、そんな本作で監督を務めるジョン・マスカー氏とロン・クレメンツ氏のおふたりにインタビュー。日本アニメ的な要素も垣間見られる、気になるポイントを語っていただきました。


■ 世界を救う少女・モアナを、海が見出す

――今回の主人公・モアナは、いわゆる“ディズニープリンセス”とは少し違う、たくましい魅力のあるキャラクターになっているようですね。そのあたりのコンセプトを教えていただけますか?

クレメンツ:モアナがディズニープリンセスたちと明確に違うのは、「世界を救う」という任務を与えられていることです。彼女の旅は、いわゆる英雄の旅であり、ヒーローの旅。恐れ知らずで勇敢なモアナは、壮大なアクション・アドベンチャーを経験していきます。

ただ彼女はまだ16歳ですし、もともと血気盛んというよりは、思いやりのある優しいタイプ。自分に対して懐疑的な面もあるような子です。大冒険を成し遂げるためには、彼女自身のなかで乗り越えなければいけない障害もたくさんあるので、その成長物語も描ければと思いました。そんな人間だからこそ、映画の冒頭で「海」が彼女を選び、世界の危機を救う役目を与えるんだと思います。

▲こぶたの「プア」を持つロン・クレメンツ監督

▲こぶたの「プア」を持つロン・クレメンツ監督

――昨年11月に行われたワールドプレミアでマスカー監督は、「(モアナは)宮﨑駿作品に登場するヒロインたちの影響も受けている」とおっしゃられていました。それは、どんな点なのでしょうか?

マスカー:『崖の上のポニョ』(2008年)などの宮﨑駿監督作品から感じる、自然に対する尊敬や、主人公と自然との強いつながりに影響を受けながら、モアナと海の関係を考えた部分がありました。

「海が(世界を救う存在として)モアナを見出す」という点も、ちょっと“らしい”ですよね。幼いモアナがパックリ割れた海のなかへ導かれるシーンの描写も、どこか宮﨑駿監督作品に出てきそうな感じになりました。『ベイマックス』(2014年)を監督したクリス・ウィリアムズが絵コンテを描いていますが、モアナと海の関係性が直感的にわかる、非常に重要なシーンになりました。

――「海」を半分擬人化して、キャラクターにしている点は斬新です。

マスカー:もともとの私たちにはなかった発想ですね。映画の制作にあたって、フィジーやサモア、タヒチ、ニュージーランド、ハワイなど、オセアニアの島々を視察したのですが、そこで得たインスピレーションが元になっています。

最も大きく影響を受けたのは、ある船乗りから「海は生きている。そして感情を持っている。海には優しく話しかけなければいけない」と教わったことでした。そして、島々で暮らす人たちの生活には、それが実際に息づいていたんです。たとえば漁師の方々は、漁に出て最初に獲った獲物を海に返します。人と海の平和な関係を維持しよう、ということなんです。

そうしたことを見聞きするうちに、本当に彼らは海と共に生きている、そして海には感情や感覚があるんだと思えるようになり、それならば「“海”をキャラクターにしなければならない」と考えました。エフェクトを作るアーティストたちと相談した上で、まずは先ほどお話した、幼いモアナが割れた海に導かれるシーンを作り、それを指針にして制作を進めていきました。

▲おとぼけニワトリの「ヘイヘイ」を抱くジョン・マスカー監督

▲おとぼけニワトリの「ヘイヘイ」を抱くジョン・マスカー監督

 
■ オセアニアの風景に彫刻的な印象を受けた

――感情があるかのように海を描くのは、3DCGだからこそ可能な描写だったのでしょうか? おふたりの監督作としては、今回が初めての3DCG作品ですよね。

クレメンツ:そうですね。自分たちが描きたかった、あの太平洋の光の反射を描くには、それを可能にする照明の当て方をする必要があって、今回は3DCGを使うほうが正しいと考えました。山場のひとつである火山の巨人とのバトルを没入感のあるカメラワークで見せるために、という面もあります。

マスカー:視察旅行で行ったサモアでも、今作を3DCGで作ろうと決めたひとつのキッカケがありました。なにかインスピレーションを得られればと思い、「地元アーティストの絵画を見たい」とお願いしたのですが、驚いたことに画家が全然おらず、その代わりに彫刻のアーティストがたくさんいたんです。不思議ですが、私たちもオセアニアの様々な情景を見るなかで、どこか彫刻的な印象を受けていて……。水平線ですらそう感じたんです。その感覚を表現するには、2Dの手書きよりも、3DCGのほうがふさわしいだろうと思いました。

――火山の巨人とのバトルのお話が出ましたが、今作の海上戦や空中戦などのバトルシーンは、歴代ディズニー作品でも屈指の迫力だと思いました。特にこだわられた点などあれば教えていただけますか?

マスカー:ポリネシアの神話をリサーチするなかで、海のほかにも自然が擬人化されて伝えられていることを知り、火山の巨人はそこから発想していきました。また、これは言わば自然そのものとの大スケールのバトルなので、最もワイドな画角で戦わせようと考えました。私たちが視察で嵐に遭ったときも、実際にはわかりませんが感情として、とてつもないスケールを感じていて。神話と自然の壮大さを、アニメーションに落とし込めればと思いました。

クレメンツ:ココナッツ海賊“カカモラ”たちとのバトルシーンもありますが、そこは少し『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015年)からインスピレーションを受けた部分がありました。カカモラ一体ごとに力学的な筋を通して、動きの楽しさを追求しています。

マスカー:火山の巨人を動かす作業も、とても複雑でしたね。なにより大きいですし、身体から火と煙を出しながら、しかも感情をもった動きをさせているので。絵コンテとレイアウトの段階から、壮大なバトルを描くために最善を尽くしました。

[取材&文・小林真之輔]

 
作品概要

タイトル:『モアナと伝説の海』
配給表記:ウォルト・ディズニー・ジャパン
2017年3月10日(金) 全国ロードショー!

【STORY】
海に選ばれた少女モアナ──海が大好きな彼女は、島の外に出ることを禁じられながらも、幼い頃に海と“ある出会い”をしたことで、愛する人々を救うべく運命づけられる。それは、命の女神テ・フィティの盗まれた“心”を取り戻し、世界を闇から守ること。神秘の大海原へ飛び出した彼女は、伝説の英雄マウイと出会い、世界を救う冒険に挑む。立ちはだかる困難に悩み傷つきながらも、自分の進む べき道を見つけていくモアナだったが……。

監督:ジョン・マスカー&ロン・クレメンツ(『リトル・マーメイド』、『アラジン』)
製作:オスナット・シューラー
製作総指揮:ジョン・ラセター
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
原題:Moana
全米公開:2016年11月23日

>>映画『モアナと伝説の海』公式サイト

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