話題沸騰中の『けものフレンズ』、プロジェクトチームに初インタビュー! 誕生秘話からブーム到来までの歴史など「すごーい!」の連続3万字の大ボリューム
動画まわりをすべて手がける「たつき監督」の恐るべき守備範囲
――動物の習性にこだわるたつき監督は、動物がお好きなのですか?福原:子供の頃から動物を飼っていたようです。
梶井:動物は身近な存在だったので、昔から動物好きだったそうです。さらに『けものフレンズ』を作りながらも、いろいろ調べて勉強しています。
――動物の細かい習性まで調べるのはタイヘンなのかなと思いました。
梶井:彼からは「たいへん」というイメージは受けませんね。彼はきっと、好きなものを作っているだけです。「世間が騒いでるからもっと調べなきゃ」という意識は、ほとんどないと思います。
福原:それにあの人、忙しいときもそうじゃないときも週に5日は仕事のCGを作ってるんです。さらに残りの2日は趣味のCGに没頭してます。たつき君を見ていると、動いている時間のほどんどがCGみたいなもんなんですよ。だからどれだけこだわっても、彼にとってみれば別にいいんじゃないですか?(笑)
――ずっとCGやってるんですか?(笑)
福原:ずーっとやってます。しかも天才肌なんですよね。そんな生活をしてて体型が細いから、メシを食ってないように心配されますが、実は痩せの大食いなんです。いくら食っても肉が付かない体質。
梶井:僕もそれを心配して、打ち合わせのたびに「なんか注文したほうがいいですよ」って言ってます。先週の日曜日も強引に「ピラフ」を注文し食べてもらいました(笑)。
――たつき監督の作業は、どこからどこまでですか? とても多そうに感じます。
梶井:声優以外は全部だよね?
一同:(爆笑)
福原:まぁ、わかりやすく言えばそうですね。全12話をひとりで演出してますから。お話も99%が吉崎先生とたつき君が考えてます。脚本からコンテまでをひとりでみているから、作業のカロリー計算ができるんです。例えばレイアウトひとつとっても、下半身を映さないだけでアニメーションは減ります。でも上半身ばっかりのシーンが続いたらつまらないから、どこを見せてどこを隠すか、それを不自然にならないようにコントロールしています。Vコン(ビデオコンテ)を作って仮の声をあてて尺を計算したり、プリプロダクション、プロダクション、ポストプロダクションといった、作業進行を、ひとりで行ったり来たりしてます。
――全部ひとりでやっちゃうなんて超人ですね。
福原:そこらへんはプレスコ(註3)で作ってきた『てさぐれ!部活もの』(註4)の経験が活きていると思います。たつき君はその場のグルーヴ感で「これはやったほうがいい」と思ったら作業しちゃうんです。その後のカロリー計算も、しっかりできる人だから。本来だったら脚本を変えるときは、仁義を通す相手がたくさんいます。コンテマン、脚本家、に頭を下げて回らないといけません。ですが『けものフレンズ』は、その労力はほとんどいりません。
(註3:セリフや音楽を先に製作し、映像を後から作る制作方法)
(註4:福原Pとたつき監督によるアニメ作品。第1期が2013年10月から、第2期の『てさぐれ!部活もの あんこーる』が2014年1月、スピンオフ作品の『てさぐれ!部活ものすぴんおふプルプルんシャルムと遊ぼう』が2015年4月に放送された。)
――制作スタッフのみなさんが、楽しんで作っているのが伝わってきます!
福原:たつき君もそうなんですが、音響監督の方も、これまたものすごく柔軟なので助かります。けっこう直前になって変更を入れてしまうのですが、それを受け入れてくださいます。さらに『あいまいみー』(註5)をやってる方なので、内田彩さんとの信頼関係もバッチリです。ほんと、『けものフレンズ』という作品は、いろいろなキセキが重なり合ってできているんです。
梶井:声優の声質によって現場でセリフを変えちゃうこともありますね。よりキャラクターが引き立つように。
(註5:『ちょぼらうにょぽみ劇場 あいまいみー』として、2013年1月からスタート。現在3期まで放送。内田彩さんは、麻衣役として出演)
――たつき監督の動物以外の趣味は?
福原:美術参考用の写真撮影かな? どこに行っても、ちょっと気になったことがあれば写真を撮ってます。
梶井:撮ってるねぇ~。
福原:ビルの上のほうに行ったら街の風景を撮影するし、工場の裏側に行ったらゴチャゴチャしてる写真を撮る。そういう人なんです。なんだかすべてがアニメ制作に関わっている感じです。
梶井:なんでもそうですが、作品を作ってる人間は「やらねば!」と思って作るより、「自分が見たいものを作る」という方が精神衛生上によいと思います。『けものフレンズ』は、まさにそれです。僕らがマジメに作った結果、いまこうやって大勢の方に喜んでいただけてる状況を見ると、本当に僕たちは幸せです。
『けもフレ』はガラパゴス的な進化をしたアニメ
――ストーリーについてお聞かせください。お話を考えるとき「ここで盛り上げる」とか、事前に考えておいたのでしょうか?梶井:『けものフレンズ』の場合は、「ここで誰かが死んで」とか「ここでライバル」とか「恋愛が発展する」とか、そういったありがちな法則は入ってません。
福原:「クリエイティブ先行」のコンテンツでしたからね。
――『けものフレンズ』の物語は、いつ決まったのでしょうか?
福原:委員会が結成されてビジネスが動き出す前に、実はすでにアニメの制作はスタートしていたんです。
――なるほど。一般的には委員会が固まってから、制作に入ると思います。
梶井:そうなのですが、我々は違いました。きっと制作前にアニメを何本も手掛けてきたベテランの方たちが入っていたら、何度も打ち合わせをしてプロットを何度も直したり、似たような会議を繰り返したりして、制作がなかなか進まなかったと思います。もしそうなっていたら、おそらくみなさんが想像しやすい普通の動物アニメになっていたと思います。
――そうなっていたら、いまのブームは来ていましたか?
梶井:どうなったかはわかりませんが、一般的な制作工程ではなかった結果が、いまの『けものフレンズ』です。
福原:わかりやすくいえば「無菌状態で作られた作品」とか「ガラパゴス的な進化をしたアニメ」とでも言うのかな?
一同:(笑)
福原:うち(ヤオヨロズ)はセクションをまたいだときに、作り手の熱が下がるのを阻止するためのチーム造りを心がけています。それこそ吉崎さんと喫茶店で話しているときに出てくる数々のアイデアを、迅速にアニメに組み込んできました。これがもしも、何社もまたいで制作をしなければいけないチームだったら、こんなことはできません。
梶井:この『けものフレンズ』には原作がありませんからね。どういうアニメになるのか、誰も想像がつかないんです。コミック版は日常モノをやってるし、ゲームはセルリアンとの戦いを軸にしていた。アニメがどうなるかなんて、誰も想像つかないと思います。
――では、お話を考える人は?
梶井:大本の設定や大枠は吉崎さんで、たつき監督がそれをベースに骨子を練り、細かい肉付けをしています。彼らが打ち合わせ中に楽しみながらどんどんストーリーを作っていくので、下書きがありません。委員会に「こんな話になります」と伝えたのって、いつでしたっけ?
福原:たぶん2016年の頭くらいには、シリーズ構成のプロットはできていたはずです。
――ちょうど1年前くらいだったのですね。
福原:『けものフレンズ』の構成は、「かばんちゃん」と「サーバルちゃん」が各地を廻るロードムービーっぽい作品なので、毎回登場したゲスト動物と「出会い・別れ」を繰り返していきます。
――いま放送されている構成ですね。
福原:でも、この流れで作ってしまうと、シリーズを通してみると、常に登場しているのは「かばんちゃん」と「サーバルちゃん」の2キャラクターだけになってしまいます。そこで、常にふたりに絡んでくるキャラクターとして、「アライグマ」と「フェネック」、「PPP(ペパプ)」を考えました。こうすることにより、「かばんちゃん」と「サーバルちゃん」が縦軸で出演し続け、「アライグマ」と「フェネック」、「PPP」が横軸で絡んでくる。その結果、三次方程式のような複雑な構成ができあがりました。
名物コーナーのひとつ「アライグマ」と「フェネック」の誕生秘話
――「アライグマ」と「フェネック」のコーナーは、後から決まったのは驚きです。福原:「アライグマ」と「フェネック」のコーナーを考えた当時は、もうちょいドタバタしたニギヤカシくらいのイメージだったのですが、意外なことに革新的な演出になってくれましたね。
梶井:そうだよね。アライグマとフェネックのおかげで、前の回に登場したゲストキャラを見られるサービスコーナーとしての一面もあります。
――アライグマとフェネックのシーンは、誰が考えたのでしょうか? せっかく3DCGをモデリングしたら、何度でも使いたくなるのが心情だと思います。
福原:たつき君が考えました。せっかくモデリングしてますから、使わないともったいないですからね。
――しかもそれを、わざとらしくなく演出で登場させている。あの見せ方は発明だと思いました。
福原:結果オーライって感じですけどね!
一同:(爆笑)
梶井:もともとキャラクターがとても多いコンテンツなので、ひとりでも多く出してあげられたらいいなというのは我々の思いでした。でも、作り手からすると時間もお金もかかるから限度はあります。運良く出演できたフレンズはラッキーだけど、できなかったフレンズのファンには、申し訳ない気持ちでいっぱいです。本当は僕らも全キャラを出演させてあげたいと、心から思っているのはご理解いただきたいです。でも……作品の人気が10年くらい続いてくれたら、全キャラを出してあげられるかな?
福原:そうですよね。たつき君は出したがっています。だって、僕が初めてたつき君が書いた構成を見たとき、登場キャラクターが40体くらいいるんですよ。彼にすぐ言いましたよ。「これ正気か?」って(笑)。
一同:(爆笑)
――『けものフレンズ』のキャラクターは、いままでどうやって増やしてきたのでしょうか?
梶井:吉崎さんと『けものフレンズ』のプロジェクトを始めたとき、「キャラクターは100体まで」と決めていたんです。でも、吉崎さんは描くのが楽しくて、なおかつ筆が乗るもんだから、どんどん描いて増やしちゃうんです。
――いいお話ですね。言い方はおかしいかもしれませんが、仕事を仕事と思わずに、描きたいから描いてる!
梶井:そうです。調子がいいと、毎週4体ずつ届くんです。『BD付オフィシャルガイドブック』が出そろうころには、たぶん200体超えてるんじゃないですか。動物という一つのテーマで一人でこれだけの数を描いたのはおそらくないんじゃないかと思うので、ギネスに申請しようかという話もありました。
――そのキャラクターは新規のキャラクターですか?
梶井:ゲームに出てきた吉崎さん以外の方が描かれたものをリデザインしているフレンズもいます。これはより元動物の特性を表現することを目的に行っています。それ以外にまったく新しいフレンズも生まれていますよ。ガイドブックで初収録になる子もいますので、お楽しみに。
「すごーい!」や「たのしー!」など、耳に残る声優さんのボイス
――「すごーい!」や「たのしー!」など、数々のセリフが流行語になっています。あの演技をなさった声優さんは、どうやって決めたのですか?梶井:アニメ化が決定したとき、動物園のふれあい広場のようなイメージで、「小さい規模のイベントもやっていきたいよね」と思っていたんです。それを考えて、比較的動きやすい声優の方を選ばせていただきました。できればフレッシュな声優さんにお願いして、アニメといっしょに成長していけたらいいなと考えたんです。
福原:その思いをゲームの音響を担当していた青二プロダクションさんにお伝えして、引き続きアニメでもお知恵を借りたんです。
――主人公の「サーバルちゃん」の声優・尾崎由香さんに決めた理由は?
福原:声やパーソナリティー、いろいろな要素を加味して決めました。オーディションでイラストも描いてもらいました。根本流風さん(コウテイペンギン)が、なかなか味のあるイラストでしたね。
梶井:僕は「なぜ、イラストを描かせるの?」と思ったんだけど、イラストが描けるとなにかに役立つとか?
福原:いまのところ、なにも役立っていませんね(笑)。でも、どこに光る宝物があるかわからないから。
一同:(笑)
福原:オーディションでいろいろ質問すると、わかってくるんですよ。相羽あいなさんは「イワトビペンギンしかないよね!」ってくらい、ぴったりでした。『けものフレンズ』のオーディションは、パーソナリティーを重視して決めたキャスティングだったかもしれません。だってファンの人も、普段とギャップがありすぎると、声優さん越しにキャラクターを見れないじゃないですか?
――ということは、『けもフレ』に登場しているキャストのみなさんは、それぞれ演じている動物と「似ている」という認識でよいでしょうか?(笑)
福原:全員がそうとは言いませんが、「PPP(ペパプ)」のみなさんは、どことなく似ている方が多いと思いますよ。
――かなり衝撃的なキャラクターを演じられた、金田朋子さん(トキ)とか小林ゆうさん(ツチノコ)は?
福原:金田さんは「絶対におもしろくしてくれる」と思ってお願いしました。ゲームのなかでも、トキは「歌がへたっぴ」という設定があったので、それをちゃんと演じていただきたかったんです。「置きにいった演技」といいますか、わかりやすい音痴な歌だとおもしろくなりません。
――トキの歌は衝撃的でした。
福原:さらにたつき監督の映像の「間」の感じを上手く出せて、多少ノイジーというか、ハマってない感じの演技ができる声優さんにお願いしたかったんです。金田朋子さんは、すべての条件にバッチリでした。そして、小林ゆうさんのツチノコも同じです。
梶井:おもしろかったですよね。キャラクターが活き活きと輝いて見えるのは、本当に声優のみなさんのチカラだと感じました。
――『けものフレンズ』のプロジェクトをゼロから立ち上げた梶井さんからすると、アニメの映像でキャラクターが生きているのを見た率直な感想はいかがですか?
梶井:ゲームでもボイスはついていましたが、パターンにはめ込む定型文のようなものだったので、演技の幅と言うとあまり余地がありません。しかしアニメとなるとその幅は格段に広がりますし、そこに動きもつきますからね。「プロはやっぱりすごいな」というありきたりの感想しか出ませんでしたが、感無量でした。
福原:改めて声優さんは凄いなって。
梶井:僕らは『けものフレンズ』を作りながら、具体的ではないにしろ、なんとなくのイメージで「このキャラはこんな声だろうな」などと想像しながら作っています。そしてアニメのレコーディングのタイミングになって、スタジオで声優さんと打ち合わせをしているとき、声優さんから「こんな感じに変えたいんです」と意見してくれるときがけっこうあったんです。
――声優さんたちからもアイデアが出てくるのですね。
梶井:そしてその声を聞いてみると、キャラクターたちが、さらに魅力的に感じられる場合があるんです。
――梶井さんの頭のなかには、吉崎さんのイラストを見た瞬間になんらかのイメージがあると思うんです。
梶井:でも、声優さんがアイデアを出した声を聞いてみると、「あれ? こっちのほうがいいかもな」って思うこともありますね。もちろんイメージからかけ離れすぎたときは、修正しましたけど。
福原:今回の制作チームは、置きに行っている芝居を嫌うチームかもしれません。「声」と「芝居」って、違うじゃないですか? 声優のみなさんは、ファンが喜ぶ「声」を知っているので、ズバーンと置きにいけるんです。養成所を出たばかりの声優さんでも出せるはずです。ですが「芝居」に関しては、そうはいきません。やはりキャリアがある声優さんは、芝居の引き出しがめちゃくちゃ多いんです。
――かわいい声だけじゃフレンズを任せられない?
福原:なので『けものフレンズ』のキーとなるキャラクターは、僕がいままでにお仕事をさせていただいて、安心して演技を任せられる「照井春佳さん(カバ)」や「津田美波さん(ジャガー)」たちに登場していただきました。そして、そのお話に登場するもうひとりのキャラクターを、若手の声優さんにお願いしたんです。こうしておけば、万が一なにかがあってもベテランが支えてくれて、トータルで見たら安定するだろうと。
――なるほど! 各キャラクター配役の意図は、そういう側面もあったのですね。
福原:そうだったのですが、完全に僕らの取り越し苦労でしたね。例えばコツメカワウソ役の近藤玲奈さんとか、心配する必要がまったくないくらい上手な演技をしてくださって、最高の組み合わせになりました。
梶井:本人たちには聞いていないのでわかりませんが、演じるキャラクターが人間じゃないので、人間のアニメキャラとは違うアプローチをしてくれてるのかなって感じました。みなさん「動物らしさとはなんだろう?」と、真剣に考えてくださってるんだと思います。だからちょっと飛ばした演技ができるんじゃないかと。
――『けものフレンズ』に、女子高生とか小学生とかは出てきませんからね。
梶井:小学生の声って、みんなイメージするものが同じじゃないですか? ちょっと高い声で、大人よりも滑舌を悪くした感じ。そういう声だったら難しくないと思うんです。だけどこの現場は違います。いきなり「コツメカワウソの声をやって」と言われるんですよ。
一同:(爆笑)
梶井:「カ、カワウソ……ってなんだ!?」って、みなさん悩んだと思いますよ。
――それは悩みますね(笑)。カワウソはしゃべらないから、正解がわかりません。
梶井:だからそこで、みんながオリジナルの声を出してくれたんです。その結果、みなさんがいまご覧になっているアニメになったんです。ちなみにですが、近藤さんはもう何本もやってらっしゃる方かと思うくらいスムーズでした。でも高校を卒業するしないという頃でしたっけ?
福原:セーラー服で収録に来てましたよね。テスト終わりとかで。
梶井:彼女はこれから売れると思いますよ。要注目です。
――ネットでも「サーバルの声が耳から離れない」という声をよく聞きます。キャラクターボイスも受けている要因のひとつだと思うのですが、あれは初めから計算していたのでしょうか?
梶井:ありがとうございます。でも、あれは計算してできるものじゃありませんよ(笑)。現場では上手くいかず、スタジオに居残り収録もありました。各声優さんたちが一生懸命演じた結果が、あの声になったんだと思います。
福原:ネコって気まぐれな動物じゃないですか? だからサーバルの声は「ふーん」みたいな無感情な声がいいんです。ただ、第3話でサーバルがバスにぶつかって「うっ!」って言うシーン。あそこの声は、普段あっけらかんとしてるヤツが、めっちゃ低い声を出すことで「笑い」にしようとしたんです。
――突然飛ばされておもしろいシーンでした!
福原:だけど、女の子に「みぞおちを殴られた声で」って言っても伝わらないんですよね。普通の女の子はみぞおちを殴られた経験がないから。なので初めは、かわいい感じの「うっ♪」という声だったんです。
梶井:しかもあのシーン、元の台本にはバスにぶつかったときの声はなかったんです。でも現場で映像を見ていて、「ちょっとくぐもった感じのリアルな声が入ったほうがいいかも」って話になって、急きょ修正したんです。
――現場で台本を直すこともあるのですね。
梶井:ここだけじゃなくて、絵に合わせて臨場感を出すために、直しています。
福原:たつき君は関西の人間なので、笑いは好きなんです。でも吉崎先生との初期の打ち合わせのときに、「大げさに笑わせようとしないでほしい」、「パロディーと時事ネタを入れないでほしい」と言われたんです。エバーグリーンにするためには、時代性を感じさせてはいけませんから。
――確かにそういったシーンはありませんね。
福原:Twitterとかでたまにバズってるのを見るのですが、ペットのネコが突然ルンバに乗ったりしてますよね? あれを見て「かわいい」と思っているのは人間です。ネコは「オレがいまルンバに乗ったらウケるだろうな」なんて、微塵も思ってないんですよ。ただ興味あるから乗ってるだけです。
――そのとおりだと思います(笑)。
福原:それと、いまはTwitter実況の文化があるから、ツッコミはすべてお客さんにゆだねられている時代だと思います。なので、こちらはある程度材料を用意しさえすれば、後はファンのみなさんがネットで盛り上がってくださいます。僕らはファンのみなさんが楽しんでもらえるような作品を、精一杯作るだけです。
――福原さんが以前手がけた『みならいディーバ』は、史上初の生アニメで、Twitterでも話題になりました。
福原:そうですね。みなさんに楽しんでいただけたと思います。
――だけど『けものフレンズ』では、「みんなTwitterやってね」とは、ひとことも言ってませんよね?
福原:言ってないと思います。もちろん「こうなったらいいな」とは思っていましたが、ここまで話題になるとは予想していませんでした。それに、いまのお客さんって強いられるのが嫌いだと思うんです。「はいみなさん! ここで笑ってください!!」なんて、一番イヤだと思います。
――強制的に「笑ってくれ」と言われると、それはイヤですね。
福原:だけど、ボケるけど突っ込まない流れにしておけば、必然的にお客さんが突っ込むしかなくなります。結果的にそういうツクリの作品になったので、楽しんでもらえてるのかなぁと考えています。