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声優
速水奨スペシャルインタビュー〜最前線で走り続ける声優人生と、声優養成所設立に込めた“速水奨ism伝承”への想い〜
養成所の設立と、声優への想い
——そうなると、声優という枠を超えて色々出来るわけですが、これからやっていきたいこととは?
速水:やはり後進の指導はやっていきたいんですよ。僕らの仕事って、名前は残る、音声は残る、記憶は残るとしても、どんどん過去になっていく気がするんです。30年後には僕のことも「あー、そんな人もいたねぇ」みたいな。でも僕が演じることとか、表現する「ism」というのは伝承できると思うんですよ。だからその部分を受け継いで、次の世代に行ける人たちを育てていきたいというのがあるんです。
——いつ頃から「教える」ことを意識されたのでしょうか?
速水:実は、かなり前から気持ちはあったんです。ただ、自分が現役である限り、人に教えてはいけないと頑なに思い込んでいたんですよ。ところが7、8年前に、ちょっと断りづらいルートから「教えてくれませんか」という話があって、今はないドワンゴクリエイティブスクールというところで教え始めたんです。
そうなると今度は人に教えることの難しさがわかってきて、「あれ、自分はどうやって演じているんだろう?」と思って、頭の中、心の中で演じているものを分解してみたんですよ。そこで「あ、こうやって演じているんだ。じゃあこれを教えてあげればいいんだ!」とわかって、呼吸から発声からひとつひとつ、自分なりに蓄積してきたものを子供たちに教え出したんです。
そうしたら今度は教えることがすごく面白くなったんですね。「人ってこんなに変わるんだ!」って。それに子供たちと接することで、自分自身も常に新鮮でいられるんですよ。これをずっと続けていくのは僕にとっても魂の健康法なんじゃないかなと思うんです。
——教え子に神田沙也加さんがいることも話題になりました。指導に際しては、何を一番大事にされているのでしょうか? もしかしたら、生徒ごとに教え方が違うのかもしれませんが。
速水:違いますね。それぞれにカスタマイズして、全員に違う教え方をします。ダメ出しの仕方も全員違うんですよ。僕はあまりきつく言わないんですけれど、何も言わないで本人が気付くのを待つ場合もあるし、失敗したことを笑って和ませて、次のステップに行かせる子もいるんです。
——今の声優には求められているものがどんどん多くなって、それこそ踊りまでという話もされましたが、現状についてはどのように感じておられますか?
速水:やはり時代は変わったなと思いながらも、じゃあ踊れればいいのか、歌えればいいのかというと、ちょっと違う気がするんですよ。
やっぱり「がんばれ!」「よし、うまくなってきた!」という感情移入ができないとダメなんですよね。だから、がんばれることが大事なんです。二十歳そこそこの男の子が、何千人もの前でトークなんて、できるわけないじゃないですか。でも彼らはすごくがんばる。そのアプローチの様を見て、お客様は母のような、姉のような気持ちで応援してくださるんだろうなと思うんです。
——養成所では、何よりもまず芝居を教えるわけですね?
速水:芝居も教えますけれども、基本として僕はコミュニケーション能力を求めますね。僕は生徒全員の名前を憶えていますけれど、毎回必ずひとりひとりと会話して、その人の人間ドラマの中に僕も入っていきながら導き出すみたいなことが多いかな。
——RSアカデミーでは第1期生の2次募集を受け付けるとのことで、声優志望の人がスタートラインに立つ前に必要なことがありましたら、アドバイスをお願いします。
速水:うちの新人で、3年目になる子がいるんですけど、漢字が読めないんですよ。それで猛勉強して、先日漢字検定3級に受かったんです。漢字や言葉に触れることは、すごく大事だと思うんですよ。台本を渡されて、読めない漢字や意味のわからない言葉がたくさんあるようだと、声優としてはダメなんです。台本の文字を追って読むのではなく、文字をインプットした瞬間に、頭の中で自分の声として再現できなければいけない。その能力を養うために、活字に慣れてほしいですね。
——速水さんが考える声優とは?
速水:もちろんエンターテイナーなんですけど、良識のある社会人だと思うんですよ。バランスの取れた人間というのかな。もちろん個性があるので、変わっているところがあってもいいんですけど、僕らの仕事というのは共同作業なので。全員でスタジオに入って、同じ意識を持って、アンサンブルになって作品を作っていくには、良識ある社会人であることが必須なんじゃないかな。
——役者の中には性格破綻者的なところを芸風にする人もいますが、アニメはチームワークで作りますからね。
速水:昔は若い女の子とか、恥ずかしくて話しかけられなかったんですけど、『ごちうさ』(『ご注文はうさぎですか?』チノの父役)とかをやってから、若い女の子とも普通に喋れるようになっちゃって。なんなら輪に入っても平気みたいな(笑)。
——速水さんのイメージといえば美形悪役だと思っていたら、若い世代には「いいお父さん」というイメージで見られているらしいですからね。
速水:それはありがたいですよ! 僕の延命のためにもね(笑)。そのうち「いいお爺さん」になったりして(笑)。
——艶のある役もまだまだ期待しております!