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- 逆井マリ
- 神奈川県横浜市出身。音楽フリーペーパー編集部を経て、フリーのライターとしてインタビュー等の執筆を手掛ける。
ソロデビュー10周年を迎えたアニメ/ゲームシーンの歌姫・織田かおりさんが、2014年に開催されて以来、 3年ぶり2度目となるバースデーライブ「織田かおり10th Birthday SOLO LIVE 2017」を5月12日渋谷WWWにて開催しました。
当日に「今日は拳で勝負する日だから!」とツイッターに書き込んでいた織田さん。誕生日ライブ、しかも10か月ぶりのバンドライブということもあって気合いは十分。初っ端からファンと共に笑顔で駆け抜けていきました。
最初のMCで「ひとつ歳を重ねた最初のライブということで、本当に楽しみにしてきました! この感謝の気持ちをたくさん歌でお届けしたいなと思っていますので、最後までついてきてください!」と話していましたが、<想いは常に愛で溢れて 本当の居場所を見つけた>とまっすぐに歌う『PLACE』をオープニングに持ってきていることからも、その想いが伝わってくるようでした。
「盛り上がっていいですか?」と、初披露となる配信シングル『無限のDYSTOPIA』(スマホ向けRPG『宿星のディストピア』主題歌)を熱演。さらにミステリアスな曲調の『World's End Syndrome』、石田燿子さん・美郷あきさん・緒方恵美さんとのユニット・Metamorphoseのアルバムに収録されたソロ曲『Refrain』を歌います。
個人的にこの日のライブのなかでも特に印象的だったのが、この中盤のブロック。染みわたる歌詞とゆっくりとしたサウンドで紡ぐ『同じ空を』、民族調のサウンドに乗って優雅に歌う『誓いの花束』、しっとりと声を響かせる『紅結び』。「いろいろな表現方法があって面白い」と後のMCで振り返っていましたが、三者三様の曲に込められた意思をしっかりと届けた織田さんの声からは、10年目ならではの表現力をひしひしと感じさせるかのようでした。
ここで7月にオトメイトレコードから発売される新CDシリーズ『おとどけカレシ』で主題歌、作詞を担当することを改めて発表。オトメイトレコードで作家デビューソングを果たした『Theatrium』で新しい世界へと誘い、『RUN-LIMIT』『Maze』と飛ばしていきます。織田さんの笑顔が、とても眩しい。
「ひとりじゃないんだなって、いつもみんなに思わせてもらっています」
一息ついて、メンバー紹介へ。「何を弾いても素晴らしい」「このあとやっていく曲もエゲつないくらいカッコいいから」「なんかすごくエロい音になった!(笑)」と織田さんがバンドにリスペクトを贈れば、ファンも大歓声。その歓声や反応が、織田さんに対する愛を感じさせるかのようでした。
「ついてきてくれる?」とライブもいよいよ後半戦。『暁のバタフライ』『true colors』『GRASPS』『TRAP』と、エネルギッシュなナンバーで会場をどんどんと盛り上げていきます。ライヴハウスならではの熱量が凄まじい。ダンスナンバー『LOVE×∞ 2016』の息もぴったりで、これには織田さんも「みんなの声がよく聞こえました……私より声量あるかも」と笑う。ひとりひとりと視線を結びながら「みんなの顔を見ることができる。この会場の大好きなところなんだ」と伝え、少し声のトーンを落として続ける。
「誕生日は感謝をする日だと思っています。年々、生んでもらえたこと、この世に誕生したこと、そのなかで音楽の道を選べたことに感謝をする日だなって。ソロシンガーなので隣に誰もいないけど、後ろにメンバーがいて、前を見たらみんながいる。こんな心強いことはないです。ひとりじゃないんだなって、いつもみんなに思わせてもらっています。本当にどうもありがとうございます。これからもずっとずっと歌い続けていくので、ついてきてください!」
その想いと、これまでの歩みを感じさせるかのような『Calling』を最後に熱唱。<君のためにきっと生まれて来たとただ声の限りに 叫び続けたい>──まっすぐで切実な歌声からは、感謝の気持ちを超えて、ひとりの表現者としての使命感までをも感じさせるかのようでした。
アンコールでは3曲を披露 思わぬサプライズも
「かおり!かおり!」というアンコールの声にこたえて、410周年Tシャツをロックに着こなした織田さん、バンドメンバーが再びオンステージ。「アンコールどうもありがとう!」と『Brilliant World』を。『Make it Real』ではファンがサプライズで青いペンライトを照らし、曲が終わると特製ケーキが登場。「うそでしょ~!? 当たり前だけど、聞いてないし……」と不意を突かれた織田さんの姿が可愛らしい。
ファンからの祝福に「泣いちゃうから、ダメだから」と笑いながらも、今度は織田さんがファンにサプライズ。「7月にアルバムを出します!」。これにはファンも大歓声。「明日から歌詞を書きます」と話していましたが、一方で「もうね、決まってるの。書きたいことは」と振り切れた様子。「私はもらう側ではなく、あげる側でいたい。みんなへの贈り物をテーマに『Gift』というタイトルのアルバムを作りますので、楽しみにしててください」。
ありがとうの気持ちを込めて最後に歌われた『ゼロトケイ』は、優しく柔らかく、広がっていきました。ファンが送ったエネルギーが織田さんの力になり、織田さんの歌声がファンの明日への力になる。そんな関係性と堅い絆がよく伝わってくるライブで、感動を通り越して、とても尊く感じました。7月26日に発売される『Gift』。素晴らしい作品になる予感がします。
[取材・文/逆井マリ]
神奈川県横浜市出身。既婚、一児の母。音楽フリーペーパー編集部を経て、フリーのライターとしてインタビュー等の執筆を手掛ける。パンクからアニソン、2.5次元舞台、ゲーム、グルメ、教育まで、ジャンル問わず、自分の“好き”を必死に追いかけ中。はじめてのめり込んだアニメは『楽しいムーミン一家』。インタビューでリアルな心情や生き方を聞くことが好き。