「島、めっちゃもったいぶります(笑)」ーー『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』第二章「発進篇」鈴村健一さんインタビュー
6月24日(土)より全国20館の劇場にて劇場上映される『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』第二章「発進篇」。物語が進む中、ヤマトクルーたちの決断が問われる時が来ました。古代進をはじめ、ヤマトクルーたちは、どのような決断をし、どのような航海をするのか? 注目が集まっています。
今回は、主人公・古代進の親友であり、前作で共にイスカンダルへの旅を経験したヤマトの航海長である島大介を演じている鈴村健一さんに、第二章の見所や作品の魅力について伺いしました。島を演じているからこそ見えた鈴村さんの見解に迫ります。
親友だからこそ古代を止める!
──『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』(以下、2202)第二章「発進篇」は、まさにヤマトがこれから発進するお話になっていますが、問題は島です。第一章では、古代と久々の再会をしてこれからどうなるんだ、というところで終わってしまったのですが、第二章はどうなるんでしょうか?
鈴村:ヤマトには乗ります。ただどういうふうに乗るかというのはちょっと味付けしてありますので、その辺りは実際に観ていただきたいと思っています。まあ、乗ってくれてホッとはしてますね、乗らない説があったりもしたので。
──それは、第一章で古代と久しぶりに会った時はいい顔をしていたのに、その後のシーンだとなかなかいい顔をしないという……。
鈴村:そうですね。でも、思うことは島のほうが正常というか、『ヤマト』らしいというか。たまたま通信を受けた「助けて」というメッセージだけを足がかりに宇宙戦艦を飛び立たせようだなんて。荒唐無稽なことだから、それを島が止めようとするのは当然のことですよね(笑)。古代に対して「森くんのこともあるからやめておきなさい」としっかり止められる島は現実的。ある種、視聴者代表でもあるというか、あれを止めない人がいないほうがおかしいとは思うんです。
ただ『2199』を観てくれた人も含め、ぼくはそれがヤマトが旅立つ理由として余りあるものだと思います。前回は地球が滅亡しかけているという状況の中とはいえ、イスカンダルからの「助けてあげられそうです」という通信だけを頼りにヤマトは旅立ちます。それと同じことが起きてるのなら、行かないわけにはいかないだろと。僕がヤマトのクルーだったら「飛び立とう!」という気持ちになるのがよくわかります。だけど、一般的な感覚で言うと「ここで飛ばない、やめよう」と言う人がいるのは当たり前のことかなとは思いますよね。
──古代と島がいくら親友であっても、ということですよね。
鈴村:親友だからこそ止める部分が大きいと思います。友達が「会社を辞めて起業しようと思う」と言ったら「ああ、頑張って」とほとんどの人が言う気がします。けど、「やめとけよ!」と熱くなって止めてくれる人ってそうそう自分の人生でもいない気がするんです。そこを止められる仲というのは、本当に古代のことを思っているし、飛び立つことが必ずしもいいことではないということを、島はちゃんと言っている。そこを見る限り、凄く優しい友達というかちゃんとしてる友人なんだろうなと。
謎が多いキーマンと、熱さに深みが出た斉藤
──鈴村さんから見た第二章のアフレコ現場の雰囲気はいかがですか? 第一章と比べてみなさんの気持ちもステップアップしている感じですか?
鈴村:『2199』からアフレコの間がだいぶ空きましたが、不思議なもので割りとすんなりアフレコをしているというか、ずっと繋がっていたぐらいの感覚で変らない、当たり前の感じでした。なんか物語と似てますよね。第一章にあった、みんな久しぶりに集まってどんちゃん騒ぎしちゃう感じ。久しぶりだけどみんな集まるといつもの顔に戻るねって言う感覚。僕から見れば、それに近いアフレコ現場だったと思いました。
──『2202』では、そこに新しいキャラクターが入ってきました。
鈴村:一番顕著なのがキーマンというキャラクターが入ってくることですけど、そのキーマンをどう捉えればいいかが誰もわかってないのが、面白いところだと思います。敵なのか味方なのか、信用していいのかよくないのかってこともヤマトクルーの誰も分かっていないですし、演者も分かってないんですよね。僕らはキーマンが誰で何なのかということを聞かされていないんです。腫れ物に触るような感覚すらある雰囲気だっていうのが、ちょっと面白いところかなとは思いますよね。神谷(浩史)くんは知ってそうですけど、「キーマン、いろいろあるんでしょ?」って聞いてみたら「うん、いろいろあるね」と返されました(笑)。僕もこれ以上聞かないほうがいいなと思ったんで、それ以上は聞いていません。
──キーマンに対して、第二章では第一章とは違った印象も受けました。
鈴村:それも含めてミステリアスな感じがしますよね。この人はどういった人なのだろうかというのが、これでまた煙に巻かれたというか、ただの悪い人だったらあんなふうにはならないと思うし、めっちゃいい人だったらもっと打ち解けるんだろうなと思うんだけど、そうではなさそうだし、どっちなんだろうなというところが面白いところですね。
──他にも新しいキャラクターがいますが、気になっているキャラクターはいますか?
鈴村:やっぱり斉藤かな。オリジナル(『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』)の斉藤の出方ったらないじゃないですか。「俺は斉藤だ、よろしくな!」みたいな(笑)。観ててひっくり返るぐらい「なんで急にめっちゃメインみたいに出てきちゃったの!?」みたいなところがあったんです。いいキャラなんですよ。いいキャラだけどあの出方のせいでちょっとわけが分かんなくなっちゃってるところがある。また、どちらかと言うと場を乱す感じなんです。
だけど、『2202』ではそれをちゃんと丁寧に解きほぐして描いている。出てきたときから凄く筋の通った男気のあるやつだなと思えるし、凄く熱い人間性がより深く、そこには理念があるというのが描かれていきますし、そういう部分が今後もしっかり見えてきます。この人活躍するんだろうな。なんせキービジュアルのセンターにいますからね(笑)。
〈本予告〉からみる第二章の見所。
──すでに配信されている第二章の〈本予告〉ですが、オリジナルにはないカットが多くて凄くビックリしましたし、凄くドキドキしました。
鈴村:そうでしょうね。オリジナルを知ってるがゆえに「ええっ! どうなっちゃうの!?」みたいなことをみんな言いますよね。
──とくに、予告であった真琴が加藤に向かって言う……。
鈴村:「行って来い、ヤマトのところへ」ってやつだ。
──あれは「えっ!?」と思ったし、でも第一章であの二人の現状を見せてもらえたので、ちょっとドキッとするというか。
鈴村:たしかにね。なんか加藤は乗らなさそうだったもんな。オリジナルでは「おい、ハッチを上げろ!」って言って乗ってきちゃうから「あ、加藤だ! 加藤が来てくれた!」って(笑)。あそこにすごい焦点が合ったけど、『2202』はそこに行くまでのドラマが……。それがあるだけで加藤が乗る「加藤が来てくれた!」っていう喜びが何十倍にもなるのが凄いなと思いました。
──そういう意味では『2199』が好きだった方は当然ですけど、オリジナルしか見てないという方も相当楽しめるものとなってますよね。
鈴村:そうですね、面白いですよ。まったく知らない人にもちゃんとした群像劇として見てもらえるので、そこがやっぱり凄いことだなと思います。いかに昔から完成度が高かったかというのが分かりますよね。
ただ、時代が違うんだなとは思うんです。あの時代って、さっきも言ったように斉藤が突然「よう!」って入ってきてもみんなに受け入れられたし、「加藤が来てくれた!」ってみんなが喜ぶ。だから、描かれていない部分、足りない部分は「加藤は何かあったのかな?」と自分で補っていた時代なんですよね。今は、そこを逆手に取ってあのドラマはこういう意味があったんですよと。もうちょっと丁寧に描くことで、より厚みが増すことに成功していますね。やろうとしていることは変らないけど、より丁寧に描けばこうなるんだってことに過ぎないので、今若い人が『ヤマト』は昔の作品だと思って観ないとしたらもったいないと思います。もともとよく出来てるし、それを今の技術で作り直すともっといいものになるに決まってるじゃん、と。
リメイクがこんなに見事に成功しているケースってなかなかない、珍しい例なので凄いことだと思います。
冒頭10分から見える、アンサーの先にあるもの
──第二章の冒頭10分が配信されましたが、それについて一言感想をお願いします。
鈴村:なるほどなと思いました。アンドロメダがめっちゃ増えたっていうのもそういうふうに説明するんだと結構衝撃的でした。衝撃的だったとしか言いようがない(笑)。オリジナルから観ている方もビックリするでしょうし、「なるほどな」と言ってくれると思います。『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』が好きな人はアンドロメダが大好きだから、そのアンドロメダにまつわるエピソードが一つあるだけでもすごい説得力を生むというか、この先アンドロメダっていろいろ関わってくるじゃないですか。だから、大きな布石だと思います。ただ、僕らもあれがどう繋がってどうなって行くのかっていうのは、まだ(先行してアフレコをしている話数には)影響していないので分からないんです。まだだいぶ先なのかな。
──第二章に出てくるエピソードは、他にも後々伏線となっていきそうな部分が多そうですね。
鈴村:第一章の予告編でアンドロメダの観艦式にガミラス人が並んでいたのを観て、「どういうこと!?」って言ってきました。予告を観ただけですよ(笑)。ただ、『2199』でのそういうものは旧作のアンサーに近かったんですけど、『2202』ではガミラスと同盟を組んでいるだとか、アンドロメダがどうやって作られてるのかがちゃんと描かれていて、それが確実にストーリーに絡まってくる。『2199』以上にアンサーの先がある感じに観えてくるような気がします。
──ところで、冒頭10分には島はいませんでした。
鈴村:島、めっちゃもったいぶりますからね、二章は(笑)。
ヤマトが発進する物語を劇場で観ないだなんてもったいない!
──劇場へこれから観に行こうという方にメッセージをお願いします。
鈴村:すでに第一章も観ていただいているとは思いますが、『2202』は第二章が本当の始まりと言っても過言ではないと思います。「発進篇」って付いてますし、なにせヤマトが発進します。とはいえ、第一章が助走だったかというとそんなことはまったくありません。素晴らしい第一章だったと思います。逆に言うと、今のご時世なんでも展開を早くしろということがエンタテインメントの基本となっていて、ヤマトが発進するという大きいネタは「できれば第一章でやりなさいよ」というのが多分、大人の意見だと思うんです。そこを、あえて第一章で発進させず第二章で発進させるということは、第一章ですごく丁寧に時間をかけてヤマトが発進するまでの葛藤を描いたっていうことの証。凄く丁寧に作られている作品なんだなと思います。
そんな中、第二章がいよいよ上映されヤマトが発進する。これはまた、新たなるヤマトの旅立ちとして歴史的な出来事だと思います。ましてやこの発進するというその物語を劇場で観ないだなんてもったいない。ぜひ、ヤマトが発進する、胸が熱くなる展開、逆境を乗り越えて発進するヤマトの姿を劇場で目に焼き付けていただければ。どうか足を運んでみてください、よろしくお願いします。
──本日はありがとうございました。
[取材・文/小林治]
作品情報
『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』第ニ章「発進篇」
2017年6月24日(土)より、全国20館にて2週間限定劇場上映
※シリーズ全七章順次劇場上映
劇場にて特別限定版Blu-ray 最速先行販売
デジタルセル版配信も同時スタート!
●「第二章 発進篇」STORY>
※第二章は第三話~第六話の計四話で構成されます。
謎めいたガミラスの青年キーマンに誘われて、月面のガミラス大使館で大使のバレルと面会した古代は、惑星テレザートとテレサの物語を聞かされる。そして地球に戻った古代は〈コスモリバースシステム〉が地球にもたらした負の遺産の存在を知らされるのだった。改めて地球政府の方針に憤る古代は、自分たちに送られてきたテレサのメッセージに応えるべきと防衛軍の上層部に掛け合うが、ヤマト発進の許可を得ることはできなかった……。
海底ドックに眠る宇宙戦艦ヤマトの前に、あのメッセージを受けたヤマトクルーが集う。古代は彼らと共に、“反逆”とも取られかねぬ独断での出航を決意するのだった。いま再び、宇宙戦艦ヤマトが発進する。行く手に待ち受けるのは最新鋭戦艦のアンドロメダ。一方そのころ、太陽圏に侵攻したガトランティス先遣部隊が、第十一番惑星に迫っていた――。
<第二章CAST>
古代 進:小野大輔
森 雪:桑島法子
島 大介:鈴村健一
真田志郎:大塚芳忠
徳川彦左衛門:麦人
佐渡酒造:千葉 繁
山本 玲:田中理恵
新見 薫:久川 綾
南部康雄:赤羽根健治
相原義一:國分和人
太田健二郎:千葉優輝
岬 百合亜:内田 彩
桐生美影:中村繪里子
西条未来:森谷里美
榎本 勇:津田健次郎
山崎 奨:土田 大
土方 竜:石塚運昇
斉藤 始:東地宏樹
永倉志織:雨谷和砂
藤堂平九郎:小島敏彦
芹沢虎鉄:玄田哲章
山南 修:江原正士
バレル:てらそままさき
キーマン:神谷浩史
沖田十三:菅生隆之
●STAFF
製作総指揮:西﨑彰司
原作:西﨑義展
監督:羽原信義
シリーズ構成:福井晴敏
副監督:小林 誠
キャラクターデザイン:結城信輝
ゲストキャラクター・プロップデザイン:山岡信一
メカニカルデザイン:玉盛順一朗・石津泰志
美術監督:谷岡善王
色彩設計:福谷直樹
撮影監督:堀野大輔
編集:小野寺絵美
音楽:宮川彬良
音響監督:吉田知弘
音響効果:西村睦弘
オリジナルサウンドエフェクト:柏原 満
CGディレクター:木村太一
アニメーション制作:XEBEC
製作:宇宙戦艦ヤマト2202製作委員会
>>『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』公式サイト
>>『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』公式ツイッター(@new_yamato_2199)