スタン・リー×長濵博史監督ができた理由とは 業界の裏話まで飛び出した『THE REFLECTION(ザ・リフレクション)』野口和紀プロデューサーインタビュー
NHK総合で7月22日より放送予定のTVアニメ『THE REFLECTION (ザ・リフレクション)』以下、『ザ・リフレクション』)。全世界を襲った謎の大災害の影響によって特殊能力を得た“リフレクティッド”と呼ばれる能力者達の戦いが描かれ、『スパイダーマン』『アイアンマン』などを生み出したアメコミ界の重鎮、スタン・リーと、『蟲師』『惡の華』などで知られる長濵博史監督、さらにイギリスの音楽プロデューサー、トレヴァー・ホーンが音楽を担当。超豪華な面々によって制作が行われている作品です。
そんな全世界のアニメファン必見の内容となっている『ザ・リフレクション』ですが、気になるのはどういった経緯でこの豪華な布陣が実現することになったのか。そんな本作が生まれるまでの裏側の話を、本作の制作を担当するスタジオディーン・野口和紀プロデューサーにお話を伺うことができましたので、その模様をお届けしていきます。
厚い信頼関係で結ばれた、スタン・リーと長濵博史監督
──本作が制作されることになった経緯を教えてください。
野口和紀氏(以下、野口):今から6年ほど前、長濵監督とスタン・リー氏が一緒に作品を作るという企画があったのですが、諸々の事情があって実現しませんでした。ところが、ここからが長濵監督のすごいところで、その後に「今回は実現しなかったけど、また別の作品を一緒に作らないか」とスタンの方から連絡があったんです。ただその際、スタンのビジネスパートナーでもあるギル・チャンピオン氏から「長濵とスタンが作るなら、面白いものができるのは分かっている。けど、それだけでは成立しない。ビジネスパートナーを連れて来てくれ」といったことを言われたらしく、すぐに自分が行くことになりまして。その時は『ザ・リフレクション』というタイトルもまだ決まっていなかったくらい、いろいろと準備不足の段階でした。
以前に一緒に仕事をした方からギルはすごく怖いという噂も耳にしていたのですが、いざ会ってみると、ずっとニコニコとした人で驚いた記憶があります。制作費などいろいろな課題は多かったのですが、「なんとかします、一緒にやりましょう」と握手を交わして、それで決まっちゃったんです(笑)。
──これだけの面々の揃った作品の企画が、それだけで正式に決まったというのはすごい話ですね。
野口:そこからもいろいろな苦労があるのですが、基本的に長濵監督とスタンに関してはツーカーの関係でした。実は最初、ストーリーはアメリカのライターに任せる予定だったのが「長濵に全て任せた方がいい」というスタン側からの意向があり、シナリオからシリーズ構成まで、全て日本側に任せてもらえることになりました。キャラクターに関しても最終的なデザインは馬越嘉彦さんが担当されているのですが、原案は長濵監督が作られていて、ほぼ監督というより原作者も兼任しているような形ですね。
──実際にお会いされて、スタンの印象はいかがでしたか?
野口:年に1、2回くらいは直接お会いできているのですが、94歳のクリエイターの方と一緒に仕事をするということをまったく感じさせないんです。打ち合わせの度にいろいろなアイディアが止めどなく溢れ出てきて、この人は本当に神様みたいな人なんだなということを再認識させさられました。そうして普通に会うことができていただけに、東京コミコン(※1)にスタンが来日していた時は、顔を見ることすら叶わなくて。改めてすごい方なんだということを思い知りましたね。
※1:東京コミックコンベンション。1970年代よりアメリカで始まった世界最大級とされるサブカルチャーの祭典。2016年には初めて日本で開催され、スタン・リーも来日していた。
──どのような想いから、本作の企画は生み出されることになったのでしょうか?
野口:マーベル・コミック(※2)では、ほとんどの原作をスタンが作ってきたわけですが、長濵監督はそれらをスタン自身が自由にできないため、「それならばスタン・リー ユニバースを新たに生み出そう」と考えたんです。
またスタンが原作を担当されているアメリカのカートゥーンアニメには子供向けのものが多いんですね。最近は実写映画の勢いが凄いですから、アニメでもその評価をひっくり返して「やっぱりスタンはアニメでもすごいんだ」ということを伝えたいというのも原動力になっています。『ザ・リフレクション』というタイトルはその構想の中のほんの一部で、これを皮切りにスタンの世界観をどんどん広げて行きたいと考えています。
※2:アメリカン・コミックを代表する出版社。『スパイダーマン』『X-MEN』『キャプテン・アメリカ』など、現代のヒーローを代表する数多くの作品を生み出してきた。スタン・リーはその大半の作品に関わり、現在も編集委員と名誉会長を務めている。
──野口さんが長濵監督と初めてお仕事をされた時はいつ頃だったのでしょうか?
野口:『フルーツバスケット』(※3)という作品でコンテ演出をお願いしたのがきっかけでしたね。やはり一緒にお仕事をするのはすごく大変なのですが(笑)、生業としてプロデュース業をやっていると、長濵監督の作品を自分で作りたいという想いが出てきて、純粋に一ファンとして長濵監督のフィルムが見たくなるんです。
何より本作をやっていて本当によかったと思えるのが、完成したシナリオを真っ先に読めるということで、これが本当に面白い。その内容について、最初に相談をしてもらえる立場なわけですからやりがいはありますね。仕事に対する要求度が高いので、普段の5倍増しくらいの苦労はありますが(笑)、一緒にやっていてすごく楽しいですし、他のスタッフも同じだと思います。
あとは長濵監督を見ているとプロデューサーっぽいと感じることが多くて、人の力を上手く引き出すんですよ。「自分にこんな能力があったのか」と驚かされることも多くて、長濵監督がディレクションをすると、スタジオのスタッフの能力が高まっていくんです。そうなるとプロデューサーとしては一緒に作りたくなりますよね。
※3:2001年に全26話が放送された、高屋奈月氏による漫画を原作としたTVアニメ。制作をスタジオディーン、監督を大地丙太郎氏が努めた。長濵博史氏もコンテ・演出として制作に参加している。
トレヴァー・ホーンの参加は、野口プロデューサーの熱烈オファーで実現!?
──音楽担当のトレヴァー・ホーン(※4)については、どのような経緯で参加が決まったのでしょうか?
野口:実を言うと、私が大のファンだったからです(笑)。
一同:(笑)。
野口:私が小学校6年生の頃『中島みゆきのオールナイトニッポン』という番組でその存在を知ってからずっと好きで、その後も洋楽ばかりを聴いていたものですから、いつか一緒に仕事がしたいと思っていたんです。この『ザ・リフレクション』の話が出るよりも前、長濵監督がスタン・リーと仕事をしているという話を聴いて羨ましがっていたら、「野口さんにはそういう人はいないんですか」と訊かれて。その時にトレヴァーの名前を挙げていたという経緯があったので、『ザ・リフレクション』の企画が始まった時、「どうせならトレヴァーに頼んでみたら」と長濵監督が提案してくれたんです。
その後、『ザ・リフレクション』でもお世話になっている、フライングドッグさんを通してトレヴァーの代理人にオファーを出したのですが、最初はやっぱりダメだったみたいなんです。次にZTT(※5)の国内ライセンスを扱っているUMAA(※6)の弘石社長に相談してもらったところ、興味を持ってくださったみたいで。それで『ザ・リフレクション』の企画書と、とにかくトレヴァーが大好きですという私の直筆の手紙を送ったら、OKが出ちゃった(笑)。
だから個人的なコネがあったわけではなく、ツテを辿っていった結果奇跡的に叶ってしまったという形で……長濵監督からは「言わなきゃダメですよ、それで僕は一緒に仕事してるんですから」と言われてたんですけど、まったくその通りだなと思いましたね。
※4:イギリスの音楽プロデューサー・ミュージシャン。1980年代にかけて、イエス、アート・オブ・ノイズ、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド、ペットショップ・ボーイズ、リサ・スタンスフィールドなど数多くのアーティストをプロデュースしてきた、英国ロック界の巨匠。
※5:トレヴァー・ホーン、ポール・モーレイらが設立したイギリスのレコードレーベル。フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドの「Relax」など、世界的に大ヒットを飛ばした楽曲を多数リリースしている。
※6:ボーカロイド・シーンから飛び出した国内人気アーティストから、世界的に高い評価を得ているエレクトロニック・ミュージックを中心とした海外アーティストまで、様々な才能をもったアーティストの作品を積極的に日本国内で制作、流通している。
──本作は全世界で公開されるとのことでしたが、日本以外ではどのような形になるのでしょうか?
野口:クランチロールが欧米中心に窓口に配信を行い、アジア等でも他のプラットフォームより配信という形になります。実は英語版では、今回はカメオ出演ではなく本人役として、スタン・リーが声優として出演します。日本語版では、実写での吹き替えも担当されている西村知道さんが演じられているキャラクターです。
──『ザ・リフレクション』はNHK総合で放送される作品になります。
野口:スタジオディーンは創立42年になるのですが、実はNHK総合で流れるアニメを作るのは初めてで、ちゃんとやっていると報われることがあるんだなと思いましたね(笑)。ストーリーはとにかく見応えのある内容になっていて、アメリカの海外ドラマのように、1話だけだと何をやっているかよくわからない部分があるかもしれませんが、世界観が理解できるようになっていく3・4話までは、是非とも見ていただきたいです。
──ありがとうございました。
[取材・文/米澤崇史]
最新PV公開!
2017年7月23日(日)より 毎週日曜深夜1時30分〜 順次 最新話配信予定
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※販売開始日程・配信期間・配信価格は配信サービスによって異なる場合があります。詳しくは取扱いの配信サービスにてご確認ください。
作品情報
TVアニメ『THE REFLECTION(ザ・リフレクション)』
●放送情報
2017年7月22日(土)よりNHK総合テレビにて
毎週土曜日午後11:00~11:25放送!! (全12回)
※放送日時は予告なく変更になる場合がございます
●STORY〈あらすじ〉
全世界を襲った謎の大災害。『リフレクション』と名づけられたこの現象は、おびただしい数の命を奪ったが、生き残った者たちに、ある特別な『力』を与えた――
あれから3年。ニューヨークで行われた追悼セレモニーで、その『力』がテロという形で人類の前に突きつけられた。闇に染まった能力者たちに立ちはだかったのは、正体不明のマスクの男エクスオン、メタリックスーツを身に纏ったアイガイ、エクスオンを追って自ら戦いに身を投じてゆく少女エレノア。何故、リフレクションは起こったのか? なぜ、彼らは人類に牙を剥いたのか? その謎が今明かされる――
●KEY WORDS〈用語解説〉
【リフレクション(現象)】
ある日、地球全土で同時に観測された現象。緑色の光線が空を不規則に反射しつつ覆いつくしていく現象で、光線はしばしば地表にまで到達した。光は、同時に現れた黒い煙状の物質が地上に到達するのを防ぐような軌道を取っていたのだが、それがあたかも空中に反射しているように見えていた。この現象は時差の為、観測された時間が地域ごとに異なるのだが、夜に観測することになった地域では、地上に迫る煙の様子が視認しづらく、まさに闇夜の空に光が乱反射する様子が、より印象深く記憶された。
【リフレクティッド(能力者)】
リフレクション時、地上に到達した光や煙に貫かれ、異能を得た人間。貫かれた人間は大抵が死亡したが、生き残った者には異能が宿った。光に貫かれたか、煙に貫かれたかによって、宿る能力の方向性が異なる。
光:瞬間移動や比較的人の姿のままで発動できる能力が多い。
煙:獣化や液状化など、人の形を保てなくなってしまう能力が多い。
彼らの能力は、発現タイミングにも個人差があり、リフレクティッド(能力者)の存在は世間一般が認知しているものではない。しかし、不思議な力や不可解な生き物の目撃情報はあり、人々は異能の者が存在するのではないか、と緩やかな不安感や不信感を持ち始めている。
●CAST〈キャスト〉
エクスオン:三木眞一郎
イアン・イゼット/アイガイ:三上 哲
エレノア・エヴァーツ:伊瀬茉莉也
リサ・リビングストン:花村怜美
カナ:吉井香奈恵(9nine)
ヒロ:村田寛奈(9nine)
ウキ:佐武宇綺(9nine)
サヤ:西脇彩華(9nine)
デッド・ウィング:樫井笙人
フレイミング・フューリー:三瓶由布子
スティール・ルーラー:日笠陽子
ミスターミスティック:西村知道
レイス:宮田幸季
●STAFF
原作:スタン・リー/長濱博史
監督:長濱博史
脚本:鈴木やすゆき
音楽:トレヴァー・ホーン
キャラクターデザイン:馬越嘉彦
EDテーマ:9nine
アニメーション制作:スタジオディーン
制作・著作:THE REFLECTION製作委員会
●音楽情報
■エンディングテーマ『SunSunSunrise』8月16日(水)発売!!
9nineによる「THE REFLECTION」のエンディングテーマ『SunSunSunrise』が8月16日(水)NEWシングルとして発売!(発売元:SME)
■サウンドトラック8月16日(水)発売!!
トレヴァー・ホーン全面プロデュースの『THE REFLECTION』のサウンドトラックが、トレヴァー本人歌唱による劇中歌である「Sky Show」や挿入曲、インタビュー映像なども収録する初回限定盤と、通常盤の2形態で8月16日(水)にリリース予定。(発売元:UMAA)
>>TVアニメ「THE REFLECTION」公式サイト
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